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十六話 おかみさんと腕試し
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男の声に全く気が付かないまま、一汗書いて気持ちよくなったたえは宿に戻ってきました。
ニワトリのシルエットの前に「朝鳴く鳥亭」と書かれた、二階建ての建物に入る前に、脇にある水場に行き、手ぬぐいに水を浸して体を拭いていると、後ろからおはようと気持ちよい声が聞こえてきました。
「たえさんだっけ?ずいぶんとまぁ早い時間に起きるもんだねぇ、昨日はよく寝れたかい?」
「はい、ふかふかの寝具に包まれとても気持ちよかったです。朝の散歩もとても楽しくちょっと体も動かせたので、まるで夢の中にいるようでございます」
事情のわからないおかみさんは、大げさな表現をする子だと思いながらも、楽しそうに話をするたえの事を好ましく思いながら、洗濯物の山を片付けようと水場に行こうとしたところ、うしろから同じように洗濯物をもってついてくるたえを見て驚きます。
「あんたはお客様なんだからいいんだよ」
「いえ・・・実は、いつもこの時間には起きて仕事をしていましたので、どうも落ち着きません・・・良かったらお手伝いなどさせて頂けないでしょうか?」
それなりに長い間宿でのサービスを提供しているものの、今までそんな事を言ってくれた宿泊客など見たことがなかったおかみさん。内心とても嬉しく思いましたが、たえが胸に下げた冒険者カードを見て、冒険者なんだから無償で働く事はやめたほうが良いといい一人で洗濯物をはじめました。
しばらくどうしようか?と考えていたたえでしたが、どうにも気持ちが落ち着かないので、それでは私にここの常識を教えて下さいませんか?と言いながら、おかみさんが手洗いしている洗濯物の山に手を出し手もみしはじめましたので、世話ばなしで良かったら・・・と、洗濯をしながら話し始めました。
この朝鳴く鳥亭は比較的宿泊代が安い事もあり、低ランクの冒険者が多く住んでいるため、簡単な事しかわからないよと言いながらも、手を休めることなく話をするおかみさん。
冒険者にはランクがあり、一番低いFからはじまり実績によりE・D・C・B・A・S・SSという風に上がっていくという事。ギルドにある依頼書の内容をこなすことにより実績を得たり、人々に貢献した事が評価されることによりランクがあがるという事。
たえが持っているFというランクはお手伝い程度のクエストしか出来ない仕様になっているが、実績を積みランクが上がると責任もあがるが、より難度が高く高利益なクエストにも挑戦することが出来るので、冒険者である以上高いランクを目指すんだよーとお節介なおばちゃん風に言っていく。
洗濯石鹸の爽やかな臭いを気持ちよく思いながらも、何も知らなかったたえは、うんうん頷きながら続きを聞きます。
そういえば、朝にお手伝いした荷物運びも仕事になったのだろうか?なんておかみさんに話したところ、ばかだねぇと言いながら笑います。荷物運びを頼んだ方もさぞ驚いたことだろうね。なんて話をし、もし来たら話を聞いとくよと言ってくれたおかみさんに感謝するたえでした。
そんな雑談程度の話をしながら洗濯物を干し終わったたえを見て、何かを思ったのか?おかみさんはたえに向かって木刀を投げてきました。
「ちょっと付き合ってよ」
「へっ?は、はい」
そんな会話があるかないかのうちに、おかみさんの木刀は吸い込まれるようにたえに向かって突かれました。
その突きを手に持つ木刀でいなし、半身で避けるたえにおかみさんはにやりと笑いながら体を前に入れていき、体当たりを試みます。
ですが逆に前に突っ込まれたかと思うと、半身でかわされ、急に足を引っかけられたおかみさんは転びそうになるのをなんとか耐えましたが、気がつけば首もとに木刀を当てられ「これでよろしいですか?」と困った顔の少女に言われたのでした。
「試して悪かったね!アンタ合格だよ!」
そう笑顔で言ったおかみさんに戸惑いながらも、たえは申し訳ないと言いながらおかみさんの足を気にしてます。
木刀を持って動くおかみさんの足さばきに若干違和感を感じていたたえは、その足を狙って足をかけたからなのですが、おかみさんは弱点を狙うのは戦闘では当たり前だよ!と笑いながらたえの肩を叩きます。
そして、つけていた前掛けのポケットから、手のひらに収まるくらいのにわとりの形のバッチを渡すと「おめでとう!」と拍手をしました。
何がなんだかわからない顔をしたたえに、いつの間にか模擬戦を見ていた複数の冒険者もすげぇな!と拍手をし、ますます訳のわからないたえにたいし、起きたばかりと思われるガクが「おっ!スポンサーバッチゲットか!久しぶりに見たな!」と笑っています。
ますます訳のわからないたえに、実力や人柄を認めた冒険者のみに渡している朝鳴く鳥亭限定のスポンサーバッチをたえに渡した事、たえに対して宿泊代割引のサービスを行う事を告げ鼻歌混じりに仕事に戻って行きました。
「あのおかみさんな、元の騎士団長。腕もたつし、魔法もそこそこ使えたらしいんだけど、足に大怪我をして引退したんだってよ。たまにあーやってキニナル冒険者にちょっかい出すんだけどよ、最近骨のある奴がいないからつまらないって言ってたから、今日は本当に楽しかったんじゃねーの?」
