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十四話 小袖と下着、沐浴と温泉
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宿のおかみさんの好意でとれた二人部屋に入ったたえとチカは、それぞれの場所に自分の荷物を置いて行きます。
たえは自分が装備していた大鎧や薙刀、そして唯一戦闘とは関係ないと思われる竹で編まれた行李(こうり)を部屋の隅に置き、チカが以前住んでいた部屋から荷物を移動している間に着替えてしまおうと思いました。
ガンはとりあえず落ち着いたであろう二人の姿を見て、ほっとしたらこれから酒でも飲み行くわといいその場を去ったため、今は女子二人。
なんとなく男性がいるといないとでは安心度が違う様で、年が近いであろうチカと一緒にいることで気楽でいられるなぁとたえは思います。
部屋を半分にしてチカとたえは各々で荷物を置き始めたのですが、早々荷物を置き終えたたえは、自分が持ってきた竹の行李を開けてみることにしました。
そんなに重くないと思われた行李でしたが、中にはたえがよく着ていた「小袖(こそで)」と呼ばれる、麻で出来た袖の細い簡素な衣服が入っていましたので、今までの緊張からすっかり疲れてしまったたえは、鎧やその下に着ていた直垂(ひたたれ)などすべてを脱ぎ捨て、裸になってから小袖に着替え、紺の腰布を巻きます。
自分の片づけをしながらなんとなくその様子を見ていたチカ。
「下着はないんですか?」
「下着とはなんでしょうか?私は普段からこの姿で生活をしていましたので」
小袖を身に着け大鎧などを片付ける最中、たえのふとももなどがちらちら見え、気が気ではなく、たえには絶対に下着と洋服を買おう!洋服が無理なら下着だけでもなんとかつけさせよう!と心に固く誓ったチカでありました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「チカ殿、これから何処に行くのでございますか?」「えっと…たえさんの身の回りのもの買ってから、お風呂に行こうと思うんですけど、どこか行きたいところありますか?」
そう言いながら二人は、宿から商店街に向かって歩きます。商店街近づくにつれ、露店なども増えて来て、食べ物や飲み物、アクセサリーや工芸品など多種多様な品物を売る人々と、それらを買う人で賑わいを見せています。
そんな露店をちらっと見ながら、好みがあるかも知れないけどと断りを入れ、チカはたえの日用品を買っていきます。
値切りは当たり前。
出来るだけたえの負担が少なくなるようにと、鬼のような値切りの仕方をするチカにたえは舌を巻きます。
下手したら反物を持って穀物と交換していた頃の自分よりも交渉上手ではないか?と思い、私は良い方に拾ってもらったのだなと思ったたえ。
その後、一通り回って使った額は約10万イェン。
一番苦労したのは下着売り場だったと、部屋に帰った二人は思いました。
そもそも何故下着を付けなければならないのか?からはじまり、ムネの形を保つ為とか、戦闘中にいろいろな場所のゆれを防ぐためとか、いろいろ言い訳を並べながら、なんとか購入したのは色気も減ったくりもないワイヤーレスの無地のブラに無地のホットパンツのようなパンツ数枚。
「なんかもー、もっと色気のある下着着せたかったんだけどね!たえちゃんのスタイルだったら、多少大人系の下着着ちゃったらぐんと女があがるって思うんだけどなぁ・・・まぁ、今はこれで我慢してあげるけど、そのうち考えておいてね!」
そんな事を言いながら買ってきた下着をたえに着せて、行くは本日のメインとチカが言い張るセントウ。
「今日はいろいろな事がありすぎたから今日はひとっぷろ入って気分転換じゃぁ!」
とたえの手を引き、にこにこしながら歩くチカの目線には細く長い筒の様なものが天に向かって伸びているのが見えていました。
その先から白いものがもくもくはえているように見え、たえは不思議に思っていましたが、チカに強引に動かされることに慣れてしまったせいか?足を止めることなく入り口に着いてしまいました。
