14 / 41
第14話 ゲームだからって、みんな生命を冒涜してるよね?
しおりを挟む「魔王様。我々はもっと魔王様のお力になりたいのです!」
原種吸血鬼たち四人が揃ってダイに懇願する。
「だが、そうすると君たちは…。」
「大丈夫です!記憶はしっかり受け継がれるとのことでしたし。」
どうやら合成の件について、ダイを説得にかかっているらしい。彼は合成する事に反対のようで、なかなか首を縦に振らない。
「どうかお願いします!」
相も変わらず視点の定まらない彼女らが頭を下げている。
ダイもそんなに彼女たちが大事なら、操られている事に気付けよ。
「ダイ君。彼女たちもね、辛いんだよ…。自分達が足を引っ張ってるんじゃないかって、泣きながら私に相談に来たの…。」
私も辛いのよと泣き出すサリリ。
嘘つけ!
そいつらもう操られて言わされてるだけじゃん。しかも相談するタイミングなんて無かっただろが!?
「そうだったのか…。」
ダイも何でそう簡単に騙されるんだよ…。
「わかった。辛いけど、君たちの意思を尊重するよ!」
苦渋の決断だが、それを感じさせまいとする笑顔で彼は言った。
そいつら既に自分の意思なんてないけどね?!
あっさり騙される魔王ってどうなのよ?
都会に行ったら変な壺とか買わされるんだろうな…。しかもそれが詐欺だとも気付かないで数珠とかお札まで後から買っちゃうタイプだ。
ああ…。
想像したらしっくりきてしまった。怪しいものを買わされ、満足気な表情でいるダイが目に浮かぶようだ。
「それでは儀式を始めます。」
サリリはステッキを構え、地面に描かれた魔法陣の中心に四人を誘導する。
俺が意識を逸らしていたら、いつの間にか始まっていたようだ。
「▲☆=¥!>♂×&◎♯£…。」
彼女は人が発声したとは思えない音を口から紡いていくと、魔法陣が光輝き平面から立体構造に変化する。魔法陣は徐々に輝きを増していき、遂には目を開けていられない程に強い光を発し、思わずダイは目を閉じてしまった。
光が止むと、そこには一人の美女が目を閉じたまま立っている。透き通るような白い肌に美しい銀髪。肉付き良く出るとこは出て、引っ込む所は引っ込んでいる。
目を開いた彼女は、妖艶な雰囲気を携えダイの下に跪き…。
「魔王様。合成は無事成功致しました。どうかこれからもよろしくお願いいたします。」
と、澄んだ声で挨拶をする。
だが俺は見ていた。
ディスプレイ越しでも目を開けられない程の光の中で、どこから取り出したのかサングラスをかけたサリリが一瞬で魔法陣の中心に移動し、四人をいきなり現れた大きな布袋にささっと詰め込んでグルグルと振り回し、合成されたであろう彼女を、布袋から雑に掴み取ってぽいっと陣の中心部に放り投げていたのだ。
その間、僅か0.5秒。
そのやり方はどうなんだ?と思わなくもないが、下手にグロかったりするよりは余程マシで、手品みたいでちょっと面白かった。
勿論ダイはその事に気付いていない。
突如別ウインドウが出現し、光量を下げた状態でその瞬間がスロー再生された為、その一部始終を俺だけ知る事が出来たのだ。
ダイは新たに誕生した彼女を立たせ
「これからもよろしく頼むよ。」
と手を差し出し握手する。そのやり取りを見ていたサリリが、ニコニコしながら祝福の言葉を述べる。
「おめでとうございます!」
彼女はギョッとした顔で振り返り、サリリを見ると青い顔で冷や汗を流している。恐ろしいものを見るような視線で、後ずさりながら…。
「ア…ア、ありがとうゴザイマスです。ハイ。」
と、どもりながらも何とか礼の言葉を絞り出す。彼女の目は、完全に泳いでいた。
あぁ…。そう言えば記憶は継承するって話だったし、サリリに何されたかを覚えているのだろう。しかも四人分。生まれて早々なんと不憫な子なんだ。
あまりにも可哀想な事に加え、今後必要になってくるだろうから名前を付けてやるか。
「新たに誕生した始祖吸血鬼の名前はジャンヌだ。」
【10WPを消費し、始祖吸血鬼の個体名をジャンヌに設定しました。】
色んな相手と戦争みたいな事するんだし、勝利に導く名前が良いよな。
最後は火炙りになりそうだが…。多分気のせいだ。
「神様がジャンヌって名前を付けてくれたみたいだよ?良かったね!」
サリリは早速ジャンヌに教えていた。
「アリガトゴザイマスです。」
恐怖で最初の頃のジョーダンさんみたいな喋り方になっとる…。
「火炙りになりそうな名前だから気を付けるんだよ?」
おい!何てこと言うんだ。ジャンヌが怯えてるじゃねえか!
