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第1話 恋愛? いずれは自分も……そう思っていた時期が俺にもありました。
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俺は普通の高校生、恋梨武太。まぁ良くいるモブキャラだ。
特に可もなく不可もなく。特徴と言えば、恋とは縁が無いってことだけ。
名は体を表すという格言通りの人間である。
当然女の子と付き合った事はないし、そもそも告白された事もなければした事もない。恋愛に興味がないのではなく、恋愛ごとが寄って来ない体質とでも言えば良いのか……。
恋愛は片想いでも恋愛だと主張する人もいるだろう。
その通りだ。俺もそう思っている。
しかし、その片想いすらもさせてくれないのが俺の人生。
小学生までの俺に片想いの経験はない。これはあるあるだと思う。初恋は中学高校からって人もいるし、特に珍しいわけでもない。
中学時代、可愛いなと思った娘にはことごとくラブラブな彼氏がいた。
もうね、入っていく隙がないってくらいに惚気る娘ばかりで、とてもじゃないがそんな娘を好きになりたいとは思えない。だって傷つくのが目に見えてるじゃん。
高校生になった俺は、彼女が欲しいと恋活もした。
だが、ちょっとでも仲良くなった娘たち……その娘たちには既に彼氏かセフレ、もしくは片想いの相手が必ず居るのだ。しかも関係の良好な。
何でだよ! 少しくらいチャンスくれよ!
てかセフレはダメでしょ。
セフレだったら彼氏じゃないしイケるんじゃないかって? 馬鹿言え。
童貞臭いと思われるかもしれんが、セフレがいた娘を彼女にしたいとはちょっと思えない。付き合っている最中にもセフレと会ってそうじゃん。
なぁ、これでどうやって恋愛しろって?
俺が少しでも良いと思った相手には必ず特定の相手が居るのだ。
先に言っておくと、自分が特別面食いというわけではない。容姿が普通で性格も普通の娘だって個人的には断然ありだと思っている。そういう娘も含めての結果がこれだ。
NTRば良い? 馬鹿言っちゃいけない。俺は一介のモブだぞ?
何をどうすれば彼氏やセフレのいる相手からNTRなんて高度な事が出来ると言うのだ。そもそも片想いとすら言えない中途半端な気持ちでNTRなんてしようとも思わない。
あと俺は恋愛初心者だから、セフレとかは勘弁して欲しいし。
とまぁ……こういうわけで、片想いに発展する前にあっさりと気持ちが潰えるという事を繰り返している。
よし、俺は腹を括った。
恋愛は諦めよう。今の内からコツコツとお金を貯め、大人になったらそのお金を性産業に支払う事で性的欲求は満たす。後は自分の好きに使う。
青春? デート? 学生時代の恋愛?
はいはい。それは恋愛が出来る人に言って下さいね。俺には関係ありません。
なぁんだ……諦めるだけでこんなに前向きな気持ちになるじゃないか。
心は羽のように軽くなり、今なら何でも出来そうな爽快さで満たされていく。恋愛という執着を一つ捨てるだけで、なんと心が自由であることか。
どうせどの娘も彼氏かセフレ、はたまた両方がいるのだろうと思えば、特定の女子に興味を抱く事さえなくなった。
人生とは諦める事と見つけたり!
「どうしました? 恋梨君。ガッツポーズなんて取って……あなた最近受業聞いてませんよね?」
そうだ。今は英語の受業中だった。
これからは女子の事を考える必要などないから、しっかり授業にも集中出来る……そう思った矢先、カワイコちゃん先生に突っ込まれるとは。
「ちゃんと返事して下さいね? 三年生になったばかりでこれだと困ります。放課後、進路指導室に来て下さい。進路指導しますので。」
「……はい。」
「では受業を続けます。」
呼び出されてしまった。
以前の俺だったら、童顔巨乳24歳S級美人女教師なんて生き物に2人きりの進路指導という餌をぶら下げられたら、喜び庭駆け回る可能性もあっただろう。
しかし、今の俺はその程度の事には欠片も興味が湧かない。
あんな顔してやる事はやっているだろうし、そもそも教師を恋愛対象にと考えた事もな……いや、強がりはよそう。
川井美伊古。通称カワイコちゃん先生は、流石に可愛過ぎて付き合えたら良いなくらいに思った事はある。
何なら胸を鷲掴みにしたいと見かける度思っていた。
不可能である事は分かっていたから恋愛感情を向けてはいないし、今の俺はカワイコちゃん先生相手でも興味なんて湧かないけどな。
それに、大人になったら金払って性産業で解消すれば良いし。
「じゃあなー。」
「恋梨、叱られに行くの頑張れよー!」
うるさい。この友人共めっ。
お前らにも恋愛出来ない呪いでもかけてやろうか?
