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第14話 嘘に嘘を重ね
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っとイケナイ。変な事を考えている場合じゃなかった。
策謀によってこの娘を味方に取り込むのよ。
「私も初めはマリーベル様を疑いました。ですが、途中で気付いてしまったのです。」
「まさか真犯人が?」
「証拠はありませんし、あくまで仮説でしかないのですが……シュナイザー殿下、またはそれに組する者の仕業ではないか、と。」
言ってやった。
クソ王子を追い落とす策謀の第一歩目。
さぁ、この娘はどう出る?
「今のは聞かなかった事と致します。メルトリア様は婚約者ではありませんか。流石に証拠もなしにお疑いになるのは如何なものかと思います。」
テレーゼは眉を顰めてそっぽを向いてしまった。
あれ? ひょっとしたらこれは、まずい?
第二王子派閥だからイケると思ったけど……とにかく畳み掛けてしまえ!
「テレーゼ様、私も適当に申し上げているのではございません。あの写真が第一王子の元婚約者候補全員と第二王子殿下に送られ、第一王子殿下にだけ送られていないのはご存知ですか? あの写真について私が問い詰めた時、シュナイザー殿下は『絶対にやってない』と言って目を泳がせたのはご存知ですか? ジュリア様のご実家が王家より援助を賜っているのはご存知ですか?」
「え? え?」
目を丸くして困惑しているテレーゼ。
可愛い。
「今のお話、ご存知でしたか?」
「えっと、どのお話も初耳でしたが……それがどうして。」
「ジュリア様が写真を送った張本人であれば、シュナイザー殿下に送られていないのは当然なのです。逢瀬を重ねている本人同士ですからわざわざ送る必要もございません。」
「はい。それに関しては納得出来ます。」
「ジュリア様のご実家が援助を賜っていたのは、実家さえもグルでジュリア様を始末したからです。」
「推測の域を出ないと思いますが……。」
この程度では騙せないわよね。
いくらテレーゼが良い娘だからと言って、無条件で信じるような馬鹿ではない。
「私が確信したのは、ジュリア様のご遺体が見つからないからでした。」
「どういう事でしょうか? 行方が分からないのだから見つかりようもないと思いますけど。」
「テレーゼ様はご存知ないのですね。ご遺体が見つからないと言ったのは少し語弊がありました。正確に言えば、ジュリア様は左腕だけが見つかっております。ご遺体を調べられると困る原因があったから、と推測出来ます。」
「そんな……。」
「本当は腕すらも残さない予定だったのだと思いますけど、ジュリア様はお気に入りのブレスレットを身に付けていました。それが魔除けだった為に、装着されていた左腕だけが残ったのです。」
両手で顔を覆い隠して悲しむ様子のテレーゼ。
これ以上言うのは可哀想だけど、聞いてもらわなければこちらも困る。
「やる、やらない。といった言葉は殺害の時にも用いますが、肉体関係をさす場合もございます。シュナイザー殿下は『やってない』とおっしゃいました。口づけの事をさすのであれば『してない』が正しい表現だと思います。」
「言われてみれば……。」
「写真の事を問い詰められ『やってない』と言ったのは写真の事からある事実が発覚するのではないかと焦ったからです。」
「ある事実、ですか?」
「結論を申し上げます。ジュリア様は証拠になるような写真を他の高位貴族令嬢に送ったから始末された。それは彼女とシュナイザー殿下に肉体関係があり、ご懐妊されていたから。」
「まさか……。」
「まさか、と思うでしょうが私はそう確信しております。だから問い詰められたシュナイザー殿下は焦ったのでしょう。だからご遺体が出て来ないのでしょう。だから口封じの為実家が援助を賜ったのでしょう。」
「……。」
「私の発言に矛盾はありましたか?」
「……いえ。」
「私が不敬だと思いますか?」
「……いいえ。」
「私は……こんな事をされるような殿方と結婚は出来ませんし、したくありません。ジュリア様は確かに私を邪魔に思っていたようですが、私は妹のように思っていました。このような仕打ちを受けたジュリア様が不憫でなりません!」
「そう、ですね……。今の話が本当であれば私も同感です。」
もう少しで上手く引き込めそうね。
殺害した犯人はマリーベルだし、写真を送ったのは私。
今の発言も全部が辻褄合わせのデタラメ。
「確かに、証拠はなくても辻褄は合っています。ですが、いくらなんでも……。」
よしよし。疑念を植え付ける事が出来たわ。
更にトドメといきましょうか。
「マリーベル様は第一王子派閥。裏では第一王子が、実行犯はマリーベル様のご実家が、役割分担としては最適だとお思いになりませんか? 今までも高位ではない貴族令嬢がいなくなる不可解な事件がありましたでしょう?」
