3 / 49
03 日常の朝
しおりを挟む
リルと部屋を出る。
廊下には既に何人か人がいた。
「おはよ、セレンス」
「おはよう」
挨拶を交わす。
相手の鳥のテイムに、リルがお辞儀をする。
その仕草は大人びた女性のそれで、私の憧れでもある。
すれ違う度に挨拶を交わしながら、テラスへ向かう。
戸を開けると、澄んだ空気が吹き抜ける。
リルが外へ出ると、私は戸を閉める。
バサッ
大きな羽音と共に、リルの翼が広がる。
鳥と人の混種のテイムのリルは、混種とは思えないほど、綺麗な姿をしている。
まるで御伽噺に出てくるハーピィや天使のようで、いつ見ても見とれてしまう。
透き通るような白い肌に、純白の羽。
備え付けられているテーブルに、薬水を入れたコップを置く。
羽を伸ばし終えたリルが、嬉しそうにコップを手に取り、飲み始める。
自分で調合し始めた頃とは比べ物にならないくらい,おいしそうに飲んでいる。
(…まだ、兄には敵わないだろうけど)
この学園にいる兄を思い出す。
今の時間はまだ学生寮にいるはずだけど。
「ごっめーん、待った?」
ばん,と勢いよく扉が開かれる。
飛び込んできたルームメイトの長い髪が、風になびく。
「いいえ おはよう、ナツミ」
「おはよ リルもおはよう」
ナツミが机の上に皿を置き、薬水を注ぐ。
リス種のテイム、カランがナツミの肩からテーブルに移る。
「相変わらず、朝に弱いわね」
「ここ、山の中じゃない? あたしがいた所より,日の出が遅いのよ」
海岸の出の親友が、いつもと同じ事を口にする。
十年近く聞いたその言い訳も、不思議と飽きることはなかった。
「もうすっかり日は出てますよ?」
山々の新緑が、きらめいて見えるくらいには。
その返しにナツミは笑う。
「それにしても、今日も多いねぇ」
「何がです?」
「ギャラリー」
そう言われて振り返ると,窓の外に何人か立ってこちらを見ていた。
視線に気がつくとイソイソと別の事をし始めたが、しばらくすると別の誰かが立ち止まる。
「まぁ、慣れですね」
「私は慣れないなぁ」
そう言いながらも、ナツミは周りの視線を気にした様子もなく、外の景色に目を向ける。
薬水を飲み終えたリルがコップを持ってこちらにやって来た。
「ナツミはもう少し起きる時間も,慣れた方がいいですよ」
「この田舎娘を優等生兄妹と一緒にするなぁ」
そう言われて、内心,はっとする。
ナツミが屈託ない笑みで笑っている。
(……、そうですね)
私はよく優等生と、持て囃される。
慣れるまで、気分が悪くなるくらい、周りに騒がれた。
ただ兄を"優等生”と言ってくれるのは、ナツミくらい。
テイム落ちの兄を蔑まない、数少ない友人。
「ありがとう」
「え?、 へっ?」
突然,お礼を言われ驚くナツミ。
同時に後ろからリルに抱きしめられ、目を白黒させる。
そんな反応が可愛くて、思わず笑みを漏らした。
「兄を優等生って言ってくれて」
「…そ、そんな、…だってあんたの兄さん、勉強とか学年トップクラスだし、
薬水の調合とかなんて、先生より上手いじゃない」
「そうね」
そう言って、笑った。
その時、起床を促すベルが辺りに響いた。
「じゃあ、そろそろ朝食にしましょう」
「そだね」
戸を開け、寮食堂へ向かう。
廊下には既に何人か人がいた。
「おはよ、セレンス」
「おはよう」
挨拶を交わす。
相手の鳥のテイムに、リルがお辞儀をする。
その仕草は大人びた女性のそれで、私の憧れでもある。
すれ違う度に挨拶を交わしながら、テラスへ向かう。
戸を開けると、澄んだ空気が吹き抜ける。
リルが外へ出ると、私は戸を閉める。
バサッ
大きな羽音と共に、リルの翼が広がる。
鳥と人の混種のテイムのリルは、混種とは思えないほど、綺麗な姿をしている。
まるで御伽噺に出てくるハーピィや天使のようで、いつ見ても見とれてしまう。
透き通るような白い肌に、純白の羽。
備え付けられているテーブルに、薬水を入れたコップを置く。
羽を伸ばし終えたリルが、嬉しそうにコップを手に取り、飲み始める。
自分で調合し始めた頃とは比べ物にならないくらい,おいしそうに飲んでいる。
(…まだ、兄には敵わないだろうけど)
この学園にいる兄を思い出す。
今の時間はまだ学生寮にいるはずだけど。
「ごっめーん、待った?」
ばん,と勢いよく扉が開かれる。
飛び込んできたルームメイトの長い髪が、風になびく。
「いいえ おはよう、ナツミ」
「おはよ リルもおはよう」
ナツミが机の上に皿を置き、薬水を注ぐ。
リス種のテイム、カランがナツミの肩からテーブルに移る。
「相変わらず、朝に弱いわね」
「ここ、山の中じゃない? あたしがいた所より,日の出が遅いのよ」
海岸の出の親友が、いつもと同じ事を口にする。
十年近く聞いたその言い訳も、不思議と飽きることはなかった。
「もうすっかり日は出てますよ?」
山々の新緑が、きらめいて見えるくらいには。
その返しにナツミは笑う。
「それにしても、今日も多いねぇ」
「何がです?」
「ギャラリー」
そう言われて振り返ると,窓の外に何人か立ってこちらを見ていた。
視線に気がつくとイソイソと別の事をし始めたが、しばらくすると別の誰かが立ち止まる。
「まぁ、慣れですね」
「私は慣れないなぁ」
そう言いながらも、ナツミは周りの視線を気にした様子もなく、外の景色に目を向ける。
薬水を飲み終えたリルがコップを持ってこちらにやって来た。
「ナツミはもう少し起きる時間も,慣れた方がいいですよ」
「この田舎娘を優等生兄妹と一緒にするなぁ」
そう言われて、内心,はっとする。
ナツミが屈託ない笑みで笑っている。
(……、そうですね)
私はよく優等生と、持て囃される。
慣れるまで、気分が悪くなるくらい、周りに騒がれた。
ただ兄を"優等生”と言ってくれるのは、ナツミくらい。
テイム落ちの兄を蔑まない、数少ない友人。
「ありがとう」
「え?、 へっ?」
突然,お礼を言われ驚くナツミ。
同時に後ろからリルに抱きしめられ、目を白黒させる。
そんな反応が可愛くて、思わず笑みを漏らした。
「兄を優等生って言ってくれて」
「…そ、そんな、…だってあんたの兄さん、勉強とか学年トップクラスだし、
薬水の調合とかなんて、先生より上手いじゃない」
「そうね」
そう言って、笑った。
その時、起床を促すベルが辺りに響いた。
「じゃあ、そろそろ朝食にしましょう」
「そだね」
戸を開け、寮食堂へ向かう。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる