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第32話 一致団結
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学園内ではマリーベルとシュナイザーの話で持ち切りだった。
私達対王家同盟は味方を増やすべく精力的に学園内の生徒に呼びかけ、結果としてかなりの数の味方を増やす事が出来た。
卒業したマルグリットまでもが学園に姿を現わし、様々な人に声を掛けて回ってくれたのだ。
学園に通う貴族子弟の過半数が対王家同盟に加わってしまい、私達は一勢力などという規模ではなくなっている。
これはもう完全に王家への反逆だ。
「大変よ! マルグリット様がお亡くなりになったわ!」
「私の耳にも入りましたわ!」
ローズマリーとカタリナが慌てた様子で話しかけてきた。
ここまで派手な動きをしてしまえば当然しっぺ返しもある。
馬鹿共の刑が執行されるまで後二日となった今日、マルグリットが死んだという情報は私の耳にも入って来ている。計画通りと言えば計画通り。
マルグリットが旗印なのだから、それを潰せば王家の面目は保たれるとでも王家サイドは思っていたのでしょうし。
「私も聞いています。ほんの少しだけ……そうではない事を祈っていましたが、やはり王家は腐っています。マルグリット様の仇を討たなければなりません。」
「それは勿論だけど……どうするのよ? マルグリット様がこうして暗殺された以上、私達の勢力は勢いを失うわ。」
「ローズマリー様のおっしゃる通りです。早急に誰かがまとめ上げる必要がございますけど、マルグリット様がこのような結果になってしまったからには誰もやりたがらないかと。」
そうね。きっとこんな勢力のまとめ役なんて誰もやりたがらない。マルグリットという前例が出来てしまったわけだし、トップに立てば死ぬと言う事が分かってしまったのだから。
「私がやります。こんな危険な役は他の誰かに任せられません。私がこの勢力のまとめ役を引き継ぎましょう。」
「ちょっと!? 何を言ってるのよメルトリア! 貴女馬鹿じゃないの!?」
「そうです! 絶対に危険ですわ!」
私の発言に対して食って掛かってくる二人はまとめ役を務める危険性を理解しているようね。
「大丈夫です。すぐに決着してみせますから。」
「何か策があるという事? でも……。」
「本当に大丈夫よローズマリー。王家が常識外の手を使うのなら、私も常識外の手を使って見せましょう。」
「常識外の手?」
そう、常識外の手よ。
常識では考えられないあり得ない手。
私はメルトリアに負けた。
婚約者候補としても、政争でも。
政争に関しては自身があった。我がケラトル家は王家の闇を担っている為、どう足掻いても勝てないとなれば、直接メルトリアを消してしまえば良いと思っていた。
「マリーベル。お前の力を私に寄越せ。」
「……。」
いよいよ刑を執行される2日前の今日。メルトリアが面会を求めて訪ねて来た。
正直、こいつと一緒の空間には一秒たりとも居たくない。負けたから悔しいとかではなくて、純粋に恐怖を感じるから。
「王家の闇の力を寄越せと言っているの。理解出来ない?」
「……理解は出来るわ。」
こいつは……きっと人間じゃない。
私は性根が腐っているという自覚はあるし、人が死ぬのに喜びを感じたりもする。
でもメルトリアは……特に何を思うでもなく作業として淡々と人殺しを行っている節がある。
一緒の空間にいると、それこそ肉食獣と超至近距離で過ごしているような感覚に陥って落ち着かない。
何故誰も疑問に思わないのかが理解出来ない。
「私は負けた。だから力を渡す事にも特に否はない。でも、どうせ一族郎党処刑なのだから私が肯定の返事をしても意味がないわよ?」
「意味はある。私が特別に貴方達の一族を解放してあげるわ。」
「は?」
「その代わり、お前たちの伝手を全て寄越せと言っているのよ。ケラトル家は暗殺者も抱えているだろうし、何なら親族にも暗殺者がいるんじゃないの?」
確かにケラトル家にはそう言った伝手があるし、暗殺者も抱え込んでいる。叔父にあたる人物なんて現役の暗殺者でもある。
「理解出来ないわ。私を殺そうとして追い込んだのではなくて?」
何を考えているの?