確かに俺もちょっとだけ思ったけどさ。創造神の知識をある程度持った状態で生まれてくるから色々便利じゃんって思ってたけど、そんな知識の活かし方して欲しくなかったわ!
…。
一旦気を取り直して、ジャンヌの性能を確認してみるか。
「ステータス。」
<仮想世界システム>
創造神ああああ:ランク39
WP:1,717,320P
購入
売却
環境設定
生命の存在強度
世界へ介入
履歴
対戦モード
生命体の数:3
強者リスト 一位 魔王種始祖吸血鬼ダイ:存在強度4,171,722
二位 魔王種魔法少女㈵外道使いサリリ:存在強度4,021,637
三位 始祖吸血鬼ジャンヌ:存在強度3,015,320
合成は単なる足し算ではないようだ。そんなだったらチート過ぎだしな。今でも十分チートだが。
巻き戻しのお蔭で魔王軍復活も容易だし、次はいよいよランク差100の相手と対戦してみよう。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル
ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。
しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。
甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。
2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
元勇者の俺と元魔王のカノジョがダンジョンでカップル配信をしてみた結果。
九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
ファンタジー
異世界から帰還した元勇者・冴木蒼真(さえきそうま)は、刺激欲しさにダンジョン配信を始める。
異世界での無敵スキル〈破壊不可(アンブレイカブル)〉を元の世界に引き継いでいた蒼真だったが、ただノーダメなだけで見栄えが悪く、配信者としての知名度はゼロ。
人気のある配信者達は実力ではなく派手な技や外見だけでファンを獲得しており、蒼真はそんな〝偽者〟ばかりが評価される世界に虚しさを募らせていた。
もうダンジョン配信なんて辞めてしまおう──そう思っていた矢先、蒼真のクラスにひとりの美少女転校生が現れる。
「わたくし、魔王ですのよ」
そう自己紹介したこの玲瓏妖艶な美少女こそ、まさしく蒼真が異世界で倒した元魔王。
元魔王の彼女は風祭果凛(かざまつりかりん)と名乗り、どういうわけか蒼真の家に居候し始める。そして、とあるカップルのダンジョン配信を見て、こう言った。
「蒼真様とカップル配信がしてみたいですわ!」
果凛のこの一言で生まれた元勇者と元魔王によるダンジョン配信チャンネル『そまりんカップル』。
無敵×最強カップルによる〝本物〟の配信はネット内でたちまち大バズりし、徐々にその存在を世界へと知らしめていく。
これは、元勇者と元魔王がカップル配信者となってダンジョンを攻略していく成り上がりラブコメ配信譚──二人の未来を知るのは、視聴者(読者)のみ。
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ユニークスキル【テキパキ】は最適解!イージーモードで教える冒険者講師
まったりー
ファンタジー
レベルアップも新たなスキルが覚えられず、ユニークスキルの【テキパキ】しか取り柄の無かった主人公【ベルトロン】は、冒険者を続ける事に壁を感じて引退した。
他の職も見つからず悩んでいると、酒場で若い冒険者が良からぬ奴らに絡まれていて、それを助けた事で生きがいを見つけ、彼らを一人前の冒険者にする新たな人生を送る事になりました。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる