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二十一話 私は果報者ですね
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そんなたえに向かって、仲間に抱えられた男は、弱々しい声で呟きます。
「な、なんで…そんなに強いんだよ…」
「いいえ、私は強くはありません。ただ、貴方の心が弱かったのでしょう」
男の使い込まれた剣を見て、剣圧を感じて見て、恐らくまともに攻撃を受ければ無傷ではいられなかったはず。ただ、男の心の弱さにつけこんだずるい女が勝っただけと、満身するどころか逆に虚しさがこみ上げ、たえはとぼとぼとチカの方に歩いていきます。
「つまらない試合を見せてしまい、申し訳ありません…」
先程の剣幕とはうってかわって、しょぼんとした表情のたえに、怪我がなくて本当に良かったよ!と飛び付いたチカ。
戦い始めたたえの剣幕に、かなり驚いてしまったのでしたが、最後に大声で叫んだ言葉にたえの優しさを感じ、やっぱりたえさんは優しい人なんだなと改めて実感しました。
そんな中、賭けとは別にたえの容姿や装備に興味を示し集まった冒険者が、遠慮しながらたえに声をかけます。
板を紐で結び、段違いにして留めている肩当てや、胴の部分に描かれている和の模様…たえの大よろいには散る桜が描かれています…急所や足を守るためのひれたいなど、こちらの世界では見られない仕組みを質問する冒険者達。
その方たちに対して、大よろいを脱いで見てもらったり、反対にそんな冒険者の方たちが着ている皮や鉄の鎧を借りて着てみたりするたえを見て、年上の冒険者は装備屋のよい情報をくれたり、同じくらいのランクの冒険者達にはパーティへの勧誘をもらったりして、チカにひやひやされたりしました。
そんな冒険者の皆さんにお礼を言いながらも、今は恩人のチカと共にいろいろな事を経験したいので…と遠慮しながら断るたえに、機会があったらよろしくな!と握手を求める冒険者に、やっと慣れた握手で答えるたえ。
不快な思いをし、八つ当たりぎみで力をふるいましたが、これからは自分ではない誰かのために戦おうと心に決めたたえでございました。
そんなたえが次に思ったのが、大よろいの事。
父の形見である大よろいを着て、それなりに戦いましたが、正直自分の身長や体型にあってなく、動く度にからんからんとなる肩当てや、ひれたいが気になっていたところでしたので、こちらの世界の冒険者の方々の装備に興味を示していました。
先程いろいろな方の防具を借りていろいろ具合を見てみたのですが、一長一短あり、どうにも決められないので悩んでいたたえに、チカからオーダーメイドを勧めるチカ。
自分だけの装備と言うことにかなり興味を示したものの、金銭がかかるのでは?と難色を示したたえに、ぐふふふと悪うチカはさっき稼がせてもらいましたからと言い、手元にあった札束をたえに見せました。
「たえさんの装備のためならいくらでも使いますよ!ただ、ちょっとだけデザート食べたいんでそっちにも使わせて下さいね!こんなチャンスなかなかないんでヘソクリ全額投入して本当に良かったよ…ホントありがたや~ありがたや~」と拝んでいます。
「私がチカさんを拝んだことはありましたが、まさか私が拝まれることになるなんて変なものですね」
そう言いながら、何故かわからないけど役に立ったことがわかって笑顔になったたえは、周りに人が徐々にいなくなっているのを見て、もはやここに用はないだろうと練習場を後にします。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
賭けに負け、しょぼんとしている冒険者達を横目に見ながら、たえとチカはとある一軒のお店に足を運んでいました。
トンカチを交差させたデザインの看板を目印にして中に入ると、中から「らっしゃい!手が離せないから適当に見てくんな!」と奥のほうから声がしました。
店番もいなくて大丈夫なのか?と余計な心配をするチカは一応奥に向かって声をかけ、たえの装備を見繕おうとし、周りを見ます。
武器防具屋と言ったこのお店は、主に中古の武器防具を取り扱っていますが、必要な箇所を丁寧に直しているため新品同様の機能をし、なにより安いと評判らしく、冒険者ギルドにいた冒険者に強く勧められた場所。
機能的には全く問題ない綺麗な装備品を見て、たえに合わせていたところ、奥から出てきた店主と思われる方を見て、たえは頭を下げます。
「声を聞いてもっと若い方かと思いました」
「いやいや~俺まだ30代なんだけどな…」
「あ、たえさん、この方ドワーフなんですよ。元々、若くてもずんぐりむっくりで、髭もふさふさな逞しいご老人のような容姿なんですよ」
そう説明され納得するたえは、改めて自分の装備品についての相談をし始めようとしたところ、目の前のドワーフに大よろいを凝視され戸惑いを隠せません。
ふむふむうんうん言いながら、何やら考えこんでいたドワーフは、急にたえに向かって「装備一式貸してくれないか?悪いようにはしないからさ」と頭を下げてきました。
店頭に並ぶ丁寧な仕事がされた装備品と、真剣な目をした目の前の人物を見て、信用足る人物と思ったたえは、亡き父の形見であることを言いながら大切に扱う事を条件に貸す事を決めまして、一度宿に帰る事にしました。
一応と言うことで借りた防具は、兵士ガンと同じような鎧だったため、まるで兵士の方見たいですねと笑いながら歩くたえの後ろを、何やら確認しながら歩くチカの手には、しっかりとした契約書がありました。
「たえさんはホントお人好しなんだから…わたしがしっかりしないとね」
「本当に頼りになりますね、ありがとうございます。チカさん。」
そう言いながら笑うたえとチカ。