俺だって好きで叱られに行くのではない。
「はぁ。」
気が重いなぁ……。
カワイコちゃん先生、何で呼び出したん? ガッツポーズくらい無視してくれりゃ良いのに。
恋愛を諦めた俺にとっては、カワイコちゃん先生でさえも既に興味の対象外。進路指導なんて言っているが、叱られるのだと思えばただただ億劫なだけ。
「失礼します。」
「どうぞー。」
俺は指導室の戸を開け、中に入る。
「さ、座って座って。」
「はい。失礼します。」
促されるままに椅子に腰かけ、カワイコちゃん先生と向かい合う。
取り調べ室のノリでかつ丼でも出してくれないかなぁ。
「今日恋梨君を呼んだのには理由があります。」
「はぁ……。」
ビシっと指を一本立てる先生。
「ガッツポーズの事ですか?」
「うん、それもあるんだけど……君は目が死んじゃってます。そんな死んだ魚みたいな目、魚以外で初めて見たよ。」
死んだ魚の目って、いきなり失礼だなこの人。
「俺は死んだ魚しか見た事ありませんので、死んだ魚の目に違和感を感じません。」
「まあ。流石現代っ子。貴重な十代が令倭の子は言う事が違うね。死んだ魚しか見た事ないなんて……。生き生きとした魚を見せに連れてってあげる。」
水族館でも行くって? 余計なお世話なんですが。
「先生もあまり変わりないでしょうに。貴重な二十代が令倭の人じゃないですか。俺は死に死にした魚を日々食べているので必要ありません。」
「死に死にって何よ……えっと、話を戻しましょう。何か悩みがあるの? 先生に言ってみたら解決するかもしれないよ?」
これは予想外だ。普通に叱られるのだと思っていた。
今時の先生って、もっとドライな職業教師って感じだと思っていたが、どうやらこの人は違うようだ。
しかし、恋愛相談したからってどうこうなるものでもないしなぁ。
「えぇ、悩みはありました。ですが授業中に解決しましたので。」
「それでガッツポーズ? でもその割には……。」
「目が死んでる……と?」
「うん。先生ね、丁度見ちゃったのよ。恋梨君の目が死んでいく所を……。」
何それ? ホラーっぽくて怖いからやめてくれない?
「あー……でも解決しましたし。」
「話せない内容なの? 解決したとは言ってるけど、悪い方向性に行ってるんじゃない?」
カワイコちゃん先生って熱血教師だったのか? 意外と食い下がるなぁ。
「話せないって事はないですけど……。」
ここまで心配してくれているのに内容が恋愛なんていう下らない事に関してだとは、申し訳なくなってしまう。
「どんな内容でも良いの。他人にとってはどうしようもない下らない事でも、本人にとっては凄く辛いって例はいくらでもあるんだから。」
この人エスパーかなんかなの? もしくは占い師?
何で思った事を微妙に当てられてんだ?
それにしても、進路の話というのもあながち嘘ではなかったのか、俺の成績に関する資料なんかも準備してくれていた。
叱る名目での呼び出しだと思ってごめんなさい。
ここまで熱心に聞いてくれる先生なんだし、下らない俺の解決した悩みを言ってみようかな?