「は、い……。」
テレーゼったら声が震えてるわ。
きっと、王家の闇を垣間見てしまった気になっているのね。
「行方不明になった方々はマリーベル様にとって邪魔だから消されたのだと思っていましたが、きっと違うんです。」
「……。」
「三年前に亡くなられた方。第一王子の婚約者候補として名前が挙がった中で、唯一家格が低い方がいらっしゃいました。」
「覚えて、おります。」
「彼女はシュナイザー殿下の覚えもめでたく、私達の中で一番仲がよろしいように見受けられました。」
「私も、そう思っておりました。」
「彼女、実はシュナイザー殿下と隠れて肉体関係があるのではと噂され、王が眉を顰めていらっしゃったのは記憶にございませんか?」
「あります! 噂は噂ですし、家格が低い者との結婚がお気に召さない方の噂話でしかないのだと思っていましたが……。」
「そうです。彼女、アイリ様は……恐らくご懐妊なさっていて、それをお気に召さない王が排除してしまったのだと思います。アイリ様は今でもご遺体が見つかっておりません。アイリ様のご実家は何故か家格に見合わず裕福でいらっしゃいます。資金の出処は……。」
「……王家。」
「そういう事です。」
あの家が裕福なのは事業が上手くいっているだけなんだけどね。
「あの時、マリーベル様のご実家がやったのでは? と噂がありましたのも……。」
「実際には王が裏で糸を引き、マリーベル様のご実家が……という事だと思っています。」
私の言葉を聞いたテレーゼは俯き、必死に涙を堪えている。
優しい娘だわ。
「うぅ……うっ……。」
「国内の高位貴族は軒並み酷い有り様です。王家まで……とは思いもよらなかった事でしょう。申し訳ありませんテレーゼ様。私が口をつぐんでおけば……。」
「そ、そんな事。そんな事はありません! 私も真実を知る事が出来て良かったと思います!」
「ありがとうございます。ジュリア様の事を考えると、私悔しくて、誰かに気付いて欲しくて……。」
「ドントレス大公に、相談致しましょう。あの方はどんな時も清廉潔白で、公平な判断をなさいます。先々代の王にはそれが疎まれ、当時第一王子であったあの方は王にはなれなかったのだと伺っています。」
やばっ。やり過ぎた。
忘れてたけど、テレーゼはドントレス大公の外孫にあたるのよね
そもそもが辻褄合わせの適当なホラ話を事実であるかのように語っただけで、証拠らしい証拠が一つもない。
ドントレス大公にまで話がいってしまうのは非常に具合が悪いわ。
策謀によってこの娘を味方に取り込むのよ。
「私も初めはマリーベル様を疑いました。ですが、途中で気付いてしまったのです。」
「まさか真犯人が?」
「証拠はありませんし、あくまで仮説でしかないのですが……シュナイザー殿下、またはそれに組する者の仕業ではないか、と。」
言ってやった。
クソ王子を追い落とす策謀の第一歩目。
さぁ、この娘はどう出る?
「今のは聞かなかった事と致します。メルトリア様は婚約者ではありませんか。流石に証拠もなしにお疑いになるのは如何なものかと思います。」
テレーゼは眉を顰めてそっぽを向いてしまった。
あれ? ひょっとしたらこれは、まずい?
第二王子派閥だからイケると思ったけど……とにかく畳み掛けてしまえ!
「テレーゼ様、私も適当に申し上げているのではございません。あの写真が第一王子の元婚約者候補全員と第二王子殿下に送られ、第一王子殿下にだけ送られていないのはご存知ですか? あの写真について私が問い詰めた時、シュナイザー殿下は『絶対にやってない』と言って目を泳がせたのはご存知ですか? ジュリア様のご実家が王家より援助を賜っているのはご存知ですか?」
「え? え?」
目を丸くして困惑しているテレーゼ。
可愛い。
「今のお話、ご存知でしたか?」
「えっと、どのお話も初耳でしたが……それがどうして。」
「ジュリア様が写真を送った張本人であれば、シュナイザー殿下に送られていないのは当然なのです。逢瀬を重ねている本人同士ですからわざわざ送る必要もございません。」
「はい。それに関しては納得出来ます。」
「ジュリア様のご実家が援助を賜っていたのは、実家さえもグルでジュリア様を始末したからです。」
「推測の域を出ないと思いますが……。」
この程度では騙せないわよね。
いくらテレーゼが良い娘だからと言って、無条件で信じるような馬鹿ではない。
「私が確信したのは、ジュリア様のご遺体が見つからないからでした。」
「どういう事でしょうか? 行方が分からないのだから見つかりようもないと思いますけど。」
「テレーゼ様はご存知ないのですね。ご遺体が見つからないと言ったのは少し語弊がありました。正確に言えば、ジュリア様は左腕だけが見つかっております。ご遺体を調べられると困る原因があったから、と推測出来ます。」
「そんな……。」
