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十三話 赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)感謝の気持ち
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目の前に置かれた定食を目の前に、ガクとチカは手にフォークを持って食事を掻き込みます。
「今日はたえには驚かされっぱなしだぜ!」
「そうですねぇ、私もいろいろ助けてもらった事から始まって、たえさんの行動にはひやひやしたり、驚く事ばかりで、なんだか働いてないのに、一日分働いたなぁ~って思いますよ」
そんな事を言いながら、目の前のサラダやハンバーグ、そして脇に添えられてるコーンスープをどんどん口に入れていきますが、ふとたえの方を見ると、何やら手を合わせてもごもご何やら言葉を言っているではありませんか。
そんなたえを見ていたら、食事にがっついている二人はなんだか急に恥ずかしくなってしまい、思わず手をとめてしまいました。
「ん?皆様、何故に職をおとめになりますか?私の事はどうぞお気になさらず」
「食べてる脇で何か呪文となえられたらこっちが気になるってば!」
そんな事を言われ、改めて自分が違う世界から来た人間なのだなとたえは思います。
たえが口の中で唱えていたのは、赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)の教え(※)の一部。
以前、巴御前のお世話をしている時に教わった教えの一つだったのですが、これから貴族の暮らしも覚え、もっといろいろな世界を見なさいという巴の言葉でしたので、まずは自分が身近に覚えられそうな事から教えてもらったのを思い出していました。
目の前の食事は誰が作ってくれたのか?いろいろな人の手があり、自分の元に届いている事を忘れるな。自分は良い行いが出来ていたのか?ご飯を食べる資格はあるのだろうか?あったとしても次にご飯を食べれるように明日以降も善行を行う事を誓えるのか?そのうえで自分の成長や健康のために目の前の食事に感謝して食べましょう。
そのような事を言った後に、はじめてたえは目の前のご飯に手をつけます。
たえはご飯を食べるときは箸を使っていたのですが、目の前に箸はなく、先が三又に別れたモノと丸くくぼんでいるもののふたつだったため、戸惑っていると、チカとガンがこうやって使うんだぞ(よ)と教えてくれたので、目の前の野菜に手をつけました。
パリッとした歯ごたえと共に伝わってくる少ししょっぱい味が口に広がり、たえは驚きを隠せません。
次に黒く焼かれているはんばぁぐというものを頂くと、フォークというもので割った瞬間、中からじゅわーっと美味しそうな肉の匂いと共に出てくる汁がまたたえの食欲をそそり、気が付いたら口いっぱいに頬張ってしまっていました。
そして、気が付けば涙が止まらなくなっていたのです。
今までこんなに美味しいものを食べたことはありませんでした。
こんなに楽しくゆっくりとご飯を頂く事もありませんでした。
貧乏豪族の娘でありましたたえは、水と雑穀で増した雑炊をただ急いで掻き込んで、朝から晩まで働き詰め。
農民と一緒に開墾などを行うも、度重なる飢饉に苦しめられ、いろいろあって巴御前に仕えることになったものの、戦いの毎日でゆっくりするという事がなかったからなのです。
「美味しいです・・・とても、とても・・・とても美味しいです」
泣きながら食べるたえを気にしながらも、余計な事を言わないで食べよう。
今ここでご飯を食べれている幸せを、なんとなく一緒に感じよう。
そんな事を思いながら、チカとガンもうまいよな、うまいよなと言いながら、目の前のご飯を一緒に食べるのでありました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ありませんでした」
そう真っ赤な顔をしてうつむくたえに、いやいやと答える二人は、早速宿の空き状況を女将さんに尋ねます。
今までたえと一緒にいて、通常の生活をひとりで送らせるのはまだ早い。誰か一緒にいないといけないと思ったチカは、どうせパーティに入るという事もわかっていないだろうからと思い、たえと一緒に住める部屋に移動したいと言いました。
