35 / 50
ねぇちゃん(イデア視点)
しおりを挟む
「姉ちゃん、明日時間ない?」
そう、ゆうくんに誘われました。
あまりにぶっきらぼうだったので、ちょっとびっくりしましたが、考えてみたらゆう君はもう中学生。 こうやって言ってくれるのもきっととても恥ずかしかったのだろうと思います。
同郷の人と話をして、 色々思うところはありましたが、でも、あの世界に帰りたくないから、お父さんが私をあの世界に返したい、そう話した時は私はもう頭が真っ白になりました。
あれからお父さんとはちょっとギクシャクして、なかなか話ができてないです。
えっと、決して恨んでいるとかじゃなくて…
改めて、私はこの国の人じゃないんだ。
この国では、自分のしっぽや耳をかかせないと 違う人だと思われてしまうということを改めて気づかされた気がしたんです。
お父さんお母さんゆうくん
ショッピングモールの 会長さんや社員の皆さん、私と一緒に働いてくれた皆さん。
皆さんとても優しくて、私に丁寧に色々なことを教えてくれていたから、 忘れてはいなかったのですがそれが当たり前だと思ってしまっていた自分に気がついて、ちょっと反省しなければいけないと思ってしまいました。
元々私は獣人であり、人間の奴隷として生きてきました。
あの頃受けた傷はまだまだ消えないし、私の心の傷にもなっていますが、 そんな傷の上に優しさという絆創膏を貼ってくれて、 少しずつ中の傷を治そうと必死に頑張ってくれているお父さんお母さん達に、 私はすっかり甘えてしまっていたんでしょうね。
改めてこれでいいのかという風に思ってしまいました。
きっと色々考えすぎているのでしょう。
考えて考えて考えて、 気がついたら何を話せばいいかわからなくなって頭がぐるぐるになってしまった私を見かねて、ゆうくんが外に連れ出そうとしてくれたのが嬉しくて、私は少しおめかしをしました。
青いワンピースに麦わら帽子 小さめのポーチに動きやすいようなスニーカー。
少し色のついたリップクリームを口に塗り、 外に出るとゆう君が自転車に乗って私を待っていました。
短パンに柄物のTシャツ。
上に軽いパーカーを羽織ったゆうくんは、 私の格好を見てちょっと照れくさそうに目を背けながら ちょっと付き合ってよと自転車を走らせます。
「どこに行くの?」
「内緒!」
そんな短い会話をしながら自転車で走ること1時間ぐらいかな? 途中でコンビニでお茶などを買いながら二人でのんびり走っていると、 目の前に見えたのは海岸沿いに建てられた高いタワー。
ゆう君は「中に入ろう」と私の手を取って受付に行き、自分の小遣いでチケットを買うと私に渡してきました。
私も自分で稼いだお小遣いやお父さんお母さんからもらったお小遣いもあるのでゆうくんにチケット代を渡そうとすると「いらない」と言われてしまいました。
案内の人と一緒にエレベーターに乗り、観光案内を聞きながら上に上がると、 目の前に現れたのは自分たちのまちや 近くにある海の様子そして少し離れたところに見えるのは 富士山や東京スカイツリー。
ちょっと周りを見ると親子連れや 男の人女の人若い人が多く、 みんながみんな周りを見てすごいねとか高いね!など楽しそうにしているのが見えました。
「姉ちゃんさ、」
ふと、ゆう君が声をかけてくれたので、ん?とそちらを向くと、恥ずかしそうに顔を背けながらも、ぽつりぽつりと話をしてくれました。
「分かってるかもしれないけど、父さんや母さん 俺もな、姉ちゃんのことを大切にしたいと思ってるんだ」
「だけどねーちゃんにはすごく不思議な力があるじゃん、尻尾や耳あるじゃん。 俺はそんなの全然気になんないけど気にしてる人は気にしちゃうんだよね」
「悪い人が気にしちゃったら、きっと姉ちゃんまたひどい目に合うって、 父さん母さんすごい気にしてて心配してていろんな人に相談してるんだ」
「この前会長さんの所にも行って、色々話ししてたから、 多分会長さんも姉ちゃんのことすごい気にしてくれてるんじゃない?」
「だけどそれでも庇いきれなかったら、姉ちゃんはまたあの世界に帰らなきゃいけないんだ、 その時にまたひどい目に合わないように、あっちの世界でもいろいろ出来ないか?って、父さんいつも悩んでる」
「だからね、できたら父さん、母さんの事嫌いならないでほしいな…俺も姉ちゃんの事好きだから、一生懸命出来ることやるからさ!」
そう言うと、真剣な目をして私に頭を下げてきたゆうくん。
