73 / 128
最終章 幸せな日々
番外編 第6話 エイミーの真実
しおりを挟む
私はレイアとのやり取りを碧ママに相談した。
「なーんだ。そんな事か。」
「そんな事って……。」
碧ママ、適当過ぎない? 息子が変な勘違いしてるんだよ?
「真剣に考えないとダメじゃない? レイア、本気で思い詰めてるみたいなのに。」
「ごめんって。でも安心してよ。エイミーとレイアを一度戦わせて、レイアが負けてショックを受けている隙に事情を説明すれば納得するでしょ。」
そんなに簡単にいくかなぁ…………。
私は碧ママからのアドバイスを受け、レイアと私の二人がかりでお母さんと戦うよう誘導した。
レイアは何の疑いもなく私の話を真に受け、お母さんと戦う羽目になってしまった。
「本当に俺とサクラ姉さんの二人がかりで良いんだな?」
「良いわよ。レイ君の勘違いを正してあげるね。」
「もし俺達が勝ったら、エイミーママから出て行けよな。」
「私に勝てると思ってるのね。異界の神すら打倒した力、味わうといいわ。」
お母さんからは膨大な魔力が溢れ出し、物理的な重さを伴うかのように周囲の空気が重くなる。
凄い。まるで水の中にいるかのように体の動きが鈍いわ。
「くっ。俺は負けないっっ!」
レイアはこの圧力の中で鈍い動きながらも突撃し、お母さんに対して剣を振るが…………
「ダメよレイ君? そんな剣じゃ私に傷なんて付けられないわ。」
お母さんは指二本で優しくレイアの剣を摘んで受け止めていた。
レイアが本気で力を込めているにもかかわらず、摘まれた剣は微動だにしない。
「くそっ! 俺はエイミーママを助けるんだーーー!!」
「残念。レイ君は弱過ぎるから、助けられないわ。」
お母さんは剣をそっと握りしめると、バキッと嫌な音を立てて折れてしまった。
「さて、少し大人しくしててね?」
拘束魔法を掛けられ、地面に転がされるレイア。
なんとか逃れようともがいているけど、お父さんや碧ママでもない限りは抜けられないでしょうね。
ちなみに、私も一応抜けられる。
「サクラはレイベルトや碧ちゃんと同じ勇者級だから加減はあまりいらないわね。たまには運動しないとお母さんも鈍っちゃうし。」
そう言うや否や、莫大な魔力の奔流が天にも届こうかという勢いで立ち昇る。
これが…………お母さんの本気?
「……神から継承した能力は封印したんじゃなかったの?」
「したよ? 能力だけを封印したの。だから強さはそのまま。」
レイアが目の前の人物を人間ではないと思い込む気持ちも分かろうというもの。
この魔力量は明らかに人類の……それどころか、勇者の範疇からさえ逸脱している。
「サクラは勝てるかな?」
「魔力の量だけが強さの基準じゃない。やってみなきゃ分からないよ?」
結界魔法と拘束魔法を複合してお母さんに放ち、身動きの取れない状態を作り上げて即座に大きめの火魔法を放つ。
放った火魔法の後を追いかけるようにして私自身も突撃し、お母さんに迫った。
火魔法を避けられたら即座に追撃してやれば良い。
火魔法を弾かれたらその隙に剣で攻撃してやればいい。
私を舐め過ぎたわね。もう火魔法が接触する直前よ。
「お母さん、破れたり!」
勝利を確信し、叫んだ直後……
「残念。サクラ、破れたり。」
「後ろっ!?」
耳元で聞こえたお母さんの声に、背筋が凍る。
いつの間に…………
「…クラ…………サクラ?」
あれ?
「お母さん?」
目の前には心配そうなお母さんの顔。
勝負に負け、介抱されていたみたい。
「ごめんね? ちょっと威力が強過ぎたわ。」
私はお母さんのデコピンを後頭部にくらい、昏倒していたらしい。
信じられない。たかがデコピンで?
