上 下
147 / 235

百四十七

しおりを挟む
 『ウソを見破る魔導具』を借りる為、衛兵詰所へとやって来た私達。詰め所前で警備をしている衛兵さんにリリーカさんが話をすると、衛兵さんは奥へと引っ込んでいった。程なくして、韓流ドラマで見る様な匠な装飾が施された鎧をガチャ付かせながら、二十代後半であろう男の人が現れる。かん八位のフレッド=アクラブ=ウォルハイマーさんだ。

「あら、イイ男じゃない……」
「結婚しているそうですよ」
「一夜だけなら問題無いわよ」

 大アリですがな。

「ご機嫌麗しゅう御座います『リブラ』様。お見事な勝利でしたね」
「先程はご助力頂き感謝に絶えません。有難う御座いました」
「なんの、あれくらいお安い御用ですよ。私とて、彼に含む所が多々ありますし」

 まあ、あんな性格じゃ好かれる事も無いわな。

「あのフレッド様。あの後一体どうなりましたか?」

 私とリリーカさんは逃げる様に退出してしまったが、フレッドさんはその場に残っていた。ドアが閉まる間際に、王女に向かって声を荒げたフォワールが気になる。

「あの後ですか……正直、宜しくありません」

 声を荒げて言い寄るフォワールに、王女は権力で以って諌めたのだという。その後、尚も食い下がるフォワールに嫌気が差し、王女はそのまま退出してしまったそうだ。

「王女殿下や上位貴族の人達の手前納得はしていましたが、それも恐らくは表面上の事。その身の内では憎しみの炎が渦巻いているやもしれません」

 惜しい所まで競ったのだから、それで満足してくれれば良かったんだけど……粘着か。

「そういう訳でして、注意をするに越した事はありませんよカーン殿」

 私を見つめてフレッドさんは言った。そう言われてもなぁ……

「御免なさいお姉様。わたくしが矢面に立って、お姉様は立たさないつもりでしたが、姫様の余計な手出しでお姉様まで……」

 今にも泣き出しそうな表情で、リリーカさんはシュンとして俯く。その頭にポン。と手を置いた。

「心配しないでリリーカさん。私なら大丈夫よ」
「その自信は何処から来るのよ」

 腰に手を当てたルリさんが、険しい表情で言う。

「貴族でもなければ冒険者でもない。何の力も持たないただの一般市民が抗えるとでも?」

 ルリさんの言う通りに、剣術が達者な訳ではないし魔術も全く知らない。戦う力が皆無な私が持つ唯一の能力は、アレが鉱物になるのと不老不死なだけだ。

「だから、私と旅に出ましょ?」
「へ……?」

 アンタ、まだ諦めて無かったんかいっ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。

黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。 実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。 父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。 まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。 そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。 しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。 いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。 騙されていたって構わない。 もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。 タニヤは商人の元へ転職することを決意する。

へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します

如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい 全くもって分からない 転生した私にはその美的感覚が分からないよ

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...