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第23話 恋愛? たまには休憩しようぜ。
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「えっと……。むっくんは常に発情期ってわけじゃないんだね?」
「さっきからそう言ってんじゃん。」
俺は何度もミイちゃんに説明しては「またまたぁ~。」とか「え? 冗談?」などと言われ続け、ようやく性欲100%で生きているわけではない事を理解してもらった。
「ごめんごめん。男子高校生に対する偏見が過ぎたみたい。」
「取り敢えず、ミイちゃんが参考にした本の事は忘れてくれ。」
「了解!」
ビシッと敬礼する彼女の態度を見るに、どこまで本気で言っているのかは判断がつかないところだが。
何と言うか……相も変わらず恋愛したいだなんて思わないが、ミイちゃんのクルクルと変わる表情や、俺と明るく楽しそうに会話してくれるところなんかを見ていると、恋愛云々は置いといて純粋に楽しいのは事実なんだよな。
美醜の感覚そのものが消えてなくなったわけではないし、ミイちゃんが可愛いというのも更に俺からプラスの感情を引き出してくる。
無理に恋愛なんてしなくても、本人が良いって言っているのだから、試しに付き合ってみるのもアリな気がしてきた。
「むっくんどしたの?」
いかんいかん。
つい考え事に没頭してしまったようだ。
「なんでもないよ。」
「そう?」
もう少し真剣に考えよう。
兎に角ノリとかその場の勢いみたいなもので決めるのは相手に失礼である。
正直、ただでさえこの考えに至っている時点で、既に流されてしまっているような感じがしないでもないのだ。
これ以上は家に帰ってから一人で真剣に悩むべきだ。
「ピアノも頑張ったし、今度は勉強する?」
「一旦休憩しない? ピアノは楽しかったけど、かなり集中してたんだし。」
休憩なしだと俺の集中力が持たん。
「おっけー! それなら真理子カートしよう。」
意外だ。この人、ゲームとかするんだな。
真理子カートとは、真理子と仲間達がショッピングセンターに置いてあるお買い物カートに乗って爆走する超エキサイティングなゲームだ。
「ミイちゃん真理子カート出来るの?」
「あっ。もしかして下手だと思ってるでしょ? 私、大分上手いんだから。」
得意気に豊満な胸を反らすミイちゃんは、本気で俺に勝てると思っているようだ。
俺は真理子カートが何よりも得意で、友達を泣かせた事がある程に強い。
加えて言うと、どんな相手だろうが真理子カートにおいては本気を出してしまうと言う悪癖があるのだ。
緑の亀をぶつけまくってやるぜ。
「ほう? この俺に勝てるつもりか?」
「私はカートに憑依する能力を持っている。当然カートなど我が身も同然に使いこなせてよ?」
格好良いポーズを決めながら、中二病くさい事を宣う高校教師がここには居た。
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「くらえ!」
「効かん!」
なんだと?!
緑の亀を避けやがった。
「緑の亀の使い方に自信があるようだけど……。どこを狙っているかバレていてよ?」
「ちっ。」
今までどんな相手だろうが、必中で緑の亀をぶつけてきたこの俺が……。
「そこっ!」
「甘いっ!」
またしても避けられてしまった。
こうなれば……。
「あまりこの手段は使いたくなかったが、仕方ない。泣かせてやる。」
「ふふふ。私を真理子カートで泣かそうなんて随分自信があるのね? あなたのような強敵は10年ぶりよ?」
ふん。今に見せてやる。
俺の禁じ手。
「くらえっ! 赤い亀三連発からの……緑の亀三連発っ!!」
「なっ……赤い亀を温存すると見せかけて瞬時に放ち、アイテムを取ってから即時に緑の亀を発射するなんて……。」
「名付けて、ジェットストリームアタック改だ。」
いくら上手い奴だとしても、自動追尾の赤い亀を防ぐ手段など限られている。
ミイちゃんのアイテムは勿論確認済み。
現状ミイちゃんに防ぐ手立てはない。
その上、俺の経験から来る限りなく未来予測に近い緑の亀攻撃まで避けるなんぞ出来る筈がない。
「勝った、な。」
「そう思う?」
なんだ? 負け惜しみか?
「むっくん……なにか忘れてないかしら?」
「赤い亀が到達するまで残り3秒だ。ここから、どうにかする方法なんて……なっ!?」
「はーはっはっはっ! 引っかかった! この時を待っていたのよ!」
ミイちゃんはこのコース唯一のショートカットを使う事で難を逃れたのだ。
俺の放った亀達は目標を見失い、彼方まで飛んで行ってしまった。
「何故だっ! あのショートカットは運を多分に含んだ博打要素! 上手い奴でも10回中1回しか成功しないショートカットを何故一発で成功させる事が出来るんだ!?」
「言ったでしょ? 私はカートに憑依出来るって。タイミング、角度、そして速度を間違えなければショートカットなんて出来て当然。カートに憑依する能力を持つ私が出来ない筈がなくてよ?」
「今までショートカットしなかったのはブラフ、か。」
「そういう事。どう? 私の実力、分かってもらえたかしら?」
成る程。このコースでの敗北は認めよう。
しかし……
「別のコースでショートカットなんて使えると思わない事だな。」
「その挑戦、受けて立つわ。」
勝負は白熱し、そして……。
「うぇぇぇぇぇん!」
やっちまった。やり過ぎちまった。
つい熱くなってしまい、容赦なく徹底的にミイちゃんに亀をぶつけまくったのだ。俺の悪い癖が100%発揮されてしまった。
「ご、ごめんね?」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
参ったな。
俺が悪いだけに、泣きながらしがみついてくるミイちゃんを振りほどく事が出来ない。
「ほら、俺が悪かったからさ。そろそろ泣き止んで。」
「グスっ。もう少じごのまま……。」
座った状態で正面から抱き着いてくるミイちゃんは、俺の胸に顔を埋めたまま決して離れようとはしなかった。
これじゃあ恋人というより子守だなぁ。
まぁ、それ程悪い気はしないけどさ。
結局あの後、ミイちゃんから離れようとするとグズり始めるので、くっついたまま勉強を教えて貰った。
流石に昼食の際は普通に食べていたが、その後もやたらと甘えられてしまい、俺も俺で流されるままに甘やかしてしまう。
ミイちゃんはどうにも仕事と人間関係のストレスで参っていたようで、ちょっと不安定だったらしい。
「今日はごめんね? せっかくむっくんが来てくれたのに……。」
「大丈夫だって。気にしない気にしない。」
いい歳した大人が泣くくらいだ。
相当参っていたに違いない。
下心はあったかもしれないが、勉強を見て貰ったりピアノのレッスンだって真面目にしてくれたんだから、俺も何かしらの形でこの人に返していきたい。
「それじゃあまた明日。」
「うん。また明日ね。」
ミイちゃんをなるべく支えてあげよう。
「さっきからそう言ってんじゃん。」
俺は何度もミイちゃんに説明しては「またまたぁ~。」とか「え? 冗談?」などと言われ続け、ようやく性欲100%で生きているわけではない事を理解してもらった。
「ごめんごめん。男子高校生に対する偏見が過ぎたみたい。」
「取り敢えず、ミイちゃんが参考にした本の事は忘れてくれ。」
「了解!」
ビシッと敬礼する彼女の態度を見るに、どこまで本気で言っているのかは判断がつかないところだが。
何と言うか……相も変わらず恋愛したいだなんて思わないが、ミイちゃんのクルクルと変わる表情や、俺と明るく楽しそうに会話してくれるところなんかを見ていると、恋愛云々は置いといて純粋に楽しいのは事実なんだよな。
美醜の感覚そのものが消えてなくなったわけではないし、ミイちゃんが可愛いというのも更に俺からプラスの感情を引き出してくる。
無理に恋愛なんてしなくても、本人が良いって言っているのだから、試しに付き合ってみるのもアリな気がしてきた。
「むっくんどしたの?」
いかんいかん。
つい考え事に没頭してしまったようだ。
「なんでもないよ。」
「そう?」
もう少し真剣に考えよう。
兎に角ノリとかその場の勢いみたいなもので決めるのは相手に失礼である。
正直、ただでさえこの考えに至っている時点で、既に流されてしまっているような感じがしないでもないのだ。
これ以上は家に帰ってから一人で真剣に悩むべきだ。
「ピアノも頑張ったし、今度は勉強する?」
「一旦休憩しない? ピアノは楽しかったけど、かなり集中してたんだし。」
休憩なしだと俺の集中力が持たん。
「おっけー! それなら真理子カートしよう。」
意外だ。この人、ゲームとかするんだな。
真理子カートとは、真理子と仲間達がショッピングセンターに置いてあるお買い物カートに乗って爆走する超エキサイティングなゲームだ。
「ミイちゃん真理子カート出来るの?」
「あっ。もしかして下手だと思ってるでしょ? 私、大分上手いんだから。」
得意気に豊満な胸を反らすミイちゃんは、本気で俺に勝てると思っているようだ。
俺は真理子カートが何よりも得意で、友達を泣かせた事がある程に強い。
加えて言うと、どんな相手だろうが真理子カートにおいては本気を出してしまうと言う悪癖があるのだ。
緑の亀をぶつけまくってやるぜ。
「ほう? この俺に勝てるつもりか?」
「私はカートに憑依する能力を持っている。当然カートなど我が身も同然に使いこなせてよ?」
格好良いポーズを決めながら、中二病くさい事を宣う高校教師がここには居た。
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「くらえ!」
「効かん!」
なんだと?!
