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フェルミト王国編

第18話 聖女のモテ度

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パーティ当日

「皆様、本日はお集まり頂きまして誠にありがとうございます。こうしてフェルミト王国が飢饉を乗り越える事が出来ましたのも、イリジウム王国の協力の賜物で御座います。」

 会場では知的美人が来客に向けて挨拶をしている。

 あの人がお母さんの言ってたフェルミト家の御令嬢……今は王女様だったわね。

「特に、食糧支援して下さったベリア伯爵、そうするようにと助言をして下さったベリオーテ公爵夫人のお二方による……」


「ベリオーテ公爵夫人って……。」

「えぇ。昨日会ったセリア様の事ですね。」

「ブッ飛び公爵令嬢なんて呼ばれてたらしいが、普通に良い奴じゃねぇか。」

「良い方ですが、白鳥のオマルがペットだなんてかなりブッ飛んでますよね。」

「まぁ……やる事がブッ飛んでんのかね?」

「もしかすれば、この食糧支援にもブッ飛びエピソードが隠されているかもしれません。」

「おいおい。人の善意を疑うもんじゃねぇぞ?」

 ギャモーに勘違いされてしまったわ。

「あ、そういうつもりじゃなくてですね……善意もあったでしょうけど、面白い話が聞けるかと思いまして……。」

「すまんすまん。確かに、そう言われるとそんな気がするな。」

「そうでしょう?」

「少しだけお話する時間を頂けないでしょうか? 美しいお嬢さん。」

 そう言って話しかけて来たのは、貴族っぽいイケメン。

「貴女のあまりの美しさに惹かれ、つい声をかけてしまいました。私、フェルミト王国のサブ=スクリプション伯爵と申します。」

「はぁ……。」

「おや、これは美しい方だ。私、フェルミト王国のテイガク=カケホーデイ男爵と申します。」
「なんと麗しい。是非私ともお話して頂きたい。フェルミト王国のマジ=マンジ子爵で御座います。」
「貴女はまるで女神のようだ。是非我が家のパーティにも招待したい。申し遅れました、フェルミト王国のカー=リース子爵と申します。」

 次々と男の人が寄ってくる。

 この人達、目がギラついていて村の男達を思い出すわ。

「あの……アリエンナと申します。」

「なんと美しい。」
「声までもが美しい。」
「佇まいも美しい。」
「女神よりも美しい。」

 いつの間に王女様の挨拶が終わっていたようで、次から次へと男達が話しかけてきてうっとおしい。

 貴族じゃなかったらブッ叩くのになぁ……。

「ははっ。すいませんね皆様方。連れは王女様に用があるんだ……ありましてですね。」

 ギャモーが助けに入ってくれる。しかし……

「なんだ貴様は。」
「従者の癖にわきまえろ。」
「奴隷に落とすぞ貴様。」
「従者が邪魔をするな。」

 彼を馬鹿にする貴族の男達。そのセリフを言った自分自身が邪魔者だと気付いていないみたい。

 どうしよう。大変だわ。

 ギャモーを馬鹿にしたこの人達を許せそうにない。

 私……間違ってミンチ肉を作ってしまうかもしれないわ。

 でも……この場合は複数人いるから、合いびき肉かしら?

 私は気付いてしまった。

 一国の木っ端貴族と世界で3人しかいない聖女の私とでは、どちらがより重要かを考えてみれば自ずと答えは出る。

 しかも私は帝国の元SSSランク、絶対暴力の魔女の娘。

 もしかしたら木っ端貴族の合いびき肉が出来てもお咎めなしかもしれない。

 それどころか表彰されたりして……。
※流石にそれはありません

「こいつは……あっいや、この方は聖女様だ……です。王女様に用があるのも本当だ…でして……。」

 ギャモー、もう普通に話した方が良いんじゃない?

「聖女様だったのか。」
「聖女様とはこれ程美しいのか。」
「是非我が家にいらして頂きたい。」
「通りでこれ程美しいわけだ……。」

 用事があると言っているのに引く様子がない。本当に合いびき肉作っちゃおうかしら。

 ざっと見る限りだと、大体3秒もあればイケそうね。

「私、料理が得意でして……3秒クッキングをお見せしたいと思います。」

「ま、待て!」

(ヤベェ! 魔物をミンチにする時の顔だ!)

 ギャモーは私の顔を見て何を勘違いしているのか、絶望の表情を浮かべている。

 あなたを料理するんじゃないんだから、そんな顔しなくても良いのよ?

「貴方達、何をしているのです!」

 この声は……

 私は声のする方に顔を向けると、そこには王女様が凛と立っていた。

 もしかして助けに来てくれたの?

「一人の女性を寄って集ってどうしようと言うのですか?」

 良く通る声で発せられた質問に、集まった男達は……

「聖女様をお誘いしようと……」
「我が家のパーティに来て頂こうと……」
「あまりの美しさに誘われてしまいまして。」
「お尻触りたかったです。」
「聖女様とお近づきになりたかったのです。」

「貴方達の言いたい事は分かりましたが、こんなに大人数で誘っても嫌がられるだけですよ。」

「恋愛事情に口を出すのは如何なものかと……」
「これ程美しい人をお誘いしないのは失礼というもの。」
「人の恋愛に口出しとは無粋ですね。」
「王女殿下は男の情熱が理解出来ないようですな。」
「全く、我々は紳士的にお誘いしているだけだというのに。」

 窘める王女様に対して、貴族達が次々に文句を言う。自分の国の王女に対して文句を言えるのは素直に凄いと思うけど……。

 この国では身分はそれ程重要ではないのかしら?

 ていうかお尻なんて触らせませんよ。

 誰ですか? そんな事言ったの。

 後でブッ叩いておかないと。
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