私があの時感じた衝撃はデコピンなんかではなく、鈍器で思いっきり殴られたような衝撃だった。
「それよりレイアは?」
「ちゃんと説得したわ。昔話をしてあげたら、鼻水まで垂らして泣きながら私を抱きしめてきたのよ?」
誤解は解けた、という事ね。
「戦わないで最初から口で言ってあげれば良かったのに。」
「レイ君は聞きそうになかったでしょ? それに、レイ君がどの程度強いのかはちょっと興味あったし。勿論サクラもね。」
お母さんは興味本位なのね。
「こっちは苦労したってのに……。」
「あまり怒らないで? 思えばお母さん、サクラと碌に戦った事が無かったでしょ? 娘の成長を見てみたかったのもあるのよ。」
そう言われるとあまり怒れない。
「私、どうだった?」
「サクラは強いけど、レイベルトや碧ちゃんにはまだまだ届いていないみたいね。」
お父さんと碧ママが二人がかりで戦えばお母さんといい勝負をするとの事。
私も勇者級の実力はあるけど、やはり戦争を経験した二人にはまだ敵わないという。
「まだまだ、かぁ……。」
「何言ってるの? これだけ強ければ十分よ。むしろこんなに強くなってどうするの。嫁の貰い手がないわよ?」
全然考えてなかった。
でも、前回だって結婚出来たんだからきっと…………。
「前回結婚出来たからって安心してるでしょ。」
「うん。まぁ……。」
「前回の貴女の旦那様は貴女が強いって事を私がひた隠しにして結婚させたんですからね?」
「なにそれ?」
「知らなかったの? サクラは強過ぎて男が寄って来ないと思ったから、うちの娘はか弱いって言って嘘ついてまで結婚相手を探してきたんだから。」
知らなかった…………。通りでやたらと私を気遣う旦那様だと思った。
か弱いと思われてたのね。
私自身、結婚してからは戦いに関わる事など全く無かったから、旦那様も最後まで気付かなかったんだ。
「また協力してあげるから頑張るのよ? 前回と同じ旦那様が良いわよね?」
「うん。一応お見合い結婚だったけど、旦那様の事は愛してるから。」
あっちにとってはまだ出会ってもないけど、私からすれば40年以上連れ添った大切な人。
「お母さんに任せなさい。あ、もし失敗したらナガツキ大公家の力で無理矢理その人と結婚させるけど良い?」
「良いわけないでしょ!?」
「サクラったらすぐに怒るんだから。」
権力で無理矢理結婚だなんて酷い親だわ。
本当にそういう力技に頼るところは感心しない。
でも…………万が一上手くいかなかったら、頼もうかな?
「なーんだ。そんな事か。」
「そんな事って……。」
碧ママ、適当過ぎない? 息子が変な勘違いしてるんだよ?
「真剣に考えないとダメじゃない? レイア、本気で思い詰めてるみたいなのに。」
「ごめんって。でも安心してよ。エイミーとレイアを一度戦わせて、レイアが負けてショックを受けている隙に事情を説明すれば納得するでしょ。」
そんなに簡単にいくかなぁ…………。
私は碧ママからのアドバイスを受け、レイアと私の二人がかりでお母さんと戦うよう誘導した。
レイアは何の疑いもなく私の話を真に受け、お母さんと戦う羽目になってしまった。
「本当に俺とサクラ姉さんの二人がかりで良いんだな?」
「良いわよ。レイ君の勘違いを正してあげるね。」
「もし俺達が勝ったら、エイミーママから出て行けよな。」
「私に勝てると思ってるのね。異界の神すら打倒した力、味わうといいわ。」
お母さんからは膨大な魔力が溢れ出し、物理的な重さを伴うかのように周囲の空気が重くなる。
凄い。まるで水の中にいるかのように体の動きが鈍いわ。
「くっ。俺は負けないっっ!」
レイアはこの圧力の中で鈍い動きながらも突撃し、お母さんに対して剣を振るが…………
「ダメよレイ君? そんな剣じゃ私に傷なんて付けられないわ。」
お母さんは指二本で優しくレイアの剣を摘んで受け止めていた。
レイアが本気で力を込めているにもかかわらず、摘まれた剣は微動だにしない。
「くそっ! 俺はエイミーママを助けるんだーーー!!」
「残念。レイ君は弱過ぎるから、助けられないわ。」
お母さんは剣をそっと握りしめると、バキッと嫌な音を立てて折れてしまった。
「さて、少し大人しくしててね?」
拘束魔法を掛けられ、地面に転がされるレイア。
なんとか逃れようともがいているけど、お父さんや碧ママでもない限りは抜けられないでしょうね。
ちなみに、私も一応抜けられる。
「サクラはレイベルトや碧ちゃんと同じ勇者級だから加減はあまりいらないわね。たまには運動しないとお母さんも鈍っちゃうし。」
そう言うや否や、莫大な魔力の奔流が天にも届こうかという勢いで立ち昇る。
これが…………お母さんの本気?
