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最終章 幸せな日々
番外編 第29話 サクラは女優
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「お待たせいたしました。サクラ、皆さんに会えるのが嬉しくて準備に時間が掛かっちゃったの。」
自分の頭をコツンと叩き、舌をペロリと出して見せるサクラ。
しかも一人称が自分の名前。
「やあやあ。サクラ殿、待ちわびましたぞ。早くディンと婚約を結ばせないと他の人に盗られてしまうのではないかと気が気じゃありませんでした。」
「サクラさんと会えるのを楽しみにしてたんですよ? でもそういう事なら仕方ないですわね。」
改めて思うけど、ディンの親父さんにもめっちゃ気に入られてるじゃん!
そしてまさかの母親まで!?
「なあアオイ。サクラは何か悪い物でも食ったのか?」
そう。そうだよねレイベルト。これが普通の反応なんだよ。
「サクラ……相変わらず可愛いね。」
「ディン様。ずっとお待ちしておりました。」
おっと、ここで二人の世界に入るの?
二人は互いを見つめ合い、なにやら良い雰囲気だ。
「普段のおっちょこちょいな様子も可愛いけど、ちゃんとした場ではしっかり気を張って出来る女らしい装いをするところも素敵だよ。」
あぁ……成る程ね。
本当のサクラはおっちょこちょいでは全くない。むしろ色々と気が付くし仕事も出来る。
普段は出来る女を装った実はおっちょこちょいの女の子を演出したというわけだ。
それならたまにおっちょこちょいを見せてやるだけで、相手は勝手に「サクラは良く頑張ってるんだな。」とプラスの印象を抱きさえする。
流石だ。
サクラの媚びには穴が無い。
「あっ……誰かが助けを呼ぶ声が聞こえる。」
「は?」
「え?」
この子、急に何言ってんの?
サクラはやけに真剣な顔で意味不明な事を呟いたかと思えば、胸に付けているブローチを手に取った。
「プリティキューティーミラクルパワー!」
謎の呪文を唱えたかと思えばブローチが輝き、サクラの体は虹色に包まれコスチュームチェンジが始まる。
そしてどこからともなく出現した衣装が体を回転させる彼女へ次々と装着されていく。
「サクラ……案外デカいな。」
「レイベルト。後で私の触らせてあげるからそういう事言うのやめて。」
娘の胸を見てデカいと感心する父親。よそ様の前でみっともない。
「闇より這い出でし混沌を倒す為、地獄の特訓から生還した冥土戦士。マジナガムーンキャット参上! 私の行いは全てが天の意思!」
ビシっと決めポーズを取り、猫耳カチューシャとメイド服を装備したサクラ。
あのさ。それ、一応国宝なんだけど。
「今日もマジナガムーンキャットが来てくれた!」
「相変わらず素敵だわ!」
「サクラ! 今日はどんな悪と戦うんだ!?」
わーお。
ザーラル家の皆さん。普通にサクラの奇行を受け入れてんじゃん。
でも、これで分かったよ。サクラがやけに気に入られてる理由が。
この世界で娯楽と言えばかなり限られている。
そんな中で人知れず悪と戦う可憐な魔法少女を演じれば、たちまち人々を虜にしてしまえるというわけだね。
「助けを求める少女の心の声が聞こえるわ。急がなきゃ!」
そう言ってどこかへ走り出すサクラと追いかけるザーラル家の皆さん。
「あ、おい。どこへ……。」
「レイベルト。追いかけるよ。」
理解の追い付いていないレイベルトを引っ張り、私達もサクラを追いかけた。
「キャー! 誰か助けてー!」
「へっへっへ。良いからお前のパンツを嗅がせろ。こんな路地裏に誰も助けになんて来ねえぜ?」
「それはどうかしら?」
「だ、誰だ!?」
サクラを追ってきてみれば、女の子がならず者に襲われていた。
「私はマジナガムーンキャット。闇より這い出でし混沌を倒す者よ。」
「妙な恰好でわけのわかんねぇ事を……。お前のパンツを嗅がせろ!」
ならず者は標的をサクラに変え、破廉恥な事を叫びながら襲い掛かる。
「なんて恐ろしい奴なの!? えーい!」
襲われたサクラは可愛らしい掛け声とともに、魔法のステッキらしき物でならず者をブッ叩いた。
メキョリと気色の悪い音を立てて吹っ飛んでいくならず者。
えらくバイオレンスな魔法少女だ。
てか死んでないよねあの人?
