上 下
6 / 50

ファンタジーの国の人ですから

しおりを挟む
すっかり固まってしまった彼女を目の前にして、俺ら家族も固まってしまう。

さっきまで、美味しそうにうどんを頬張っていた彼女からは、想像できないほど険しい表情をされ、まるで俺が何か悪いことをしたのか?と錯覚してしまう。

どうにか、この空気を変えたくて話を振ってみる。

あのさ、気に障ることしてたら申し訳ない。もしよかったら、君の事を色々聞かせてもらえないかな?

そういうと彼女は、手に持ったフォーク置き、こちらを向いたかと思ったら、また床に手をついて土下座した。

「奴隷の私が、ご主人様と一緒のテーブルにつき、ご主人様を気にせず食事をしてしまい申し訳ありません」

「奥様、ご子息様を差し置いて、同じ食べ物を礼儀を無視して頬張りましたこと、誠に申し訳ありません」

そう言うと、テーブルにあったフォークを手に持ち、喉元に突き刺そうとしたので、慌てて取り上げる。

あまりに極端すぎる彼女を目の前にして、かなり驚きを通り越してドン引きしてる俺らがいるんだけど、本当、いったいどうしたらいいのかさっぱりだよ。

俺らは多少ファンタジー系の小説で耐性がある気がするんだけど、息子に至っては完全に固まってるから、早々に部屋に戻したんだ。冬休みの宿題もあるから丁度いいしね。

そんな訳で、彼女には椅子に座ってもらい、ホワイトボード片手にかみさんが前に座る。

「まずね、この世界に奴隷とかないから。必要以上に自分を下に見る事ないからね。自分を傷つけたり土下座するの禁止ね!」

とカミサン。
とりあえず、挙動不審になってる彼女は無視して、こちらから今までの経緯みたいなものを話をするんだけど、どうも緊張しすぎているようで、話が耳に入って行っていない感じがしてるので、こりゃどうにもならないなと思い、カミサンと顔を見合わせる。

「うん、いったんやめましょ!それよりもイデアちゃん、お風呂入って綺麗にしましょう!」

そういうカミサンの言葉に、俺も一度綺麗にしてもらったほうがいいよなと思ってたので、お風呂の準備などをし始める。

一応彼女にお風呂を見てもらって入り方がわかるか聞いたんだけど、彼女が来た世界にはお風呂が普及されてないようだったので、仕方がなくカミサンに一緒に入ってもらうことにしたんだ。

万が一の時に備えて声の聞こえる場所にはいるつもりなんだけど、こればっかは仕方がないよね。俺男なんだもん。

で、いざお風呂に入ってもらったらさ、カミサンと彼女の声が聞こえてくるのよ。

「お、お湯がいっぱいです!貴重な水を私ごときに使ってもよろしいのでしょうか?」

「お、お花の匂いがします!こんな高価なものを私がつかっても・・・」

「お湯の滝が・・・」

「柔らかい布で拭いても・・・」

・・・・・

・・・

・・

ごめん、もうお腹いっぱいです。

もう風呂に入ってから20分もしないうちに何回「私ごときに」なんて聞いたことか・・・

俺は外からたまたま聞こえてくるだけだけど、一緒に入ってるカミサンは本当にうんざりしてるんだろうなぁと、本当に申し訳ない気持ちになりながら、リビングでいろいろ片付けてたりお茶を入れていると、やっとカミサンとイデアが戻ってきたので、何気なくそちらの方向を見たらさ・・・

光輝く美少女がそこにいたんよ!!!

元から綺麗な女性だなとは思ってたんだけど、それよりもところどころにある傷や、苦痛にゆがむ顔をどうにかしたいと思ったのが先に来てたから、容姿についてはあまり考える余裕もなかったんだけど、こりゃ、街中に行ったら大変なことになるなって思ったんだよね。

清潔にしてるだけでもかなり美少女度が上がった気がするんだけど、なんだろう?なんか不自然な感じがするんだよな?何だろうなぁ?って思ってたらさ、後ろからカミサンがやってきて、かなり驚いた様子で彼女を見てるんだよね。

「信じらんないんだけど、身体洗ってるそばからどんどん傷が治っていってね、シャンプーとコンディショナーしてると、どんどん髪の毛につやが出てきて、どんどん美人さんになっていったのよ!入浴剤入りのお風呂に浸かってもらったらお肌もどんどんピカピカになって・・・もう、本当に羨ましいったらありゃしない!!!私もご利益にあやかりたかったよ!!!よよよよよ」

なんて泣き真似込みで力説してるし。

俺も最近肌のシミが・・・じゃなくて!とりあえず彼女と話をしたいなと思ったらね、

「私・・・どうしたら良いのでしょうか?」

と、 ボロボロ涙を流しながら、絶望に近い表情でこちらを向いていたんだ。

「私のようなものに、このような強力な薬や魔法を使っていただき、傷を直していただいたことに対して私は何もできません。私が今持っているものはこの体だけ。でも、この体でも払いきれないです・・・私、どうしたら・・・」 

それ見てたらさ、彼女がただただ不安だったんだなって気がついて、気がついたら俺ら、彼女を抱き締めてたんだ。

大丈夫、大丈夫。大した事してないから!

大丈夫、大丈夫!イデアちゃんが元気になれたならそれでいいの!

そう言ってる俺らの声に、まだまだ戸惑いを隠せない彼女だったんだけど、最初に比べて少しだけ表情が柔らかくなったように思え、冗談で

「だったら、とびっきりの笑顔を頂戴!」

なんて言ったらさ、ぎこちないけど笑顔を作ってくれた彼女。

こりゃ、まだまだ時間がかかりそうかな?とは思ったんだけど、先にはすすめそうかな?と思った今日この頃。

さて、これから何処までお話出来るかな?
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

処理中です...