「本当は腕すらも残さない予定だったのだと思いますけど、ジュリア様はお気に入りのブレスレットを身に付けていました。それが魔除けだった為に、装着されていた左腕だけが残ったのです。」
両手で顔を覆い隠して悲しむ様子のテレーゼ。
これ以上言うのは可哀想だけど、聞いてもらわなければこちらも困る。
「やる、やらない。といった言葉は殺害の時にも用いますが、肉体関係をさす場合もございます。シュナイザー殿下は『やってない』とおっしゃいました。口づけの事をさすのであれば『してない』が正しい表現だと思います。」
「言われてみれば……。」
「写真の事を問い詰められ『やってない』と言ったのは写真の事からある事実が発覚するのではないかと焦ったからです。」
「ある事実、ですか?」
「結論を申し上げます。ジュリア様は証拠になるような写真を他の高位貴族令嬢に送ったから始末された。それは彼女とシュナイザー殿下に肉体関係があり、ご懐妊されていたから。」
「まさか……。」
「まさか、と思うでしょうが私はそう確信しております。だから問い詰められたシュナイザー殿下は焦ったのでしょう。だからご遺体が出て来ないのでしょう。だから口封じの為実家が援助を賜ったのでしょう。」
「……。」
「私の発言に矛盾はありましたか?」
「……いえ。」
「私が不敬だと思いますか?」
「……いいえ。」
「私は……こんな事をされるような殿方と結婚は出来ませんし、したくありません。ジュリア様は確かに私を邪魔に思っていたようですが、私は妹のように思っていました。このような仕打ちを受けたジュリア様が不憫でなりません!」
「そう、ですね……。今の話が本当であれば私も同感です。」
もう少しで上手く引き込めそうね。
殺害した犯人はマリーベルだし、写真を送ったのは私。
今の発言も全部が辻褄合わせのデタラメ。
「確かに、証拠はなくても辻褄は合っています。ですが、いくらなんでも……。」
よしよし。疑念を植え付ける事が出来たわ。
更にトドメといきましょうか。
「マリーベル様は第一王子派閥。裏では第一王子が、実行犯はマリーベル様のご実家が、役割分担としては最適だとお思いになりませんか? 今までも高位ではない貴族令嬢がいなくなる不可解な事件がありましたでしょう?」
「は、い……。」
テレーゼったら声が震えてるわ。
きっと、王家の闇を垣間見てしまった気になっているのね。
「行方不明になった方々はマリーベル様にとって邪魔だから消されたのだと思っていましたが、きっと違うんです。」
「……。」
「三年前に亡くなられた方。第一王子の婚約者候補として名前が挙がった中で、唯一家格が低い方がいらっしゃいました。」
「覚えて、おります。」
「彼女はシュナイザー殿下の覚えもめでたく、私達の中で一番仲がよろしいように見受けられました。」
「私も、そう思っておりました。」
「彼女、実はシュナイザー殿下と隠れて肉体関係があるのではと噂され、王が眉を顰めていらっしゃったのは記憶にございませんか?」
「あります! 噂は噂ですし、家格が低い者との結婚がお気に召さない方の噂話でしかないのだと思っていましたが……。」
「そうです。彼女、アイリ様は……恐らくご懐妊なさっていて、それをお気に召さない王が排除してしまったのだと思います。アイリ様は今でもご遺体が見つかっておりません。アイリ様のご実家は何故か家格に見合わず裕福でいらっしゃいます。資金の出処は……。」
「……王家。」
「そういう事です。」
あの家が裕福なのは事業が上手くいっているだけなんだけどね。
「あの時、マリーベル様のご実家がやったのでは? と噂がありましたのも……。」
「実際には王が裏で糸を引き、マリーベル様のご実家が……という事だと思っています。」
私の言葉を聞いたテレーゼは俯き、必死に涙を堪えている。
優しい娘だわ。
「うぅ……うっ……。」
「国内の高位貴族は軒並み酷い有り様です。王家まで……とは思いもよらなかった事でしょう。申し訳ありませんテレーゼ様。私が口をつぐんでおけば……。」
「そ、そんな事。そんな事はありません! 私も真実を知る事が出来て良かったと思います!」
「ありがとうございます。ジュリア様の事を考えると、私悔しくて、誰かに気付いて欲しくて……。」
「ドントレス大公に、相談致しましょう。あの方はどんな時も清廉潔白で、公平な判断をなさいます。先々代の王にはそれが疎まれ、当時第一王子であったあの方は王にはなれなかったのだと伺っています。」
やばっ。やり過ぎた。
忘れてたけど、テレーゼはドントレス大公の外孫にあたるのよね
そもそもが辻褄合わせの適当なホラ話を事実であるかのように語っただけで、証拠らしい証拠が一つもない。
ドントレス大公にまで話がいってしまうのは非常に具合が悪いわ。
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