「……神から継承した能力は封印したんじゃなかったの?」
「したよ? 能力だけを封印したの。だから強さはそのまま。」
レイアが目の前の人物を人間ではないと思い込む気持ちも分かろうというもの。
この魔力量は明らかに人類の……それどころか、勇者の範疇からさえ逸脱している。
「サクラは勝てるかな?」
「魔力の量だけが強さの基準じゃない。やってみなきゃ分からないよ?」
結界魔法と拘束魔法を複合してお母さんに放ち、身動きの取れない状態を作り上げて即座に大きめの火魔法を放つ。
放った火魔法の後を追いかけるようにして私自身も突撃し、お母さんに迫った。
火魔法を避けられたら即座に追撃してやれば良い。
火魔法を弾かれたらその隙に剣で攻撃してやればいい。
私を舐め過ぎたわね。もう火魔法が接触する直前よ。
「お母さん、破れたり!」
勝利を確信し、叫んだ直後……
「残念。サクラ、破れたり。」
「後ろっ!?」
耳元で聞こえたお母さんの声に、背筋が凍る。
いつの間に…………
「…クラ…………サクラ?」
あれ?
「お母さん?」
目の前には心配そうなお母さんの顔。
勝負に負け、介抱されていたみたい。
「ごめんね? ちょっと威力が強過ぎたわ。」
私はお母さんのデコピンを後頭部にくらい、昏倒していたらしい。
信じられない。たかがデコピンで?
私があの時感じた衝撃はデコピンなんかではなく、鈍器で思いっきり殴られたような衝撃だった。
「それよりレイアは?」
「ちゃんと説得したわ。昔話をしてあげたら、鼻水まで垂らして泣きながら私を抱きしめてきたのよ?」
誤解は解けた、という事ね。
「戦わないで最初から口で言ってあげれば良かったのに。」
「レイ君は聞きそうになかったでしょ? それに、レイ君がどの程度強いのかはちょっと興味あったし。勿論サクラもね。」
お母さんは興味本位なのね。
「こっちは苦労したってのに……。」
「あまり怒らないで? 思えばお母さん、サクラと碌に戦った事が無かったでしょ? 娘の成長を見てみたかったのもあるのよ。」
そう言われるとあまり怒れない。
「私、どうだった?」
「サクラは強いけど、レイベルトや碧ちゃんにはまだまだ届いていないみたいね。」
お父さんと碧ママが二人がかりで戦えばお母さんといい勝負をするとの事。
私も勇者級の実力はあるけど、やはり戦争を経験した二人にはまだ敵わないという。
「まだまだ、かぁ……。」
「何言ってるの? これだけ強ければ十分よ。むしろこんなに強くなってどうするの。嫁の貰い手がないわよ?」
全然考えてなかった。
でも、前回だって結婚出来たんだからきっと…………。
「前回結婚出来たからって安心してるでしょ。」
「うん。まぁ……。」
「前回の貴女の旦那様は貴女が強いって事を私がひた隠しにして結婚させたんですからね?」
「なにそれ?」
「知らなかったの? サクラは強過ぎて男が寄って来ないと思ったから、うちの娘はか弱いって言って嘘ついてまで結婚相手を探してきたんだから。」
知らなかった…………。通りでやたらと私を気遣う旦那様だと思った。
か弱いと思われてたのね。
私自身、結婚してからは戦いに関わる事など全く無かったから、旦那様も最後まで気付かなかったんだ。
「また協力してあげるから頑張るのよ? 前回と同じ旦那様が良いわよね?」
「うん。一応お見合い結婚だったけど、旦那様の事は愛してるから。」
あっちにとってはまだ出会ってもないけど、私からすれば40年以上連れ添った大切な人。
「お母さんに任せなさい。あ、もし失敗したらナガツキ大公家の力で無理矢理その人と結婚させるけど良い?」
「良いわけないでしょ!?」
「サクラったらすぐに怒るんだから。」
権力で無理矢理結婚だなんて酷い親だわ。
本当にそういう力技に頼るところは感心しない。
でも…………万が一上手くいかなかったら、頼もうかな?
10
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる