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第二章 ルートⅡ
第25話 君の笑顔
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「ベグレート王。私の言った事は事実ですよね? それを英勇夫婦に証言して下さい。」
エイミーが視線を向けたのは、隅で肩を寄せ合い震えている四人のうちの一人。
あいつが王だったのか。
確かに今の話が事実なら、相手の王がスパイをこちらに派遣しているなど知らないはずはない。
「……。」
しかし、エイミーに話しかけられた王は冷や汗を流し、口を閉ざしている。
「黙るな。どう言えば私達を争わせる事が出来るか考えてるだろお前。」
アオイが詰め寄るとベグレート王は後退りし、落ち着かない様子で言い訳を口にした。
「なっ! そ、そんな事は……圧が強過ぎて口を開けなかっただけで……」
「無駄だよ。エイミーさんはイットリウム王国の王にも証拠を送ったと言っている。後ですぐにバレる嘘をついても意味なんてないよ。」
動揺して考えが纏まらない俺とは違い、的確に相手の言を潰していくアオイはベグレート王が言い訳をしていると見抜いている様子だ。
「……エイミー殿の言った事は事実だ。」
観念したのか、詰められたベグレート王は絞り出すように一言だけ言葉を呟く。
「なんなんだよそれ……」
つまり、エイミーには全く非がなかった?
それどころか、傷つけられ、利用された……?
普通に暮らしていただけの娘に、そこまでの非道を働かなければならなかったのか?
エイミーが一体何をしたというのか………
絶対に、許さんっ!!!
「あっ………レイベ………」
俺はアオイの制止を無視して散々戦場で振るってきた剣技を惜しみなく発揮し、王を細切れにしてやった。
一瞬で解体され、肉の塊となったこの国の王を見た他三人は呆気にとられ、次の瞬間には顔が恐怖に引き攣っている。
「他は誰だ? スパイに指示を出した奴もいるだろ?」
「ちょっと待ってってば!? こいつらには他にも聞く事があるでしょ!」
「関わった奴を殺した後、別の奴に聞き出せば良い。」
こんな奴ら、生かしておく意味などない。
「た、助けてくれるという話では……」
震えながらも俺に話しかけてくる一人の男。
この期に及んで助けて、だと? 良い度胸してやがる。
「あ? ランデル侯爵か?」
イットリウム王国に助けを求めに来た奴だな。
「は、はい。此度の件は本当に申し訳なく思っております! 王が死んでしまった今、国の全てを差し出しますので、どうか……どうか民だけは……」
「成る程。民は助ければ良いんだな? 分かった。民には危害を加えない。民には……な。」
「は、はい……はい! ありがとうございます!」
「じゃあ、戦争賛成派だった貴族は皆殺しで良いんだろ?」
「は……い?」
ランデル侯爵は何故か驚いた顔をしている。
自分で言った事だろうに。
「どうした? 民には罪などない。だが統治者側であり、戦争に賛成だった貴族は別だ。仕掛けたのはそちら側で、いざとなれば殺される覚悟だってあったはずだ。」
「待って! 賛成派全員を殺したら統治はどうするのよ!」
「そんなものは反対派だった奴に任せたら良い。なんなら優秀な平民を代官に置けば問題はない。」
民の為を思うならばその方が良いだろう。
「エイミー。この国を終わらせて、俺達と一緒に帰ろう。」
「良いの?」
「あぁ。エイミーは何も悪く無かったんだ。」
エイミーが悪いわけはない。
薬や暗示まで使われ、それでも平気な人間などいるはずもない。
むしろ気付いてやれなかった俺の方が……。
「あ、ありがとう。私も、一緒に……うん。」
エイミーはあの日見た泣き顔とは違い、嬉し涙を流しながら頷いてくれた。
「で、結局スパイに指示した奴は誰だ?」
「レイベルト待って?」
「止めるなエイミー。俺は絶対に許せないんだ。」
何故だ? 君だってこんな仕打ちを受け、許せないはずだろう。
「止めないよ。でも、スパイに指示を出したブレイン侯爵は私が始末するの。」
エイミーは震えている男の一人を指さし、自分で始末をつけるのだと宣言した。
確かに一番被害にあったのはエイミーなのだから、直接始末する権利は彼女のもの、か。
「そうか。なら、エイミーに任せよう。」
「二人とも待ってってば!」
「待たない。」
「待てない。」
「何で息ぴったりなのよ! はぁ………本当にもう。仕方ないから気の済むまでやってしまいなさい! その代わり、ブレイン侯爵とかいう奴を始末したら、ちゃんと私の言う事を聞いてよ?」
呆れたようにため息をつくアオイ。彼女には迷惑をかけてしまうが、今回の件は絶対に許せないのだ。
「全てはこのブレイン侯爵が悪かった。どうか俺の首で終わりに………ぴゃ。」
ブレイン侯爵を名乗る奴が何かを言いかけていたが、エイミーの蹴りでぐしゃりと潰され、更に彼女は無言で地団駄を踏むようにして何度もブレイン侯爵だった物を踏みつけてしまう。
後に残ったのは、飛び散った肉片と絵具をぶちまけた様な赤であった。
頭に血がのぼっていた俺も流石に少し引いた。
「はい。じゃあ、後は情報を聞き出してこの国を解体するんだけど、エイミーさんはどうしたい? これはエイミーさんの復讐でもあるんだ。出来るだけ要望を聞いてあげたいと思う。あまり無理な事は聞けないけどね。」
傷つけられたエイミーに優しくしてくれるのは本当にありがたい。
「あの……私、立場とかもないから、要望を出すのは少し申し訳ないんですけど……。」
「うんうん。遠慮はいらないよ? 伝説の勇者の先祖返りなんだから、イットリウム王国上層部も許してくれるって!」
今までの暗い雰囲気を吹き飛ばすかのように明るく話しかけるアオイ。
惨劇の舞台であるこの部屋では違和感しかないやり取りだが、エイミーの心を少しでも晴らせるならなんでも良い。
「私……私は……。」
「ほらほら、言ってみて。」
エイミーらしいな。
きっと、自分なんて平民と変わらないような身分なのだと、俺と似たような事を考えて遠慮しているのだろう。
「さぁさぁ。遠慮しないで勇者お姉さんに話してみ?」
アオイの奴、少し年上だからって偶にお姉さんぶるからな。
エイミーも言いたい事が決まったのか頭を上げ、かつては何度も目にした穏やかな笑顔で口を開いた。
「ワタシ、ストレッチ王国全土を焦土にシテ、イキモノがスメナイ死のダイチに変えタイです。」
……は?
エイミーが視線を向けたのは、隅で肩を寄せ合い震えている四人のうちの一人。
あいつが王だったのか。
確かに今の話が事実なら、相手の王がスパイをこちらに派遣しているなど知らないはずはない。
「……。」
しかし、エイミーに話しかけられた王は冷や汗を流し、口を閉ざしている。
「黙るな。どう言えば私達を争わせる事が出来るか考えてるだろお前。」
アオイが詰め寄るとベグレート王は後退りし、落ち着かない様子で言い訳を口にした。
「なっ! そ、そんな事は……圧が強過ぎて口を開けなかっただけで……」
「無駄だよ。エイミーさんはイットリウム王国の王にも証拠を送ったと言っている。後ですぐにバレる嘘をついても意味なんてないよ。」
動揺して考えが纏まらない俺とは違い、的確に相手の言を潰していくアオイはベグレート王が言い訳をしていると見抜いている様子だ。
「……エイミー殿の言った事は事実だ。」
観念したのか、詰められたベグレート王は絞り出すように一言だけ言葉を呟く。
「なんなんだよそれ……」
つまり、エイミーには全く非がなかった?
それどころか、傷つけられ、利用された……?
普通に暮らしていただけの娘に、そこまでの非道を働かなければならなかったのか?
エイミーが一体何をしたというのか………
絶対に、許さんっ!!!
「あっ………レイベ………」
俺はアオイの制止を無視して散々戦場で振るってきた剣技を惜しみなく発揮し、王を細切れにしてやった。
一瞬で解体され、肉の塊となったこの国の王を見た他三人は呆気にとられ、次の瞬間には顔が恐怖に引き攣っている。
「他は誰だ? スパイに指示を出した奴もいるだろ?」
「ちょっと待ってってば!? こいつらには他にも聞く事があるでしょ!」
「関わった奴を殺した後、別の奴に聞き出せば良い。」
こんな奴ら、生かしておく意味などない。
「た、助けてくれるという話では……」
震えながらも俺に話しかけてくる一人の男。
この期に及んで助けて、だと? 良い度胸してやがる。
「あ? ランデル侯爵か?」
イットリウム王国に助けを求めに来た奴だな。
「は、はい。此度の件は本当に申し訳なく思っております! 王が死んでしまった今、国の全てを差し出しますので、どうか……どうか民だけは……」
「成る程。民は助ければ良いんだな? 分かった。民には危害を加えない。民には……な。」
「は、はい……はい! ありがとうございます!」
「じゃあ、戦争賛成派だった貴族は皆殺しで良いんだろ?」
「は……い?」
ランデル侯爵は何故か驚いた顔をしている。
自分で言った事だろうに。
「どうした? 民には罪などない。だが統治者側であり、戦争に賛成だった貴族は別だ。仕掛けたのはそちら側で、いざとなれば殺される覚悟だってあったはずだ。」
「待って! 賛成派全員を殺したら統治はどうするのよ!」
「そんなものは反対派だった奴に任せたら良い。なんなら優秀な平民を代官に置けば問題はない。」
民の為を思うならばその方が良いだろう。
「エイミー。この国を終わらせて、俺達と一緒に帰ろう。」
「良いの?」
「あぁ。エイミーは何も悪く無かったんだ。」
エイミーが悪いわけはない。
薬や暗示まで使われ、それでも平気な人間などいるはずもない。
むしろ気付いてやれなかった俺の方が……。
「あ、ありがとう。私も、一緒に……うん。」
エイミーはあの日見た泣き顔とは違い、嬉し涙を流しながら頷いてくれた。
「で、結局スパイに指示した奴は誰だ?」
「レイベルト待って?」
「止めるなエイミー。俺は絶対に許せないんだ。」
何故だ? 君だってこんな仕打ちを受け、許せないはずだろう。
「止めないよ。でも、スパイに指示を出したブレイン侯爵は私が始末するの。」
エイミーは震えている男の一人を指さし、自分で始末をつけるのだと宣言した。
確かに一番被害にあったのはエイミーなのだから、直接始末する権利は彼女のもの、か。
「そうか。なら、エイミーに任せよう。」
「二人とも待ってってば!」
「待たない。」
「待てない。」
「何で息ぴったりなのよ! はぁ………本当にもう。仕方ないから気の済むまでやってしまいなさい! その代わり、ブレイン侯爵とかいう奴を始末したら、ちゃんと私の言う事を聞いてよ?」
呆れたようにため息をつくアオイ。彼女には迷惑をかけてしまうが、今回の件は絶対に許せないのだ。
「全てはこのブレイン侯爵が悪かった。どうか俺の首で終わりに………ぴゃ。」
ブレイン侯爵を名乗る奴が何かを言いかけていたが、エイミーの蹴りでぐしゃりと潰され、更に彼女は無言で地団駄を踏むようにして何度もブレイン侯爵だった物を踏みつけてしまう。
後に残ったのは、飛び散った肉片と絵具をぶちまけた様な赤であった。
頭に血がのぼっていた俺も流石に少し引いた。
「はい。じゃあ、後は情報を聞き出してこの国を解体するんだけど、エイミーさんはどうしたい? これはエイミーさんの復讐でもあるんだ。出来るだけ要望を聞いてあげたいと思う。あまり無理な事は聞けないけどね。」
傷つけられたエイミーに優しくしてくれるのは本当にありがたい。
「あの……私、立場とかもないから、要望を出すのは少し申し訳ないんですけど……。」
「うんうん。遠慮はいらないよ? 伝説の勇者の先祖返りなんだから、イットリウム王国上層部も許してくれるって!」
今までの暗い雰囲気を吹き飛ばすかのように明るく話しかけるアオイ。
惨劇の舞台であるこの部屋では違和感しかないやり取りだが、エイミーの心を少しでも晴らせるならなんでも良い。
「私……私は……。」
「ほらほら、言ってみて。」
エイミーらしいな。
きっと、自分なんて平民と変わらないような身分なのだと、俺と似たような事を考えて遠慮しているのだろう。
「さぁさぁ。遠慮しないで勇者お姉さんに話してみ?」
アオイの奴、少し年上だからって偶にお姉さんぶるからな。
エイミーも言いたい事が決まったのか頭を上げ、かつては何度も目にした穏やかな笑顔で口を開いた。
「ワタシ、ストレッチ王国全土を焦土にシテ、イキモノがスメナイ死のダイチに変えタイです。」
……は?
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