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百八

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「……はあ」
「あれ、反応が薄いわね」

 そりゃまあ、二度目ですからね。

「それで姫様。お姉様は何方と決闘をなさるのですか?」
「え……?」

 決闘する事は既に決定済み!? 私の意志は?!

「決まっているじゃないですか。フォワール卿とですよ」
「やっぱりそうですか……」
「けけけ決闘。って言われましても私、戦いなんてからきしですよ?!」

 平和な日本で生まれ育った、温室育ちの華麗な花なんだから。……まあ、『女の戦い』なら一回だけ。

「安心して下さいな。誰も剣を振り回せなんて、野蛮な事は言ってませんよ。……面白そうではあるけど」

 ボソリ。と呟いた言葉が耳に届く。おいっ!

「戦いの経験が無くても、流石にあのキノッピには勝てるでしょう?」

 キノッピって呼ばれてんのか、あの息子。

「そうですわね。アレ相手ならお姉様が負ける筈はありませんわ」

 うーん。そのフォローもどうなのよ。キノコの傘を被った、風吹けば飛ばされそうなガリガリのもやし君と比べられてもな……

「でも、姫様には別なお考えがあるのでしょう?」
「ええ、勿論よ」
「そ、そのお考え。とは……?」
「ズバリッ! 両家お宝対決っ!」

 手を腰に当ててドヤ顔で天井を仰ぎ見る王女に、私とリリーカさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で見つめていた――



「お宝対決……ですか?」
「そう、その家で最も価値のあるお宝を私に献上して優劣を決めるの。負けた方は書いた誓約書通りにして貰うわ。勿論、フォワールには私のリリーカに二度とちょっかいを掛けない。って書かせるつもりよ」

 所々引っ掛かる単語が出ているんだけど……?

「ですが、カーン=アシュフォードは架空の人物で貴族というのもでっち上げ、価値のあるお宝なんて持ち合わせてはいないのですよ?」
「そこはホラ。リリーカが協力すれば良い話じゃない? 世界を股に掛けた元冒険者で、街の窮地を救った英雄。あのオジサマなら、価値のあるお宝を持っていても不思議じゃないでしょう? フォワールが文句を言ったら、期日までに間に合わないから。とか何とか言って誤魔化せば良いし、婚約者フィアンセなんだから問題ないでしょう?」

 まあ、戦わずに済むならそれに越した事は無いけれど……

「リリーカさん。アレに勝てる様なお宝って在る?」

 質素倹約なイメージが強いユーリウス家。今より高位のくらいに、首を横に振ったとされるあのオジサマが、価値のあるお宝を持っているだろうか……? 対するは、錦衣玉食。貴族を絵に書いた様な散財っぷりのフォワール卿。くらいが上でも分が悪い気がする。

「分かりません。お父様、お母様に聞くしかありませんわね……」
「何なら、そのコでも良いわよ」

 布団の上でスヤスヤ。と寝ているネコの様な獣を指差した。だから、ダメですって。
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