そう思ったのは、たえが冒険者になり報酬をもらった時の行動にもありました。
「お金などありましても使う場所がございません(※)」
そうきっぱり言うたえに不安を覚え思わず話を聞くと、ヒノモトノクニでは出回っているお金が足りず、ほとんどが物々交換であったという事でしたので、もう開いた口が塞がりません。これから宿に泊まり、ご飯を食べるのにお金が必要なのに、お金が必要ないと言い切るたえの感覚をどうにかこちら側に近づけなければならないと、もはや何かの使命感に燃えるチカがいました。
結局、たえの意見も聞かぬまま、たえとチカは同じ宿の二人部屋に移ることになり、たえのお金をチカが管理することにしました。たえがお金の使い方を学び、自分の意思を持ってお金を使えるようになるまではという約束のもと、まるでお小遣いを与えるお母さんのごとく、チカはたえにお金がなんであるかを再度説明するのでありました。
「荷物を置いて私服に着替えたら、今度は日用品買いに行きますよー」
「私はこれで十分「じゃないです!」」
食い気味に言葉をかぶせるチカに、たえは仕方がないとばかりに鎧を脱ぎ始めました。
一時期は死ぬために義仲や巴を追いかけようとしていましたが、わけのわからないままに、気が付けば知らない場所で知らない人達と知らない日常に触れ、気が付けば少しだけ楽しく思っている自分がいる事を感じているたえ。
「少しは楽しんでもよいのでしょうか?」
そうつぶやくたえに、手を引くことで答えるチカ。
きっとその先には何か楽しいことがあるに違いない。どうせならおおいに楽しんでやれ!と思った今日この頃のたえでございました。
※赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)というものを出してみましたが、読んでみると頂きますの元になった教えなのかな?と作者は思いました。まだまだ宗教の教えではありますが、この頃からも食事に対して感謝をするというものがあったのがわかりとても嬉しく思いました。
※外国から貨幣を輸入して、今まで物々交換だった流通の流れを変える動きがありましたが、度重なる飢饉で貨幣の価値が極端に落ちた事と、流通させる貨幣が足りなくなったせいで物品貨幣(作者は自分がわかりやすいので物々交換と表記しています)が主流になった、作者は認識しています。
「今日はたえには驚かされっぱなしだぜ!」
「そうですねぇ、私もいろいろ助けてもらった事から始まって、たえさんの行動にはひやひやしたり、驚く事ばかりで、なんだか働いてないのに、一日分働いたなぁ~って思いますよ」
そんな事を言いながら、目の前のサラダやハンバーグ、そして脇に添えられてるコーンスープをどんどん口に入れていきますが、ふとたえの方を見ると、何やら手を合わせてもごもご何やら言葉を言っているではありませんか。
そんなたえを見ていたら、食事にがっついている二人はなんだか急に恥ずかしくなってしまい、思わず手をとめてしまいました。
「ん?皆様、何故に職をおとめになりますか?私の事はどうぞお気になさらず」
「食べてる脇で何か呪文となえられたらこっちが気になるってば!」
そんな事を言われ、改めて自分が違う世界から来た人間なのだなとたえは思います。
たえが口の中で唱えていたのは、赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)の教え(※)の一部。
以前、巴御前のお世話をしている時に教わった教えの一つだったのですが、これから貴族の暮らしも覚え、もっといろいろな世界を見なさいという巴の言葉でしたので、まずは自分が身近に覚えられそうな事から教えてもらったのを思い出していました。
目の前の食事は誰が作ってくれたのか?いろいろな人の手があり、自分の元に届いている事を忘れるな。自分は良い行いが出来ていたのか?ご飯を食べる資格はあるのだろうか?あったとしても次にご飯を食べれるように明日以降も善行を行う事を誓えるのか?そのうえで自分の成長や健康のために目の前の食事に感謝して食べましょう。
そのような事を言った後に、はじめてたえは目の前のご飯に手をつけます。
たえはご飯を食べるときは箸を使っていたのですが、目の前に箸はなく、先が三又に別れたモノと丸くくぼんでいるもののふたつだったため、戸惑っていると、チカとガンがこうやって使うんだぞ(よ)と教えてくれたので、目の前の野菜に手をつけました。
