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六話 タスケテ

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「白いふっわふわ しーろーぱーん♪ 食べて美味しいしろぱーん♪」

町に向かう間、チカはずっと後方に控え黙々と歩いているたえに対してずっと声をかけ続けていたのですが、土下座をされ、ホトケサマと言われてからはずっと黙っています。

それ以降、まるで従者のようにふるまう姿に戸惑いながら、なんとか誤解を解こうと試みるチカでしたが、頑なに態度を変えないたえに挫折しそうです。

「私のような髪型や髪色の人は沢山いますし、ここでは当たり前の事です。私はギルドランキングが下の超初心者冒険者なので、わたしなんかよりももっともっーーーーーと強くて綺麗でかっこいい人は沢山いるんですよ」

「何度も言ってますが、私は神様ではないですよー。豊穣神様にちょっとだけ髪色が似てはいますけど、ごく普通の容姿ですし、そんな恐れ多い特徴なんてこれっぽっちもないですよー」

など、話せば話すほど自分自身が情けなくなっていきます。たぶん一生分の恥をかいているかも?と思いながら話すのですが、そんな話しは相手に全く届いていないようです。

「この日の本の国で、わたくしは金色の髪色の方を見た事ありません。あなたのような摩訶不思議な力も見たことがありません。そして、綺麗に伸びるその耳も仏様の使いである証拠なのではないでしょうか?なんと恐れ多い事でしょう」

「わたくしのような罰当たりに、そのような温かいお声をいただけるなんて…なんとありがい事でしょう…南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…」

と言われてしまう有様。

チカは、話せば話すほどドツボにはまって行く気がして、最後はもうやけになって歌いながらも彼女を見ます。

たえさんは、自身がヒノモトノクニというところから来た(今もヒノモトノクニにいると思っている)と言っているが、彼女が知っている限り、周辺の地域はおろか、国単位でもヒノモトノクニという名は聞いたことがありません。

そして、彼女が身に着けている大きな鎧や反り返ったロングソード(タチと言ってました)、そして同じく反り返った刃を持つ槍のような武器(ナギナタと言ってました)も見たことがなかった為、この人はきっととんでもないところから来たのだろうと思いながらも、思いは一つ。

「だれかーこの状況どうにかしてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

「タスケテード○エモーーーーーン・・・じゃなかった、ギルドマスター!!!!!!!!!!」


本当に早く城門が見えてくれないものかと、気まずい空気の中、少女は思う次第でした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「やっと着きました・・・」

あの気まずい状況から一時間ほど歩き、ようやく城門が見えてきた時、チカはすっかり燃え尽きていたのです。正直疲れ切ってしまったのです。

やけになって歌っていた美味しいものシリーズの歌も50曲を超え、自分の話がもはや自分がクエスト中にやってしまった失敗を含む自虐ネタになっていても、一向に表情を変えない同行者の様子に、もはや精魂使い果たしてしまったのです。

ふと、そんな同行者を見ると、そびえたつ城門を目の前にしてぽかぁんと口を開けて固まってしまっていました。

「この様に高くそびえたつ壁・・・見たことがありませぬ。石がこのように高く積まれ、崩れないのでありましょうか?」

たえの暮らしていた場所は川の近くにあったとある館。

背の高い大人よりかは少し高い木の板に囲まれた屋敷の入り口には物見やぐらがあり、中に入ると家人が住む母屋や蔵がありました。

子供だった たえはそんな屋敷を広く感じ、走り回っていた事を思い出していたのですが、目の前の石壁はその比較にならないほど高く長かった為、そのあまりの高さに唖然としてしまいました。

「このような摩訶不思議な光景が目の前に!やはり、私は死んでしまったのでありましょうか?仏様を信じぬ罰当たりなわたくしは、今からここで裁かれ地獄に落とされるのでありましょうか?」

そして、もはや少女には理解できない急展開な内容を話しながらガクガク震えてしまっているたえの変化についていけず、もはや理解の範囲を軽く飛び越えてしまっている内容に、チカは頭を抱えてこういうのでありました。

「タスケテード○エモーーーーーン」



※石垣は戦国時代までほとんどなく、土塁で城を固めていまして、本格的な石垣が出来たのは戦国時代らしいです。土で固めた壁が中世ヨーロッパの城並みに高く作れるとは思えないので、平安の方々は見たことの無い高い壁に「すっげぇ!」って驚いてしまうのでは?と思っています。
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