53 / 87
聖女の暴力編
第52話 聖女の説得
しおりを挟む
あれから私とお母さんは魔界事情を更に詳しくアンリさんに聞いた。
残りの魔神、ルシーフとバルバスについて。
魔神ルシーフは兎に角酒癖が悪く……飲む、酔う、暴れる、二日酔い、機嫌が悪くて再び暴れる、という事をひたすら繰り返す魔神だそうだ。
毎日何百という悪魔の民が犠牲になり、死んでいるらしい。
なんて奴なの……。絶対に許せない。
そして魔神バルバスは権力欲が強いらしく、才能のありそうな悪魔を片っ端から狩ってまわっているのだとか。
なんでも、魔神という権力を手放したくないそうで、その立場を脅かす可能性を許容できないそうだ。
「あいつら二体は本当に自分勝手だから、領土も近いしいずれにしても戦争にはなっていたでしょうね。」
どっちにしても戦争は避けられなかったんだ……。
考えてみれば当たり前か。むしろ、良く今まで戦争にならなかったと感心してしまうくらいだ。
「今度こそは私が戦いたいわ。母さん良いでしょ?」
アドンとは私が戦ったし、今回はお母さんに譲るのも仕方ないか。
「あの二体は最初から加減抜きの全力で向かって来るから、あまり戦わせたくないのよね……。」
アンリさんは渋い顔で難色を示す。
「ベーゼブは修行に付き合ってくれてたから加減はしてたし、アドンだってキノコ栽培? をアリエンナちゃんとしたいからって、最初は殺さないようにして戦ってくれたでしょ?」
「確かにその通りですね。」
「そういう事だから、全く加減しないあいつらと戦うなら全力の魔神相手でも瞬殺されない程度には力が必要よ。」
そうよね。いくらお母さんが戦いの中で成長するとは言っても、成長する暇もなく殺されてしまってはどうしようもない。
「帰ったぞ。」
「あら、お帰りなさい。」
ベーゼブとアドンが配下? の人達を連れて転移で帰ってきていた。
「皆がすぐ説得に応じてくれて助かったよ。」
「そうだな。まぁ、殺し合いはするなと言っておいたから当然と言えば当然なんだが。ついでにアンリの所の四天王も連れてきておいたぞ。」
「助かるわ。」
四天王の人達は縮こまっている。魔神が3体も居て緊張してるのかな?
幹部級と言うだけあって、皆強そうだわ。
「皆に紹介するよ。こちらのアリエンナちゃんが、今後僕の主人になる。」
室内が大きくざわめき、一部の悪魔は不満そうな顔をしている。
どうも納得がいっていないようね。
「アドン様! このような小娘に従うと言うのですか!?」
「勿論だとも。僕はこの子に負けちゃったからね。」
「負けた? オセロでですか?」
「戦いで。」
「まさか……色仕掛けですか? それとも、珍しいキノコでも貰ったんですか?」
「君は僕を何だと思ってるのさ。普通に戦いで負けたんだよ。」
多分、アドンの配下の人でしょうね。この人はどうすれば納得するのかしら……。
「……納得がいきません。どうせ卑怯な手を使ったに決まっています!」
「アドンの所の……メフィスちゃん? だったかしら。やめておいた方が良いわよ?」
「アンリ様、何故ですか? どう見てもそこの小娘は魔神を倒せるとは思えません。」
「アリエンナちゃんはアンリの孫なんだよ。」
アドン……今それを言ったら火に油を注ぐ事にならない?
「要するにアンリ様と手を組んで二対一で勝ったって事ですよね? しかも、隣にもう1人似た奴がいる…………三対一って事!? そんなの卑怯よ!!」
ビシっとお母さんを指さすメフィス……ちゃん?
うーん。そんな事言われても……本当に勝ったんだけどな。
「嘘じゃないわよ? うちの娘は強いんだから。」
「嘘よ! 絶対嘘! 私と同じくらいにしか見えないじゃない!」
お母さんにあまり口答えしない方が良いと思うよ?
四天王の人達は顔を青くし、3歩その場から後ろに下がっている。
「私がいつ嘘をついたって言うの?」
あっ……お母さんが怒りそう。
「今よ! 今も嘘をつき続けてるじゃない!」
「何で私が嘘をつかなきゃいけないのよ。意味が分からないわ。ぷちっと潰しておこうかしら……。」
身体強化魔法の出力を一気に引き上げ、メフィスちゃんに襲い掛かるお母さん。
マズっ……
ドォォォン!!
私は間一髪、メフィスちゃんとお母さんの間に割って入る事が出来た。
ふぅ、危ない危ない。危うくお母さんが仲間をミンチにしちゃうところだったわ。
「アリエンナ? どうして邪魔をするの?」
「お母さん。仲間を殺したらダメってアンリさんが言ってたでしょ?」
「あぁ……なんかそんな事言ってたわね。忘れてたわ。」
「もう、お母さんったら。うっかりなんだから。」
「ふふっ、そうね。アリエンナに教えられちゃったわ。」
良かった。
お母さんはさっきベーゼブと戦ってストレス解消出来てるから、すぐに思いとどまってくれた。
「見ての通りだ。この2人は戦闘力を自在に操る事が出来るようで、一見魔神と戦えそうには見えんかもしれんが強い。」
「そういう事。特にアリエンナちゃんは、僕を倒せるレベルまで戦闘力が上がるんだ。驚いた?」
ベーゼブとアドンが補足説明してくれている。
それにしても、何で皆黙るの?
残りの魔神、ルシーフとバルバスについて。
魔神ルシーフは兎に角酒癖が悪く……飲む、酔う、暴れる、二日酔い、機嫌が悪くて再び暴れる、という事をひたすら繰り返す魔神だそうだ。
毎日何百という悪魔の民が犠牲になり、死んでいるらしい。
なんて奴なの……。絶対に許せない。
そして魔神バルバスは権力欲が強いらしく、才能のありそうな悪魔を片っ端から狩ってまわっているのだとか。
なんでも、魔神という権力を手放したくないそうで、その立場を脅かす可能性を許容できないそうだ。
「あいつら二体は本当に自分勝手だから、領土も近いしいずれにしても戦争にはなっていたでしょうね。」
どっちにしても戦争は避けられなかったんだ……。
考えてみれば当たり前か。むしろ、良く今まで戦争にならなかったと感心してしまうくらいだ。
「今度こそは私が戦いたいわ。母さん良いでしょ?」
アドンとは私が戦ったし、今回はお母さんに譲るのも仕方ないか。
「あの二体は最初から加減抜きの全力で向かって来るから、あまり戦わせたくないのよね……。」
アンリさんは渋い顔で難色を示す。
「ベーゼブは修行に付き合ってくれてたから加減はしてたし、アドンだってキノコ栽培? をアリエンナちゃんとしたいからって、最初は殺さないようにして戦ってくれたでしょ?」
「確かにその通りですね。」
「そういう事だから、全く加減しないあいつらと戦うなら全力の魔神相手でも瞬殺されない程度には力が必要よ。」
そうよね。いくらお母さんが戦いの中で成長するとは言っても、成長する暇もなく殺されてしまってはどうしようもない。
「帰ったぞ。」
「あら、お帰りなさい。」
ベーゼブとアドンが配下? の人達を連れて転移で帰ってきていた。
「皆がすぐ説得に応じてくれて助かったよ。」
「そうだな。まぁ、殺し合いはするなと言っておいたから当然と言えば当然なんだが。ついでにアンリの所の四天王も連れてきておいたぞ。」
「助かるわ。」
四天王の人達は縮こまっている。魔神が3体も居て緊張してるのかな?
幹部級と言うだけあって、皆強そうだわ。
「皆に紹介するよ。こちらのアリエンナちゃんが、今後僕の主人になる。」
室内が大きくざわめき、一部の悪魔は不満そうな顔をしている。
どうも納得がいっていないようね。
「アドン様! このような小娘に従うと言うのですか!?」
「勿論だとも。僕はこの子に負けちゃったからね。」
「負けた? オセロでですか?」
「戦いで。」
「まさか……色仕掛けですか? それとも、珍しいキノコでも貰ったんですか?」
「君は僕を何だと思ってるのさ。普通に戦いで負けたんだよ。」
多分、アドンの配下の人でしょうね。この人はどうすれば納得するのかしら……。
「……納得がいきません。どうせ卑怯な手を使ったに決まっています!」
「アドンの所の……メフィスちゃん? だったかしら。やめておいた方が良いわよ?」
「アンリ様、何故ですか? どう見てもそこの小娘は魔神を倒せるとは思えません。」
「アリエンナちゃんはアンリの孫なんだよ。」
アドン……今それを言ったら火に油を注ぐ事にならない?
「要するにアンリ様と手を組んで二対一で勝ったって事ですよね? しかも、隣にもう1人似た奴がいる…………三対一って事!? そんなの卑怯よ!!」
ビシっとお母さんを指さすメフィス……ちゃん?
うーん。そんな事言われても……本当に勝ったんだけどな。
「嘘じゃないわよ? うちの娘は強いんだから。」
「嘘よ! 絶対嘘! 私と同じくらいにしか見えないじゃない!」
お母さんにあまり口答えしない方が良いと思うよ?
四天王の人達は顔を青くし、3歩その場から後ろに下がっている。
「私がいつ嘘をついたって言うの?」
あっ……お母さんが怒りそう。
「今よ! 今も嘘をつき続けてるじゃない!」
「何で私が嘘をつかなきゃいけないのよ。意味が分からないわ。ぷちっと潰しておこうかしら……。」
身体強化魔法の出力を一気に引き上げ、メフィスちゃんに襲い掛かるお母さん。
マズっ……
ドォォォン!!
私は間一髪、メフィスちゃんとお母さんの間に割って入る事が出来た。
ふぅ、危ない危ない。危うくお母さんが仲間をミンチにしちゃうところだったわ。
「アリエンナ? どうして邪魔をするの?」
「お母さん。仲間を殺したらダメってアンリさんが言ってたでしょ?」
「あぁ……なんかそんな事言ってたわね。忘れてたわ。」
「もう、お母さんったら。うっかりなんだから。」
「ふふっ、そうね。アリエンナに教えられちゃったわ。」
良かった。
お母さんはさっきベーゼブと戦ってストレス解消出来てるから、すぐに思いとどまってくれた。
「見ての通りだ。この2人は戦闘力を自在に操る事が出来るようで、一見魔神と戦えそうには見えんかもしれんが強い。」
「そういう事。特にアリエンナちゃんは、僕を倒せるレベルまで戦闘力が上がるんだ。驚いた?」
ベーゼブとアドンが補足説明してくれている。
それにしても、何で皆黙るの?
0
お気に入りに追加
1,005
あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

魔法の薬草辞典の加護で『救国の聖女』になったようですので、イケメン第二王子の為にこの力、いかんなく発揮したいと思います
高井うしお
恋愛
※なろう版完結済み(番外編あり〼)
ハーブ栽培と本が好きなOL・真白は図書館で不思議な薬草辞典と出会う。一瞬の瞬きの間に……気が付くとそこは異世界。しかも魔物討伐の軍の真っ只中。そして邪竜の毒にやられて軍は壊滅状態にあった。
真白が本の導きで辞典から取り出したハーブを使うと彼らはあっという間に元気になり、戦況は一変。
だが帰還の方法が分からず困っている所を王子のはからいで王城で暮らす事に。そんな真白の元には色々な患者や悩み事を持った人が訪れるようになる。助けてくれた王子に恩を返す為、彼女は手にした辞典の加護で人々を癒していく……。
キラッキラの王子様やマッチョな騎士、優しく気さくな同僚に囲まれて、真白の異世界ライフが始まる! ハーブとイケメンに癒される、ほのぼの恋愛ファンタジー。

秘密の多い令嬢は幸せになりたい
完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。
完結が確定しています。全105話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる