人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい? 誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ

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人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい? 誰がんな事すっかバーカ!

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 私は生まれ故郷の村へ帰ってきていた。悲しい思い出ばかりの村だけど、唯一母だけは味方でいてくれた…そんな故郷。

 今は聖女として活動しているけど…この村にいた時は散々無視され、姿を見せれば魔女だと陰口を言われる日々。

 追い立てられるように村を出た私は、隣国で聖女になってからというもの他国へおいそれと出かける訳にもいかず、母に会いたくて我儘を言ってこの村に戻ってきたのだ。

 そんな私がいかに故郷と言えど、一人でこの村を訪れる事が許可される訳がない。騎士の一団が護衛で付いてきてくれていた。

 母に会う為、騎士を3人引き連れ実家へ歩いていると…


「ねえ、聖女ってのになったんでしょ? 聖女が何か知らないけど、魔女のあんたは昔から変な力で治療出来るんだから治療してよ。」


 突然村の女に話しかけられる。

 可愛いワンピースに身を包んだ彼女は、村娘にしては垢抜けていた。


「貴様!! 聖女様に何て口を叩くんだ! 切り捨ててやる!!」


 騎士団の人達は私をチヤホヤしてくれるとても有難い存在だ。こうして私に嫌な事を言う輩を毎回切り捨てようとするのには困ったものだが…


「ひっ?! すみませんでした! 私、男の子とたくさん遊んでたらお股が痒くなって…聖女様に治療して欲しかったんです。」


 この女は私が昔怪我をさせた男の子と仲が良かった。私がその男の子と遊ぶ度に良く意地悪をされたのを覚えている。

 私は聖女らしくニコリと笑い掛け、言ってやった。


「誰がんな事すっかバーカ!」

「な?!」


 私が言った事が余程以外だったのだろう。

 でも意地悪されてたのに…しかも魔女とか言われたり無視されたのに…何で治療してもらえると思ったの?


「この人はお股より頭の治療をした方が良いんじゃないかしら?」

「何ですって!?」


 彼女は顔を真っ赤にして怒っている。一体どうして?


「ぷっ…聖女様…また、お考えが口から出ています。」


 あら? 私は思った事が時々口から出てしまう癖があり、良く同居人に窘められている。


「ごめんなさいね。私ったら本当の事を言ってしまって。それに…何で男の子と遊ぶとお股が痒くなるかも良く分からないわ…もしかして男の子のせいにしてるのかしら?」

「わかんないの!? お上品ぶってんじゃないわよ!」


 騎士が言い辛そうに言葉を挿む。


「えーと…きっと、彼女はその広いお股でたくさんの男の子を癒して差し上げたのかと…」

「意地悪で言っただけなので、そんなに真面目に答えなくて大丈夫よ?」


 彼女は今にも掴み掛かってきそうな程に私を睨んでいる。仕方ない。


「治療してあげるから、目を閉じて。」

「ふん。最初からそう言えば良いのよ!」


 そう言って目を閉じる彼女。

 私は治療の為、持っていた杖を構え…そこそこの力で彼女の頭に振り下ろした。


「聖女様…? 治療するのでは?」


 頭にコブを作り倒れている女に同情的な視線を向ける騎士達。

 随分と不思議な事を言う。


「頭の治療はしましたよ? 調子が悪い時は、斜め45°の角度で叩けば良いって聞いたことがあります。」


 民間療法ですけど。


「そ…そうですか。」

「そのまま道に寝かせるのも可哀想だから、そこの木の下にお股を広げた状態で座らせてあげてね?」


 私がそう言うと、騎士は気の毒そうな目で彼女を見つめ木の下に移動させていた。


「彼女もきっとたくさんの人を癒した性女だったんだわ…。」

「……。」
「……。」
「……。」


 私が聖女だから緊張させてしまったようで、3人の騎士は黙っている。

 そうして母に会う為、私の実家へと向かった。



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