ちっちゃなメイドが世界を救うハメになりました。

ネコヅキ

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一章 そうだ。龍に会いに行こう。

二十 穴と氷の女王。

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 お昼を済ませ、再び先の見えない氷の階段を登り始めたカリン達一行。今度は始めから黒龍にお姫様抱っこをされているエリザ王女のお陰で、なかなかのペースで登ってゆきます。抱っこされて楽な筈のエリザ王女ですが、終始うつむき加減で頭の中では、お嫁がどうこうと葛藤が続いている様です。そして三つ目の踊り場に着いた一同は、唖然としてその光景を見ていました。

「な、なんだ……? こりゃ」

「人……?」

 広さの比較として良く登場を果たす某ドームには全く届かないものの、それなりの広さの踊り場には幾つもの氷柱が床から生えだしていて、その中では黒いローブを着込んだ人が氷漬けになっていました。

「これ……魔王崇拝者達ですね」

 運命の島デスティニー・ランドで見た魔王崇拝者と同じ服だと、エリザ王女は結論付けました。

「奴等、こんな所にまで来てやがったのか」

 辺りをよくよく見れば、ここで何者かと戦闘になったようです。氷の壁には焦げた跡があちこちにあり、踊り場の中央には大きな穴まで開いています。

「ん?」

 カリンは小さく声を上げて首を傾げました。

「どうした? カリンちゃん」

「誰か何か言ったでちか?」

「いや、誰も変な事は言ってないと思うが。何か聞こえたのか? カリンちゃん」

「なんか悲鳴というか、助けを乞うような声が聞こえた気がしたでち」

「助け……ですか? そうですわ」

 エリザ王女は手の平をポン。と、合わせます。カリンは『風』の属性を持っていて、その為常人よりは性能の良い耳をもっています。そんなカリンが、気がする。と、言うのですから、気の所為では無いとエリザ王女は思ったようです。

「シルビアさん。こんな時こそあなたの出番ですわ」

 エリザ王女の言葉に皆からの視線を注がれて、シルビアは一瞬たじろぎました。

「は、はいっお姉様っ! ……で、一体何をすれば……?」

 ガクリ。と、エリザ王女は新喜劇ばりのズッコケを披露しました。

「まったくもう。あなたの魔法を使って声を拾って下さい。と、言っているのですわ」

 ドジっ娘で間抜けっ娘な元メイドのシルビアですが、実はこう見えても魔法が使えるのです。

「はいっ」

 返事だけは元気です。

「えーっと……?」

「音拡張の魔法を使って下さいね。ホラ、手を前に出して」

 エリザ王女はシルビアの後ろに立ち、腕を回してシルビアの腕を真っ直ぐになる様に支えました。

「か、拡張せよ。拡張せよ。儚く――(うわー、お姉様のお胸が私の背中に。マシュマロみたいに柔らかいぃ)」

 魔法の発動には、呪文の詠唱と共にイメージが非常に大切です。しかし、シルビアの頭の中では二つの大きなマシュマロがクローズアップされてしまった為に、手の平に集まっていた淡い空色をした魔力の塊が、ぽふん。と、霧散しました。

「コラ、集中しなさい」

「(ムリムリムリ、無理だよぅ。だって、大きくって柔らかくってほんのり温かいんだよ?)」

 疑問形で思われても困ります。

「九十一のお嬢さん。あなたが立派な胸を押し付けているから、そちらの八十のお嬢さんが困った風で嬉しそうにしているのですよ」

 黒龍に言われて、エリザ王女はシルビアから一歩身を引きました。どうやら王女は、二センチルメトのバストアップをした様です。そしてシルビアのバストサイズは八十であると判明した瞬間でした。

「ちちち違います、誤解ですよ! 私は、お姉様のお胸は柔らかくって気持ち良い。とか、もっと息を吹き掛けてぇ。とか、なんか良い匂いがするぅ。とか、絶対に思ってませんからっ!」

「……シルビア、ダダ漏れでちよ」

「えっ!?」

 慌てて言い繕ったシルビアですが、頭の中で思っていた事を全部口に出してしまい、一同は彼女から一歩遠ざかります。それと、息や胸の柔らかさはともかく、匂いはアンモニア臭かと思われます。

