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最終章 幸せな日々
番外編 第15話 種族:レイベルト
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最近ナガツキ大公家はより賑やかになった。
ペットのメメちゃんとその妹シューメルがやって来たのだ。
二人は意味の分からん世界で神をやっていたそうなのだが、特に何か仕事があるというわけでもないらしい。
よって我が家に滞在しても問題はないという。
メメちゃんとシューメルは兄妹と言うだけあって目がそっくりだ。
目の数が違い過ぎて皆気付かないようだが。
「メメちゃんはお利口さんだな。」
そう言って今日もペットを撫でながらペットに書類仕事を手伝ってもらっている。
メメちゃんを飼って本当に良かった。
『レイベルト殿。ここの数字がおかしいぞ。横領している者がいるのではないか?』
「どれどれ? 確かにおかしいな。井戸を掘るだけでこんなに金がかかるはずはない。この書類はエイミー行きだ。」
不正案件はエイミーに回してしまえばあっという間に解決する。
どういう理屈なのか、エイミーが魔法を使えば悪い事をした奴の腕に口が生えて勝手に悪事を話してくれるのだ。
今回の横領犯は一体どんな呪いをかけられるのか。
確か前回横領を行った奴は寝ている時に足が痙攣し続ける呪いをかけられ、不眠に悩まされて真面目に働くようになった。
恐らく今回横領した奴もエイミーに呪いをかけられて自身の罪を悔いる事だろう。
『こちらの書類もおかしいな。人気の賭博所にしては売り上げが少ない。』
「あぁ……毎月売り上げが減少する日がいくつかあるな。恐らく勝ち過ぎる奴がいるんだろうが、勝ち過ぎる奴ってのは大体不正している。だから賭博所を出入り禁止になるはずなんだが……。」
『書類を見る限りだとなっていない。ならば意図的に誤魔化していると思うのが自然だ。』
メメちゃんが手伝ってくれると本当に助かる。集中力が切れてくると俺も見逃してしまう事があるからな。
一応碧も後で確認するので問題はないが、俺が怒られてしまう。
碧曰く、ダブルチェックと言うそうだ。
「これはオリヴァーに回そう。」
『エイミー殿だけに仕事を振るわけにもいかんからな。』
「そういう事だ。」
うちのペットはお利口さんだ。
「一度休憩を入れよう。今日は珍しい魚が手に入ったんだ。」
『レイベルト殿。我は一生付いて行くぞ。』
「おう。俺に付いて来い。」
ペットとはいいものだ。
最初はどちらかと言えば反対の立場だった。しかし、情がうつると可愛いものだ。
お利口さんで可愛くて魚が好き。エイミーの言う通り猫みたいなもんだな。
「レイベルト。仕事終わったでしょ? また特訓するとこ見せてよ。」
シューメルか。最近まとわりついてきて正直ちょっと邪魔なんだよな。
俺を人間だといつまでも認めないしな。
「見てないでお前も特訓すれば良いだろ。」
「良いの?」
いつまでも見学だけされると気が散って仕方ない。
いっそ参加してもらった方が楽だ。
「良いぞ。鍛えてやる。」
「うぷぷぷ。鍛えてやるったって私の方が強いじゃない。」
「そりゃそうだろ。普段魔力を隠しているエイミーと同等なら、どう考えたって俺の方が弱い。」
当たり前の事で笑い過ぎだろ。
「だが鍛えてやることは出来そうだぞ。シューメルはなんというか、戦い方がなっていない。」
「え? そうなの? でもレイベルトって種族から見れば鍛え方が足りないのは納得。」
「俺は人間だ。」
『レイベルト殿は人間だぞ。』
「まだ言ってるの? そんな嘘、さぐぬtヴぃらヴんみrの住人は誰も信じないわ。」
なんでだよ。どう見ても人間だろうが。
「メメちゃん。少し特訓してくる。魚はここに届けさせるから。」
『うむ。我はお魚を食べながら待っていよう。』
俺とシューメルは厨房に魚の件を伝え、庭の練兵場へと向かった。
