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最終章 幸せな日々
番外編 第25話 魔法訓練
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少し引き気味のカイル王子を余所に、今度は魔法の訓練が始まった。
レイベルトが猛然と斬りかかり、シューメルちゃんは泣いて逃げながら距離を開けようと必死に魔法を撃っている。
「あの……魔法を斬っているようですが?」
「はい。あれはレイベルトにしか使えない技です。魔法の核を斬る事で魔法自体を消滅させてしまうのですが、今のところ誰にも再現出来ず、原理もまるで不明です。」
「神技、という事ですね。」
まぁ、そうと言えない事もないわね。
「レイア殿の奥方の魔法も尋常ではない。あれ程の大魔法を恐るべき速度で連発している。あれはレイベルト殿のような相手と対峙した時に無理なく逃げる為の魔法訓練で合っているでしょうか?」
「はい。概ねその通りです。」
魔法を斬れる奴なんて他にいないと思うけどね。
「更に付け加えるならシューメルの魔力が尽きた後、強制的に魔力を振り絞る訓練も兼ねていますね。時間が掛かるので今日はもう少しで終わらせますけど。」
シューメルちゃんの魔力が尽きるまでとなれば、まだまだ時間が掛かる。
それに、魔力切れの後に魔力を振り絞るのは多大な負担がかかり、とてもじゃないけど人様には見せられない顔になってしまうので、訓練風景を最後まで見せないのは賢明ね。
「成る程。私も……訓練すればあのように大魔法を連発出来るようになるのでしょうか?」
「訓練次第ではありますが可能です。ナガツキ大公家の兵は大して魔力の素養がなくとも大魔法十発くらいは撃てるようになりました。カイル王子程の素養があれば、魔法だけなら勇者級と言われる程度には仕上げてみせますよ?」
碧ちゃんと私で魔法を訓練してあげれば出来そうね。
宮廷魔法使いと魔法戦が出来るというだけあって、魔力量がアーリィと同程度にはある。
カイル王子が魔法を撃ち続け、魔力切れになれば私が魔力を供給し、更にカイル王子が魔法を撃つ、という無限ループを実施したらそう時間は掛からないと思う。
「アーリィ殿を守るために私も頑張りたいと思います。」
決意した顔で呟くカイル王子。
あの訓練を見た後でやる気になるのは凄い。
レイベルトったらもう少し軽めの訓練を見せてくれるのかと思ったけど、普段通りの訓練をするものだから、引かれたらどうしようと気が気じゃなかった。
魔法に関してはまだ常識的と言えなくもない訓練だったから良かったわ。
「ママ。私も少しだけ魔法を練習したいです。」
「良いよ。風魔法はダメだけど。」
「私もたくさん魔法を撃ってみたいです。楽しそうです。」
アーリィ? シューメルちゃんは泣きながら魔法撃ってるけど、本当に楽しそうに見えるの?
「アオイ殿。何故風魔法はダメなのですか?」
「アーリィは風魔法と相性が良すぎるからです。強い女の子は男性に遠ざけられますので、間違っても強くならないように親として禁止しています。」
「そうでしたか……。私はアーリィ殿が強くても気にしませんよ? こんなに可愛くいじらしい娘が多少強くとも問題はありません。むしろ私がアーリィ殿よりも強くなってみせます。」
なんて男らしいのかしら。アーリィはこの人に巡り合えて幸せだわ。
鍛えてしまえば多少なんて強さでは済まなくなってしまいそうなのが問題ね。
「カイル様は素敵です。私はカイル様と結婚しますので、風魔法も練習していいでしょ? お願いしますママ。」
腕を組みうーんと頭を悩ませる碧ちゃん。
今までもアーリィにだけは魔法の練習自体適当な言い訳をして引き延ばしてきたんだから、渋るのも分かるわ。
この事実を言えば絶対に訓練しようと言い出すのが目に見えていたからこそ、レイベルトにだけは伝えてなかったけど。
「アオイ殿。私はアーリィ殿が強くても気になりません。ですから教えてあげても良いのでは?」
「それはアーリィが勇者級になったとしてもですか?」
「え?」
「普通に訓練するだけで勇者級に手が届いてしまいそうな娘ですが、本当に大丈夫ですか?」
「ははははは。大丈夫ですとも。アーリィ殿がそうなると言うならこのカイル、見事に勇者級にまで駆け上がってみせましょう!」
うん。これは確定ね。
アーリィの結婚相手はカイル王子で決まりだわ。アーリィも気に入ってるみたいだし。
「カイル王子がそこまで言うのでしたら……。アーリィ? あっちで練習しよっか。」
「はい!」
なんて眩しい笑顔。
余程魔法を練習したかったのね。
「せっかくなので、私もアーリィ殿の練習を見学します。」
私達は練兵場の中央、普段親衛隊が訓練する場所へと来ていた。
「さて、アーリィはどんな魔法が使いたい?」
「ママが訓練する時に使っている竜巻を起こす魔法が良いです。」
いきなり竜巻は難易度が高いわ。