「助けてくれてありがとうございます!」
「まだよ!」
助けられお礼を言う少女に待ったをかけるサクラ。
倒れているならず者からは黒いモヤが湧き出ている。
「な、なんですかあれ?」
「あれは闇より這い出し混沌。あれを倒さなければ解決しないの。」
サクラはステッキをバトンのように振り回して先端をピッと黒いモヤに突き付けた。
「ナガツキパワーは悪を許さない。滅せよ。」
物騒なセリフとともにステッキが光り、黒いモヤが一瞬で消滅する。
私もあんな怪しげなものは見た事がない。大方サクラの演出なんだろうけど、随分と凝ってるね。
黒いモヤからは邪悪な気配が漏れ出ていた。
気配までもを演出するなんてなかなかやるじゃん。
「今日もマジナガムーンキャットが悪を成敗したわ!」
「やはり彼女に任せておけば全ては解決だな!」
「サクラ……今日も素敵だ。」
「ふふ。サクラがマジナガムーンキャットだって、他の人には内緒ですよ?」
お茶目にウインクして見せるサクラは女優だった。
そっか。これがサクラの答えなんだ。
強い女の子はこの世界じゃモテない。
でもマジナガムーンキャットなる者を演じ、一家もろとも虜にして自分の強さがバレても「マジナガムーンキャットの力が普段の私にも影響を及ぼしているみたい。」とでも言っておけば問題ないもんね。
嘘に嘘を重ねた女サクラ。
あの子は一体どこに向かっているんだろう。
エイミーはこの事を知っているのかな。
両家の顔合わせはつつがなく?終了し、無事サクラとディンは婚約を結んだ。
「碧殿。サクラ殿は何か良くないモノを呼んだな?」
「良くないモノ?」
「さぐぬtヴぃらヴんみrの臭いがするぞ。」
「は?」
「サクラ殿から随分と濃い瘴気の臭いがする。間違いなくさぐぬtヴぃらヴんみrのモノを呼び出している。しかも何度となくな。」
先日やってた魔法少女っぽい演出。
あれは演出だと思ってたけど、実はメメちゃんの世界のモノを呼び出してシバいていたという事?
「あの馬鹿娘……。」
思いっきり引っ叩いてやる!!
自分の頭をコツンと叩き、舌をペロリと出して見せるサクラ。
しかも一人称が自分の名前。
「やあやあ。サクラ殿、待ちわびましたぞ。早くディンと婚約を結ばせないと他の人に盗られてしまうのではないかと気が気じゃありませんでした。」
「サクラさんと会えるのを楽しみにしてたんですよ? でもそういう事なら仕方ないですわね。」
改めて思うけど、ディンの親父さんにもめっちゃ気に入られてるじゃん!
そしてまさかの母親まで!?
「なあアオイ。サクラは何か悪い物でも食ったのか?」
そう。そうだよねレイベルト。これが普通の反応なんだよ。
「サクラ……相変わらず可愛いね。」
「ディン様。ずっとお待ちしておりました。」
おっと、ここで二人の世界に入るの?
二人は互いを見つめ合い、なにやら良い雰囲気だ。
「普段のおっちょこちょいな様子も可愛いけど、ちゃんとした場ではしっかり気を張って出来る女らしい装いをするところも素敵だよ。」
あぁ……成る程ね。
本当のサクラはおっちょこちょいでは全くない。むしろ色々と気が付くし仕事も出来る。
普段は出来る女を装った実はおっちょこちょいの女の子を演出したというわけだ。
それならたまにおっちょこちょいを見せてやるだけで、相手は勝手に「サクラは良く頑張ってるんだな。」とプラスの印象を抱きさえする。
流石だ。
サクラの媚びには穴が無い。
「あっ……誰かが助けを呼ぶ声が聞こえる。」
「は?」
「え?」
この子、急に何言ってんの?
サクラはやけに真剣な顔で意味不明な事を呟いたかと思えば、胸に付けているブローチを手に取った。
「プリティキューティーミラクルパワー!」
謎の呪文を唱えたかと思えばブローチが輝き、サクラの体は虹色に包まれコスチュームチェンジが始まる。
そしてどこからともなく出現した衣装が体を回転させる彼女へ次々と装着されていく。
「サクラ……案外デカいな。」
「レイベルト。後で私の触らせてあげるからそういう事言うのやめて。」
娘の胸を見てデカいと感心する父親。よそ様の前でみっともない。
「闇より這い出でし混沌を倒す為、地獄の特訓から生還した冥土戦士。マジナガムーンキャット参上! 私の行いは全てが天の意思!」
ビシっと決めポーズを取り、猫耳カチューシャとメイド服を装備したサクラ。
あのさ。それ、一応国宝なんだけど。
「今日もマジナガムーンキャットが来てくれた!」
「相変わらず素敵だわ!」
「サクラ! 今日はどんな悪と戦うんだ!?」
わーお。
ザーラル家の皆さん。普通にサクラの奇行を受け入れてんじゃん。
でも、これで分かったよ。サクラがやけに気に入られてる理由が。
この世界で娯楽と言えばかなり限られている。
そんな中で人知れず悪と戦う可憐な魔法少女を演じれば、たちまち人々を虜にしてしまえるというわけだね。
「助けを求める少女の心の声が聞こえるわ。急がなきゃ!」
そう言ってどこかへ走り出すサクラと追いかけるザーラル家の皆さん。
「あ、おい。どこへ……。」
「レイベルト。追いかけるよ。」
理解の追い付いていないレイベルトを引っ張り、私達もサクラを追いかけた。
「キャー! 誰か助けてー!」
「へっへっへ。良いからお前のパンツを嗅がせろ。こんな路地裏に誰も助けになんて来ねえぜ?」
「それはどうかしら?」
「だ、誰だ!?」
サクラを追ってきてみれば、女の子がならず者に襲われていた。
「私はマジナガムーンキャット。闇より這い出でし混沌を倒す者よ。」
「妙な恰好でわけのわかんねぇ事を……。お前のパンツを嗅がせろ!」
ならず者は標的をサクラに変え、破廉恥な事を叫びながら襲い掛かる。
「なんて恐ろしい奴なの!? えーい!」
襲われたサクラは可愛らしい掛け声とともに、魔法のステッキらしき物でならず者をブッ叩いた。
メキョリと気色の悪い音を立てて吹っ飛んでいくならず者。
えらくバイオレンスな魔法少女だ。
てか死んでないよねあの人?
「助けてくれてありがとうございます!」
「まだよ!」
助けられお礼を言う少女に待ったをかけるサクラ。
倒れているならず者からは黒いモヤが湧き出ている。
「な、なんですかあれ?」
「あれは闇より這い出し混沌。あれを倒さなければ解決しないの。」
サクラはステッキをバトンのように振り回して先端をピッと黒いモヤに突き付けた。
「ナガツキパワーは悪を許さない。滅せよ。」
物騒なセリフとともにステッキが光り、黒いモヤが一瞬で消滅する。
私もあんな怪しげなものは見た事がない。大方サクラの演出なんだろうけど、随分と凝ってるね。
黒いモヤからは邪悪な気配が漏れ出ていた。
気配までもを演出するなんてなかなかやるじゃん。
「今日もマジナガムーンキャットが悪を成敗したわ!」
「やはり彼女に任せておけば全ては解決だな!」
「サクラ……今日も素敵だ。」
「ふふ。サクラがマジナガムーンキャットだって、他の人には内緒ですよ?」
お茶目にウインクして見せるサクラは女優だった。
そっか。これがサクラの答えなんだ。
強い女の子はこの世界じゃモテない。
でもマジナガムーンキャットなる者を演じ、一家もろとも虜にして自分の強さがバレても「マジナガムーンキャットの力が普段の私にも影響を及ぼしているみたい。」とでも言っておけば問題ないもんね。
嘘に嘘を重ねた女サクラ。
あの子は一体どこに向かっているんだろう。
エイミーはこの事を知っているのかな。
両家の顔合わせはつつがなく?終了し、無事サクラとディンは婚約を結んだ。
「碧殿。サクラ殿は何か良くないモノを呼んだな?」
「良くないモノ?」
「さぐぬtヴぃらヴんみrの臭いがするぞ。」
「は?」
「サクラ殿から随分と濃い瘴気の臭いがする。間違いなくさぐぬtヴぃらヴんみrのモノを呼び出している。しかも何度となくな。」
先日やってた魔法少女っぽい演出。
あれは演出だと思ってたけど、実はメメちゃんの世界のモノを呼び出してシバいていたという事?
「あの馬鹿娘……。」
思いっきり引っ叩いてやる!!
応援ありがとうございます!
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