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最終章 幸せな日々
番外編 第17話 母の悩み
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私はメメちゃんにありのまま起こった出来事を話した。
『うむ。碧殿は我が妹とレイア殿の結婚を邪魔したいという事か?』
「邪魔って言うか……シューメルとは結婚しないで欲しい。」
本当にどうしてこんな重要案件をペットに相談しているんだろうかという気持ちと、私個人のプライドなんて二の次だという気持ちとがせめぎ合っている。
『要するに邪魔したいのだな?』
「……そうだよ。」
『妹が幸せになるチャンスを潰してしまうのは忍びない。だが、ナガツキ家の皆から毎日お魚を頂戴して撫でてもらっている事を考えれば、協力するのはやぶさかではない。』
「正直ダメもとだったけど、本当に良いの? 一応妹なんだよね?」
実は兄妹仲悪いのかな。
『問題あるまい。ペットは飼い主の言う事に従うものだ。』
「助かるよ。」
普通のペットは飼い主の相談にのってくれないけどね。
『とは言っても、妹をどうにかするのは難しい。よって、レイア殿に働きかけるのが良いだろう。』
「ふんふん。シューメルに言うのはダメなの?」
『妹は反対されると更に言う事を聞かなくなる。時間の無駄だ。実は昔……。』
メメちゃんの家族エピソードが始まってしまった。
『妹は他の生き物を食べる事に抵抗を示し、木の実や野草なんかを食べて過ごしていた。それを見かねたお祖母さんが「お友達を食べないと栄養が足りなくなるでしょ。なんならボクの友達を食べる?」と言って何度も説得した過去がある』
祖母さんボクっ娘かよ。てか友達を食べるなってば。
まぁ今はいいや。
『いくら説得しても言う事を聞かず、それまでは魚も食べていたのに反抗のつもりか魚すら食べなくなり、我も心配になって魚を差し出したら思いっきり目をはたかれた。』
目をはたくのは酷すぎ……。
『その後もしつこくお祖母さんが注意するので妹が「私は大果樹園を作る。」と言って、百年くらいで自宅周辺を広大な果樹園にしてしまった。その際ご近所さんの土地まで勝手に果樹園にしてしまいトラブルになったが、妹はあろうことか恐るべき力で強引に立ち退かせたのだ。』
いくら注意されたのが気に入らないからって、果樹園を作ってしまう行動力が凄い。
しかもご近所さんを強引に立ち退かせるなんて、どういう神経してるんだろ。
「シューメルの説得は諦めよう。レイアを説得する方向で考える事にするよ。」
『うむ。それが良いだろう。』
「でもなぁ。レイアも本気になったら親の言う事なんて聞かないからねぇ。恋愛ごとで殴って言う事聞かせちゃうのは流石にどうかと思うし。」
本当はあまり口出しだってしたくない。
けど母親として、あんなに色々としつこい嫁は欲しくない。
『それは止めるべきだ。親が力づくで言う事を聞かせようとするのは子供の自主性や自立心を損なう恐れがある。』
「そ、そうだよね。」
ペットに子供の教育で説教される飼い主って世の中にどれくらいいるんだろ?
私が世界初かもしれない。
『我からのアドバイスはただ一つ。レイア殿はマザコンだ。そのマザコン心をくすぐってやれば良い。』
「あまりそんな感じしないけど?」
気のせいじゃないかな。
『碧殿がレイア殿に厳し過ぎるからそう感じるだけだ。本当はまだまだ甘えたそうにしているぞ。』
母さん母さんと言って自分に寄ってくるレイアを想像してみる。
バカ息子ではあるけど、積極的に甘えられるのも悪い気はしない。
でもそれだと後が大変じゃんか。
「うーん。要はレイアのマザコンを拗らせさせて、他の女性に興味を持たないようにしようって事?」
『違う。マザコンを拗らせた悲しき怪物を生み出そうという話ではない。単に碧殿がもう少し優しく接してやる事で正しいマザコンの在り方へと誘導し、妹がレイア殿に対して失望するよう仕向けてしまおうという作戦だ。』
マザコンに正しいも何もないと思うんだけど。
「軽いマザコンだとしても女性からすると結構嫌だもんね。」
『そういう事だ。やり過ぎると修正不可能になってしまうので軽めでいこうという話だ。とりあえず、レイア殿と妹の会話の中で「母さん」という単語が頻発するようにしようか。』
「オッケーオッケー。」
『最終的には碧殿が言う事をそれなりに肯定する程度にまで持っていければ良い。ただ、母親である碧殿は今後自分の発言に常に気を付けなければいけない。』
「マザコン息子が私の発言の影響をモロに受けるからだね? レイアがおかしな方向に行かないよう私もしっかりしなきゃって事か。」
あまり冗談なんかは言えなくなるかもしれないけど、息子の為……ひいては自分の為に頑張ってみよう。
『うむ。ところで碧殿は何故レイア殿に厳しいのだ?』
「男の子は強く育てなきゃいけないからね。ビシバシと教育するってもんよ。」
強く立派な漢に育って欲しい。
『それは碧殿の好みの問題だろう。子供に押し付けるものではない。ましてや姉や妹との扱いの差があるならば、知らずに傷つけている可能性だってある。』
「……はい。」
確かにその通りかも。
レイアには自分の考えを押し付けすぎたかな?
