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第三章 戦争から帰ってきたら、私の婚約者が別の奴とも結婚するみたい。
第4話 伝説の力
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度重なる戦闘によって全員の経験が蓄積され、強さと訓練の密度が増していった。
レイベルトが鍛えた部隊。通称レイベルト隊はやはり強い。
前回の時はきっとレイベルトに鍛え上げられる前に部隊を再配置された為、戦死者が出てしまったんだと思う。
現時点で彼らの実力は一人一人が兵二百人に相当するとレイベルトは評している。
多分、私が魔法の訓練を施した影響もある。
王宮騎士団長クラスの人間が百人も揃った部隊。もし自分が敵の立場だったとするなら本当に勘弁して欲しい。
レイベルトと碧ちゃんにも十分な経験を積ませる事が出来たし、碧ちゃんの恋心も育ったし、レイベルト隊の皆もそこそこ鍛えられたし、戦争を終わらせよう。
機は熟した。
気は進まないけど『アレ』に対抗する為、私はストレッチ王国軍を吸収して力にしなければいけないしね。
力を抑えての戦いはここまでよ。
「レイベルト。次は私らだけで特攻するよう進言して?」
「エイ。いくらなんでも無茶が過ぎるだろ。」
「そうだよエイ。いくら僕達が強いったって、今回の相手は五万だよ? 奇襲も策も無しじゃギリギリだよ……。」
「大丈夫だって碧。レイベルトはもう忘れた? 戦争が始まる前、練兵場を更地にして見せた事があったよね。あの魔法よりも強力な魔法を連発可能だと言ったらどうする?」
「……出来るのか?」
「勿論。真面目な話、あの程度で良ければ三百発以上は撃てるよ。」
「伝説の勇者の先祖返りとはそれ程か……。勇者サクラの逸話はおとぎ話だと思っていたが、事実だったんだな。」
「そういう事。」
「伝説の勇者!? 何それ……初耳なんだけど。」
「レイベルトには口止めしてたしね。碧も内緒だよ? じゃ、レイベルトは進言よろしく。多分今回の意見は余裕で通ると思うから。」
今、この辺りの部隊を統括するのはビットレイ伯爵だ。前指揮官が行方不明になったので繰り上げで指揮官となったみたい。
うん。腐ってるわ。
前指揮官は私が行方不明にしてあげたのよね。
あの裏切者からすれば、頭角を現した英雄と勇者が死ぬ事で点数稼ぎになる。きっと願ったり叶ったりだと思って進言を受け入れるでしょう。
ただ、いつまでも生きていられると邪魔だから、どこかのタイミングで消しておかなきゃね。
予想通り、レイベルトの進言は通った。
反対する貴族もいたにはいたが、結局指揮官であるビットレイ伯爵には逆らえなかったようね。
前は暴力反対とか言ってたくせに、堂々と戦争に参加しているあいつはやはりスパイなんだ。
前、と言っても今からだと未来の出来事にはなるんだけど。
「エイ。本当に大丈夫なのか?」
「勿論。本当の魔法というものを見せてあげるよ。」
「なんか中二病くさいね。」
碧ちゃん。
ちょっと静かにしてよ。
私達レイベルト隊は五万の敵とある程度の距離を開けて正面から睨み合っている。
こちらの人数が百人ちょっとしかいない為、敵も罠があるのではないかと疑っているのかなかなか攻めて来ない。
向こうが来ないなら、私から魔法攻撃をしてあげよう。
「見ててね。」
両手の平を敵軍に向け、碧ちゃんの保有魔力の倍程を魔法に込める。
勇者桜の得意魔法である炎の巨大竜巻。これを膨大な魔力を緻密に制御しながら敵がいるど真ん中に発生させてやった。
敵兵はまるでゴミのように竜巻に巻かれ、あっという間に全滅。
あの魔法がどれ程の威力であるのか知識としては知っていた。
でも実際目にしてみると、あれは完全に災害というか天変地異の領域だ。
まだ未熟な頃の勇者桜はあの魔法を制御も考えず、デタラメな魔力量に任せて使っていたみたいだけど……
あまりの規模のデカさにレイベルトはあんぐりと口を開け、碧ちゃんはポカーンと呆けている。
レイベルト隊の皆は「勝利!」と喜んでいたけど、感覚おかしくない? 訓練のし過ぎで変になったのかしら。
とにかく、これで敵の残存戦力は残すところ三十万。
私の方はと言えば、一度に五万もの敵兵の魂を吸収した結果、三十万の兵に向かって来られたとしても魔力切れを心配しなくても良いだけの魔力量に到達した。
既にこの時間に戻った当初の三倍程に魔力量が増加している。
勇者桜の知識によると、完全に能力を覚醒した今の私は殺す事によって魂を吸収する効率が上がっているみたい。
「やはり勇者サクラの伝説は事実だった……いや、伝説でさえも過少評価だったのか。」
「えっと、どんな伝説?」
「勇者桜は太陽を落とし、大地を割り、洪水を発生させ、台風や竜巻で何もかもを吹き飛ばすと言われている。」
「概ね間違ってはないね。ただ、その話は不完全。巨大な炎の竜巻を起こし、隕石を降らせ、あらゆるものを凍らせる、を追加してもらわないと。」
「ん? そんな話は聞いた事がないぞ。何故エイが知っているんだ。」
そう言えば、私が勇者桜の生まれ変わりであるところまでは話してないんだったわ。
せめて王宮にある日記を読んでから伝えた方が信憑性も増すと思うので、今はまだ内緒にしておきたい。
「そんな感じがしたってだけ。」
「まぁ、実際巨大な炎の竜巻は発生したからな。」
「そうそう。」
「いやぁ、あれは凄いね。本気出せば核くらいの威力は出るんじゃない?」
碧ちゃんは地球出身だから核を知っている。
そして私も勇者桜の知識を持っているから当然核も知っているし、本当にそのくらいの威力は出す事が出来るかもしれない。
ただ、私が核を知っているという事は不自然。
適当に誤魔化しておかなきゃ。
「碧の言う核は知らないけど、かなりの威力は出せると思うよ。」
「さっきのあれもかなりの威力だけどね。中二病な発言するだけの事はあるなぁ。」
碧ちゃん。中二病は恥ずかしいからやめて。
「ところでさ、これ何て報告するの?」
「魔法で一掃しましたと言っても信じてもらえるか分からんな。」
そこまでは考えていなかった。
どうしよう。
「……合体魔法。」
「え?」
「は?」
「だから合体魔法。三人で協力して魔法を発生させたら何か凄いの出たって事にしない?」
碧ちゃんの発想は天才的だった。
確かに、合体魔法というものが存在する事は知識の中にもある。
そうしないとレイベルトや碧ちゃんの活躍が足りなくて、戦後伯爵の地位まではもらえないという事もあり得るし、碧ちゃんの咄嗟に思いついた言い訳は理にかなっている。
現実的かどうかという点はさておき。
どうやって上に報告しようか、あーでもないこーでもないと相談しながら、私は別な事を考えていた。
感じる。
もう少しで『アレ』が出現する。
正確にいつ、というのは分からないけどもうじき来る。
こちらの用意は十分。
私単体でも『アレ』に勝てるだけの魔力を集めた。
来れるものなら来てみなさい。
私は戦争を終わらせ『アレ』を倒し、レイベルトと碧ちゃんと三人で幸せに暮らすんだ。
レイベルトが鍛えた部隊。通称レイベルト隊はやはり強い。
前回の時はきっとレイベルトに鍛え上げられる前に部隊を再配置された為、戦死者が出てしまったんだと思う。
現時点で彼らの実力は一人一人が兵二百人に相当するとレイベルトは評している。
多分、私が魔法の訓練を施した影響もある。
王宮騎士団長クラスの人間が百人も揃った部隊。もし自分が敵の立場だったとするなら本当に勘弁して欲しい。
レイベルトと碧ちゃんにも十分な経験を積ませる事が出来たし、碧ちゃんの恋心も育ったし、レイベルト隊の皆もそこそこ鍛えられたし、戦争を終わらせよう。
機は熟した。
気は進まないけど『アレ』に対抗する為、私はストレッチ王国軍を吸収して力にしなければいけないしね。
力を抑えての戦いはここまでよ。
「レイベルト。次は私らだけで特攻するよう進言して?」
「エイ。いくらなんでも無茶が過ぎるだろ。」
「そうだよエイ。いくら僕達が強いったって、今回の相手は五万だよ? 奇襲も策も無しじゃギリギリだよ……。」
「大丈夫だって碧。レイベルトはもう忘れた? 戦争が始まる前、練兵場を更地にして見せた事があったよね。あの魔法よりも強力な魔法を連発可能だと言ったらどうする?」
「……出来るのか?」
「勿論。真面目な話、あの程度で良ければ三百発以上は撃てるよ。」
「伝説の勇者の先祖返りとはそれ程か……。勇者サクラの逸話はおとぎ話だと思っていたが、事実だったんだな。」
「そういう事。」
「伝説の勇者!? 何それ……初耳なんだけど。」
「レイベルトには口止めしてたしね。碧も内緒だよ? じゃ、レイベルトは進言よろしく。多分今回の意見は余裕で通ると思うから。」
今、この辺りの部隊を統括するのはビットレイ伯爵だ。前指揮官が行方不明になったので繰り上げで指揮官となったみたい。
うん。腐ってるわ。
前指揮官は私が行方不明にしてあげたのよね。
あの裏切者からすれば、頭角を現した英雄と勇者が死ぬ事で点数稼ぎになる。きっと願ったり叶ったりだと思って進言を受け入れるでしょう。
ただ、いつまでも生きていられると邪魔だから、どこかのタイミングで消しておかなきゃね。
予想通り、レイベルトの進言は通った。
反対する貴族もいたにはいたが、結局指揮官であるビットレイ伯爵には逆らえなかったようね。
前は暴力反対とか言ってたくせに、堂々と戦争に参加しているあいつはやはりスパイなんだ。
前、と言っても今からだと未来の出来事にはなるんだけど。
「エイ。本当に大丈夫なのか?」
「勿論。本当の魔法というものを見せてあげるよ。」
「なんか中二病くさいね。」
碧ちゃん。
ちょっと静かにしてよ。
私達レイベルト隊は五万の敵とある程度の距離を開けて正面から睨み合っている。
こちらの人数が百人ちょっとしかいない為、敵も罠があるのではないかと疑っているのかなかなか攻めて来ない。
向こうが来ないなら、私から魔法攻撃をしてあげよう。
「見ててね。」
両手の平を敵軍に向け、碧ちゃんの保有魔力の倍程を魔法に込める。
勇者桜の得意魔法である炎の巨大竜巻。これを膨大な魔力を緻密に制御しながら敵がいるど真ん中に発生させてやった。
敵兵はまるでゴミのように竜巻に巻かれ、あっという間に全滅。
あの魔法がどれ程の威力であるのか知識としては知っていた。
でも実際目にしてみると、あれは完全に災害というか天変地異の領域だ。
まだ未熟な頃の勇者桜はあの魔法を制御も考えず、デタラメな魔力量に任せて使っていたみたいだけど……
あまりの規模のデカさにレイベルトはあんぐりと口を開け、碧ちゃんはポカーンと呆けている。
レイベルト隊の皆は「勝利!」と喜んでいたけど、感覚おかしくない? 訓練のし過ぎで変になったのかしら。
とにかく、これで敵の残存戦力は残すところ三十万。
私の方はと言えば、一度に五万もの敵兵の魂を吸収した結果、三十万の兵に向かって来られたとしても魔力切れを心配しなくても良いだけの魔力量に到達した。
既にこの時間に戻った当初の三倍程に魔力量が増加している。
勇者桜の知識によると、完全に能力を覚醒した今の私は殺す事によって魂を吸収する効率が上がっているみたい。
「やはり勇者サクラの伝説は事実だった……いや、伝説でさえも過少評価だったのか。」
「えっと、どんな伝説?」
「勇者桜は太陽を落とし、大地を割り、洪水を発生させ、台風や竜巻で何もかもを吹き飛ばすと言われている。」
「概ね間違ってはないね。ただ、その話は不完全。巨大な炎の竜巻を起こし、隕石を降らせ、あらゆるものを凍らせる、を追加してもらわないと。」
「ん? そんな話は聞いた事がないぞ。何故エイが知っているんだ。」
そう言えば、私が勇者桜の生まれ変わりであるところまでは話してないんだったわ。
せめて王宮にある日記を読んでから伝えた方が信憑性も増すと思うので、今はまだ内緒にしておきたい。
「そんな感じがしたってだけ。」
「まぁ、実際巨大な炎の竜巻は発生したからな。」
「そうそう。」
「いやぁ、あれは凄いね。本気出せば核くらいの威力は出るんじゃない?」
碧ちゃんは地球出身だから核を知っている。
そして私も勇者桜の知識を持っているから当然核も知っているし、本当にそのくらいの威力は出す事が出来るかもしれない。
ただ、私が核を知っているという事は不自然。
適当に誤魔化しておかなきゃ。
「碧の言う核は知らないけど、かなりの威力は出せると思うよ。」
「さっきのあれもかなりの威力だけどね。中二病な発言するだけの事はあるなぁ。」
碧ちゃん。中二病は恥ずかしいからやめて。
「ところでさ、これ何て報告するの?」
「魔法で一掃しましたと言っても信じてもらえるか分からんな。」
そこまでは考えていなかった。
どうしよう。
「……合体魔法。」
「え?」
「は?」
「だから合体魔法。三人で協力して魔法を発生させたら何か凄いの出たって事にしない?」
碧ちゃんの発想は天才的だった。
確かに、合体魔法というものが存在する事は知識の中にもある。
そうしないとレイベルトや碧ちゃんの活躍が足りなくて、戦後伯爵の地位まではもらえないという事もあり得るし、碧ちゃんの咄嗟に思いついた言い訳は理にかなっている。
現実的かどうかという点はさておき。
どうやって上に報告しようか、あーでもないこーでもないと相談しながら、私は別な事を考えていた。
感じる。
もう少しで『アレ』が出現する。
正確にいつ、というのは分からないけどもうじき来る。
こちらの用意は十分。
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