「せっかくだから剣を習いたいわ。」
「そうか。」
やる気があるのは良い事だ。
俺は剣をシューメルに持たせた。
「ふんふん。こんな感じ?」
構えも振り方もデタラメなくせに、剣を振る音が素人のそれではない。
身体能力が高いという事か。
「全くなっていない。持ち方も違う。構えは…………色々と型があるから、とりあえず基礎だけ教えておくか。」
俺が事細かに指摘しながら教えていくと、シューメルはみるみるうちに吸収し、それなりに剣を扱えるようになった。
なんというか、才能というよりは器用な奴だ。
「うぷぷぷ。もう剣の戦いだってレイベルトより強いかもしれないよ? 手合わせしてみない?」
「実践の方が強くなるのは事実だな。少しやってみるか。」
俺とシューメルは互いに構える。
「いつでも打ち込んで来ていいぞ。」
「余裕ね? その余裕、いつまで持つかしら?」
シューメルは高い身体能力に任せ、一瞬で距離を詰めて剣を振るう。
まともに受けると俺が潰れるな。
「ふっ。」
シューメルが振るった剣を受け流し、巻き込んで取り上げてやった。
「え? え? 何それ?」
「まだまだだな。馬鹿正直に振り過ぎだ。後、自分の攻撃に意識を持っていき過ぎている。相手の動きも見ろ。」
「難しいわ。」
「もう一度だ。」
「うぷぷぷ。今の攻撃は見たから、次は簡単に取れないわよ?」
「試してみると良い。」
仕切り直し、再び構える。
「来い。」
「えいやー!」
やはり動きは速いが随分正直だな。
動きが実のみで構成され、全く虚がない。
シューメルが放った薙ぎ払いを半歩下がって避け、首筋に剣を突き付ける。
「う……え?」
「少しは相手を騙す事も考えろ。相手を惑わし隙を作れ。」
「こんなはずじゃ……。」
「剣は一朝一夕で身に付かん。毎日訓練しろ。」
「で、でも……魔力で体を覆ってるから私は斬れないでしょ?」
負け惜しみか。案外負けず嫌いだったんだな。
「お前はあの赤い玉よりも硬いのか?」
「……流石にあんなに硬くないわよ。」
「なら斬れるな。」
「うぅ……でも、でも、魔法有りだったら余裕だし?」
「一度魔法有りでやってみるか。ヤバそうな時は互いに寸止めで良いな?」
「勿論! 今度は負けないわ。」
互いに構える事三度。
「結構本気でいくよ!」
「おう!」
シューメルは膨大な魔力に任せ、巨大な火の玉を連続で放ってきた。
「エイミーも良く使う魔法だな。」
俺は魔法の起点となる核を斬り捨てることで魔法そのものを消滅させる。
まだ子供たちが大きくなる以前、時々エイミーとも特訓していたので苦も無く斬る事が出来た。
エイミーは勇者サクラの生まれ変わりなだけあって剣も使える。剣だと対処し難いような魔法も放ってくる事がある為、こんなものでは済まない。
「う……次々いくからね!」
恐るべき回転率で放たれ続ける魔法は流石の一言に尽きる。
しかし、それだけだ。
「まともに付き合っていたら俺がやられるな。」
まともに付き合えば、の話だが。
相手の魔法に付き合ってやる理由もない。
適当に魔法を斬り捨て、動きに虚を混ぜながらシューメルとの距離を潰していく。
「ちょっ!? え、待って!」
「待たん。」
相手は動揺して動きが悪い。
自分が斬られる事を理解してからは意識しているのか無意識なのか、どことなく腰が引けている様子が見て取れる。
魔法を撃ちながら慌てるシューメルを射程範囲に捉え、目の前で出現した魔法を斬り捨て首筋に剣を突き付けた。
「うっ……強い。」
こいつ、思いの外弱いな。
「お前、弱すぎだろ。本当にランキング元一位か?」
碧から話は聞いていたので相応に強いのだろうと考えていたが、正直期待外れもいいところだ。
シューメルは身体能力が高く、膨大な魔力を持っている。
加えてその膨大な魔力によって並ではない耐久力も獲得している。
戦い方を覚えなくとも持っている力だけで勝ててしまうからこそ、鍛える必要も立ち回りを覚える必要もなかったのだろう。
