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第17話 ローズマリー=ペトレネート
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第一王子殿下失脚計画は、いつの間にか四人にとっての計画になっている。
あれから常に三人のうち誰か、もしくは全員と行動を共にする事で、私の周囲は驚く程安全になった。
ゲームシナリオではカタリナ=ブラウン侯爵令嬢が言い掛かりをつけてくる時期に入ったのだけど、その様子がまるでない。
まるでなくはないか。時々睨まれてはいる。
「カタリナはなんでメルトリアを睨むのかしら?」
「どうやら彼女の婚約者が私に懸想しているようよ。」
「なにそれ? 完全な言い掛かりじゃない。ちょっと脅してくるわ。」
いきなり脅すのはどうかと思う。
後、何も文句を言ってきていないから言い掛かりでもない。
「ちょっと、いきなり脅すと角が立つわ。」
「なによ。良いじゃない。メルトリアを睨むなんて生意気なのよ。」
ローズマリーって味方にするとこんなに頼もしいのね。
というか私の事、実はちゃんと仲間だと思ってくれている?
「貴女が言い掛かりをつけている事になるわ。」
「なら、その男に話をつけるわ。婚約者の根性曲がり女でも見てろってね。」
な、なんて気が強い。
どちらにせよ、私達の計画を考えるとわざわざ敵を増やすのは得策では無い。
止めなければ。
「良いから。別に害もないし。」
本気で怒ってくれているのが分かるのでほんのり嬉しい。
「害があったらけちょんけちょんに潰してやるわよ。」
「そうね。害があったら私が殺してやろうと思っていたわ。」
「え?」
ローズマリーって呆けた顔もするんだ。
案外間抜けで可愛いわ。
「うん? どうかした?」
「あ、えっと……良く聞こえなかった、かも?」
この娘どうしたのかしら。
急に静かになってしまったけど、変な事言ったっけ?
「もう。急にどうしたのよ。とにかく、突っかかっていくのは良くないわ。」
「そ、そうよね。うん……(私ったら聞き間違えちゃっただけよね。)」
変なの。
最後のほうはボソボソ言ってて聞こえなかったけど、ローズマリーが突撃していかなくて良かったわ。
「お待ち下さい。」
「はい?」
急に話しかけられ何事かと立ち止まればそこには更に別の敵対ヒロイン、クラリッサ=キャンベル伯爵令嬢が立っていた。
「あの視線を感じても何もお思いにならないのですか?」
「えっと……。」
「カタリナ様が可哀想だと思われないのでしょうかと聞いています。」
へぇ。
シナリオから外れた行動を取っていると、やはり微妙に辿る道筋も変わるのね。
クラリッサ伯爵令嬢は私がカタリナを殺しきれなかった場合に敵対してくる相手だ。
「何故黙るのですか。可哀想だと思わ……」
「うるさいわね。貴女、どこの誰よ。私をローズマリー=ペトレネートと知っていて話を遮っているのかしら?」
「あ、いえ……でも、ここは学園ですから。身分の上では対等なはずだと……。」
「対等なはずがないでしょう。ここで諍いを起こしてしまえば、卒業後もその遺恨は残ったまま社交界に出るのよ? 身分だってついて回るわ。貴女馬鹿じゃないの?」
「……。」
「貴女が喧嘩を売ったのは未来の王妃よ? 貴女、一生結婚相手の家が王家に睨まれた状態で過ごすのかしら? それとも結婚しないつもり? だったら、実家にだけ迷惑がかかるから問題ないわね。」
「え? あ、あの……。」
「何よ?」
「言葉遣いが、貴族令嬢にあるまじきものでは……と。」
この娘凄いわね。
今の状況で弱弱しくも言い返すだなんて、本当にアホなのかしら。
まぁ、アホだったわね。だから私に殺されるハメになるキャラなのだから。
「貴女が貴族令嬢未満だから、相応の対応をしてやってるのよ? 有難く思いなさい。格上に名乗りもしないクラリッサ=キャンベル伯爵令嬢。」
「し、知っているのなら、別に……。」
「貴女のご実家、確かレイチェルのところに布や花を販売して稼いでいるわよね。レイチェルは貴女のご実家と取引しなくてもやっていけるそうよ?」
「えっ……。」
「何よ。別にそうするだなんて言っていないわ。ただ、小耳に挟んだ話を教えてあげただけでしょ? 私がいじめたみたいな顔をするのはやめなさい。不愉快よ。」
「し、しし失礼致しました! どうか、どうかお許しを……。」
「知らないわよ。カタリナ=ブラウン侯爵令嬢のご実家がテレーゼのお父様にお世話になって頭が上らない状態だとしても、私には関係ないわ。」
「あ、やっ……やめて下さい! カタリナ様は関係……」
「あるわよ。貴女本当に貴族の家柄なの? こんな事も分からない? どこで誰が誰と繋がっているかも気にしないで発言してるの?」
「申し訳ありません! 本当に申し訳ありませんでした!」
「あのね。婚約者の男が勝手にメルトリアに懸想し、それを女が敵視してくるなんて馬鹿な話だと思わない? これって誰が悪いと思う? 脇見してる男の方でしょうが。」
「お、おっしゃる通りです。」
「そうでしょう?」
「は、はい!」
「ですってよ。カタリナ=ブラウン侯爵令嬢様?」
「あっ……。」
一部始終を聞いて、顔を青くしたり赤くしたりと忙しいカタリナ侯爵令嬢がクラリッサ伯爵令嬢を睨んでいる。
「クラリッサ……貴女ねぇ!」
「申し訳ありません!」
「貴女方、どうしてそんな面白いコントを私に見せてくれる気になったのか教えて下さらない?」
「あ、その……。」
「クラリッサが失礼致しました。」
カタリナはすぐさま謝罪しているが、第一王子の婚約者候補に選ばれるような人物がここで終わらせるはずもない。
「カタリナ様はどう思われますか? 自分の婚約者が他の女性に懸想した場合、その女性が悪いのかしら?」
「あ、あの……私が嫉妬心から逆恨みをしていました。申し訳ございません。」
「まぁまぁ。そうでしたの? 今度からはお友達や恨む相手を間違えないと良いですわね? 謝罪も頂きましたし、私は気にしませんわ。メルトリア様もお心が広いから許して下さると思います。」
あっ、私の番か。
「そうですね。謝罪も頂きましたので、この話は終わりにしましょう。よろしければ、カタリナ様も私共とお友達になってみては如何でしょうか? 嫌なら仕方ありませんが。」
「は、はい。二度と逆恨みは致しません。お友達にして頂けるのであれば喜んで!」
よしよし。
試しにやってみたけど、敵対ヒロインは味方に出来る事がこれで分かったわ。
ローズマリーったら、ガンガン責め立てるから落としどころを用意しているか心配だったけど、案外考えてくれていたのね。
丁度使い潰せる適度にお馬鹿なお友達が欲しいと思っていたのよ。
「あの……私は……。」
「あら? まだいたの? クラリッサ伯爵令嬢。貴女は貴族令嬢未満だからお友達にはちょっと難しいのよ。お父様に叱られてしまいますから。」
おっと。ここでクラリッサ伯爵令嬢を追い払ってしまうと、別グループと合流して敵対するかもしれない。
どうせなら、使い捨て出来る馬鹿も欲しい。
「まぁまぁ、そうおっしゃらず。大丈夫ですよ。ローズマリー様はこうはおっしゃるけれどお優しい方ですので、口では言っても実際には酷い事なんてしませんから。」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「もしかして貴女もお友達になって下さろうとしてるのかしら?」
「は、はい! よろしければぜひ!」
「ではクラリッサ様もよろしくお願いいたしますね。」
「はい! 申し訳ございませんでした。」
よし! これで適度な馬鹿とかなりの馬鹿の二人をお友達に加えられたわ。
クラリッサは死なせても良いお友達にして、カタリナは使い潰しても良いお友達にしようかな。
あ、カタリナは身分も侯爵令嬢だし、スケープゴートのお友達を兼任させても良いわね。
お友達って素晴らしいわ。
あれから常に三人のうち誰か、もしくは全員と行動を共にする事で、私の周囲は驚く程安全になった。
ゲームシナリオではカタリナ=ブラウン侯爵令嬢が言い掛かりをつけてくる時期に入ったのだけど、その様子がまるでない。
まるでなくはないか。時々睨まれてはいる。
「カタリナはなんでメルトリアを睨むのかしら?」
「どうやら彼女の婚約者が私に懸想しているようよ。」
「なにそれ? 完全な言い掛かりじゃない。ちょっと脅してくるわ。」
いきなり脅すのはどうかと思う。
後、何も文句を言ってきていないから言い掛かりでもない。
「ちょっと、いきなり脅すと角が立つわ。」
「なによ。良いじゃない。メルトリアを睨むなんて生意気なのよ。」
ローズマリーって味方にするとこんなに頼もしいのね。
というか私の事、実はちゃんと仲間だと思ってくれている?
