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聖女の暴力編
第43話 聖女の「突撃! 隣の魔神城」
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「はい! それじゃあ今からやる事を話します。」
アンリさんは大声で唐突に話を切った。
これ以上お母さんと四天王が会話するのを避けているみたい。
「ここから東方向には魔神ベーゼブが治める地、ギャリクがあるわ。現在、魔神ベーゼブはギャリクから更に東にいる魔神アドンと戦争中よ。」
「背後から奇襲をかけるって事?」
良い案だ。奇襲は戦争の正しいお作法だって前にお母さんが言ってたもんね。
「その通り。今ここにいるメンバーで奇襲をかけるの。ベーゼブの配下は戦争で幹部級が出払ってるらしいからチャンスなのよ。」
確かにそれはチャンスだ。幹部級がいないなら、戦力が充実しているこちらが有利ね。
「四天王は有象無象の雑魚を蹴散らして。」
四天王の皆が頷く。
「そして私、アリエーン、アリエンナがベーゼブと戦うわ。」
私も魔神と戦えるのは嬉しいけど、一つ気になる事がある。
「アンリさん質問です。」
「なにかしら?」
「アンリさんとベーゼブはどっちが強いですか?」
「強さは同じくらいだけどあっちは近接タイプで私は魔法タイプだから、直接対決だと私の方が不利ね。準魔神級の2人に前衛を頑張ってもらえれば、そう苦労せずに勝てると思うわ。」
魔法タイプのアンリさんに一対一で苦戦した私とお母さんなら、2人で前衛を務めると丁度良いのかもしれない。
「早速今から乗り込むわよ。転移魔法を使うから皆集まって。」
その場にいる全員がアンリさんを囲むようにして集まった。
エリゴースさんが後ろからアンリさんのお尻を凝視している。
「転移。」
一瞬で周囲の景色が切り替わると、目の前にはアンリさんの城とはまた別の銀色に輝く城があった。
「ここがベーゼブの城よ。着いてきて。」
駆け出すアンリさんに魔神軍全員で追従する。城内には敵の悪魔がたくさん詰めていたが、道中の雑魚は四天王が露払いをしてくれた。
「四天王は引き続き雑魚だけを相手にして。絶対魔神同士の戦いに加わらないでね。」
それぞれが敵と戦いながら返事をし、私達はアンリさんに連れられベーゼブの居る奥の部屋を目指す。
「ここよ。」
そう言ってアンリさんは荘厳な作りの扉を開け放つと、扉の先には一人の人物がいた。
「ようこそアンリ。わざわざ俺に会いに来てくれたのか?」
そこに立っていたのは優男風のイケメンだった。
あの人がベーゼブね。
「冗談。あなたを倒しに来たのよ」
「なんだ。俺を受け入れて結婚してくれるのかと思ったぜ。」
結婚? どういう事?
「……説明しておくと、ベーゼブは私に結婚しろと要求しているのよ。呑まなければ民を殺すという脅し付きでね。」
なんて悪い悪魔なのかしら。女の敵ね。
「そっちの2人は何だ? 随分と強そうじゃないか。それに……。」
お母さんと私を舐めるように見てくる魔神ベーゼブ。視線が厭らしい。
「私の娘と孫よ。」
ベーゼブは少し驚いた表情をした後、とんでもない事を言った。
「そっちの2人も俺の嫁にしてやろう。」
「死ね。クソが。」
「嫌です。」
私とお母さんは即答した。
「アンリ。どっちが娘だ?」
「死ねって言った方よ。」
「お前……いくらなんでも口が悪過ぎるだろ……。」
うちの母がすみません。
「余計なお世話よ。クソにクソと言ったから何だってのよ。クソはクソらしくクソでもして寝てろ。クソが。」
お母さん……。いくらなんでも口が悪いよ。
「……アンリ。娘の教育はちゃんとした方が良いぞ。」
「……今度子供が出来たらそうするわ。」
アンリさん。それってお母さんの教育は諦めちゃったって事よね?