青と赤に別れている暖簾をくぐり、衣類を脱ぐように言われたたえは、いつ脱いだかわからないくらいの速さで裸になっていたチカに急かされ、タオル一枚で体を隠しながら湯気が立ち込める場所へを連れていかれました。
たえが知っている入浴はもっぱらサウナに近いようなモノで、自身から出る汗や汚れを木の葉で落としさっぱりするという方法だったのですが、チカに連れられた場所には温かなお湯がはられていました。
あれよあれよという間にチカに体を洗われ、気が付けばそんな浴槽にちゃぽんと浸かってしまい、ぽかーんとするたえ。
冷たい季節の中、身を清めるために浴びる沐浴は、正直大嫌いでしたが、この様に温かな湯の中に身を置き、何も考えずぼーーーーっとする時間ほど貴重なものはないなと思い、隣を見ると、ぶわぁぁぁぁと全力で脱力しているようなチカの姿。
痛いくらい全身をごしごし洗われ、それなりに丁寧に手入れをしていた髪にも何かを塗られ洗われ、あまり良い気持ちではありませんでしたが、気が付けば全身ほのかに花のような気持ちの良い香りがし、面倒見の良い姉を持ったような気がしてたえは嬉しくなりました。
「たえさん、お風呂は気持ちよいでしょ?一日の疲れがとれちゃいますよ☆」
「そうですね。沐浴は苦手でしたが、湯に浸かるのはとても気持ちよいのですね・・・私、感動いたしました」
そんな言葉を交わしながら、気が付けば笑顔で笑う二人。
今日はいろいろありすぎました。
とりあえず、難しい事は明日考えましょう。そんな事を思ったたえとチカ。
明日はどんな風が吹くのかわかりませんが、この笑顔があればきっと明日も楽しく生きていける。
元気に楽しく頑張ろう!そんな思いを胸に、この気持ちよさを全身で感じる二人でございました。
※下着について、1932年のデパート大火災のエピソードを入れようかと思いましたが、調べてみたらそれを機に下着をはくことが急速に広がったというわけではないようでしたので、入れるのをやめました。ただ、そんな時代までパンツ(ズロース?)をはくという習慣が定着していなかったのは不思議なものだなぁ~と思いました。
たえは自分が装備していた大鎧や薙刀、そして唯一戦闘とは関係ないと思われる竹で編まれた行李(こうり)を部屋の隅に置き、チカが以前住んでいた部屋から荷物を移動している間に着替えてしまおうと思いました。
ガンはとりあえず落ち着いたであろう二人の姿を見て、ほっとしたらこれから酒でも飲み行くわといいその場を去ったため、今は女子二人。
なんとなく男性がいるといないとでは安心度が違う様で、年が近いであろうチカと一緒にいることで気楽でいられるなぁとたえは思います。
部屋を半分にしてチカとたえは各々で荷物を置き始めたのですが、早々荷物を置き終えたたえは、自分が持ってきた竹の行李を開けてみることにしました。
そんなに重くないと思われた行李でしたが、中にはたえがよく着ていた「小袖(こそで)」と呼ばれる、麻で出来た袖の細い簡素な衣服が入っていましたので、今までの緊張からすっかり疲れてしまったたえは、鎧やその下に着ていた直垂(ひたたれ)などすべてを脱ぎ捨て、裸になってから小袖に着替え、紺の腰布を巻きます。
自分の片づけをしながらなんとなくその様子を見ていたチカ。
「下着はないんですか?」
「下着とはなんでしょうか?私は普段からこの姿で生活をしていましたので」
小袖を身に着け大鎧などを片付ける最中、たえのふとももなどがちらちら見え、気が気ではなく、たえには絶対に下着と洋服を買おう!洋服が無理なら下着だけでもなんとかつけさせよう!と心に固く誓ったチカでありました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「チカ殿、これから何処に行くのでございますか?」「えっと…たえさんの身の回りのもの買ってから、お風呂に行こうと思うんですけど、どこか行きたいところありますか?」