私を解放? 意味が分からないわ。
「良いからつべこべ言わずに寄越せ。殺すわよ?」
これだ。圧倒的なまでの存在感。
魔力が強いとか弱いとかそういう問題じゃない。単に種類が違う。種族が違う。
メルトリアが貴族令嬢としての仮面を脱ぎ捨てた時、むき出しの殺意を叩きつけてくる時、本当に足がすくんで動けなくなる。
周りの人間は良くコレを同族だと思えるわよね。快楽殺人者でもある私ですらが、コレを同族だとはとても思えない。
「……良いわ。で、何をして欲しいの?」
「王とユリウスを殺せ。可及的速やかに。」
「っ!?」
信じられない。王族を殺す? あの絶対である王族を殺すって言った?
「良いから殺せ。訳も聞かず殺せ。あれは私にとっての邪魔者でしかない。」
「私が密告するとは思わないの?」
「大丈夫よ。私はマリーベルを信じてるから。」
密告したら即座に殺してやるって事ね。
「どうせこのままだと貴女は死ぬ。だったら、最後に王族を殺してどこかに逃げたら良い。」
「悪くない取引だわ。」
王族を殺さずに逃げるのも手ね。どこか遠くへ逃げてしまえば、もうメルトリアとは会わずに済……
「言っておくけど、逃げたら生きたまま解体してあげるわよ? 魚の活け造りって知ってる?」
「……知ってるわ。」
「なら良いのよ。出来れば貴女とは良いお友達として終わりたいわ。」
「そうね。良いお友達として貴女に協力しましょう。」
コレはきっと本当にやる。肉や臓器を取り除き、それでも生かされるなどごめん被る。
私の選択肢は初めから存在していなかったのね。
「マリーベル、貴女と仲直り出来て良かったわ。」
「えぇ。私もよメルトリア。」
王族よりもコレを始末した方が世の中の為だと思うけど…………私が世の為人の為に働くはずもない。
私達対王家同盟は味方を増やすべく精力的に学園内の生徒に呼びかけ、結果としてかなりの数の味方を増やす事が出来た。
卒業したマルグリットまでもが学園に姿を現わし、様々な人に声を掛けて回ってくれたのだ。
学園に通う貴族子弟の過半数が対王家同盟に加わってしまい、私達は一勢力などという規模ではなくなっている。
これはもう完全に王家への反逆だ。
「大変よ! マルグリット様がお亡くなりになったわ!」
「私の耳にも入りましたわ!」
ローズマリーとカタリナが慌てた様子で話しかけてきた。
ここまで派手な動きをしてしまえば当然しっぺ返しもある。
馬鹿共の刑が執行されるまで後二日となった今日、マルグリットが死んだという情報は私の耳にも入って来ている。計画通りと言えば計画通り。
マルグリットが旗印なのだから、それを潰せば王家の面目は保たれるとでも王家サイドは思っていたのでしょうし。
「私も聞いています。ほんの少しだけ……そうではない事を祈っていましたが、やはり王家は腐っています。マルグリット様の仇を討たなければなりません。」
「それは勿論だけど……どうするのよ? マルグリット様がこうして暗殺された以上、私達の勢力は勢いを失うわ。」
「ローズマリー様のおっしゃる通りです。早急に誰かがまとめ上げる必要がございますけど、マルグリット様がこのような結果になってしまったからには誰もやりたがらないかと。」
そうね。きっとこんな勢力のまとめ役なんて誰もやりたがらない。マルグリットという前例が出来てしまったわけだし、トップに立てば死ぬと言う事が分かってしまったのだから。
「私がやります。こんな危険な役は他の誰かに任せられません。私がこの勢力のまとめ役を引き継ぎましょう。」
「ちょっと!? 何を言ってるのよメルトリア! 貴女馬鹿じゃないの!?」
「そうです! 絶対に危険ですわ!」
私の発言に対して食って掛かってくる二人はまとめ役を務める危険性を理解しているようね。
「大丈夫です。すぐに決着してみせますから。」
「何か策があるという事? でも……。」
「本当に大丈夫よローズマリー。王家が常識外の手を使うのなら、私も常識外の手を使って見せましょう。」
「常識外の手?」
そう、常識外の手よ。
常識では考えられないあり得ない手。
私はメルトリアに負けた。
婚約者候補としても、政争でも。
政争に関しては自身があった。我がケラトル家は王家の闇を担っている為、どう足掻いても勝てないとなれば、直接メルトリアを消してしまえば良いと思っていた。
「マリーベル。お前の力を私に寄越せ。」
「……。」
いよいよ刑を執行される2日前の今日。メルトリアが面会を求めて訪ねて来た。
正直、こいつと一緒の空間には一秒たりとも居たくない。負けたから悔しいとかではなくて、純粋に恐怖を感じるから。
「王家の闇の力を寄越せと言っているの。理解出来ない?」
「……理解は出来るわ。」
こいつは……きっと人間じゃない。
私は性根が腐っているという自覚はあるし、人が死ぬのに喜びを感じたりもする。
でもメルトリアは……特に何を思うでもなく作業として淡々と人殺しを行っている節がある。
一緒の空間にいると、それこそ肉食獣と超至近距離で過ごしているような感覚に陥って落ち着かない。
何故誰も疑問に思わないのかが理解出来ない。
「私は負けた。だから力を渡す事にも特に否はない。でも、どうせ一族郎党処刑なのだから私が肯定の返事をしても意味がないわよ?」
「意味はある。私が特別に貴方達の一族を解放してあげるわ。」
「は?」
「その代わり、お前たちの伝手を全て寄越せと言っているのよ。ケラトル家は暗殺者も抱えているだろうし、何なら親族にも暗殺者がいるんじゃないの?」
確かにケラトル家にはそう言った伝手があるし、暗殺者も抱え込んでいる。叔父にあたる人物なんて現役の暗殺者でもある。
「理解出来ないわ。私を殺そうとして追い込んだのではなくて?」
何を考えているの?
私を解放? 意味が分からないわ。
「良いからつべこべ言わずに寄越せ。殺すわよ?」
これだ。圧倒的なまでの存在感。
魔力が強いとか弱いとかそういう問題じゃない。単に種類が違う。種族が違う。
メルトリアが貴族令嬢としての仮面を脱ぎ捨てた時、むき出しの殺意を叩きつけてくる時、本当に足がすくんで動けなくなる。
周りの人間は良くコレを同族だと思えるわよね。快楽殺人者でもある私ですらが、コレを同族だとはとても思えない。
「……良いわ。で、何をして欲しいの?」
「王とユリウスを殺せ。可及的速やかに。」
「っ!?」
信じられない。王族を殺す? あの絶対である王族を殺すって言った?
「良いから殺せ。訳も聞かず殺せ。あれは私にとっての邪魔者でしかない。」
「私が密告するとは思わないの?」
「大丈夫よ。私はマリーベルを信じてるから。」
密告したら即座に殺してやるって事ね。
「どうせこのままだと貴女は死ぬ。だったら、最後に王族を殺してどこかに逃げたら良い。」
「悪くない取引だわ。」
王族を殺さずに逃げるのも手ね。どこか遠くへ逃げてしまえば、もうメルトリアとは会わずに済……
「言っておくけど、逃げたら生きたまま解体してあげるわよ? 魚の活け造りって知ってる?」
「……知ってるわ。」
「なら良いのよ。出来れば貴女とは良いお友達として終わりたいわ。」
「そうね。良いお友達として貴女に協力しましょう。」
コレはきっと本当にやる。肉や臓器を取り除き、それでも生かされるなどごめん被る。
私の選択肢は初めから存在していなかったのね。
「マリーベル、貴女と仲直り出来て良かったわ。」
「えぇ。私もよメルトリア。」
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