「えっと、何から話せば良いか……。」
俺は恋愛を諦めてしまうまでの過程を、ぽつりぽつりと話し始めた。
先生はなんと、こんな下らない事でもウンウンと頷き、話の足りていない部分は質問までして聞いてくれたのだ。
正直驚嘆に値する。良くこんな下らない事を真剣に聞いてくれるものだと、心の底から尊敬する気持ちが湧いてきた。
「まだ高校生なのに恋愛を諦めるなんて勿体ないよ!」
「と言われましても、発展する前に芽を摘まれる事を繰り返してきましたので……どうでも良くなったというか。」
「そもそも大人になったらお金で解決しようってのが良くない。それじゃあ恋愛は出来ないよ?」
「別に大丈夫です。恋愛を諦めて、欲求だけを満たす方向で考えたらスッキリしたんです。」
「待って! その考えは待って! 絶対に良い人が現れるはずだから! 近くにいるはずだから!」
何でそんなに必死なの? 先生は意外と恋愛脳なの?
「先生、日本人の生涯未婚率は知ってますか? 50歳時の男性は、実に3割近くが結婚歴すらありませんよ? つまり、その人達には良い人なんて現れなかったんです。」
「……。」
「心配してくれるのは嬉しいんですけど、俺はずっと恋愛出来ませんよ。まだ17の癖に何を言っているんだと思われるかもしれませんが、逆説的に言うなら17年連続で片想いですら経験が無かったんです。この先何年かけても恋愛が出来るとは思えません。」
無駄に語ってしまった。うろ覚えのデータっぽい何かまで提示するなんて、某フランスに住むそれっぽい事をそれらしく語る40過ぎのおじさんみたいだ。
いっその事、そういう方向性を目指してみようかな……。
「……先生は彼氏もセフレもいません。」
「はい?」
「私は彼氏もセフレもいないって言ったの。」
「えっと、それがどうかしたんですか?」
急にどうしたんだ?
清純な女アピール?
「私は彼氏いないしセフレなんていたこともない、彼氏募集中の女だと言いました。」
ふむ……。
「それが今の話とどう繋がるんです?」
まさか俺と付き合うって話なわけじゃないだろうしな。
私も仲間だよーって励ましてくれているのか?
「恋梨君って、もしかして鈍感系?」
「そんな事はない筈です。ちょっと前までは、少し仲良くなった女子相手にワンチャンある? なんて馬鹿な事を考えるくらいには敏感系でしたよ。」
もっとも、そんな可能性は皆無だった訳だが。
「……あなたに恋のなんたるかを実戦形式で教えたいと思います。私は先生なので恋梨君が在学中は付き合えないけど、来年には卒業でしょ?」
「そうですね。」
「教師としては間違っているかもしれないけど、私の恋愛指導を受けてもらいます!」
突然何を言い出すんだろう。
この先生大丈夫か?
特に可もなく不可もなく。特徴と言えば、恋とは縁が無いってことだけ。
名は体を表すという格言通りの人間である。
当然女の子と付き合った事はないし、そもそも告白された事もなければした事もない。恋愛に興味がないのではなく、恋愛ごとが寄って来ない体質とでも言えば良いのか……。
恋愛は片想いでも恋愛だと主張する人もいるだろう。
その通りだ。俺もそう思っている。
しかし、その片想いすらもさせてくれないのが俺の人生。
小学生までの俺に片想いの経験はない。これはあるあるだと思う。初恋は中学高校からって人もいるし、特に珍しいわけでもない。
中学時代、可愛いなと思った娘にはことごとくラブラブな彼氏がいた。
もうね、入っていく隙がないってくらいに惚気る娘ばかりで、とてもじゃないがそんな娘を好きになりたいとは思えない。だって傷つくのが目に見えてるじゃん。
高校生になった俺は、彼女が欲しいと恋活もした。
だが、ちょっとでも仲良くなった娘たち……その娘たちには既に彼氏かセフレ、もしくは片想いの相手が必ず居るのだ。しかも関係の良好な。
何でだよ! 少しくらいチャンスくれよ!
てかセフレはダメでしょ。
セフレだったら彼氏じゃないしイケるんじゃないかって? 馬鹿言え。
童貞臭いと思われるかもしれんが、セフレがいた娘を彼女にしたいとはちょっと思えない。付き合っている最中にもセフレと会ってそうじゃん。
なぁ、これでどうやって恋愛しろって?
俺が少しでも良いと思った相手には必ず特定の相手が居るのだ。
先に言っておくと、自分が特別面食いというわけではない。容姿が普通で性格も普通の娘だって個人的には断然ありだと思っている。そういう娘も含めての結果がこれだ。
NTRば良い? 馬鹿言っちゃいけない。俺は一介のモブだぞ?