それを聞いて、私は目に熱いものを感じました。 私より年下のゆうくんでも、こんなに考えてくれてることが嬉しくて、思わず抱き締めたら、「恥ずかしいよ」とすぐに離れてしまったのは、お姉さんとしてはちょっと寂しかったな。
私もいつまでもこの楽しい生活を見ているだけじゃなくて、将来どうしたいかというのも考えなきゃいけないな。
私が近い将来、あの世界に戻ることがあっても、笑って生きていけるように、私自身で何とかしなければいけないって、360度に広がるパノラマの中で考えた私でした。
このまま帰るのもつまらないので、この後はゆう君にデートに付き合ってもらおう。
タワーの下にある浜で海を楽しんで、ちょっと離れたショッピングモールで美味しいものを食べて、少し得意になった洋服選びも付き合ってもらって… ゲームセンターでゲームをする。
当たり前じゃないことが当たり前になった今、私ももう少し成長しなきゃいけないなと感じた今日この頃。
帰ったら、お父さんお母さんゆうくんに『ありがとう』と言おう。今までもらった一杯の暖かさを、ありがとうで埋めよう。
そこから始めよう。
うんそうしよう。
※ 久々の更新になりまして申し訳ありません。
職場が住居からかなり離れてしまいなかなか PC の前に立って作業することができずにいました。
最近やっと書きたいという気持ちが、疲れを上回ってきたので、 リハビリと言うわけではありませんが色々書いていこうと思いました。
「平安女子は異世界の夢を見る」という作品も同時進行で書いています。ストックがほとんどないのですが、ゆっくり書いていこうと思っています。
楽しさを一番に、なるべくわかりやすく、でも思いのこもった先を変えていければと思っていますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
とうちゃんすらいむ
そう、ゆうくんに誘われました。
あまりにぶっきらぼうだったので、ちょっとびっくりしましたが、考えてみたらゆう君はもう中学生。 こうやって言ってくれるのもきっととても恥ずかしかったのだろうと思います。
同郷の人と話をして、 色々思うところはありましたが、でも、あの世界に帰りたくないから、お父さんが私をあの世界に返したい、そう話した時は私はもう頭が真っ白になりました。
あれからお父さんとはちょっとギクシャクして、なかなか話ができてないです。
えっと、決して恨んでいるとかじゃなくて…
改めて、私はこの国の人じゃないんだ。
この国では、自分のしっぽや耳をかかせないと 違う人だと思われてしまうということを改めて気づかされた気がしたんです。
お父さんお母さんゆうくん
ショッピングモールの 会長さんや社員の皆さん、私と一緒に働いてくれた皆さん。
皆さんとても優しくて、私に丁寧に色々なことを教えてくれていたから、 忘れてはいなかったのですがそれが当たり前だと思ってしまっていた自分に気がついて、ちょっと反省しなければいけないと思ってしまいました。
元々私は獣人であり、人間の奴隷として生きてきました。
あの頃受けた傷はまだまだ消えないし、私の心の傷にもなっていますが、 そんな傷の上に優しさという絆創膏を貼ってくれて、 少しずつ中の傷を治そうと必死に頑張ってくれているお父さんお母さん達に、 私はすっかり甘えてしまっていたんでしょうね。
改めてこれでいいのかという風に思ってしまいました。
きっと色々考えすぎているのでしょう。
考えて考えて考えて、 気がついたら何を話せばいいかわからなくなって頭がぐるぐるになってしまった私を見かねて、ゆうくんが外に連れ出そうとしてくれたのが嬉しくて、私は少しおめかしをしました。
青いワンピースに麦わら帽子 小さめのポーチに動きやすいようなスニーカー。
少し色のついたリップクリームを口に塗り、 外に出るとゆう君が自転車に乗って私を待っていました。
短パンに柄物のTシャツ。
上に軽いパーカーを羽織ったゆうくんは、 私の格好を見てちょっと照れくさそうに目を背けながら ちょっと付き合ってよと自転車を走らせます。
「どこに行くの?」
「内緒!」
そんな短い会話をしながら自転車で走ること1時間ぐらいかな? 途中でコンビニでお茶などを買いながら二人でのんびり走っていると、 目の前に見えたのは海岸沿いに建てられた高いタワー。
ゆう君は「中に入ろう」と私の手を取って受付に行き、自分の小遣いでチケットを買うと私に渡してきました。