そう言いながら二人は、宿から商店街に向かって歩きます。商店街近づくにつれ、露店なども増えて来て、食べ物や飲み物、アクセサリーや工芸品など多種多様な品物を売る人々と、それらを買う人で賑わいを見せています。
そんな露店をちらっと見ながら、好みがあるかも知れないけどと断りを入れ、チカはたえの日用品を買っていきます。
値切りは当たり前。
出来るだけたえの負担が少なくなるようにと、鬼のような値切りの仕方をするチカにたえは舌を巻きます。
下手したら反物を持って穀物と交換していた頃の自分よりも交渉上手ではないか?と思い、私は良い方に拾ってもらったのだなと思ったたえ。
その後、一通り回って使った額は約10万イェン。
一番苦労したのは下着売り場だったと、部屋に帰った二人は思いました。
そもそも何故下着を付けなければならないのか?からはじまり、ムネの形を保つ為とか、戦闘中にいろいろな場所のゆれを防ぐためとか、いろいろ言い訳を並べながら、なんとか購入したのは色気も減ったくりもないワイヤーレスの無地のブラに無地のホットパンツのようなパンツ数枚。
「なんかもー、もっと色気のある下着着せたかったんだけどね!たえちゃんのスタイルだったら、多少大人系の下着着ちゃったらぐんと女があがるって思うんだけどなぁ・・・まぁ、今はこれで我慢してあげるけど、そのうち考えておいてね!」
そんな事を言いながら買ってきた下着をたえに着せて、行くは本日のメインとチカが言い張るセントウ。
「今日はいろいろな事がありすぎたから今日はひとっぷろ入って気分転換じゃぁ!」
とたえの手を引き、にこにこしながら歩くチカの目線には細く長い筒の様なものが天に向かって伸びているのが見えていました。
その先から白いものがもくもくはえているように見え、たえは不思議に思っていましたが、チカに強引に動かされることに慣れてしまったせいか?足を止めることなく入り口に着いてしまいました。
青と赤に別れている暖簾をくぐり、衣類を脱ぐように言われたたえは、いつ脱いだかわからないくらいの速さで裸になっていたチカに急かされ、タオル一枚で体を隠しながら湯気が立ち込める場所へを連れていかれました。
たえが知っている入浴はもっぱらサウナに近いようなモノで、自身から出る汗や汚れを木の葉で落としさっぱりするという方法だったのですが、チカに連れられた場所には温かなお湯がはられていました。
あれよあれよという間にチカに体を洗われ、気が付けばそんな浴槽にちゃぽんと浸かってしまい、ぽかーんとするたえ。
冷たい季節の中、身を清めるために浴びる沐浴は、正直大嫌いでしたが、この様に温かな湯の中に身を置き、何も考えずぼーーーーっとする時間ほど貴重なものはないなと思い、隣を見ると、ぶわぁぁぁぁと全力で脱力しているようなチカの姿。
痛いくらい全身をごしごし洗われ、それなりに丁寧に手入れをしていた髪にも何かを塗られ洗われ、あまり良い気持ちではありませんでしたが、気が付けば全身ほのかに花のような気持ちの良い香りがし、面倒見の良い姉を持ったような気がしてたえは嬉しくなりました。
「たえさん、お風呂は気持ちよいでしょ?一日の疲れがとれちゃいますよ☆」
「そうですね。沐浴は苦手でしたが、湯に浸かるのはとても気持ちよいのですね・・・私、感動いたしました」
そんな言葉を交わしながら、気が付けば笑顔で笑う二人。
今日はいろいろありすぎました。
とりあえず、難しい事は明日考えましょう。そんな事を思ったたえとチカ。
明日はどんな風が吹くのかわかりませんが、この笑顔があればきっと明日も楽しく生きていける。
元気に楽しく頑張ろう!そんな思いを胸に、この気持ちよさを全身で感じる二人でございました。
※下着について、1932年のデパート大火災のエピソードを入れようかと思いましたが、調べてみたらそれを機に下着をはくことが急速に広がったというわけではないようでしたので、入れるのをやめました。ただ、そんな時代までパンツ(ズロース?)をはくという習慣が定着していなかったのは不思議なものだなぁ~と思いました。
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