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外伝:メイド喫茶でバイトテロしたら異世界召喚されました。しかも死に戻り特典付きで。

第9話 制御不明のファクルタース

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 モリちゃんを看取るのは辛いけど、選択肢が出現した時点からはモリちゃんが死ぬまで六年ある。

 この六年という時間を活用して私はモリちゃんと対策を考えつつも、どうせ無理だろうなという気持ちを持ち、モリちゃんと大切な時間を過ごす事に重きを置く。

 モリちゃんは毎回私の話を聞いてくれ、その度に色々と考えてくれる。

 いっそ選択肢を選ばないというのはどうか、選択肢に無い行動を取ってみたらどうか、能力の制御は意識し続ければいずれ出来るのではないか、選択肢が出現する際には他にも何か見えていないのか、等々……

 思いつく限り試してみてはいるものの、どれも効果はみられない。

 単純に試行回数が足りないのか、そもそもやり方が間違えているのか。

 モリちゃんを看取る度に私は自死を選んでいる。

 自死を選ばないで過ごしてみた事も一度はあったが、それでも変化はない。







 そうして最後の選択肢を初めて見た時から次が十度目となる今。

 私が自死を選んだ瞬間…………




【237回目の選択肢後に十度目の死を確認……能力が進化した】
【237回出現した選択肢のうち、いつに戻りますか?】


 私の意識に語り掛けて来る謎のアナウンス。

 さっき確かに死んだはずだったけど、何故か自分の遺体を見下ろしている自分が居て、どの選択肢に戻るのかを問われている。

 意識すれば、何回目の選択肢がいつだったかまでを鮮明に思い出す事が出来た。


『能力の進化? まさかこんな事があるなんて……。』


 という事は、このまま繰り返しを続けていけば死に戻り能力の制御が可能になるかもしれない。


『条件は同じ選択肢の後で十回死ぬ?』


 希望が見えてきた。

 生と死のループから抜け出すには死んだ回数こそが必要だったんだ。

 同じ選択肢の後に何度死んだか……キツイ条件だけど、今までのようにあてもなく時の流れを彷徨うよりは余程マシだった。

 となれば話は早い。先ずは影響の少ない236回目の選択肢に戻る。

 試験的に一つ前の選択肢に戻る事でどのような変化をするのか確かめよう。

 死ぬ回数が条件なら、寿命より前に戻り過ぎても死ぬまでの時間をいたずらに引き延ばすだけで、確実に自分の負担になってしまう。


 私は236回目、つまりは最後の選択肢から更に1年前に戻る事を決意した。





【桜の魂が大幅に強化されました……桜の魂+293759を獲得】
【猫耳カチューシャ+355、メイド服+392を獲得】


「大変残念ですが……既に勇者様は体のあちこちが弱っています。膨大な魔力に体という器が耐えきれないかのようにボロボロになっているようです。正直、良く持った方だと思います。」


 1.余命宣告を受けた事をモリちゃんに内緒にする。
 2.余命宣告を受けた事をモリちゃんに明かす。
 3.やり直した結果、寿命が延びた事を事情と共に説明する。


 私の目の前には医者がいる。

 この時は私が急に倒れたので、医者が医療魔法で私の体を確認してくれたのよね。

 医者が先ずは本人に、と人払いをして私にだけ事情を説明してくれた場面。結果として余命宣告を受ける形になってしまったんだけど。

 ちなみに医療魔法を思いついたのは私。

 日本で暮らしてた頃のイメージで医療魔法なんて使えたら便利だな……なんて思い付きで城に常駐している医者に教えてみたのだ。

 とりあえず、今は増えた選択肢である3を選ぼう。


「教えてくれてありがとう。貴方はもう下がって大丈夫。それからモリちゃんを呼んできて。」

「……はい。かしこまりました勇者様。」


 私の部屋から退室する医者を眺めながら、今後についてを考える。

 モリちゃんにはもう一度初めから説明しよう。









 余命宣告された事と実は戻って色々やったら寿命が延びた事を同時に説明したら、モリちゃんはどうして良いか分からないという顔をしている。


「それは……当面の死は免れたという解釈で良いのか?」

「ま、結果としてはそうなるね。」

「一先ずは安心という事か。しかし死ねないという事に関してはどうしたものか……。」

「うん。今回は能力が進化した事で希望が見えた。だからさ、モリちゃんもそう難しく考えなくて良いよ。そのうち制御がきくようになると思うから。」

「いや、そういう訳には……。」

「大丈夫だって。それにね、対策は散々考えたんだ。でも今回能力が進化するまでは全く手掛かりもなければ効果らしい効果のある対策も見つからなかった。」


 これから先は能力の進化に賭けるしかない。


「まぁ、サクラが言うならその通りなんだろうな。だが俺にも少しは考えさせてくれよ。何か思いついたら必ず言うから。」

「モリちゃん……。」

「惚れ直したか?」

「うん。嬉ション出ちゃう。」

「ちょ……こんな時まで茶化すなよ。今間違いなく良い雰囲気だったから。もうキスとかしそうな感じだったから。」

「ごめんて。」


 モリちゃんはこんな私の悪ふざけに飽きもせず付き合ってくれる。

 相性が良いのに加え、モリちゃんの優しさの賜物なんだろうね。

 能力が進化した事を確認出来たし、実際に自分が選んだ場面まで戻る事が出来たのは僥倖。

 少し疲れたから、今回はモリちゃんと一緒に過ごす事をより重視したい。

 色々と一緒になって対策を考え頭を悩ませるのも悪くはなかったけど、やっぱり穏やかに余生を過ごしたいという気持ちもある。

 能力を進化させる以外はどうにもならないんだし、出来る事はもう無いのだと割り切って、今回ばかりはモリちゃんとゆっくり時間の流れを感じよう。


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