【完結】担任教師の恋愛指導。先生、余計なお世話です。

隣のカキ

文字の大きさ
上 下
25 / 37

第25話 恋愛? 人には言えない事ってあるよね。

しおりを挟む
 ないない。それはない。

 せっかく人間関係において最も面倒な恋愛というものから解放されたんだ。自ら異性を好きになるなんてあり得ない。

 大体俺とミイちゃんは教師と生徒。恋愛感情なんて……ない、はずだ。


「雷人、それはない。」

「否定されてしまえば俺には何も言えないけどさ。正直にならんと、後悔するかもしれないってのは覚えておけよ?」


 後悔はない………よな?


「後悔はしない。俺は恋愛に興味がないからな。」

「まだ言ってんのか。中二病患者の新しい形か?」


 どうやら雷人は俺の話を信じ切れてはいないようだ。


「まぁ良いさ。それより錬蔵はどうした? いつもならとっくに来てる時間だろ?」

「あいつは零子ちゃんの家の前に打ち捨てられている。」

「どういう事だ?」

「俺も正直良く分かってない。」


 莉々伊ちゃんから聞いて状況は理解している。

 しかし感情が納得出来ないのだ。


「そのうち来るだろ。」

「学校サボる奴じゃないもんな。」


 錬蔵、取り敢えずお前の無事だけは祈っておく。


「はーい。皆さん朝のHR始めますよー!」


 教室の戸を開け、元気よく挨拶をするクラスの担任。

 俺達は自席に戻り、担任の元気に圧倒されながら話を聞く。


「皆さん休日は楽しく過ごせたかな? 私は超楽しく過ごせちゃいました! うっふふーん。」


 ミイちゃん、滅茶苦茶元気だな。


「ねぇ恋梨君。カワイコちゃん先生なんか変じゃない?」

「そうだね。」

「朝から機嫌良さそう。」

「そ、そうだね。」


 隣の席から右京さんが声を潜めて話しかけてくる。

 以前は誤魔化せたとはいえ、ミイちゃんJK形態を見ている人だからバレてやしないかと心臓に悪い。


「こら! むっく……恋梨君! すぐに女の子とお話してデレデレするのは感心しないよ。こちとら激おこプンプン丸だぞ?」

「す、すみません。」


 おい。今結構マズい事を言いかけたぞ。


「右京さんは人の男を盗らないように。私、信じてるからね?」

「え?」

「返事は?」

「は、はい。」


 やめろって。本当にバレるだろうが。

 確かに右京さんとミイちゃんと俺の三人で、そんな会話をした事はある。でもそれってJK形態の時に会話した内容なんだよ。

 サラッと担任形態で話すんじゃねーよ。


「そこは置いといて、今日からまた学校が始まりますが、面倒がらずに元気良く過ごして下さいね! いじょお!」


 そう言って元気良く去って行くクラスの担任。

 あの人マジで何考えてんだ? いや、きっと何も考えてないんだ。


「何だったんだろね?」

「さ、さぁ?」

「人の男って、恋梨君彼女いないよね?」

「う、うん。」


 何かに気付きかけているのか、右京さんは俺をじーっと見ながら質問を続ける。


「カワイコちゃん先生ってばやけに機嫌が良いし、恋梨君と親しそうじゃない?」

「そんな事はないかなうん。」

「それにさー。どっかで聞いた事あるんだよね。」

「な、なんだろう?」

「今日のカワイコちゃん先生の声って少しキーが高めで喋りも幼いじゃん?」


 もしかして、本当に気付きかけてる?


