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百四十九

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「皆の者っ! 此度の祭りによく集まってくれたっ!」

 下層と中層とを隔てる城壁の上で、白い法衣を身に纏い頭に赤の冠を乗せた一人の男が叫ぶ。

 叫んだ声は何かの魔術の効果によって街中に響き渡り、街の外周に程近いオジサマのお店でもよく聞こえた。

「こうして宴を開く事が出来たのも、全ては皆の者の頑張りがあったからに他ならない。我、オドリック=アリエス=ティアリムは皆に感謝したい。故にっ、日をまたぐまで僅かだが、今より全ての飲食物を、我等かん十二位が持つっ! 共に豊穣の女神に感謝を込め、祭最後の夜を過ごそうではないかっ!」

 街が叫んだかの様に声が上がった。え、おごり?! 流石王様太っ腹っ!

 ただ、『かん十二位が持つ』って所で、『ちょ、お父様!?』という、マリエッタ王女の慌てた声が聞こえたんだけど……。あのオッサン、また予定に無いサプライズをやらかしたな。タダで飲み食い出来るとあって異常な盛り上がりをみせる人達に、今更ウソでした。とは言えないだろう。

「お疲れ様で御座いましたお姉様」
「リリーカさんもお疲れ様。色々な事があったけれど、丸く収まって良かったね」
「いえ、そうとも言えませんわ。必要以上にお姉様に負担が掛かってしまいました。申し訳御座いません」

 リリーカさんは私に向かって深々と頭を下げた。私はその頭にソッと手を乗せる。

「負担なんてとんでもない。大切な親友を魔の手から救えたのだから、アレくらいなんでもないわ。それに、リリーカさんだって私の事を救ってくれたじゃない? だからこれでお相子あいこ
「しかし、お姉さ――」

 言い掛けたリリーカさんの唇を、人差し指で押さえて言葉を遮る。

「それ以上言ったら、アレを返して貰うからね」
「そ、それは困ります。アレはお姉様とわたくしの婚約の証」

 私じゃなくてエセ貴族カーン君とのでしょ。

「アレは今日から我が家の家宝なのですから」
「あらあらまあまあ。カナちゃんおばさんね、孫は男の子と女の子が良いわぁ」

 おばさん。私、女ですからねっ!?



 翌朝。外から聞こえる人の声。馬のいななきと重そうに響く荷台の音で目が覚めた。

 大きく伸びをしてからベッドから降り、瞑想をする為に個室へと向かう。白磁の器に腰掛け、目を瞑る。力を抜くとすぐに、アレを押し退ける様にして我が子が顔を出し始める。鼻を擽ぐる独特な香りを強制的に堪能しつつ開放感の余韻に浸った。

「よし!」

 今日も忙しいぞ。と気合を入れ、パンツを引き上げて勢い良く個室のドアを開ける。それに驚いた『リンクス』が、慌てて逃げ出していった。
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