【完結】担任教師の恋愛指導。先生、余計なお世話です。

隣のカキ

文字の大きさ
上 下
19 / 37

第19話 恋愛? 先ずは健全なデートから。

しおりを挟む
 昨日は病みが深いミイちゃんをひたすら電話越しに慰め続け、就寝したのは若干外が明るくなってからだ。

 おかげで眠くて仕方がない。


「デートとか面倒くせぇ……。」


 だが、約束してしまった以上はデートするしかない。

 ドタキャンなんぞすれば、今まで錬蔵へ向かっていた莉々伊ちゃんの猟奇的な暴力が俺に向く可能性は十分にある。

 それだけは避けたい。

 待ち合わせ場所である怒涛の勢い駅で既に待機しているのだから、腹を括るしかないか。


「なんとか穏便に諦めてもらわないと……。」

「何を諦めてもらうんですか?」

「あぁ、何をってそりゃあ……」


 あっ。

 突然話しかけられ咄嗟に返事を返そうと顔を上げると、気合の入った私服姿の莉々伊ちゃんとバッチリ目が合った。


「どうかしましたか?」

「な、なんでもないよ。錬蔵に莉々伊ちゃんの邪魔をする事を諦めてもらおうと思ってね。」

「武太先輩って素敵ですね。私の事を真剣に考えてくれているのが分かります。」


 真剣に考えてるよ。どう諦めてもらおうかってね。


「今日はどこへ行くんですか?」

「え? あぁ……っと。」


 莉々伊ちゃんがなにやら期待したような目で俺を見てくる。

 すまん。全然考えてないんだ。

 昨日はミイちゃんを宥めるのに必死で、それどころじゃなかった。


「恥ずかしながらちゃんとしたデートとかした事なくてさ。どういう感じが良いか分からなかったんだ。」


 嘘はついてないぞ。

 本当の事も言ってないけど。


「武太先輩眠そうですもんね。それだけ本気で悩んでくれたって事ですもんね?」

「あ、あぁ……そんな感じ。」


 ポジティブに考えすぎだろ。

 俺の返事一つ一つを全部良い方向に捉えてんじゃん。


「そんな優しい武太先輩と行きたい所があるので、付いてきてもらえませんか?」

「了解。莉々伊ちゃんが行きたい所へ行ってみようか。」

「はい。」



 俺達は今、人通りの少ないとある場所へと来ていた。


「……。」

「どうかしましたか?」


 どうかしましたか? じゃないよ。

 ここってアレじゃん。


「何でホテルなの?」

「あれ? 言ってませんでしたか? 私、婚前交渉からの即結婚オッケーですよ?」


 結婚する事前提になっちゃってんじゃん。


「知ってるかい? 少し前と違って、今は女性も18歳以上じゃないと結婚出来ないんだよ?」

「はい。知ってます。以前の女性は16歳でも結婚出来ましたけど、今はダメなんですよね? 暫くは爛れた性生活を一緒に送って、二年後に結婚したら良いじゃないですか。」


 全然良くない。


「まだ付き合ってないよね?」

「まだ付き合ってないけど、そのうち付き合うんだから順番はどうでも良くないですか?」


 どうでも良くねぇよ。

 この娘、前のめりに生き過ぎだろ。

 首を傾げる莉々伊ちゃんは一見初々しいGカップの美少女にしか見えない。

 発言内容がこの美少女の姿と非常にミスマッチで、飛び出してきた台詞は何かの間違いだと誰もが思う事だろう。

 ここがホテル街じゃなければ。


「それにしても不思議です。」

「何が?」

「激しい運動をする場所なのにご休憩って書いてありま……。」
「よーし! 違う所へ行こうか! カラオケなんて良いかもしれないね?」

「ここ、カラオケもあるみたいで……。」
「さぁさぁ行くよ! いやー莉々伊ちゃんとカラオケするの楽しみだなー! どんな歌声なのかなぁ?」

「あの、歌いたいならここで……。」
「早くしないと混んじゃうかもしれないなー! カラオケ好きなんだよねー!」


 俺は何かを言おうとしている莉々伊ちゃんを強引に遮り、手を引いてカラオケ店へと向かった。



「武太先輩って結構大胆ですね。いきなり手を握ってくるなんて……。」


 カラオケ店に入るなり身を寄せてうっとりした顔で話しかけてくる莉々伊ちゃん。

 君の方が余程大胆だけどね?

 まだ付き合ってもない相手との初デートで、いきなりホテルに誘うって有り得ないからね?

 手を握るなんてそれに比べたら何でもないでしょ。


「急にカラオケがしたくなってさ。緊急だったもんでつい。」

「なら仕方ないですね。」


 この娘、本当に大丈夫か?

 今のところ錬蔵の邪魔が入らないのは良い事だけど、今後誰かと付き合う時がきたら本当に心配である。

 もしも悪い男に引っかかったら悲惨な結末を辿りそうだ。

 錬蔵は妹の恋路を邪魔する最低な兄だと思っていたが、奴は奴なりに防波堤として案外役に立っていたのかもしれない。

 莉々伊ちゃんの恋愛観がオカシイのも錬蔵が邪魔しまくったせいだろうけど。


「武太先輩は何を歌うんですか?」

「俺? 郷ひろふみ。」

「渋いですね。おじいちゃん世代ですよ?」


 別に良いじゃん。


「莉々伊ちゃんは?」

「私はAKC4,800,000です。」

「あぁ、あの480万人いるアイドルグループ? あれってどうやって集めてんだろうね。」

「確か、中学生以上の可愛い娘全員をとにかく無許可で事務所に所属させてるらしいです。」

「マジかぁ……。」


 それって普通に犯罪じゃね?

 恐るべし。日本のアイドルグループ。


「私も書類上はAKC所属らしいですよ? 事務所に行った事もありませんが。」

「へぇー。莉々伊ちゃんなら総選挙とか出られるんじゃない?」

「ムリですって。総選挙は顔面偏差値のみで選出されるので、テレビに出た事もないメンバーが毎回一位を取る大激戦なイベントなんですよ?」


 いくらなんでも酷すぎない?


「テレビに出て頑張ってるメンバーが可哀想じゃん。」

「私もそう思いますけど、五年前にルール変更があってからは毎回そんな感じです。」


 一体何があったらそんなルールになるんだよ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

処理中です...