上 下
35 / 41

第35話 戦いの火蓋は切られた。

しおりを挟む
 サリリは人間達に色々と質問しながら、並行して解析魔法も使用しているようだ。

 魔法少女の天才的な頭脳ってのは伊達じゃないんだな…。

 彼女はこの部屋の中央に備え付けられているキーボードを尋常ではない速度で打ち始めると、空中に投影されたディスプレイには意味の分からない文字の羅列が次々と流れていく。

 え? あの速度で流れる文字を理解出来てるの?

 10分程経過しただろうか…サリリが作業を終えたようで、良い仕事をしたわと額の汗を拭い一息ついている。

 要塞外部では、宇宙空間に巨大な次元の裂け目が出現し、そこへ要塞がまるごと吸い込まれていく。


「なんかスゲーな…。それしか言えないや。」

「うん…。」


 そうして、超巨大な宇宙機動要塞はこの世界から消失した。


【我こそは…が音声通話を申請してきました。承諾しますか?】



 相手からの通話なんて珍しいな…


「許可。」


【我こそは…と通話を開始します。】


「“我こそは…”です。初めまして。」

「“ああああ”です。初めまして。対戦ありがとうございます。」

「いえ、こちらこそ。」


 男の声だ。

 なんだ、男かよ。


「要塞をどこへやったんですか?」

「えーと、役に立つかと思って貰っちゃいました。」


 素直にそう答える。


「…もしかして、普通に何度もあんな感じの事が出来たりします?」


 多分出来るよな? 要塞のエネルギーを利用して転移させるってサリリが言ってたし。


「出来そうですね。」

「降参するので、これ以上奪っていくのはやめて下さい。」


 ん? 盗られても時間を戻せば良いだけでは?


「時間を巻き戻したら良いんじゃないですか?」

「相手に奪われた場合は、生命体でも物でも時間を戻したところで元には戻らないんです。」


 そうだったの? 全然知らなかった……

 ランク1,000超えともなれば、色々と知る機会もあったのだろう。


「あっ。これ以上は奪いませんが、貰った要塞は返しませんよ。」

「対戦の結果なので、そこは仕方ないと思ってます。」


 なかなか潔い。

 どうせ降参してしまうなら相手の戦力がどんなものか聞いてみたい。せっかくのSFっぽい戦力を持ってる相手なんだし。


「戦力ですか? “ああああ”さんが持って行った要塞が最大戦力ですね。正式名称は衛星型宇宙空母補給艦サテライト。全部で30隻あります。」


 30隻!?


 会話を続けていって判明したのだが、強い魔法使いが相手だと相性が悪いとの事。サリリはピンポイントで相手の天敵みたいな奴だった訳だ。

 確かにあんなものが一斉に掛かってきたらと思うと、ダイでも危ういかもしれない。

 この人は科学技術だけで対戦相手に勝ってきたらしい。特定の強者という者は存在していないとの事。

 元々は一位の奴を倒す為に、戦力を強化中だったそうだ。


「俺もジョーダンさんから一位の奴が悪い奴だって聞いて、戦力強化中だったんですよ。」

「でしたら、サテライトの概要をお伝えしますので役立てて下さい。」


 それはありがたい。


 衛星型宇宙空母補給艦サテライトは戦艦二千隻、補給艦と工作艦百隻づつを格納しており、内部には建造ドッグが備え付けてある。

 基本的には全てオートメーション化されており、人間が目標設定するだけで勝手にどこからか物資を集めて足りなくなった艦の補充をしてくれるらしい。

 そして肝心の強さだが、万全の状態なら存在強度16,000,000の相手と戦えるのだそう。

 サリリは本当に相性が良いだけらしかった。

 そもそもサテライトを相手にするなら宇宙空間で活動できる事が前提になるので、宇宙空間で活動できない生命体相手だと地上に向けてエネルギー波を撃ちまくれば勝てるもんな。

 ランク1,000超えの科学技術は伊達ではないようだ。

 問題はデカすぎて相手の世界へ侵入させる事が出来ず、防衛戦しか選択肢が無い事…だが、それに関してはサリリがいれば解決出来そうなので、俺にとっては問題にはならない。



【我こそは…が降参しました。勝利報酬として100,000,000,000WPが与えられます。
 あなたは創造神ランクが218になりました。おめでとうございます。
 格上討伐報酬として100万上げる君を500個進呈します。】



 俺の勘は正しかった。貰ったWPの桁が凄い。しかも100万上げる君だってよ。

 効果は名前のまんま、存在強度を100万上げてくれるアイテムだ。

 見た目はシメジの形をしたチョコレート。

 “シメジの木”と“カズノコの海”で喧嘩になって、年間の負傷者数が百万人を超えるお菓子と同じ姿をしている。


「久満子ちゃんはシメジの木とカズノコの海どっち?」

「私はカズノコの海かな~。」


 え? 何言ってんの?


「普通シメジでしょ。」


 彼女は手を口で押え、信じられない…と驚いた表情をする。


「大五郎君こそ何言ってるの? その冗談面白くないよ?」

「いやいや…シメジでしょ。政治で言えば与党。カズノコなんて批判ばかりで、国会の進行を妨げるどっかの野党みたいなもんさ。」

「…大五郎君。」


 俺を見る彼女の視線は、かつてない程冷たかった。

 なんだよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界の剣聖女子

みくもっち
ファンタジー
 (時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。  その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。  ただし万能というわけではない。 心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。  また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。  異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。  時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。  バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。  テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー! *素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー
ファンタジー
「あぁ、異世界転生したいなぁ、異世界召喚とかトリップでもいいけど…」  いつからだろう、こんな夢物語を本気で願うようになったのは。  いつからだろう、現実と向き合うのをやめたのは。  いつからだろう、現実を味気なく感じたのは。  いつからだろう、リアルで生きていくことに飽きたのは。  働きたくない男が、働かなくてもいい環境に置かれていくお話。  ※他サイトでも投稿しています。

処理中です...