平安少女は異世界の夢を見る

とうちゃんすらいむ

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二十話 さぁ!立てぃぃぃ!!!!!

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「俺、男に一万イェン!」
「あたしも!男に二万イェン!」
「男に五千イェン!」

賭け事的には圧倒的に不利な状況に立たされているたえですが、彼女自身は陰で賭け事の対象にされていても気にもせず、もはや満員になっている練習場でもくもくと練習用の槍を振るっています。

時折、本当に心配して声をかけてくれる冒険者の方々にお礼を言いながらも、目の前でこちらを睨み付けている若い男性冒険者の様子を見ていました。

鎧は上だけで、鉄の胸当てのみ。下は特に特徴のない皮のズボンでブーツを履いています。
武器は両手剣のみで、防御は考えずただひたすらに攻撃するタイプの剣士に見えます。

一方のたえは大よろいの胴体部分と下半身を守るひれたいを身に付け、肩当てと鉢がねは身に付けていません。武器は薙刀を装備したいところでしたが、練習用に貸し出している刃がない武器に薙刀がなかったため、やむなく槍を手にし、腰には小太刀はなかったので、ショートソードらしきものを差しています。

それらを傍らで見守るチカは、いくら頭に来たからと言って大事にし過ぎたことを反省しながらも、たえの強さを一番わかってる自分が信じないでどーするの!と自分の頬を張ります。

「あー、成り行きで審判やることになったBランクのラングだ。審判になったからには公平に冷静に判断を行うつもりだ。よろしく頼む」

そう言う審判によりルールの説明がはじまる。
魔法による強化は無し、両膝が地についたり、外部からの補助が入ったら負け。

その他、審判の判断により戦闘不能と見なされた時点で試合修了と言う大雑把なルールが告げられました。

「はん!後で後悔するなよ!」
「私の大切なものを侮辱した輩に、私は絶対に負けはしません」

そう言う両者のにらみ合いの間に入り、審判であるラングは両者を試合場の端によらせます。

いつの間にか賭けの対象になった二人の評価は、男性が圧倒的に有利で、たえに賭けてるのはたえの事を見ていた十数人。

方やギルドでの実績があり、短期間でDランクに昇るかも知れないと噂されている、周りの評価が分かりやすい冒険者。方や冒険者に成り立ての訳のわからない装備を着た少女。何もわからない人なら男性冒険者に賭けるところなのでしょうが、たえの事を知っていて賭けている者達は、今から勝ったお金で何をしようか?と浮かれぎみです。

そんな外部の思惑を知ってか知らずか?審判のはじめの声で練習試合という名の何かが始まりました。

「俺は一人でゴブリンを10匹以上倒せるんだ!」
「御託はいいので、どうぞお好きに」

試合だというのに、この期に及んで御託を並べる男に呆れたたえのだるそうな行動に怒りをあらわにしたのか?男は自分の胸までありそうな長い大剣を下に構えながらたえに向かって突き進んでいきます。

次の瞬間、たえは手持ちの槍をぶんっ!と回したかと思うと、石突きを使って男の肩を思いっきり突いたため、これから両手剣を振り上げ、たえに襲いかかろうをしていた男は、思わず手持ちの両手剣を落としてしまいます。

それを見たたえは「持て!」と一言言い、相手を待ちます。
その行動にすっかり我を忘れ大声を上げた男を見て、まるで何やら汚らしいモノを見ているかのような目をするたえに、すっかり冷静さを失った男は両手剣をぶんぶん振りまわし、たえに襲いかかりました。

それを見ていたたえは「まるでコマのようですね」とふふふと笑い、冷静に相手を見て槍を当てていきます。
両手剣を振り上げる事に夢中になっている男の足元がお留守になっているのを見て、槍の脇で脛をひっぱたき、脛の攻撃に思わず屈んでしまったところを足蹴りし、しまいにはうずくまったところを「立て!」と言いながら襟首掴んで強引に立たせる。

「なんで、なんでなんだよ!お前みたいな奴になんで俺がこんなんなってるんだよ!!!!!!」
そう言いながら、再度両手剣を振り上げたえに一撃を入れようをした男は、振り上げた胴めがけて横から打たれた槍の一撃に耐え切れずに吹っ飛び、横たわります。それを許さずたえはまた襟首を掴んで「立て!」と言うのです。

まさかの一方的な展開に、ギャラリーはともかく、審判になってしまった男も呆然としてしまい、しばらくは事の成り行きを見ていたのですが、両手剣の男が尻餅をつき、立てなくなってしまったところを見て、たえとの間に入り、たえの勝利を宣言しました。

ですが、たえは審判に構わず男に「立て!」と怒声をあげます。

もはや何も言えなくなってしまった男に、これ以上は無理かと諦め、たえは最後にこういうのです。


「貴方に馬鹿にされた人の苦しみがわかったか!」

「大事なモノを馬鹿にされた人の苦しみがわかったか!」

「貴方の悪い振る舞いにより苦労を虐げたれている仲間の苦しみがわかったか!」

「貴方を影から支えてくれている人たちの苦しみがわかったか!」

「わからなければ何度でもこい!私が相手仕る!!さぁ!立てぃぃぃ!!!!!」


そう言うたえの間に入り、頭を下げ男を担ぎ上げて去るパーティメンバーを見て、たえはようやく冷静になるのでありました。
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