「まぁいい。それよりも、そこの2人が前衛を務めるという事か?」
「そうよ。」
はぁ、と溜息をつくベーゼブ。
「悪い事は言わんからやめさせろ。その程度じゃ秒殺だ。」
アスタさんもそうだったけど、身体強化の出力を抑えた状態だと悪魔は強さを見抜けないのかもしれない。
「秒殺? 出来るかしらね?」
お母さんは一気に身体強化の出力を上げた。
「……おい。それは反則だろ。特級レベルだなんて聞いてないぞ。」
戦いに反則なんてのも聞いた事がない。
とりあえず私も身体強化の出力を最大まで引き上げる。
「孫まで特級だと!?」
ベーゼブの顔に焦りが見える。
それにしても、悪魔は身体強化の魔法が使えないのかしら? そんなに驚くなら自分も真似すれば良いのに。
「なぁ、話し合わないか? 俺達に足りなかったのは……きっと話合いだ。多分誤解があると思うんだ。」
ベーゼブがふっと髪をかきあげ、魔神らしくない事を言っている。
「あなたねぇ……。民を人質に脅迫しておいて、誤解もないでしょう。」
「それだけお前を愛していた。」
この人が言う事はいちいち薄っぺらい。
「白々しいわよ。それだけ愛しているなら、私の娘や孫まで嫁にするって言ってたのは何だってのよ?」
「……気の迷いだ。」
「問答無用!」
アンリさんが魔神形態に変化した。
「クソっ!」
ベーゼブも応じる形で魔神形態を取る。
確かにアンリさんと同レベルに強いみたい。アンリさんと同じくらいの圧を感じる。
アンリさんは大声で唐突に話を切った。
これ以上お母さんと四天王が会話するのを避けているみたい。
「ここから東方向には魔神ベーゼブが治める地、ギャリクがあるわ。現在、魔神ベーゼブはギャリクから更に東にいる魔神アドンと戦争中よ。」
「背後から奇襲をかけるって事?」
良い案だ。奇襲は戦争の正しいお作法だって前にお母さんが言ってたもんね。
「その通り。今ここにいるメンバーで奇襲をかけるの。ベーゼブの配下は戦争で幹部級が出払ってるらしいからチャンスなのよ。」
確かにそれはチャンスだ。幹部級がいないなら、戦力が充実しているこちらが有利ね。
「四天王は有象無象の雑魚を蹴散らして。」
四天王の皆が頷く。
「そして私、アリエーン、アリエンナがベーゼブと戦うわ。」
私も魔神と戦えるのは嬉しいけど、一つ気になる事がある。
「アンリさん質問です。」
「なにかしら?」
「アンリさんとベーゼブはどっちが強いですか?」
「強さは同じくらいだけどあっちは近接タイプで私は魔法タイプだから、直接対決だと私の方が不利ね。準魔神級の2人に前衛を頑張ってもらえれば、そう苦労せずに勝てると思うわ。」
魔法タイプのアンリさんに一対一で苦戦した私とお母さんなら、2人で前衛を務めると丁度良いのかもしれない。
「早速今から乗り込むわよ。転移魔法を使うから皆集まって。」
その場にいる全員がアンリさんを囲むようにして集まった。
エリゴースさんが後ろからアンリさんのお尻を凝視している。
「転移。」
一瞬で周囲の景色が切り替わると、目の前にはアンリさんの城とはまた別の銀色に輝く城があった。
「ここがベーゼブの城よ。着いてきて。」
駆け出すアンリさんに魔神軍全員で追従する。城内には敵の悪魔がたくさん詰めていたが、道中の雑魚は四天王が露払いをしてくれた。
「四天王は引き続き雑魚だけを相手にして。絶対魔神同士の戦いに加わらないでね。」
それぞれが敵と戦いながら返事をし、私達はアンリさんに連れられベーゼブの居る奥の部屋を目指す。
「ここよ。」
そう言ってアンリさんは荘厳な作りの扉を開け放つと、扉の先には一人の人物がいた。
「ようこそアンリ。わざわざ俺に会いに来てくれたのか?」
そこに立っていたのは優男風のイケメンだった。
あの人がベーゼブね。
「冗談。あなたを倒しに来たのよ」
「なんだ。俺を受け入れて結婚してくれるのかと思ったぜ。」
結婚? どういう事?
「……説明しておくと、ベーゼブは私に結婚しろと要求しているのよ。呑まなければ民を殺すという脅し付きでね。」
なんて悪い悪魔なのかしら。女の敵ね。
「そっちの2人は何だ? 随分と強そうじゃないか。それに……。」
お母さんと私を舐めるように見てくる魔神ベーゼブ。視線が厭らしい。
「私の娘と孫よ。」
ベーゼブは少し驚いた表情をした後、とんでもない事を言った。
「そっちの2人も俺の嫁にしてやろう。」
「死ね。クソが。」
「嫌です。」
私とお母さんは即答した。
「アンリ。どっちが娘だ?」
「死ねって言った方よ。」
「お前……いくらなんでも口が悪過ぎるだろ……。」
うちの母がすみません。
「余計なお世話よ。クソにクソと言ったから何だってのよ。クソはクソらしくクソでもして寝てろ。クソが。」
お母さん……。いくらなんでも口が悪いよ。
「……アンリ。娘の教育はちゃんとした方が良いぞ。」
「……今度子供が出来たらそうするわ。」
アンリさん。それってお母さんの教育は諦めちゃったって事よね?
「まぁいい。それよりも、そこの2人が前衛を務めるという事か?」
「そうよ。」
はぁ、と溜息をつくベーゼブ。
「悪い事は言わんからやめさせろ。その程度じゃ秒殺だ。」
アスタさんもそうだったけど、身体強化の出力を抑えた状態だと悪魔は強さを見抜けないのかもしれない。
「秒殺? 出来るかしらね?」
お母さんは一気に身体強化の出力を上げた。
「……おい。それは反則だろ。特級レベルだなんて聞いてないぞ。」
戦いに反則なんてのも聞いた事がない。
とりあえず私も身体強化の出力を最大まで引き上げる。
「孫まで特級だと!?」
ベーゼブの顔に焦りが見える。
それにしても、悪魔は身体強化の魔法が使えないのかしら? そんなに驚くなら自分も真似すれば良いのに。
「なぁ、話し合わないか? 俺達に足りなかったのは……きっと話合いだ。多分誤解があると思うんだ。」
ベーゼブがふっと髪をかきあげ、魔神らしくない事を言っている。
「あなたねぇ……。民を人質に脅迫しておいて、誤解もないでしょう。」
「それだけお前を愛していた。」
この人が言う事はいちいち薄っぺらい。
「白々しいわよ。それだけ愛しているなら、私の娘や孫まで嫁にするって言ってたのは何だってのよ?」
「……気の迷いだ。」
「問答無用!」
アンリさんが魔神形態に変化した。
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