何をどうすれば彼氏やセフレのいる相手からNTRなんて高度な事が出来ると言うのだ。そもそも片想いとすら言えない中途半端な気持ちでNTRなんてしようとも思わない。
あと俺は恋愛初心者だから、セフレとかは勘弁して欲しいし。
とまぁ……こういうわけで、片想いに発展する前にあっさりと気持ちが潰えるという事を繰り返している。
よし、俺は腹を括った。
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はいはい。それは恋愛が出来る人に言って下さいね。俺には関係ありません。
なぁんだ……諦めるだけでこんなに前向きな気持ちになるじゃないか。
心は羽のように軽くなり、今なら何でも出来そうな爽快さで満たされていく。恋愛という執着を一つ捨てるだけで、なんと心が自由であることか。
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人生とは諦める事と見つけたり!
「どうしました? 恋梨君。ガッツポーズなんて取って……あなた最近受業聞いてませんよね?」
そうだ。今は英語の受業中だった。
これからは女子の事を考える必要などないから、しっかり授業にも集中出来る……そう思った矢先、カワイコちゃん先生に突っ込まれるとは。
「ちゃんと返事して下さいね? 三年生になったばかりでこれだと困ります。放課後、進路指導室に来て下さい。進路指導しますので。」
「……はい。」
「では受業を続けます。」
呼び出されてしまった。
以前の俺だったら、童顔巨乳24歳S級美人女教師なんて生き物に2人きりの進路指導という餌をぶら下げられたら、喜び庭駆け回る可能性もあっただろう。
しかし、今の俺はその程度の事には欠片も興味が湧かない。
あんな顔してやる事はやっているだろうし、そもそも教師を恋愛対象にと考えた事もな……いや、強がりはよそう。
川井美伊古。通称カワイコちゃん先生は、流石に可愛過ぎて付き合えたら良いなくらいに思った事はある。
何なら胸を鷲掴みにしたいと見かける度思っていた。
不可能である事は分かっていたから恋愛感情を向けてはいないし、今の俺はカワイコちゃん先生相手でも興味なんて湧かないけどな。
それに、大人になったら金払って性産業で解消すれば良いし。
「じゃあなー。」
「恋梨、叱られに行くの頑張れよー!」
うるさい。この友人共めっ。
お前らにも恋愛出来ない呪いでもかけてやろうか?
俺だって好きで叱られに行くのではない。
「はぁ。」
気が重いなぁ……。
カワイコちゃん先生、何で呼び出したん? ガッツポーズくらい無視してくれりゃ良いのに。
恋愛を諦めた俺にとっては、カワイコちゃん先生でさえも既に興味の対象外。進路指導なんて言っているが、叱られるのだと思えばただただ億劫なだけ。
「失礼します。」
「どうぞー。」
俺は指導室の戸を開け、中に入る。
「さ、座って座って。」
「はい。失礼します。」
促されるままに椅子に腰かけ、カワイコちゃん先生と向かい合う。
取り調べ室のノリでかつ丼でも出してくれないかなぁ。
「今日恋梨君を呼んだのには理由があります。」
「はぁ……。」
ビシっと指を一本立てる先生。
「ガッツポーズの事ですか?」
「うん、それもあるんだけど……君は目が死んじゃってます。そんな死んだ魚みたいな目、魚以外で初めて見たよ。」
死んだ魚の目って、いきなり失礼だなこの人。
「俺は死んだ魚しか見た事ありませんので、死んだ魚の目に違和感を感じません。」
「まあ。流石現代っ子。貴重な十代が令倭の子は言う事が違うね。死んだ魚しか見た事ないなんて……。生き生きとした魚を見せに連れてってあげる。」
水族館でも行くって? 余計なお世話なんですが。
「先生もあまり変わりないでしょうに。貴重な二十代が令倭の人じゃないですか。俺は死に死にした魚を日々食べているので必要ありません。」
「死に死にって何よ……えっと、話を戻しましょう。何か悩みがあるの? 先生に言ってみたら解決するかもしれないよ?」
これは予想外だ。普通に叱られるのだと思っていた。
今時の先生って、もっとドライな職業教師って感じだと思っていたが、どうやらこの人は違うようだ。
しかし、恋愛相談したからってどうこうなるものでもないしなぁ。
「えぇ、悩みはありました。ですが授業中に解決しましたので。」
「それでガッツポーズ? でもその割には……。」
「目が死んでる……と?」
「うん。先生ね、丁度見ちゃったのよ。恋梨君の目が死んでいく所を……。」
何それ? ホラーっぽくて怖いからやめてくれない?