「……レイベルトって種族が変なだけよ。」
「だから俺は人間だと何度も言っている。」
神と言っても、こんなものか。
ペットのメメちゃんとその妹シューメルがやって来たのだ。
二人は意味の分からん世界で神をやっていたそうなのだが、特に何か仕事があるというわけでもないらしい。
よって我が家に滞在しても問題はないという。
メメちゃんとシューメルは兄妹と言うだけあって目がそっくりだ。
目の数が違い過ぎて皆気付かないようだが。
「メメちゃんはお利口さんだな。」
そう言って今日もペットを撫でながらペットに書類仕事を手伝ってもらっている。
メメちゃんを飼って本当に良かった。
『レイベルト殿。ここの数字がおかしいぞ。横領している者がいるのではないか?』
「どれどれ? 確かにおかしいな。井戸を掘るだけでこんなに金がかかるはずはない。この書類はエイミー行きだ。」
不正案件はエイミーに回してしまえばあっという間に解決する。
どういう理屈なのか、エイミーが魔法を使えば悪い事をした奴の腕に口が生えて勝手に悪事を話してくれるのだ。
今回の横領犯は一体どんな呪いをかけられるのか。
確か前回横領を行った奴は寝ている時に足が痙攣し続ける呪いをかけられ、不眠に悩まされて真面目に働くようになった。
恐らく今回横領した奴もエイミーに呪いをかけられて自身の罪を悔いる事だろう。
『こちらの書類もおかしいな。人気の賭博所にしては売り上げが少ない。』
「あぁ……毎月売り上げが減少する日がいくつかあるな。恐らく勝ち過ぎる奴がいるんだろうが、勝ち過ぎる奴ってのは大体不正している。だから賭博所を出入り禁止になるはずなんだが……。」
『書類を見る限りだとなっていない。ならば意図的に誤魔化していると思うのが自然だ。』
メメちゃんが手伝ってくれると本当に助かる。集中力が切れてくると俺も見逃してしまう事があるからな。
一応碧も後で確認するので問題はないが、俺が怒られてしまう。
碧曰く、ダブルチェックと言うそうだ。
「これはオリヴァーに回そう。」
『エイミー殿だけに仕事を振るわけにもいかんからな。』
「そういう事だ。」
うちのペットはお利口さんだ。
「一度休憩を入れよう。今日は珍しい魚が手に入ったんだ。」
『レイベルト殿。我は一生付いて行くぞ。』
「おう。俺に付いて来い。」
ペットとはいいものだ。
最初はどちらかと言えば反対の立場だった。しかし、情がうつると可愛いものだ。
お利口さんで可愛くて魚が好き。エイミーの言う通り猫みたいなもんだな。
「レイベルト。仕事終わったでしょ? また特訓するとこ見せてよ。」
シューメルか。最近まとわりついてきて正直ちょっと邪魔なんだよな。
俺を人間だといつまでも認めないしな。
「見てないでお前も特訓すれば良いだろ。」
「良いの?」
いつまでも見学だけされると気が散って仕方ない。
いっそ参加してもらった方が楽だ。
「良いぞ。鍛えてやる。」
「うぷぷぷ。鍛えてやるったって私の方が強いじゃない。」
「そりゃそうだろ。普段魔力を隠しているエイミーと同等なら、どう考えたって俺の方が弱い。」
当たり前の事で笑い過ぎだろ。
「だが鍛えてやることは出来そうだぞ。シューメルはなんというか、戦い方がなっていない。」
「え? そうなの? でもレイベルトって種族から見れば鍛え方が足りないのは納得。」
「俺は人間だ。」
『レイベルト殿は人間だぞ。』
「まだ言ってるの? そんな嘘、さぐぬtヴぃらヴんみrの住人は誰も信じないわ。」
なんでだよ。どう見ても人間だろうが。
「メメちゃん。少し特訓してくる。魚はここに届けさせるから。」
『うむ。我はお魚を食べながら待っていよう。』
俺とシューメルは厨房に魚の件を伝え、庭の練兵場へと向かった。
「せっかくだから剣を習いたいわ。」
「そうか。」
やる気があるのは良い事だ。
俺は剣をシューメルに持たせた。
「ふんふん。こんな感じ?」
構えも振り方もデタラメなくせに、剣を振る音が素人のそれではない。