「な、なんてな……」

 シルビアは、明後日の方向に視線を向けてマギムネのマネをしましたが、場に静寂と冷たい風が吹いただけでした。

「どうでも良いけど、さっさとやってくれないと先に進まんぞ?」

 ミュウは腰に手を当てて、脱線しまくった話を元に戻します。カリンもやれやれ。と、いった風で首を横に振ります。急き立てられたシルビアは慌てて呪文の詠唱を始めました。

「か、拡張せよ、拡張せよ。儚く誰にも届かぬ声よ。もたらせ、齎せ。その声が我らに届く様に……拡声器メガ・フォン!」

 シルビアの手の平に生まれた空色の塊が一際輝くと、その塊からこの場には居ない誰かの声が聞こえてきました。それはカリンが言っていた様に助けを乞うもので、魔術が不完全なのかは分かりませんが、音拡張の呪文を用いても微かに聞こえるモノでした。

「やっぱり、何処かで誰かが助けを呼んでいますわね……恐らくは、アソコですわね」

 エリザ王女の指差す方向には、戦闘で開いたと思われる大きな穴がありました。エリザ王女以外の一同が穴を覗き込みますが、その底は見えない程深いモノでした。

「コレ、相当深いぜ? どうするよカリンちゃん」

「私が持っている縄ばしごでも無理そうですね」

 『何処からともなく』に色々なモノを隠し持っている黒龍ですが、流石に底まで届く様な品物は無いようでした。

「そうでちね。ミュウ、翼だけ出して下まで降りられまちか?」

 カリンはエルフリート王国に入り込んでいた魔王崇拝者、ロディとの戦いの事を思い出しました。あの時ミュウは、背中から翼だけを生やして空を飛んでみせたので、完全龍化しては入っても出て来れない穴でもイケる。と思ったのです。

「行けなくはないですね」

「じゃあ、底まで行って誰か居たなら、引っ張り上げてきてくれでちよ」

分かりましたご主人様イエス・マスター。では、力を貰います」

 言ってミュウは、しゃがみ込んでカリンに抱きつきました。途端、身体からナニカが吸い取られる様な感覚に見舞われ、軽い目眩がカリンを襲います。カリンのちっちゃな身体を堪能した。と、言わんばかりの笑みを浮かべたミュウは、『行ってきます』と告げて穴の中へとその身を躍らせたのでした。



 ミュウが穴の中へ消えて暫し、戻ってきたミュウは一人の女性を抱えていました。身に纏う白いドレスはあちこちが焦げて破れています。擦り傷や切り傷はエリザ王女の回復魔法で塞がりましたが、破れた衣服は元には戻りません。