「最初だから難しいと思うけど……ま、良いか。一度撃ってみるから、魔力の流れを良く見るんだよ?」
「はい!」
碧ちゃんが手をかざすと、極小規模な威力を抑えた竜巻がその場に出現して周囲の土や砂を巻き上げていた。
最初だから小さい威力で覚えるのは良いわね。
「流石はアオイ殿ですね。勇者の称号は伊達ではない。魔力操作が驚く程綺麗でした。」
「恐縮です。」
カイル王子も魔力の流れが分かる人みたい。
「私もやってみます。カイル様も見てて下さいね。」
「はい。応援してますよ。」
二人のやり取りのなんて微笑ましいこと。
アーリィは真剣な顔つきになり手をかざす。すると本当に小規模で可愛らしい風がクルクルと地を這うように舞っていた。
「おお! アーリィ殿の魔法が成功している。」
「カイル様。これだとお掃除にしか使えないです。」
あら。ちょっとしか威力が出ないからって落ち込んじゃったわね。
「これだけ難しい魔法を一度で成功させるのは凄い事ですよ。自信を持って下さい。」
「そうでしょうか?」
「はい。私も初めての魔法を一度で成功させるというのはそうそうありません。本当に素晴らしい才能をお持ちだ。」
「……もっと頑張ります!」
カイル王子に褒められたのが余程嬉しかったのね。更にやる気を見せるアーリィはとても可愛らしい。
でも私の見通しは甘かった。多分、碧ちゃんも同じことを思っているはず。
アーリィが二度目に発動した時、竜巻は思いの外大きい威力で出現した。初心者が出す威力じゃない。
三度目の発動では碧ちゃんがさっき加減した魔法と同規模だった。
四度目、危ないからと言って少し遠くに発動された竜巻は付近に待機していたアーリィ親衛隊をゴミのように巻き上げ吹き飛ばし、屋敷の離れを半壊させた。
もう完全にサクラが本気で発動した時と同レベルだ。
「……アーリィ? 後で親衛隊の皆に謝るんだよ?」
「はい。」
碧ちゃんは現実逃避を始めてしまったみたいね。
「早く巻き込まれた人達を救助しないと!」
カイル王子が焦って親衛隊を助けようと言い出した。
まぁ、それが普通の反応よね。
「親衛隊はこの程度で死にませんのでご安心を。彼らは打たれ強いので、あの高さから落下しても死にません。あちらをご覧ください。」
私が指さした方向には吹き飛ばされ地面に叩きつけられながらも、自らの足で元気に立ち上がる親衛隊員達の姿が…………。
「んなアホな。」
王子は口をあんぐりと開け、元気な親衛隊達を見つめ続けるのだった。
レイベルトが猛然と斬りかかり、シューメルちゃんは泣いて逃げながら距離を開けようと必死に魔法を撃っている。
「あの……魔法を斬っているようですが?」
「はい。あれはレイベルトにしか使えない技です。魔法の核を斬る事で魔法自体を消滅させてしまうのですが、今のところ誰にも再現出来ず、原理もまるで不明です。」
「神技、という事ですね。」
まぁ、そうと言えない事もないわね。
「レイア殿の奥方の魔法も尋常ではない。あれ程の大魔法を恐るべき速度で連発している。あれはレイベルト殿のような相手と対峙した時に無理なく逃げる為の魔法訓練で合っているでしょうか?」
「はい。概ねその通りです。」
魔法を斬れる奴なんて他にいないと思うけどね。
「更に付け加えるならシューメルの魔力が尽きた後、強制的に魔力を振り絞る訓練も兼ねていますね。時間が掛かるので今日はもう少しで終わらせますけど。」
シューメルちゃんの魔力が尽きるまでとなれば、まだまだ時間が掛かる。
それに、魔力切れの後に魔力を振り絞るのは多大な負担がかかり、とてもじゃないけど人様には見せられない顔になってしまうので、訓練風景を最後まで見せないのは賢明ね。
「成る程。私も……訓練すればあのように大魔法を連発出来るようになるのでしょうか?」
「訓練次第ではありますが可能です。ナガツキ大公家の兵は大して魔力の素養がなくとも大魔法十発くらいは撃てるようになりました。カイル王子程の素養があれば、魔法だけなら勇者級と言われる程度には仕上げてみせますよ?」
碧ちゃんと私で魔法を訓練してあげれば出来そうね。
宮廷魔法使いと魔法戦が出来るというだけあって、魔力量がアーリィと同程度にはある。
カイル王子が魔法を撃ち続け、魔力切れになれば私が魔力を供給し、更にカイル王子が魔法を撃つ、という無限ループを実施したらそう時間は掛からないと思う。
「アーリィ殿を守るために私も頑張りたいと思います。」
決意した顔で呟くカイル王子。
あの訓練を見た後でやる気になるのは凄い。
レイベルトったらもう少し軽めの訓練を見せてくれるのかと思ったけど、普段通りの訓練をするものだから、引かれたらどうしようと気が気じゃなかった。
魔法に関してはまだ常識的と言えなくもない訓練だったから良かったわ。
「ママ。私も少しだけ魔法を練習したいです。」
「良いよ。風魔法はダメだけど。」
「私もたくさん魔法を撃ってみたいです。楽しそうです。」
アーリィ? シューメルちゃんは泣きながら魔法撃ってるけど、本当に楽しそうに見えるの?
「アオイ殿。何故風魔法はダメなのですか?」
「アーリィは風魔法と相性が良すぎるからです。強い女の子は男性に遠ざけられますので、間違っても強くならないように親として禁止しています。」
「そうでしたか……。私はアーリィ殿が強くても気にしませんよ? こんなに可愛くいじらしい娘が多少強くとも問題はありません。むしろ私がアーリィ殿よりも強くなってみせます。」
なんて男らしいのかしら。アーリィはこの人に巡り合えて幸せだわ。
鍛えてしまえば多少なんて強さでは済まなくなってしまいそうなのが問題ね。
「カイル様は素敵です。私はカイル様と結婚しますので、風魔法も練習していいでしょ? お願いしますママ。」
腕を組みうーんと頭を悩ませる碧ちゃん。
今までもアーリィにだけは魔法の練習自体適当な言い訳をして引き延ばしてきたんだから、渋るのも分かるわ。
この事実を言えば絶対に訓練しようと言い出すのが目に見えていたからこそ、レイベルトにだけは伝えてなかったけど。
「アオイ殿。私はアーリィ殿が強くても気になりません。ですから教えてあげても良いのでは?」
「それはアーリィが勇者級になったとしてもですか?」
「え?」
「普通に訓練するだけで勇者級に手が届いてしまいそうな娘ですが、本当に大丈夫ですか?」
「ははははは。大丈夫ですとも。アーリィ殿がそうなると言うならこのカイル、見事に勇者級にまで駆け上がってみせましょう!」
うん。これは確定ね。
アーリィの結婚相手はカイル王子で決まりだわ。アーリィも気に入ってるみたいだし。
「カイル王子がそこまで言うのでしたら……。アーリィ? あっちで練習しよっか。」
「はい!」
なんて眩しい笑顔。
余程魔法を練習したかったのね。
「せっかくなので、私もアーリィ殿の練習を見学します。」
私達は練兵場の中央、普段親衛隊が訓練する場所へと来ていた。
「さて、アーリィはどんな魔法が使いたい?」
「ママが訓練する時に使っている竜巻を起こす魔法が良いです。」
いきなり竜巻は難易度が高いわ。
「最初だから難しいと思うけど……ま、良いか。一度撃ってみるから、魔力の流れを良く見るんだよ?」
「はい!」
碧ちゃんが手をかざすと、極小規模な威力を抑えた竜巻がその場に出現して周囲の土や砂を巻き上げていた。
最初だから小さい威力で覚えるのは良いわね。
「流石はアオイ殿ですね。勇者の称号は伊達ではない。魔力操作が驚く程綺麗でした。」
「恐縮です。」
カイル王子も魔力の流れが分かる人みたい。
「私もやってみます。カイル様も見てて下さいね。」
「はい。応援してますよ。」
二人のやり取りのなんて微笑ましいこと。
アーリィは真剣な顔つきになり手をかざす。すると本当に小規模で可愛らしい風がクルクルと地を這うように舞っていた。
「おお! アーリィ殿の魔法が成功している。」
「カイル様。これだとお掃除にしか使えないです。」
あら。ちょっとしか威力が出ないからって落ち込んじゃったわね。
「これだけ難しい魔法を一度で成功させるのは凄い事ですよ。自信を持って下さい。」
「そうでしょうか?」
「はい。私も初めての魔法を一度で成功させるというのはそうそうありません。本当に素晴らしい才能をお持ちだ。」
「……もっと頑張ります!」
カイル王子に褒められたのが余程嬉しかったのね。更にやる気を見せるアーリィはとても可愛らしい。
でも私の見通しは甘かった。多分、碧ちゃんも同じことを思っているはず。
アーリィが二度目に発動した時、竜巻は思いの外大きい威力で出現した。初心者が出す威力じゃない。
三度目の発動では碧ちゃんがさっき加減した魔法と同規模だった。
四度目、危ないからと言って少し遠くに発動された竜巻は付近に待機していたアーリィ親衛隊をゴミのように巻き上げ吹き飛ばし、屋敷の離れを半壊させた。
もう完全にサクラが本気で発動した時と同レベルだ。
「……アーリィ? 後で親衛隊の皆に謝るんだよ?」
「はい。」
碧ちゃんは現実逃避を始めてしまったみたいね。
「早く巻き込まれた人達を救助しないと!」
カイル王子が焦って親衛隊を助けようと言い出した。
まぁ、それが普通の反応よね。
「親衛隊はこの程度で死にませんのでご安心を。彼らは打たれ強いので、あの高さから落下しても死にません。あちらをご覧ください。」
私が指さした方向には吹き飛ばされ地面に叩きつけられながらも、自らの足で元気に立ち上がる親衛隊員達の姿が…………。
「んなアホな。」
王子は口をあんぐりと開け、元気な親衛隊達を見つめ続けるのだった。
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