身体能力が高いという事か。
「全くなっていない。持ち方も違う。構えは…………色々と型があるから、とりあえず基礎だけ教えておくか。」
俺が事細かに指摘しながら教えていくと、シューメルはみるみるうちに吸収し、それなりに剣を扱えるようになった。
なんというか、才能というよりは器用な奴だ。
「うぷぷぷ。もう剣の戦いだってレイベルトより強いかもしれないよ? 手合わせしてみない?」
「実践の方が強くなるのは事実だな。少しやってみるか。」
俺とシューメルは互いに構える。
「いつでも打ち込んで来ていいぞ。」
「余裕ね? その余裕、いつまで持つかしら?」
シューメルは高い身体能力に任せ、一瞬で距離を詰めて剣を振るう。
まともに受けると俺が潰れるな。
「ふっ。」
シューメルが振るった剣を受け流し、巻き込んで取り上げてやった。
「え? え? 何それ?」
「まだまだだな。馬鹿正直に振り過ぎだ。後、自分の攻撃に意識を持っていき過ぎている。相手の動きも見ろ。」
「難しいわ。」
「もう一度だ。」
「うぷぷぷ。今の攻撃は見たから、次は簡単に取れないわよ?」
「試してみると良い。」
仕切り直し、再び構える。
「来い。」
「えいやー!」
やはり動きは速いが随分正直だな。
動きが実のみで構成され、全く虚がない。
シューメルが放った薙ぎ払いを半歩下がって避け、首筋に剣を突き付ける。
「う……え?」
「少しは相手を騙す事も考えろ。相手を惑わし隙を作れ。」
「こんなはずじゃ……。」
「剣は一朝一夕で身に付かん。毎日訓練しろ。」
「で、でも……魔力で体を覆ってるから私は斬れないでしょ?」
負け惜しみか。案外負けず嫌いだったんだな。
「お前はあの赤い玉よりも硬いのか?」
「……流石にあんなに硬くないわよ。」
「なら斬れるな。」
「うぅ……でも、でも、魔法有りだったら余裕だし?」
「一度魔法有りでやってみるか。ヤバそうな時は互いに寸止めで良いな?」
「勿論! 今度は負けないわ。」
互いに構える事三度。
「結構本気でいくよ!」
「おう!」
シューメルは膨大な魔力に任せ、巨大な火の玉を連続で放ってきた。
「エイミーも良く使う魔法だな。」
俺は魔法の起点となる核を斬り捨てることで魔法そのものを消滅させる。
まだ子供たちが大きくなる以前、時々エイミーとも特訓していたので苦も無く斬る事が出来た。
エイミーは勇者サクラの生まれ変わりなだけあって剣も使える。剣だと対処し難いような魔法も放ってくる事がある為、こんなものでは済まない。
「う……次々いくからね!」
恐るべき回転率で放たれ続ける魔法は流石の一言に尽きる。
しかし、それだけだ。
「まともに付き合っていたら俺がやられるな。」
まともに付き合えば、の話だが。
相手の魔法に付き合ってやる理由もない。
適当に魔法を斬り捨て、動きに虚を混ぜながらシューメルとの距離を潰していく。
「ちょっ!? え、待って!」
「待たん。」
相手は動揺して動きが悪い。
自分が斬られる事を理解してからは意識しているのか無意識なのか、どことなく腰が引けている様子が見て取れる。
魔法を撃ちながら慌てるシューメルを射程範囲に捉え、目の前で出現した魔法を斬り捨て首筋に剣を突き付けた。
「うっ……強い。」
こいつ、思いの外弱いな。
「お前、弱すぎだろ。本当にランキング元一位か?」
碧から話は聞いていたので相応に強いのだろうと考えていたが、正直期待外れもいいところだ。
シューメルは身体能力が高く、膨大な魔力を持っている。
加えてその膨大な魔力によって並ではない耐久力も獲得している。
戦い方を覚えなくとも持っている力だけで勝ててしまうからこそ、鍛える必要も立ち回りを覚える必要もなかったのだろう。
「……レイベルトって種族が変なだけよ。」
「だから俺は人間だと何度も言っている。」
神と言っても、こんなものか。
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