「む! この方は……!」

「なんだ黒龍。コイツを知っているのか?」

「いえいえ。名は知りませんが、八十八である事は分かりますふれっ!」

 ゴスリ。と、ミュウの拳が久々に黒龍の頭を撃ち抜きます。彼が分かったのは胸のサイズだけでした。 

「エロいカッコウだが間違いないのぅ」

「では、この方が氷の女王エリッサさんなのですね」

 エリザ王女は野晒しになっているエリッサの下乳を、毛布で隠しながら言いました。

「んー、ん? ここは……」

「お、目が覚めたみたいだゼ」

「みょぎぇっ!」

 お店のマスターの言葉を聞いて皆が彼女を覗き込むものですから、距離的圧迫に驚いて奇妙な声を上げながらズサササッ。と、その場から飛び退く結果となってしまいました。

「オマエラ、ヨクモウチヲ穴ノ底ニ落トシヨッタナ!」

 発した言葉は何故か片言でした。

「それは言い掛かりじゃのぅ。儂等はあんたに用があって登って来たんじゃのぅ」

「ナニ?! ア……オ前ハマギムネ!」

「氷の女王エリッサ、一体何があったんじゃのぅ」

「理由ヲ話ス前ニ……何カ食ベ物ヲクレ」

 ぐぅぅぅ。と、大きな腹の音が辺りに響き渡りました。はい。と、お店のマスターが差し出した食べ物を奪う様にして、そのまま口に放り込みます。

「コレ、甘ぅて大変美味しおすなぁ、身体の疲れも何処かへいってはりましたわぁ」

 先ほどの片言とは打って変わって、流暢に話し始めたエリッサです。京都弁風に聞こえますが、実際は精霊語で話しています。

「ワッフルのはちみつ漬けさ」

 お店のマスターは人気洋菓子店のマスターですので、レモンではなくワッフルなのですが、ヨレヨレの流動食に近いシロモノになっていました。

「それでじゃのぅ、一体何があったのか教えてほしいのじゃのぅ」

 エリッサはビシッと氷柱に向けて指を差しました。

「ふがふごうふぐぐ!」

「いや、食べ終わってからでいいでちよ」

 リスの様にほっぺたを膨らませたままではロクに言葉も発せません。エリッサは、はちみつに浸かってユルユルになっているワッフルを、差し出された飲み物でギョグリッと飲み込みました。

「ふぅ、ほんまに助かりました。おおきに」

「それでエリッサ様。一体何があったのですか?」

 エリザ王女がそう言うと、エリッサは再び氷柱に向けて指を差しました。

「コノ者達ガ私ニ生意気ナ口ヲキクモンダカラ――」

「氷の女王エリッサ、少し落ち着くじゃのぅ。あんた、頭に血が上ると言葉が分かりづらくなるんじゃのぅ」

 マギムネはどうどう。と、両手でジェスチャーをしてみせました。

「えろぅすんまへん。それもこれも、この者達が生意気な口をきくさかい……」

 氷の女王エリッサの話によると、突然やって来た黒装束の者達は、事もあろうに魔王復活の為にその首を差し出せ。と、言ってきたそうです。激怒したエリッサは、居城を取り囲む魔王崇拝者を薙ぎ払いながらここまで追い詰めたのですが、魔王崇拝者の一人の苦し紛れに放った、大地に穴を穿つ魔法によって床に大穴が開いてしまい、氷結魔法は空に向かって放たれてしまったそうです。結果的に魔王崇拝者の残党は氷漬けとなりました。

「そりゃあ、女王様じゃなくても怒るわな」

「そうでちね」

 カリンとお店のマスターは腕を組みながら頷いていました。

「ところでマギムネはん。この者達は一体何者なんどす? 人にフェリング、それに龍までるなんて……」

「オマエ、我々の事が分かるのか?!」

「そりゃ、これでも妖精界の女王どす。お二方のただならぬ気配、気付かなくてどないしはりますの」

 ソレに気付いていないのはカリン達だけで、野生の動物や弱い魔物達は龍の気配を察知して近寄ろうともしません。雪中行軍中に一度襲われましたが、あれは腹が空き過ぎてヤケクソ気味で襲いかかったのです。

「そういえば、ウチに用があると言われとったけれど、一体どないな用件どすか?」

「下の街がカチカチなんじゃのぅ。どうにかして欲しいんじゃのぅ」

「そうどすか。下の街まで凍り付いてしもうたんどすな。そりゃえろぅ悪い事をしましたなぁ。せやけど、このまま解く訳にもあきまへん」

「魔王崇拝者の残党でちね」

 カリンの言葉にエリッサはコクリ。と、頷きます。

「そうどす。あの者達の処遇を決めてからでなければ、解く訳にはあきまへんよ」

「じゃあさ、ここに穴があるんだし、捨てちゃえば?」

 皆が一斉にシルビアの方を見たので、シルビアは一瞬たじろぎました。

「シルビアさんって、時折恐ろしい事を口にしますわね」

「え? ダメなんですかお姉様」

「ダメというか、この穴結構な深さが有りますわよ。そこに落とせばどうなるか? 分かって言ってます?」

 釘が打てるバナナの様にメタノールで冷却した訳では無いので、液体窒素に漬けた薔薇の様にワシャン。と、粉微塵になる事は疑い無いです。

「良い事おっしゃりますなぁ、シルビアはん。どのみちこの者達の死刑は確定、ならば身体が粉々になろうとも構やしまへんやろ?」

「え……? エリッサ様?」

「エリザ。わたち達が口を出す事じゃないでちよ。襲われたのは氷の女王エリッサなんでちから、彼女の判断に任せるべきでち」

「しかし……いえ、そうですわね。エリッサ様にお任せしますわ」

 エリザ王女には思う所がある様ですが、相手は女王の命を取りに来た者達ですので、相応の報いがあって然るべきなのです。

「ほな、らせて貰います」

 エリッサが指先をクイっと上に向けると、穴から氷漬けになっている魔王崇拝者達の足元へと氷のレールが現れ、そのレールを滑る様にとぅるんっ。と、穴へと落ちてゆきました。

「ふぅ、これでスッキリしましたわぁ。それにしても、魔王あないなモンを復活させようなんて、阿保な事考えるヤツもるんやね」

 幾ら祈っても神様は何もしてくれないから魔王に叶えてもらおう。という、楽観主義の連中です。

「もし、復活してしまったら一体どうなるんですかい?」

「そんなん決まっとります。世界の破滅どすえ」

 即答したエリッサ女王の言葉に、質問をしたお店のマスターは固唾を飲み込みました。

「とにかく、これで氷漬けになっとる街も元に戻せるんじゃのぅ。早いトコお願いしたいんじゃのぅ」

「そうでしたなあ、それじゃ早速」

 エリッサはカリン達から数歩離れると振り向き、カカッとヒールを鳴らしてカルメンのポーズを取りました。そして、カカッカッカ。と、しばし踊った後に、オーレッ。と、言わんばかりの決めポーズを取って、手を二回叩きます。

「これで解氷出来た筈どすえ」

 カリン達一同にホッと安堵のため息が漏れました。

「良かった。これで装備が整えられるな」

 お店のマスターの言葉にミュウも頷きます。

「ああ、これで温泉に入れる」

 エンシェントドラゴンであるミュウは、装備よりも温泉なのです。

「ところで、マギムネはんはともかく、他の人達はこないな場所に何しに来はったん?」

 カリンはこれまでの経緯とこの地に来た理由をかいつまんで話しました。

「そりゃあ難儀どすなぁ。せや、助けて貰うたお礼もあるさかい、ウチへ来て休んだらええどすわ。美味しい食事と温泉もありますぇ」

「美味しいものっ」

「温泉っ」

 シルビアとミュウの目がキラキラと輝き始めました。

「そうでちか、だったらお呼ばれするでちよ」

 陽も暮れ掛かり、街に戻るのもそれなりに時間が掛かると判断したカリンは、氷の女王エリッサの居城にお呼ばれする事となりました。



「ふぁわぁ、おっきぃ」

 エリッサの居城へとやって来たカリン達。シルビアは雲海の中に聳え立つ、氷のお城を見上げて驚いて声を上げました。

「景色も素晴らしいですわ」

 日中は真っ白な雲も、夕焼けによってオレンジ色に染まり、普段は空と同じ様な青い色をした氷の城までオレンジに染まっていて、幻想的な景色を一同に見せていました。

「そうだな、まるでポンカーン果汁の海みたいだゼ」

 『ポンカーン』というのは、ミカンと思って頂いて差し支えありません。

「全く、風情ムードもへったくれもありませんわね……」

 呟くエリザ王女にお店のマスターの頭の上には、はてなマークが浮かんでいたのでした。

 ガチャリ。ギギギ……。と、それなりに大きな扉が開かれると、カリン達一同は目を見張ります。

 淡い青の床や壁、敷かれた真っ赤な絨毯。水晶のシャンデリアが天井から垂れ下がり、氷とも水晶ともつかない調度品が並びます。エリザ王女の居城であるエルフリート王城よりも煌びやかでした。そしてそれ以上に驚いたのが、ズラリと並ぶ使用人達の姿です。

