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最終章 幸せな日々
番外編 第6話 エイミーの真実
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私はレイアとのやり取りを碧ママに相談した。
「なーんだ。そんな事か。」
「そんな事って……。」
碧ママ、適当過ぎない? 息子が変な勘違いしてるんだよ?
「真剣に考えないとダメじゃない? レイア、本気で思い詰めてるみたいなのに。」
「ごめんって。でも安心してよ。エイミーとレイアを一度戦わせて、レイアが負けてショックを受けている隙に事情を説明すれば納得するでしょ。」
そんなに簡単にいくかなぁ…………。
私は碧ママからのアドバイスを受け、レイアと私の二人がかりでお母さんと戦うよう誘導した。
レイアは何の疑いもなく私の話を真に受け、お母さんと戦う羽目になってしまった。
「本当に俺とサクラ姉さんの二人がかりで良いんだな?」
「良いわよ。レイ君の勘違いを正してあげるね。」
「もし俺達が勝ったら、エイミーママから出て行けよな。」
「私に勝てると思ってるのね。異界の神すら打倒した力、味わうといいわ。」
お母さんからは膨大な魔力が溢れ出し、物理的な重さを伴うかのように周囲の空気が重くなる。
凄い。まるで水の中にいるかのように体の動きが鈍いわ。
「くっ。俺は負けないっっ!」
レイアはこの圧力の中で鈍い動きながらも突撃し、お母さんに対して剣を振るが…………
「ダメよレイ君? そんな剣じゃ私に傷なんて付けられないわ。」
お母さんは指二本で優しくレイアの剣を摘んで受け止めていた。
レイアが本気で力を込めているにもかかわらず、摘まれた剣は微動だにしない。
「くそっ! 俺はエイミーママを助けるんだーーー!!」
「残念。レイ君は弱過ぎるから、助けられないわ。」
お母さんは剣をそっと握りしめると、バキッと嫌な音を立てて折れてしまった。
「さて、少し大人しくしててね?」
拘束魔法を掛けられ、地面に転がされるレイア。
なんとか逃れようともがいているけど、お父さんや碧ママでもない限りは抜けられないでしょうね。
ちなみに、私も一応抜けられる。
「サクラはレイベルトや碧ちゃんと同じ勇者級だから加減はあまりいらないわね。たまには運動しないとお母さんも鈍っちゃうし。」
そう言うや否や、莫大な魔力の奔流が天にも届こうかという勢いで立ち昇る。
これが…………お母さんの本気?
「……神から継承した能力は封印したんじゃなかったの?」
「したよ? 能力だけを封印したの。だから強さはそのまま。」
レイアが目の前の人物を人間ではないと思い込む気持ちも分かろうというもの。
この魔力量は明らかに人類の……それどころか、勇者の範疇からさえ逸脱している。
「サクラは勝てるかな?」
「魔力の量だけが強さの基準じゃない。やってみなきゃ分からないよ?」
結界魔法と拘束魔法を複合してお母さんに放ち、身動きの取れない状態を作り上げて即座に大きめの火魔法を放つ。
放った火魔法の後を追いかけるようにして私自身も突撃し、お母さんに迫った。
火魔法を避けられたら即座に追撃してやれば良い。
火魔法を弾かれたらその隙に剣で攻撃してやればいい。
私を舐め過ぎたわね。もう火魔法が接触する直前よ。
「お母さん、破れたり!」
勝利を確信し、叫んだ直後……
「残念。サクラ、破れたり。」
「後ろっ!?」
耳元で聞こえたお母さんの声に、背筋が凍る。
いつの間に…………
「…クラ…………サクラ?」
あれ?
「お母さん?」
目の前には心配そうなお母さんの顔。
勝負に負け、介抱されていたみたい。
「ごめんね? ちょっと威力が強過ぎたわ。」
私はお母さんのデコピンを後頭部にくらい、昏倒していたらしい。
信じられない。たかがデコピンで?