緑の亀を避けやがった。
「緑の亀の使い方に自信があるようだけど……。どこを狙っているかバレていてよ?」
「ちっ。」
今までどんな相手だろうが、必中で緑の亀をぶつけてきたこの俺が……。
「そこっ!」
「甘いっ!」
またしても避けられてしまった。
こうなれば……。
「あまりこの手段は使いたくなかったが、仕方ない。泣かせてやる。」
「ふふふ。私を真理子カートで泣かそうなんて随分自信があるのね? あなたのような強敵は10年ぶりよ?」
ふん。今に見せてやる。
俺の禁じ手。
「くらえっ! 赤い亀三連発からの……緑の亀三連発っ!!」
「なっ……赤い亀を温存すると見せかけて瞬時に放ち、アイテムを取ってから即時に緑の亀を発射するなんて……。」
「名付けて、ジェットストリームアタック改だ。」
いくら上手い奴だとしても、自動追尾の赤い亀を防ぐ手段など限られている。
ミイちゃんのアイテムは勿論確認済み。
現状ミイちゃんに防ぐ手立てはない。
その上、俺の経験から来る限りなく未来予測に近い緑の亀攻撃まで避けるなんぞ出来る筈がない。
「勝った、な。」
「そう思う?」
なんだ? 負け惜しみか?
「むっくん……なにか忘れてないかしら?」
「赤い亀が到達するまで残り3秒だ。ここから、どうにかする方法なんて……なっ!?」
「はーはっはっはっ! 引っかかった! この時を待っていたのよ!」
ミイちゃんはこのコース唯一のショートカットを使う事で難を逃れたのだ。
俺の放った亀達は目標を見失い、彼方まで飛んで行ってしまった。
「何故だっ! あのショートカットは運を多分に含んだ博打要素! 上手い奴でも10回中1回しか成功しないショートカットを何故一発で成功させる事が出来るんだ!?」
「言ったでしょ? 私はカートに憑依出来るって。タイミング、角度、そして速度を間違えなければショートカットなんて出来て当然。カートに憑依する能力を持つ私が出来ない筈がなくてよ?」
「今までショートカットしなかったのはブラフ、か。」
「そういう事。どう? 私の実力、分かってもらえたかしら?」
成る程。このコースでの敗北は認めよう。
しかし……
「別のコースでショートカットなんて使えると思わない事だな。」
「その挑戦、受けて立つわ。」
勝負は白熱し、そして……。
「うぇぇぇぇぇん!」
やっちまった。やり過ぎちまった。
つい熱くなってしまい、容赦なく徹底的にミイちゃんに亀をぶつけまくったのだ。俺の悪い癖が100%発揮されてしまった。
「ご、ごめんね?」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
参ったな。
俺が悪いだけに、泣きながらしがみついてくるミイちゃんを振りほどく事が出来ない。
「ほら、俺が悪かったからさ。そろそろ泣き止んで。」
「グスっ。もう少じごのまま……。」
座った状態で正面から抱き着いてくるミイちゃんは、俺の胸に顔を埋めたまま決して離れようとはしなかった。
これじゃあ恋人というより子守だなぁ。
まぁ、それ程悪い気はしないけどさ。
結局あの後、ミイちゃんから離れようとするとグズり始めるので、くっついたまま勉強を教えて貰った。
流石に昼食の際は普通に食べていたが、その後もやたらと甘えられてしまい、俺も俺で流されるままに甘やかしてしまう。
ミイちゃんはどうにも仕事と人間関係のストレスで参っていたようで、ちょっと不安定だったらしい。
「今日はごめんね? せっかくむっくんが来てくれたのに……。」
「大丈夫だって。気にしない気にしない。」
いい歳した大人が泣くくらいだ。
相当参っていたに違いない。
下心はあったかもしれないが、勉強を見て貰ったりピアノのレッスンだって真面目にしてくれたんだから、俺も何かしらの形でこの人に返していきたい。
「それじゃあまた明日。」
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