 執事バトラーの格好をした者、メイド服に身を包む者。元使用人として、その姿に見慣れたカリンとシルビアですが、それを着こなしている者には驚きました。

「う、ウサギ!?」

 そうです。ズラリと並んだ使用人達の全てがウサギだったのです。強いて言うなら、八頭身のピー◯ーラビットです。

『お帰りなさいませ女王様』

 ◯ーターラビット達がエリッサに向かって恭しくお辞儀をします。

「うむ。この者達は客人やさかい、存分に持て成しておくれやす」

「畏まりました。すぐにお食事のご用意を整えます」

「ウチはやる事があるさかい、先にお風呂にでも入ってゆっくりしてておくれやす。ほな食事の席で」

 そう言ってエリッサは二階の階段を上って行きました。

「それではお部屋へご案内します」

 その場に残されたカリン達は、メイドのピーター◯ビットに案内されて客室の前に立ちます。

「こちらがご婦人方のお部屋『白兎はくとの間』。そして、お隣が殿方のお部屋で『黒兎こくとの間』となっております。テーブルに置かれたベルを鳴らして頂ければお茶などをお持ちしますので、お気兼ねなくお申し付け下さい」

 メイドのピーターラ◯ットはペコリ。と、一礼すると、元来た道を戻って行きました。

「あの対応の仕方は素晴らしいものでちね」

 元メイドであるカリンも頷く対応でした。

「誰かさんに彼女の爪の垢でも飲ませてやりたいでちよ」

 ドジっ娘で間抜けっ娘なその誰かさんは、そんな事を気にも止めずに室内でワーワーキャーキャー。と、はしゃいでいます。その姿にカリンは深い、それは深いため息を吐いたのでした。



「さあっ我がご主人様マイ・マスターっ。お風呂に参りましょうっ」

 お店のマスターとマギムネは、口に含んでいたお茶をぶふぅ。と、吹き出しました。それもそのはず、目を輝かせながらカリンをお風呂に誘ったミュウは、一糸纏わぬスッポンポンだったのです。ちなみに、大事な所は差し込む光や観葉植物等で隠れていますので安心です。

「ミュウ」

「はいっ、何ですかご主人様マスター?」

「取り敢えず服は着るでちよ」

「全く、人の事をエロだの何だのと言っている割には、ご自身が破廉恥ではありませんか」

「んんー? なんだエロザ。お前も脱げ脱げぇっ」

「え……? きゃあぁっ!」

 ぶぶぅっ。お店のマスターは、今度は鼻血を吹き出しました。ミュウの隙を突いた脱衣術に、エリザ王女の双丘がポロリたゆん。と、すれば、鼻から液体を飛ばしまくってしまうのも無理ありません。

「マギムネ、今飲んでるソレは何でちか?!」

「んん? ミルク・・・ティーじゃのう」

 それを聞いてカリンはやっぱりか。と、思いました。エンシェントドラゴンであるミュウは、ミルクで酔ってしまうのです。以前も、風呂上がりの一杯の牛乳で酔っ払った事がありましたので、それ以降乳製品が入った食べ物を避けていたのですが、これは流石のカリンも盲点でした。

「ミュウ! お座りでち!」

 カリンの叱咤に、嫌がるエリザ王女をなおも追い掛けていたミュウは、その場にペタン。と、正座します。流石に契約を交わした主人マスターには逆らえない様でした。そして、そのとばっちりを食ったのがお店のマスターです。

「あ、あのぅ。目のやり場に困るんだが……」

 ミュウがお座りをした場所はお店のマスターの目の前でしたので、マスターはチラリチラリ。と、目標ダイナマイトバディをセンターに入れてロックオンしてはその照準を逸らし続けていました。

「全く、黄龍は相変わらずですね」

 言いながら黒龍は、『何処からともなく』から取り出した毛布をミュウに掛けてあげました。

「ちょっと隣の部屋を借りますね。黄竜を正気に戻しますので」

 そう言ってミュウを立たせて歩かせます。

「黒龍さん」

「何でしょう? カリンさん」

「ちゃんと避妊するでちよ」

 カリンの言葉に黒龍は親指を立てて、素晴らしい、それはとてもとても素晴らしい笑顔で応えたのでした。
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