「あー……でも解決しましたし。」
「話せない内容なの? 解決したとは言ってるけど、悪い方向性に行ってるんじゃない?」
カワイコちゃん先生って熱血教師だったのか? 意外と食い下がるなぁ。
「話せないって事はないですけど……。」
ここまで心配してくれているのに内容が恋愛なんていう下らない事に関してだとは、申し訳なくなってしまう。
「どんな内容でも良いの。他人にとってはどうしようもない下らない事でも、本人にとっては凄く辛いって例はいくらでもあるんだから。」
この人エスパーかなんかなの? もしくは占い師?
何で思った事を微妙に当てられてんだ?
それにしても、進路の話というのもあながち嘘ではなかったのか、俺の成績に関する資料なんかも準備してくれていた。
叱る名目での呼び出しだと思ってごめんなさい。
ここまで熱心に聞いてくれる先生なんだし、下らない俺の解決した悩みを言ってみようかな?
「えっと、何から話せば良いか……。」
俺は恋愛を諦めてしまうまでの過程を、ぽつりぽつりと話し始めた。
先生はなんと、こんな下らない事でもウンウンと頷き、話の足りていない部分は質問までして聞いてくれたのだ。
正直驚嘆に値する。良くこんな下らない事を真剣に聞いてくれるものだと、心の底から尊敬する気持ちが湧いてきた。
「まだ高校生なのに恋愛を諦めるなんて勿体ないよ!」
「と言われましても、発展する前に芽を摘まれる事を繰り返してきましたので……どうでも良くなったというか。」
「そもそも大人になったらお金で解決しようってのが良くない。それじゃあ恋愛は出来ないよ?」
「別に大丈夫です。恋愛を諦めて、欲求だけを満たす方向で考えたらスッキリしたんです。」
「待って! その考えは待って! 絶対に良い人が現れるはずだから! 近くにいるはずだから!」
何でそんなに必死なの? 先生は意外と恋愛脳なの?
「先生、日本人の生涯未婚率は知ってますか? 50歳時の男性は、実に3割近くが結婚歴すらありませんよ? つまり、その人達には良い人なんて現れなかったんです。」
「……。」
「心配してくれるのは嬉しいんですけど、俺はずっと恋愛出来ませんよ。まだ17の癖に何を言っているんだと思われるかもしれませんが、逆説的に言うなら17年連続で片想いですら経験が無かったんです。この先何年かけても恋愛が出来るとは思えません。」
無駄に語ってしまった。うろ覚えのデータっぽい何かまで提示するなんて、某フランスに住むそれっぽい事をそれらしく語る40過ぎのおじさんみたいだ。
いっその事、そういう方向性を目指してみようかな……。
「……先生は彼氏もセフレもいません。」
「はい?」
「私は彼氏もセフレもいないって言ったの。」
「えっと、それがどうかしたんですか?」
急にどうしたんだ?
清純な女アピール?
「私は彼氏いないしセフレなんていたこともない、彼氏募集中の女だと言いました。」
ふむ……。
「それが今の話とどう繋がるんです?」
まさか俺と付き合うって話なわけじゃないだろうしな。
私も仲間だよーって励ましてくれているのか?
「恋梨君って、もしかして鈍感系?」
「そんな事はない筈です。ちょっと前までは、少し仲良くなった女子相手にワンチャンある? なんて馬鹿な事を考えるくらいには敏感系でしたよ。」
もっとも、そんな可能性は皆無だった訳だが。
「……あなたに恋のなんたるかを実戦形式で教えたいと思います。私は先生なので恋梨君が在学中は付き合えないけど、来年には卒業でしょ?」
「そうですね。」
「教師としては間違っているかもしれないけど、私の恋愛指導を受けてもらいます!」
突然何を言い出すんだろう。
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