私があの時感じた衝撃はデコピンなんかではなく、鈍器で思いっきり殴られたような衝撃だった。
「それよりレイアは?」
「ちゃんと説得したわ。昔話をしてあげたら、鼻水まで垂らして泣きながら私を抱きしめてきたのよ?」
誤解は解けた、という事ね。
「戦わないで最初から口で言ってあげれば良かったのに。」
「レイ君は聞きそうになかったでしょ? それに、レイ君がどの程度強いのかはちょっと興味あったし。勿論サクラもね。」
お母さんは興味本位なのね。
「こっちは苦労したってのに……。」
「あまり怒らないで? 思えばお母さん、サクラと碌に戦った事が無かったでしょ? 娘の成長を見てみたかったのもあるのよ。」
そう言われるとあまり怒れない。
「私、どうだった?」
「サクラは強いけど、レイベルトや碧ちゃんにはまだまだ届いていないみたいね。」
お父さんと碧ママが二人がかりで戦えばお母さんといい勝負をするとの事。
私も勇者級の実力はあるけど、やはり戦争を経験した二人にはまだ敵わないという。
「まだまだ、かぁ……。」
「何言ってるの? これだけ強ければ十分よ。むしろこんなに強くなってどうするの。嫁の貰い手がないわよ?」
全然考えてなかった。
でも、前回だって結婚出来たんだからきっと…………。
「前回結婚出来たからって安心してるでしょ。」
「うん。まぁ……。」
「前回の貴女の旦那様は貴女が強いって事を私がひた隠しにして結婚させたんですからね?」
「なにそれ?」
「知らなかったの? サクラは強過ぎて男が寄って来ないと思ったから、うちの娘はか弱いって言って嘘ついてまで結婚相手を探してきたんだから。」
知らなかった…………。通りでやたらと私を気遣う旦那様だと思った。
か弱いと思われてたのね。
私自身、結婚してからは戦いに関わる事など全く無かったから、旦那様も最後まで気付かなかったんだ。
「また協力してあげるから頑張るのよ? 前回と同じ旦那様が良いわよね?」
「うん。一応お見合い結婚だったけど、旦那様の事は愛してるから。」
あっちにとってはまだ出会ってもないけど、私からすれば40年以上連れ添った大切な人。
「お母さんに任せなさい。あ、もし失敗したらナガツキ大公家の力で無理矢理その人と結婚させるけど良い?」
「良いわけないでしょ!?」
「サクラったらすぐに怒るんだから。」
権力で無理矢理結婚だなんて酷い親だわ。
本当にそういう力技に頼るところは感心しない。
でも…………万が一上手くいかなかったら、頼もうかな?
「なーんだ。そんな事か。」
「そんな事って……。」
碧ママ、適当過ぎない? 息子が変な勘違いしてるんだよ?
「真剣に考えないとダメじゃない? レイア、本気で思い詰めてるみたいなのに。」
「ごめんって。でも安心してよ。エイミーとレイアを一度戦わせて、レイアが負けてショックを受けている隙に事情を説明すれば納得するでしょ。」
そんなに簡単にいくかなぁ…………。
私は碧ママからのアドバイスを受け、レイアと私の二人がかりでお母さんと戦うよう誘導した。
レイアは何の疑いもなく私の話を真に受け、お母さんと戦う羽目になってしまった。
「本当に俺とサクラ姉さんの二人がかりで良いんだな?」
「良いわよ。レイ君の勘違いを正してあげるね。」
「もし俺達が勝ったら、エイミーママから出て行けよな。」
「私に勝てると思ってるのね。異界の神すら打倒した力、味わうといいわ。」
お母さんからは膨大な魔力が溢れ出し、物理的な重さを伴うかのように周囲の空気が重くなる。
凄い。まるで水の中にいるかのように体の動きが鈍いわ。
「くっ。俺は負けないっっ!」
レイアはこの圧力の中で鈍い動きながらも突撃し、お母さんに対して剣を振るが…………
「ダメよレイ君? そんな剣じゃ私に傷なんて付けられないわ。」
お母さんは指二本で優しくレイアの剣を摘んで受け止めていた。
レイアが本気で力を込めているにもかかわらず、摘まれた剣は微動だにしない。
「くそっ! 俺はエイミーママを助けるんだーーー!!」
「残念。レイ君は弱過ぎるから、助けられないわ。」
お母さんは剣をそっと握りしめると、バキッと嫌な音を立てて折れてしまった。
「さて、少し大人しくしててね?」
拘束魔法を掛けられ、地面に転がされるレイア。
なんとか逃れようともがいているけど、お父さんや碧ママでもない限りは抜けられないでしょうね。
ちなみに、私も一応抜けられる。
「サクラはレイベルトや碧ちゃんと同じ勇者級だから加減はあまりいらないわね。たまには運動しないとお母さんも鈍っちゃうし。」
そう言うや否や、莫大な魔力の奔流が天にも届こうかという勢いで立ち昇る。
これが…………お母さんの本気?
「……神から継承した能力は封印したんじゃなかったの?」
「したよ? 能力だけを封印したの。だから強さはそのまま。」
レイアが目の前の人物を人間ではないと思い込む気持ちも分かろうというもの。
この魔力量は明らかに人類の……それどころか、勇者の範疇からさえ逸脱している。
「サクラは勝てるかな?」
「魔力の量だけが強さの基準じゃない。やってみなきゃ分からないよ?」
結界魔法と拘束魔法を複合してお母さんに放ち、身動きの取れない状態を作り上げて即座に大きめの火魔法を放つ。
放った火魔法の後を追いかけるようにして私自身も突撃し、お母さんに迫った。
火魔法を避けられたら即座に追撃してやれば良い。
火魔法を弾かれたらその隙に剣で攻撃してやればいい。
私を舐め過ぎたわね。もう火魔法が接触する直前よ。
「お母さん、破れたり!」
勝利を確信し、叫んだ直後……
「残念。サクラ、破れたり。」
「後ろっ!?」
耳元で聞こえたお母さんの声に、背筋が凍る。
いつの間に…………
「…クラ…………サクラ?」
あれ?
「お母さん?」
目の前には心配そうなお母さんの顔。
勝負に負け、介抱されていたみたい。
「ごめんね? ちょっと威力が強過ぎたわ。」
私はお母さんのデコピンを後頭部にくらい、昏倒していたらしい。
信じられない。たかがデコピンで?
私があの時感じた衝撃はデコピンなんかではなく、鈍器で思いっきり殴られたような衝撃だった。
「それよりレイアは?」
「ちゃんと説得したわ。昔話をしてあげたら、鼻水まで垂らして泣きながら私を抱きしめてきたのよ?」
誤解は解けた、という事ね。
「戦わないで最初から口で言ってあげれば良かったのに。」
「レイ君は聞きそうになかったでしょ? それに、レイ君がどの程度強いのかはちょっと興味あったし。勿論サクラもね。」
お母さんは興味本位なのね。
「こっちは苦労したってのに……。」
「あまり怒らないで? 思えばお母さん、サクラと碌に戦った事が無かったでしょ? 娘の成長を見てみたかったのもあるのよ。」
そう言われるとあまり怒れない。
「私、どうだった?」
「サクラは強いけど、レイベルトや碧ちゃんにはまだまだ届いていないみたいね。」
お父さんと碧ママが二人がかりで戦えばお母さんといい勝負をするとの事。
私も勇者級の実力はあるけど、やはり戦争を経験した二人にはまだ敵わないという。
「まだまだ、かぁ……。」
「何言ってるの? これだけ強ければ十分よ。むしろこんなに強くなってどうするの。嫁の貰い手がないわよ?」
全然考えてなかった。
でも、前回だって結婚出来たんだからきっと…………。
「前回結婚出来たからって安心してるでしょ。」
「うん。まぁ……。」
「前回の貴女の旦那様は貴女が強いって事を私がひた隠しにして結婚させたんですからね?」
「なにそれ?」
「知らなかったの? サクラは強過ぎて男が寄って来ないと思ったから、うちの娘はか弱いって言って嘘ついてまで結婚相手を探してきたんだから。」
知らなかった…………。通りでやたらと私を気遣う旦那様だと思った。
か弱いと思われてたのね。
私自身、結婚してからは戦いに関わる事など全く無かったから、旦那様も最後まで気付かなかったんだ。
「また協力してあげるから頑張るのよ? 前回と同じ旦那様が良いわよね?」
「うん。一応お見合い結婚だったけど、旦那様の事は愛してるから。」
あっちにとってはまだ出会ってもないけど、私からすれば40年以上連れ添った大切な人。
「お母さんに任せなさい。あ、もし失敗したらナガツキ大公家の力で無理矢理その人と結婚させるけど良い?」
「良いわけないでしょ!?」
「サクラったらすぐに怒るんだから。」
権力で無理矢理結婚だなんて酷い親だわ。
本当にそういう力技に頼るところは感心しない。
でも…………万が一上手くいかなかったら、頼もうかな?
応援ありがとうございます!
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