そんな事を言うガクの言葉に、改めて体さばきや剣の腕に納得しつつも、何かもらった事よりも洗濯しながら話した時間が楽しかったから、また手伝おうと思ったたえでございました。
ニワトリのシルエットの前に「朝鳴く鳥亭」と書かれた、二階建ての建物に入る前に、脇にある水場に行き、手ぬぐいに水を浸して体を拭いていると、後ろからおはようと気持ちよい声が聞こえてきました。
「たえさんだっけ?ずいぶんとまぁ早い時間に起きるもんだねぇ、昨日はよく寝れたかい?」
「はい、ふかふかの寝具に包まれとても気持ちよかったです。朝の散歩もとても楽しくちょっと体も動かせたので、まるで夢の中にいるようでございます」
事情のわからないおかみさんは、大げさな表現をする子だと思いながらも、楽しそうに話をするたえの事を好ましく思いながら、洗濯物の山を片付けようと水場に行こうとしたところ、うしろから同じように洗濯物をもってついてくるたえを見て驚きます。
「あんたはお客様なんだからいいんだよ」
「いえ・・・実は、いつもこの時間には起きて仕事をしていましたので、どうも落ち着きません・・・良かったらお手伝いなどさせて頂けないでしょうか?」
それなりに長い間宿でのサービスを提供しているものの、今までそんな事を言ってくれた宿泊客など見たことがなかったおかみさん。内心とても嬉しく思いましたが、たえが胸に下げた冒険者カードを見て、冒険者なんだから無償で働く事はやめたほうが良いといい一人で洗濯物をはじめました。
しばらくどうしようか?と考えていたたえでしたが、どうにも気持ちが落ち着かないので、それでは私にここの常識を教えて下さいませんか?と言いながら、おかみさんが手洗いしている洗濯物の山に手を出し手もみしはじめましたので、世話ばなしで良かったら・・・と、洗濯をしながら話し始めました。
この朝鳴く鳥亭は比較的宿泊代が安い事もあり、低ランクの冒険者が多く住んでいるため、簡単な事しかわからないよと言いながらも、手を休めることなく話をするおかみさん。
冒険者にはランクがあり、一番低いFからはじまり実績によりE・D・C・B・A・S・SSという風に上がっていくという事。ギルドにある依頼書の内容をこなすことにより実績を得たり、人々に貢献した事が評価されることによりランクがあがるという事。
たえが持っているFというランクはお手伝い程度のクエストしか出来ない仕様になっているが、実績を積みランクが上がると責任もあがるが、より難度が高く高利益なクエストにも挑戦することが出来るので、冒険者である以上高いランクを目指すんだよーとお節介なおばちゃん風に言っていく。
洗濯石鹸の爽やかな臭いを気持ちよく思いながらも、何も知らなかったたえは、うんうん頷きながら続きを聞きます。
そういえば、朝にお手伝いした荷物運びも仕事になったのだろうか?なんておかみさんに話したところ、ばかだねぇと言いながら笑います。荷物運びを頼んだ方もさぞ驚いたことだろうね。なんて話をし、もし来たら話を聞いとくよと言ってくれたおかみさんに感謝するたえでした。
そんな雑談程度の話をしながら洗濯物を干し終わったたえを見て、何かを思ったのか?おかみさんはたえに向かって木刀を投げてきました。
「ちょっと付き合ってよ」
「へっ?は、はい」
そんな会話があるかないかのうちに、おかみさんの木刀は吸い込まれるようにたえに向かって突かれました。
その突きを手に持つ木刀でいなし、半身で避けるたえにおかみさんはにやりと笑いながら体を前に入れていき、体当たりを試みます。
ですが逆に前に突っ込まれたかと思うと、半身でかわされ、急に足を引っかけられたおかみさんは転びそうになるのをなんとか耐えましたが、気がつけば首もとに木刀を当てられ「これでよろしいですか?」と困った顔の少女に言われたのでした。
「試して悪かったね!アンタ合格だよ!」
そう笑顔で言ったおかみさんに戸惑いながらも、たえは申し訳ないと言いながらおかみさんの足を気にしてます。
木刀を持って動くおかみさんの足さばきに若干違和感を感じていたたえは、その足を狙って足をかけたからなのですが、おかみさんは弱点を狙うのは戦闘では当たり前だよ!と笑いながらたえの肩を叩きます。
そして、つけていた前掛けのポケットから、手のひらに収まるくらいのにわとりの形のバッチを渡すと「おめでとう!」と拍手をしました。
何がなんだかわからない顔をしたたえに、いつの間にか模擬戦を見ていた複数の冒険者もすげぇな!と拍手をし、ますます訳のわからないたえにたいし、起きたばかりと思われるガクが「おっ!スポンサーバッチゲットか!久しぶりに見たな!」と笑っています。
ますます訳のわからないたえに、実力や人柄を認めた冒険者のみに渡している朝鳴く鳥亭限定のスポンサーバッチをたえに渡した事、たえに対して宿泊代割引のサービスを行う事を告げ鼻歌混じりに仕事に戻って行きました。
「あのおかみさんな、元の騎士団長。腕もたつし、魔法もそこそこ使えたらしいんだけど、足に大怪我をして引退したんだってよ。たまにあーやってキニナル冒険者にちょっかい出すんだけどよ、最近骨のある奴がいないからつまらないって言ってたから、今日は本当に楽しかったんじゃねーの?」
そんな事を言うガクの言葉に、改めて体さばきや剣の腕に納得しつつも、何かもらった事よりも洗濯しながら話した時間が楽しかったから、また手伝おうと思ったたえでございました。
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