パリッとした歯ごたえと共に伝わってくる少ししょっぱい味が口に広がり、たえは驚きを隠せません。
次に黒く焼かれているはんばぁぐというものを頂くと、フォークというもので割った瞬間、中からじゅわーっと美味しそうな肉の匂いと共に出てくる汁がまたたえの食欲をそそり、気が付いたら口いっぱいに頬張ってしまっていました。
そして、気が付けば涙が止まらなくなっていたのです。
今までこんなに美味しいものを食べたことはありませんでした。
こんなに楽しくゆっくりとご飯を頂く事もありませんでした。
貧乏豪族の娘でありましたたえは、水と雑穀で増した雑炊をただ急いで掻き込んで、朝から晩まで働き詰め。
農民と一緒に開墾などを行うも、度重なる飢饉に苦しめられ、いろいろあって巴御前に仕えることになったものの、戦いの毎日でゆっくりするという事がなかったからなのです。
「美味しいです・・・とても、とても・・・とても美味しいです」
泣きながら食べるたえを気にしながらも、余計な事を言わないで食べよう。
今ここでご飯を食べれている幸せを、なんとなく一緒に感じよう。
そんな事を思いながら、チカとガンもうまいよな、うまいよなと言いながら、目の前のご飯を一緒に食べるのでありました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ありませんでした」
そう真っ赤な顔をしてうつむくたえに、いやいやと答える二人は、早速宿の空き状況を女将さんに尋ねます。
今までたえと一緒にいて、通常の生活をひとりで送らせるのはまだ早い。誰か一緒にいないといけないと思ったチカは、どうせパーティに入るという事もわかっていないだろうからと思い、たえと一緒に住める部屋に移動したいと言いました。
そう思ったのは、たえが冒険者になり報酬をもらった時の行動にもありました。
「お金などありましても使う場所がございません(※)」
そうきっぱり言うたえに不安を覚え思わず話を聞くと、ヒノモトノクニでは出回っているお金が足りず、ほとんどが物々交換であったという事でしたので、もう開いた口が塞がりません。これから宿に泊まり、ご飯を食べるのにお金が必要なのに、お金が必要ないと言い切るたえの感覚をどうにかこちら側に近づけなければならないと、もはや何かの使命感に燃えるチカがいました。
結局、たえの意見も聞かぬまま、たえとチカは同じ宿の二人部屋に移ることになり、たえのお金をチカが管理することにしました。たえがお金の使い方を学び、自分の意思を持ってお金を使えるようになるまではという約束のもと、まるでお小遣いを与えるお母さんのごとく、チカはたえにお金がなんであるかを再度説明するのでありました。
「荷物を置いて私服に着替えたら、今度は日用品買いに行きますよー」
「私はこれで十分「じゃないです!」」
食い気味に言葉をかぶせるチカに、たえは仕方がないとばかりに鎧を脱ぎ始めました。
一時期は死ぬために義仲や巴を追いかけようとしていましたが、わけのわからないままに、気が付けば知らない場所で知らない人達と知らない日常に触れ、気が付けば少しだけ楽しく思っている自分がいる事を感じているたえ。
「少しは楽しんでもよいのでしょうか?」
そうつぶやくたえに、手を引くことで答えるチカ。
きっとその先には何か楽しいことがあるに違いない。どうせならおおいに楽しんでやれ!と思った今日この頃のたえでございました。
※赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)というものを出してみましたが、読んでみると頂きますの元になった教えなのかな?と作者は思いました。まだまだ宗教の教えではありますが、この頃からも食事に対して感謝をするというものがあったのがわかりとても嬉しく思いました。
※外国から貨幣を輸入して、今まで物々交換だった流通の流れを変える動きがありましたが、度重なる飢饉で貨幣の価値が極端に落ちた事と、流通させる貨幣が足りなくなったせいで物品貨幣(作者は自分がわかりやすいので物々交換と表記しています)が主流になった、作者は認識しています。
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