こちらに来てまだ間もないけど、良い人たちに囲まれ私は果報者だなと、赤く染まりかけた空を見て思うたえでした。
「な、なんで…そんなに強いんだよ…」
「いいえ、私は強くはありません。ただ、貴方の心が弱かったのでしょう」
男の使い込まれた剣を見て、剣圧を感じて見て、恐らくまともに攻撃を受ければ無傷ではいられなかったはず。ただ、男の心の弱さにつけこんだずるい女が勝っただけと、満身するどころか逆に虚しさがこみ上げ、たえはとぼとぼとチカの方に歩いていきます。
「つまらない試合を見せてしまい、申し訳ありません…」
先程の剣幕とはうってかわって、しょぼんとした表情のたえに、怪我がなくて本当に良かったよ!と飛び付いたチカ。
戦い始めたたえの剣幕に、かなり驚いてしまったのでしたが、最後に大声で叫んだ言葉にたえの優しさを感じ、やっぱりたえさんは優しい人なんだなと改めて実感しました。
そんな中、賭けとは別にたえの容姿や装備に興味を示し集まった冒険者が、遠慮しながらたえに声をかけます。
板を紐で結び、段違いにして留めている肩当てや、胴の部分に描かれている和の模様…たえの大よろいには散る桜が描かれています…急所や足を守るためのひれたいなど、こちらの世界では見られない仕組みを質問する冒険者達。
その方たちに対して、大よろいを脱いで見てもらったり、反対にそんな冒険者の方たちが着ている皮や鉄の鎧を借りて着てみたりするたえを見て、年上の冒険者は装備屋のよい情報をくれたり、同じくらいのランクの冒険者達にはパーティへの勧誘をもらったりして、チカにひやひやされたりしました。
そんな冒険者の皆さんにお礼を言いながらも、今は恩人のチカと共にいろいろな事を経験したいので…と遠慮しながら断るたえに、機会があったらよろしくな!と握手を求める冒険者に、やっと慣れた握手で答えるたえ。
不快な思いをし、八つ当たりぎみで力をふるいましたが、これからは自分ではない誰かのために戦おうと心に決めたたえでございました。
そんなたえが次に思ったのが、大よろいの事。
父の形見である大よろいを着て、それなりに戦いましたが、正直自分の身長や体型にあってなく、動く度にからんからんとなる肩当てや、ひれたいが気になっていたところでしたので、こちらの世界の冒険者の方々の装備に興味を示していました。
先程いろいろな方の防具を借りていろいろ具合を見てみたのですが、一長一短あり、どうにも決められないので悩んでいたたえに、チカからオーダーメイドを勧めるチカ。
自分だけの装備と言うことにかなり興味を示したものの、金銭がかかるのでは?と難色を示したたえに、ぐふふふと悪うチカはさっき稼がせてもらいましたからと言い、手元にあった札束をたえに見せました。
「たえさんの装備のためならいくらでも使いますよ!ただ、ちょっとだけデザート食べたいんでそっちにも使わせて下さいね!こんなチャンスなかなかないんでヘソクリ全額投入して本当に良かったよ…ホントありがたや~ありがたや~」と拝んでいます。
「私がチカさんを拝んだことはありましたが、まさか私が拝まれることになるなんて変なものですね」
そう言いながら、何故かわからないけど役に立ったことがわかって笑顔になったたえは、周りに人が徐々にいなくなっているのを見て、もはやここに用はないだろうと練習場を後にします。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
賭けに負け、しょぼんとしている冒険者達を横目に見ながら、たえとチカはとある一軒のお店に足を運んでいました。
トンカチを交差させたデザインの看板を目印にして中に入ると、中から「らっしゃい!手が離せないから適当に見てくんな!」と奥のほうから声がしました。
店番もいなくて大丈夫なのか?と余計な心配をするチカは一応奥に向かって声をかけ、たえの装備を見繕おうとし、周りを見ます。
武器防具屋と言ったこのお店は、主に中古の武器防具を取り扱っていますが、必要な箇所を丁寧に直しているため新品同様の機能をし、なにより安いと評判らしく、冒険者ギルドにいた冒険者に強く勧められた場所。
機能的には全く問題ない綺麗な装備品を見て、たえに合わせていたところ、奥から出てきた店主と思われる方を見て、たえは頭を下げます。
「声を聞いてもっと若い方かと思いました」
「いやいや~俺まだ30代なんだけどな…」
「あ、たえさん、この方ドワーフなんですよ。元々、若くてもずんぐりむっくりで、髭もふさふさな逞しいご老人のような容姿なんですよ」
そう説明され納得するたえは、改めて自分の装備品についての相談をし始めようとしたところ、目の前のドワーフに大よろいを凝視され戸惑いを隠せません。
ふむふむうんうん言いながら、何やら考えこんでいたドワーフは、急にたえに向かって「装備一式貸してくれないか?悪いようにはしないからさ」と頭を下げてきました。
店頭に並ぶ丁寧な仕事がされた装備品と、真剣な目をした目の前の人物を見て、信用足る人物と思ったたえは、亡き父の形見であることを言いながら大切に扱う事を条件に貸す事を決めまして、一度宿に帰る事にしました。
一応と言うことで借りた防具は、兵士ガンと同じような鎧だったため、まるで兵士の方見たいですねと笑いながら歩くたえの後ろを、何やら確認しながら歩くチカの手には、しっかりとした契約書がありました。
「たえさんはホントお人好しなんだから…わたしがしっかりしないとね」
「本当に頼りになりますね、ありがとうございます。チカさん。」
そう言いながら笑うたえとチカ。
こちらに来てまだ間もないけど、良い人たちに囲まれ私は果報者だなと、赤く染まりかけた空を見て思うたえでした。
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