サクラやアーリィみたいに少し甘えさせてあげ…………ん?
「ねぇ。マザコンになったら自主性もなにもあったものじゃないよね?」
私の言う事を大体肯定してくるのなら、自分の考えというものが育たないじゃん。
『問題ない。無理矢理母に言う事を聞かされるのとマザコンだからと自主的に母の言う事に従うのは別次元の話だ。恐らくどちらにも自主性はないが、軽めのマザコンはちょっとした病気のようなもの。いずれ治る。』
マザコンって性質の問題だと思ってたけど、メメちゃん的には病気なんだ。
『一度試してみると良いだろう。妹とレイア殿の結婚を穏便に邪魔する方法など他には思いつかん。』
「だよね。私も思いつかないもん。シューメルが別な男に寝取られるみたいな外道な方法は取りたくないし、何よりレイアの為にならないからね。」
『うむ。外道な方法は絶対に避けるべきだ。まぁ、妹を寝取る事が出来る男などレイベルト殿以外には存在しないがな。』
「え?」
『我はてっきりレイベルト殿の第三夫人あたりに落ち着くのかと思っていた。』
シューメルが……レイベルトの第三夫人?
「絶対に無理。」
しつこくまとわりつかれて毎日ぐったりするのが目に見えている。
それだけは勘弁して欲しい。
『うむ。碧殿は我が妹とレイア殿の結婚を邪魔したいという事か?』
「邪魔って言うか……シューメルとは結婚しないで欲しい。」
本当にどうしてこんな重要案件をペットに相談しているんだろうかという気持ちと、私個人のプライドなんて二の次だという気持ちとがせめぎ合っている。
『要するに邪魔したいのだな?』
「……そうだよ。」
『妹が幸せになるチャンスを潰してしまうのは忍びない。だが、ナガツキ家の皆から毎日お魚を頂戴して撫でてもらっている事を考えれば、協力するのはやぶさかではない。』
「正直ダメもとだったけど、本当に良いの? 一応妹なんだよね?」
実は兄妹仲悪いのかな。
『問題あるまい。ペットは飼い主の言う事に従うものだ。』
「助かるよ。」
普通のペットは飼い主の相談にのってくれないけどね。
『とは言っても、妹をどうにかするのは難しい。よって、レイア殿に働きかけるのが良いだろう。』
「ふんふん。シューメルに言うのはダメなの?」
『妹は反対されると更に言う事を聞かなくなる。時間の無駄だ。実は昔……。』
メメちゃんの家族エピソードが始まってしまった。
『妹は他の生き物を食べる事に抵抗を示し、木の実や野草なんかを食べて過ごしていた。それを見かねたお祖母さんが「お友達を食べないと栄養が足りなくなるでしょ。なんならボクの友達を食べる?」と言って何度も説得した過去がある』
祖母さんボクっ娘かよ。てか友達を食べるなってば。
まぁ今はいいや。
『いくら説得しても言う事を聞かず、それまでは魚も食べていたのに反抗のつもりか魚すら食べなくなり、我も心配になって魚を差し出したら思いっきり目をはたかれた。』
目をはたくのは酷すぎ……。
『その後もしつこくお祖母さんが注意するので妹が「私は大果樹園を作る。」と言って、百年くらいで自宅周辺を広大な果樹園にしてしまった。その際ご近所さんの土地まで勝手に果樹園にしてしまいトラブルになったが、妹はあろうことか恐るべき力で強引に立ち退かせたのだ。』
いくら注意されたのが気に入らないからって、果樹園を作ってしまう行動力が凄い。
しかもご近所さんを強引に立ち退かせるなんて、どういう神経してるんだろ。
「シューメルの説得は諦めよう。レイアを説得する方向で考える事にするよ。」
『うむ。それが良いだろう。』
「でもなぁ。レイアも本気になったら親の言う事なんて聞かないからねぇ。恋愛ごとで殴って言う事聞かせちゃうのは流石にどうかと思うし。」
本当はあまり口出しだってしたくない。
けど母親として、あんなに色々としつこい嫁は欲しくない。
『それは止めるべきだ。親が力づくで言う事を聞かせようとするのは子供の自主性や自立心を損なう恐れがある。』
「そ、そうだよね。」
ペットに子供の教育で説教される飼い主って世の中にどれくらいいるんだろ?