「最近ね、とあるカフェで聞いた声のような気がするんだよ。誰かさんの親戚がさ、丁度今日のカワイコちゃん先生みたいな雰囲気だったなぁって……。」


 どうすんだよこれ。

 右京さん気付きかけてるどころか気付いちゃってんじゃん。


「田舎に可愛いギャルの親戚がいる恋梨君は似てると思わない?」

「ははは……。ちょっと、似てるかも。」

「うんうん。やっぱそう思うよね。ところで話は変わるんだけど……。」


 右京さんは気付いてるはずなのに話題を変えてくれるのか。

 なんて優しいのだろう。


「川井美伊古先生って、仲良い友達にはミイちゃんって呼ばれてたみたいだよ?」

「……。」


 全然話変わっとらんがな。


「もうすぐ受業が始まっちゃうね。放課後、ミイちゃんと恋梨君と三人でお話したいなー。」

「えっと、ミイちゃんは田舎に帰っちゃったので。」

「うん? カワイコちゃん先生でも良いよ?」


 アカン。

 完全にバレてしまっている。


「あ、あぁー……そう言えば、ミイちゃんは今日来るかもしれないような事を前に言っていたような言ってなかったような。」

「じゃ、決まりね。放課後、例のカフェで良いかな?」

「はい……。」


 バレてしまったのはどうしようもない。

 ここからどう口止めするかを考えなければ。














 俺は良い考えはないものか、と受業中も休み時間もぐるぐるとその事ばかりで頭を悩ませ続けていると……。


「じゃ、恋梨君。カフェで待ってるからね。」

「勿論オッケーさ!」


 咄嗟に凄く良い返事が出た。

 気付けば既に放課後、急いでミイちゃんに事情を説明して連れ出さなければ。

 俺はスマホを取り出しLIMEを打つ。


『ミイちゃんとカワイコちゃん先生が同一人物である事がバレた。口止めの為に、JKの恰好で前に連れて行ったカフェに来てほしい。』


 ピコンとすぐに返事が返って来る。

 あまりの返信速度に驚愕するが、今はこの返信速度がありがたい。


『バレちゃったの? バレる事はしてないはずなのに変だなぁ。とりあえず、仕事終わったら即行で行く。大体15分くらいかかるから。』


 今日に限って言えば、バレる事しかしてないだろが。

 まぁ仕方ない。俺も向かうとするか。




















 カフェの扉を開けばカランコロンと小気味いい音がし、目的の人物は奥の席に一人で待っていた。


「お待たせ。」

「大丈夫。私も今来たところ。」


 実は全然バレてなくて、ジャンボグレートデラックス秘伝のタレ入りMAXあんみつパイナッポーアッポーパフェが食べたかったとかってないかな?

 ないだろうなぁ。


「えぇっと、本日はお日柄も大変良く、右京様におかれましては……。」

「何言ってるの? 恋梨君まで今日は変だよ?」


 変な事を言っている自覚はある。

 だが人は切羽詰まった時、普段とは異なる行動を取りがちだという事を是非ご理解頂きたい所存である。


「別に変な要求するわけじゃないんだから、普通にして欲しいな。」

「ど、努力します。」


 結局どう口止めしてもらうのが良いかずっと考えていたのだが、俺のような凡人には何一つ思いつかなかった。

 山吹色のお菓子とか? 袖の下?

 いかん、どっちも同じ意味じゃん。混乱していて考えが纏まらない。


「あっ、来たみたいだよ。」


 カランコロンと音を響かせカフェに入ってきたのは、本日の主役であるミイちゃんだ。

 俺が言った通り、ギャルJKの恰好で現れた。


「めんごめんご。お待たせ―。」


 危うい状況なのに微塵も危機感を抱かせないその姿には、本当に今の状況を理解しているのかと問い詰めたい気持ちでいっぱいだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

先生と私。

狭山雪菜
恋愛
茂木結菜(もぎ ゆいな)は、高校3年生。1年の時から化学の教師林田信太郎(はやしだ しんたろう)に恋をしている。なんとか彼に自分を見てもらおうと、学級委員になったり、苦手な化学の授業を選択していた。 3年生になった時に、彼が担任の先生になった事で嬉しくて、勢い余って告白したのだが… 全編甘々を予定しております。 この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

処理中です...