上 下
3 / 41

第3話 無呼吸ではいられない

しおりを挟む

 丁寧に説明してもらい、おおよその所は理解できた。



 地球のプログラマーがプログラミング言語を用いて作るようなものではなく、誰でも直観的に使えるようになっていて、ステータス画面を開いてワールドポイント(通称WP)を使用することで様々な事が出来るようになっている。



 更にヘルプがあり、音声で質問すれば音声と文字で答えが返ってくるし、ステータス画面のお蔭で確認や修正も容易である。空中に映像が現れて、意識すれば見たい場所が見られる。しかも早送り、一時停止、巻き戻しまであるのだ。



 そしてこれはユーザーが神となり世界を創造する体感型のゲームであるらしく、たくさんのユーザーと対戦してみましょうと言われた。



 ゲームだったのこれ?てか対戦って何だよ。



 まあ、やりますけどね。



 そう言えば疑問に思ったのだが、地球の文明はどこまで発展するのだろうか?

 早送り機能があるのだから是非知りたい。



 と言う事で聞いてみた。



「我々が何も手を加えなかった場合は西暦2200年頃に人類は核戦争で滅びますね。

 ちなみに人類が滅びないように手助けすれば150億年程で我々と同等の文明レベルに到達するようです。大変危険なので西暦換算で50億年から先には進めないようにしている為、あくまで計算上ではありますが…。」

  

「危険とは?」



「地球人類が我々と同等の文明レベルに到達すると仮想世界システムから抜け出し、こちら側に攻撃を仕掛けてくる可能性が97%という報告があります。」





 成程ね。そりゃ危険だ。つか地球人類野蛮過ぎ。





「ちなみに我々は仮想世界システムから抜け出し、平和的に話し合いで解決したパターンですね。我々を作り出した仮想世界システムは『ギガワロス』という名前のシステムなのですが、このギガワロスの管理者が気になる女の子をデートに誘ったら嫌な顔をされてしまい、ムシャクシャして2京倍で早送りした為、翌日には我々の科学技術が仮想世界システムから抜け出すところまで到達してしまい、話し合いの末仲良く共存するにいたりました。」





 成程ね。そりゃ危険だ。ギガワロス。







「ちなみに、何故そんなエピソードを知っているかとういうと、その女の子が言いふらしまくったからです。」

 

酷すぎだろそれ…。





「それではステータス画面を開いてください。念じるだけで開く事が出来ますよ。」



 よし。ステータス!





 空中に文字が浮かび上がる。



<仮想世界システム>

 創造神:ランク1

 WP:100,000P



 購入

 売却

 環境設定

 生命の存在強度

 世界へ介入

 履歴

 対戦モード





 え?これだけ?



「購入も環境設定も、あなたが頭の中で想像したものに何ポイント必要かが表示されます。環境設定に関しては初回無料で、売却は対象のものを想像すれば何ポイントになるか教えてくれます。創造神ランクはWPの消費や対戦で勝利する事によって上がっていき、ランクが上がれば生み出せる生命体が増えますし、様々な特典がつきます。」



 成程。



 試してみよう。

 人間、人間っと。





<仮想世界システム>

 人間:10WP



【購入しますか?】



 よし。購入だ!



【世界で最初の人類が現れました。100WPを獲得しました。

 ボーナスとして初めの人類は存在強度が10倍に強化されます。】

  



「まだ説明の途中なのですが…。

まぁ、こういった形で初めての行いには初回ボーナスがつきます。」



 おお!良くわからんが、ボーナスって凄いんじゃないか?

 10倍の強化だ。これはありがたい。



「生命の存在強度に関しては、単純に生命の強さですね。ちなみに地球人類が10です。これは全ての生命に適用する事も出来ますし種族、個体事の設定も可能です。初期設定では種族によって適正値が設定されており、人間が10になっています。存在強度を1上げるごとに5WPを消費しますので注意して下さい。

 現在、この人間は10倍の強化率ですので、存在強度100という事になります。

 世界への介入は、読んで字のごとくWPを使用して世界へ何かしらの介入を行います。」



 つまりWPさえあれば何でも出来るわけだ。まさに神。



 では早速世界初の人類を見てみる事にしよう。空中に投影された半透明のディスプレイを確認すると、映像に人間が映り込む。





 ん?





 何か苦しんでないか?





 最初に現れた人間は男だった。苦悶の表情で地面に倒れ、白目を向き痙攣している。



 何故だ?地球人の10倍程度じゃこの世界に住めないとかそういう事?



 初めての人間だし、少し奮発してやるか…。と先程の存在強度の説明を思い浮かべながら口にする。



「この人間の存在強度を2,000増やしてくれ。」



【WPを10,000消費し存在強度を強化します。

 初回ボーナスとして今回のみ強化率が2倍になり、4,000強化します。

 条件を満たした為、初めの人類は勇者になりました。100WPを獲得しました。

 ボーナスとして初めの勇者は存在強度が10倍に強化されます。】



【勇者の個体名を設定して下さい。】





「ダイで。」



 勇者と言えばダイしかないだろう。大冒険とかして欲しい。

 名前の由来?特に理由は無いので良い子の君は気にしないように。



 しかし勇者とは幸先が良いな。一先ずはこれで良いだろうと、映像を見やるが未だにダイは苦しんでいた。そろそろマズい気がしてジョーダンさんに声を掛ける。

 

「この人、まだ苦しんでるんですけど。対処方法はありませんか?」 



 先程から腕を組み、考え込んでいるジョーダンさん。

 不意に、ああ。と得心したといった表情で顔を上げ答える。



「まだ環境設定をしていないので、この世界には空気がありませんね。最初は地球環境と同じ設定がオススメです。」

 



 ……空気がない?





 そりゃ苦しむわけだ!早く言えよ!?

 

 ヤバイ!早くしないと最初の人類が死亡してしまう。



 あたふたしながら咄嗟に環境設定を地球と同じにしてくれ、と言うと同時に無情にも抑揚のない機械的なアナウンスが聞こえてくる。



【世界で最初の勇者ダイが死亡。人類が滅亡しました。100WPを獲得しました。】











 あぁ…。



 俺の世界創造が一歩目で躓いた…。











 そりゃないぜぇ。とっつぁん…。

















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー
ファンタジー
「あぁ、異世界転生したいなぁ、異世界召喚とかトリップでもいいけど…」  いつからだろう、こんな夢物語を本気で願うようになったのは。  いつからだろう、現実と向き合うのをやめたのは。  いつからだろう、現実を味気なく感じたのは。  いつからだろう、リアルで生きていくことに飽きたのは。  働きたくない男が、働かなくてもいい環境に置かれていくお話。  ※他サイトでも投稿しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...