私が世界初かもしれない。
『我からのアドバイスはただ一つ。レイア殿はマザコンだ。そのマザコン心をくすぐってやれば良い。』
「あまりそんな感じしないけど?」
気のせいじゃないかな。
『碧殿がレイア殿に厳し過ぎるからそう感じるだけだ。本当はまだまだ甘えたそうにしているぞ。』
母さん母さんと言って自分に寄ってくるレイアを想像してみる。
バカ息子ではあるけど、積極的に甘えられるのも悪い気はしない。
でもそれだと後が大変じゃんか。
「うーん。要はレイアのマザコンを拗らせさせて、他の女性に興味を持たないようにしようって事?」
『違う。マザコンを拗らせた悲しき怪物を生み出そうという話ではない。単に碧殿がもう少し優しく接してやる事で正しいマザコンの在り方へと誘導し、妹がレイア殿に対して失望するよう仕向けてしまおうという作戦だ。』
マザコンに正しいも何もないと思うんだけど。
「軽いマザコンだとしても女性からすると結構嫌だもんね。」
『そういう事だ。やり過ぎると修正不可能になってしまうので軽めでいこうという話だ。とりあえず、レイア殿と妹の会話の中で「母さん」という単語が頻発するようにしようか。』
「オッケーオッケー。」
『最終的には碧殿が言う事をそれなりに肯定する程度にまで持っていければ良い。ただ、母親である碧殿は今後自分の発言に常に気を付けなければいけない。』
「マザコン息子が私の発言の影響をモロに受けるからだね? レイアがおかしな方向に行かないよう私もしっかりしなきゃって事か。」
あまり冗談なんかは言えなくなるかもしれないけど、息子の為……ひいては自分の為に頑張ってみよう。
『うむ。ところで碧殿は何故レイア殿に厳しいのだ?』
「男の子は強く育てなきゃいけないからね。ビシバシと教育するってもんよ。」
強く立派な漢に育って欲しい。
『それは碧殿の好みの問題だろう。子供に押し付けるものではない。ましてや姉や妹との扱いの差があるならば、知らずに傷つけている可能性だってある。』
「……はい。」
確かにその通りかも。
レイアには自分の考えを押し付けすぎたかな?
サクラやアーリィみたいに少し甘えさせてあげ…………ん?
「ねぇ。マザコンになったら自主性もなにもあったものじゃないよね?」
私の言う事を大体肯定してくるのなら、自分の考えというものが育たないじゃん。
『問題ない。無理矢理母に言う事を聞かされるのとマザコンだからと自主的に母の言う事に従うのは別次元の話だ。恐らくどちらにも自主性はないが、軽めのマザコンはちょっとした病気のようなもの。いずれ治る。』
マザコンって性質の問題だと思ってたけど、メメちゃん的には病気なんだ。
『一度試してみると良いだろう。妹とレイア殿の結婚を穏便に邪魔する方法など他には思いつかん。』
「だよね。私も思いつかないもん。シューメルが別な男に寝取られるみたいな外道な方法は取りたくないし、何よりレイアの為にならないからね。」
『うむ。外道な方法は絶対に避けるべきだ。まぁ、妹を寝取る事が出来る男などレイベルト殿以外には存在しないがな。』
「え?」
『我はてっきりレイベルト殿の第三夫人あたりに落ち着くのかと思っていた。』
シューメルが……レイベルトの第三夫人?
「絶対に無理。」
しつこくまとわりつかれて毎日ぐったりするのが目に見えている。
それだけは勘弁して欲しい。
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