私も自分で稼いだお小遣いやお父さんお母さんからもらったお小遣いもあるのでゆうくんにチケット代を渡そうとすると「いらない」と言われてしまいました。
案内の人と一緒にエレベーターに乗り、観光案内を聞きながら上に上がると、 目の前に現れたのは自分たちのまちや 近くにある海の様子そして少し離れたところに見えるのは 富士山や東京スカイツリー。
ちょっと周りを見ると親子連れや 男の人女の人若い人が多く、 みんながみんな周りを見てすごいねとか高いね!など楽しそうにしているのが見えました。
「姉ちゃんさ、」
ふと、ゆう君が声をかけてくれたので、ん?とそちらを向くと、恥ずかしそうに顔を背けながらも、ぽつりぽつりと話をしてくれました。
「分かってるかもしれないけど、父さんや母さん 俺もな、姉ちゃんのことを大切にしたいと思ってるんだ」
「だけどねーちゃんにはすごく不思議な力があるじゃん、尻尾や耳あるじゃん。 俺はそんなの全然気になんないけど気にしてる人は気にしちゃうんだよね」
「悪い人が気にしちゃったら、きっと姉ちゃんまたひどい目に合うって、 父さん母さんすごい気にしてて心配してていろんな人に相談してるんだ」
「この前会長さんの所にも行って、色々話ししてたから、 多分会長さんも姉ちゃんのことすごい気にしてくれてるんじゃない?」
「だけどそれでも庇いきれなかったら、姉ちゃんはまたあの世界に帰らなきゃいけないんだ、 その時にまたひどい目に合わないように、あっちの世界でもいろいろ出来ないか?って、父さんいつも悩んでる」
「だからね、できたら父さん、母さんの事嫌いならないでほしいな…俺も姉ちゃんの事好きだから、一生懸命出来ることやるからさ!」
そう言うと、真剣な目をして私に頭を下げてきたゆうくん。
それを聞いて、私は目に熱いものを感じました。 私より年下のゆうくんでも、こんなに考えてくれてることが嬉しくて、思わず抱き締めたら、「恥ずかしいよ」とすぐに離れてしまったのは、お姉さんとしてはちょっと寂しかったな。
私もいつまでもこの楽しい生活を見ているだけじゃなくて、将来どうしたいかというのも考えなきゃいけないな。
私が近い将来、あの世界に戻ることがあっても、笑って生きていけるように、私自身で何とかしなければいけないって、360度に広がるパノラマの中で考えた私でした。
このまま帰るのもつまらないので、この後はゆう君にデートに付き合ってもらおう。
タワーの下にある浜で海を楽しんで、ちょっと離れたショッピングモールで美味しいものを食べて、少し得意になった洋服選びも付き合ってもらって… ゲームセンターでゲームをする。
当たり前じゃないことが当たり前になった今、私ももう少し成長しなきゃいけないなと感じた今日この頃。
帰ったら、お父さんお母さんゆうくんに『ありがとう』と言おう。今までもらった一杯の暖かさを、ありがとうで埋めよう。
そこから始めよう。
うんそうしよう。
※ 久々の更新になりまして申し訳ありません。
職場が住居からかなり離れてしまいなかなか PC の前に立って作業することができずにいました。
最近やっと書きたいという気持ちが、疲れを上回ってきたので、 リハビリと言うわけではありませんが色々書いていこうと思いました。
「平安女子は異世界の夢を見る」という作品も同時進行で書いています。ストックがほとんどないのですが、ゆっくり書いていこうと思っています。
楽しさを一番に、なるべくわかりやすく、でも思いのこもった先を変えていければと思っていますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
とうちゃんすらいむ
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

無能と呼ばれた魔術師の成り上がり!!
春夏秋冬 暦
ファンタジー
主人公である佐藤光は普通の高校生だった。しかし、ある日突然クラスメイトとともに異世界に召喚されてしまう。その世界は職業やスキルで強さが決まっていた。クラスメイトたちは、《勇者》や《賢者》などのなか佐藤は初級職である《魔術師》だった。しかも、スキルもひとつしかなく周りから《無能》と言われた。しかし、そのたったひとつのスキルには、秘密があって…鬼になってしまったり、お姫様にお兄ちゃんと呼ばれたり、ドキドキハラハラな展開が待っている!?

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる