【完結】ブッ飛び公爵令嬢の楽しい契約結婚講座。(今ならたったの金貨1枚ですわ。)

隣のカキ

文字の大きさ
上 下
73 / 87
お姉様編

73 お前んち、おっ化けやーしきぃ……ですわ 前編

しおりを挟む
「……やけに暗いわね。」

 カリアの呟き通り、邸内は昼間とは思えない程に薄暗い。

(しかも、なんか寒くない?)

「……お嬢様。少し様子がおかしいように思います。私の後ろへ。」

 マサーレオはいつでも自らの主を庇えるように警戒する。先程まで倒錯的なプレイをしていたとは思えない見事な執事っぷりであった。

「さぁ……ご案内致します。どこまでも……。」

 2人は拭えない違和感を感じつつも使用人の案内に従う。無言で進む廊下は履き物の音が異様に響き渡り、不気味な様子を演出している。

 どこまでも続くかの様な廊下の壁は、まるで鏡のようであった。それがまた気味の悪さに拍車をかけている。

「ね、ねぇ……。この屋敷はどうして廊下が鏡なの?」

 無言の気まずさと不気味さを覆い隠すようにカリアは尋ねた。

「……それはお客様のような美しい方を歓迎する為でございます。しっかり磨き上げていますので、どうぞお近くでご覧になってみて下さい。」

 褒められて悪い気はしない。彼女は少しだけいつもの調子を取り戻したように、鏡へと近づく。

「確かに、綺麗な鏡ね。」

 せっかくだからと、色々なポーズを試してみるカリア。しかし……

「え?」

 一瞬だけ……そう、一瞬だけ鏡の向こう側にいる人物が違う動きをしたように見えたのだ。

(気の……せい? そうよ、気のせいよね。)

 彼女は少しだけ動揺したが、目の前にある鏡に変わった様子はない。鏡の中の人物が自分と同じ動作をしている事を確認し、やはり気のせいであったと安堵する。

(少し……頭が痛いわね。今日は雨じゃないのに。)

 カリアは時々起こる頭痛に悩まされている。痛みを覚えるのは決まって雨の日だ。

(こういう日もあるわよね。)

 一人で勝手に納得した彼女は無意識のうちに頭に手をやり、見てしまった。


 鏡の向こうの自分は頭に手を触れてなどいない。

 今の自分は笑顔など浮かべてはいない。


「ひっっ!」


 まるで、気付いてはいけない事に気付いたような気がした彼女は、咄嗟に悲鳴をあげてしゃがみ込む。

「お嬢様!?」

 マサーレオがすぐに声を掛ける。

「今、鏡が……」

 そう言って鏡を指さすカリアにつられ、マサーレオの視線が鏡へと向かう。

「鏡が、どうされましたか?」

「鏡に何かいる……。」

「鏡には我々しか映っていませんよ。」

「でも……。」

 カリアは恐る恐る鏡を確認するも、確かに普通の鏡と同様こちらと同じ動きをする2人が映るだけであった。

(気のせいだった……? でも確かに見たはずよ。)
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花
恋愛
 公爵令嬢のカミラ・リンディ・ベネット。  彼女は階段から降ってきた誰かとぶつかってしまう。  その『誰か』とはマーセルという少女だ。  マーセルはカミラの婚約者である第一王子のマティスと、とても仲の良い男爵家の令嬢。  いつに間にか二人は入れ替わっていた!  空いている教室で互いのことを確認し合うことに。 「貴女、マーセルね?」 「はい。……では、あなたはカミラさま? これはどういうことですか? 私が憎いから……マティスさまを奪ったから、こんな嫌がらせを⁉︎」  婚約者の恋人と入れ替わった公爵令嬢、カミラの決断とは……?  そしてなぜ二人が入れ替わったのか?  公爵家の令嬢として生きていたカミラと、男爵家の令嬢として生きていたマーセルの物語。 ※いじめ描写有り

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

処理中です...