「貴女が言い掛かりをつけている事になるわ。」
「なら、その男に話をつけるわ。婚約者の根性曲がり女でも見てろってね。」
な、なんて気が強い。
どちらにせよ、私達の計画を考えるとわざわざ敵を増やすのは得策では無い。
止めなければ。
「良いから。別に害もないし。」
本気で怒ってくれているのが分かるのでほんのり嬉しい。
「害があったらけちょんけちょんに潰してやるわよ。」
「そうね。害があったら私が殺してやろうと思っていたわ。」
「え?」
ローズマリーって呆けた顔もするんだ。
案外間抜けで可愛いわ。
「うん? どうかした?」
「あ、えっと……良く聞こえなかった、かも?」
この娘どうしたのかしら。
急に静かになってしまったけど、変な事言ったっけ?
「もう。急にどうしたのよ。とにかく、突っかかっていくのは良くないわ。」
「そ、そうよね。うん……(私ったら聞き間違えちゃっただけよね。)」
変なの。
最後のほうはボソボソ言ってて聞こえなかったけど、ローズマリーが突撃していかなくて良かったわ。
「お待ち下さい。」
「はい?」
急に話しかけられ何事かと立ち止まればそこには更に別の敵対ヒロイン、クラリッサ=キャンベル伯爵令嬢が立っていた。
「あの視線を感じても何もお思いにならないのですか?」
「えっと……。」
「カタリナ様が可哀想だと思われないのでしょうかと聞いています。」
へぇ。
シナリオから外れた行動を取っていると、やはり微妙に辿る道筋も変わるのね。
クラリッサ伯爵令嬢は私がカタリナを殺しきれなかった場合に敵対してくる相手だ。
「何故黙るのですか。可哀想だと思わ……」
「うるさいわね。貴女、どこの誰よ。私をローズマリー=ペトレネートと知っていて話を遮っているのかしら?」
「あ、いえ……でも、ここは学園ですから。身分の上では対等なはずだと……。」
「対等なはずがないでしょう。ここで諍いを起こしてしまえば、卒業後もその遺恨は残ったまま社交界に出るのよ? 身分だってついて回るわ。貴女馬鹿じゃないの?」
「……。」
「貴女が喧嘩を売ったのは未来の王妃よ? 貴女、一生結婚相手の家が王家に睨まれた状態で過ごすのかしら? それとも結婚しないつもり? だったら、実家にだけ迷惑がかかるから問題ないわね。」
「え? あ、あの……。」
「何よ?」
「言葉遣いが、貴族令嬢にあるまじきものでは……と。」
この娘凄いわね。
今の状況で弱弱しくも言い返すだなんて、本当にアホなのかしら。
まぁ、アホだったわね。だから私に殺されるハメになるキャラなのだから。
「貴女が貴族令嬢未満だから、相応の対応をしてやってるのよ? 有難く思いなさい。格上に名乗りもしないクラリッサ=キャンベル伯爵令嬢。」
「し、知っているのなら、別に……。」
「貴女のご実家、確かレイチェルのところに布や花を販売して稼いでいるわよね。レイチェルは貴女のご実家と取引しなくてもやっていけるそうよ?」
「えっ……。」
「何よ。別にそうするだなんて言っていないわ。ただ、小耳に挟んだ話を教えてあげただけでしょ? 私がいじめたみたいな顔をするのはやめなさい。不愉快よ。」
「し、しし失礼致しました! どうか、どうかお許しを……。」
「知らないわよ。カタリナ=ブラウン侯爵令嬢のご実家がテレーゼのお父様にお世話になって頭が上らない状態だとしても、私には関係ないわ。」
「あ、やっ……やめて下さい! カタリナ様は関係……」
「あるわよ。貴女本当に貴族の家柄なの? こんな事も分からない? どこで誰が誰と繋がっているかも気にしないで発言してるの?」
「申し訳ありません! 本当に申し訳ありませんでした!」
「あのね。婚約者の男が勝手にメルトリアに懸想し、それを女が敵視してくるなんて馬鹿な話だと思わない? これって誰が悪いと思う? 脇見してる男の方でしょうが。」
「お、おっしゃる通りです。」
「そうでしょう?」
「は、はい!」
「ですってよ。カタリナ=ブラウン侯爵令嬢様?」
「あっ……。」
一部始終を聞いて、顔を青くしたり赤くしたりと忙しいカタリナ侯爵令嬢がクラリッサ伯爵令嬢を睨んでいる。
「クラリッサ……貴女ねぇ!」
「申し訳ありません!」
「貴女方、どうしてそんな面白いコントを私に見せてくれる気になったのか教えて下さらない?」
「あ、その……。」
「クラリッサが失礼致しました。」
カタリナはすぐさま謝罪しているが、第一王子の婚約者候補に選ばれるような人物がここで終わらせるはずもない。
「カタリナ様はどう思われますか? 自分の婚約者が他の女性に懸想した場合、その女性が悪いのかしら?」
「あ、あの……私が嫉妬心から逆恨みをしていました。申し訳ございません。」
「まぁまぁ。そうでしたの? 今度からはお友達や恨む相手を間違えないと良いですわね? 謝罪も頂きましたし、私は気にしませんわ。メルトリア様もお心が広いから許して下さると思います。」
あっ、私の番か。
「そうですね。謝罪も頂きましたので、この話は終わりにしましょう。よろしければ、カタリナ様も私共とお友達になってみては如何でしょうか? 嫌なら仕方ありませんが。」
「は、はい。二度と逆恨みは致しません。お友達にして頂けるのであれば喜んで!」
よしよし。
試しにやってみたけど、敵対ヒロインは味方に出来る事がこれで分かったわ。
ローズマリーったら、ガンガン責め立てるから落としどころを用意しているか心配だったけど、案外考えてくれていたのね。
丁度使い潰せる適度にお馬鹿なお友達が欲しいと思っていたのよ。
「あの……私は……。」
「あら? まだいたの? クラリッサ伯爵令嬢。貴女は貴族令嬢未満だからお友達にはちょっと難しいのよ。お父様に叱られてしまいますから。」
おっと。ここでクラリッサ伯爵令嬢を追い払ってしまうと、別グループと合流して敵対するかもしれない。
どうせなら、使い捨て出来る馬鹿も欲しい。
「まぁまぁ、そうおっしゃらず。大丈夫ですよ。ローズマリー様はこうはおっしゃるけれどお優しい方ですので、口では言っても実際には酷い事なんてしませんから。」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「もしかして貴女もお友達になって下さろうとしてるのかしら?」
「は、はい! よろしければぜひ!」
「ではクラリッサ様もよろしくお願いいたしますね。」
「はい! 申し訳ございませんでした。」
よし! これで適度な馬鹿とかなりの馬鹿の二人をお友達に加えられたわ。
クラリッサは死なせても良いお友達にして、カタリナは使い潰しても良いお友達にしようかな。
あ、カタリナは身分も侯爵令嬢だし、スケープゴートのお友達を兼任させても良いわね。
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