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お姉様編
73 お前んち、おっ化けやーしきぃ……ですわ 前編
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「……やけに暗いわね。」
カリアの呟き通り、邸内は昼間とは思えない程に薄暗い。
(しかも、なんか寒くない?)
「……お嬢様。少し様子がおかしいように思います。私の後ろへ。」
マサーレオはいつでも自らの主を庇えるように警戒する。先程まで倒錯的なプレイをしていたとは思えない見事な執事っぷりであった。
「さぁ……ご案内致します。どこまでも……。」
2人は拭えない違和感を感じつつも使用人の案内に従う。無言で進む廊下は履き物の音が異様に響き渡り、不気味な様子を演出している。
どこまでも続くかの様な廊下の壁は、まるで鏡のようであった。それがまた気味の悪さに拍車をかけている。
「ね、ねぇ……。この屋敷はどうして廊下が鏡なの?」
無言の気まずさと不気味さを覆い隠すようにカリアは尋ねた。
「……それはお客様のような美しい方を歓迎する為でございます。しっかり磨き上げていますので、どうぞお近くでご覧になってみて下さい。」
褒められて悪い気はしない。彼女は少しだけいつもの調子を取り戻したように、鏡へと近づく。
「確かに、綺麗な鏡ね。」
せっかくだからと、色々なポーズを試してみるカリア。しかし……
「え?」
一瞬だけ……そう、一瞬だけ鏡の向こう側にいる人物が違う動きをしたように見えたのだ。
(気の……せい? そうよ、気のせいよね。)
彼女は少しだけ動揺したが、目の前にある鏡に変わった様子はない。鏡の中の人物が自分と同じ動作をしている事を確認し、やはり気のせいであったと安堵する。
(少し……頭が痛いわね。今日は雨じゃないのに。)
カリアは時々起こる頭痛に悩まされている。痛みを覚えるのは決まって雨の日だ。
(こういう日もあるわよね。)
一人で勝手に納得した彼女は無意識のうちに頭に手をやり、見てしまった。
鏡の向こうの自分は頭に手を触れてなどいない。
今の自分は笑顔など浮かべてはいない。
「ひっっ!」
まるで、気付いてはいけない事に気付いたような気がした彼女は、咄嗟に悲鳴をあげてしゃがみ込む。
「お嬢様!?」
マサーレオがすぐに声を掛ける。
「今、鏡が……」
そう言って鏡を指さすカリアにつられ、マサーレオの視線が鏡へと向かう。
「鏡が、どうされましたか?」
「鏡に何かいる……。」
「鏡には我々しか映っていませんよ。」
「でも……。」
カリアは恐る恐る鏡を確認するも、確かに普通の鏡と同様こちらと同じ動きをする2人が映るだけであった。
(気のせいだった……? でも確かに見たはずよ。)
カリアの呟き通り、邸内は昼間とは思えない程に薄暗い。
(しかも、なんか寒くない?)
「……お嬢様。少し様子がおかしいように思います。私の後ろへ。」
マサーレオはいつでも自らの主を庇えるように警戒する。先程まで倒錯的なプレイをしていたとは思えない見事な執事っぷりであった。
「さぁ……ご案内致します。どこまでも……。」
2人は拭えない違和感を感じつつも使用人の案内に従う。無言で進む廊下は履き物の音が異様に響き渡り、不気味な様子を演出している。
どこまでも続くかの様な廊下の壁は、まるで鏡のようであった。それがまた気味の悪さに拍車をかけている。
「ね、ねぇ……。この屋敷はどうして廊下が鏡なの?」
無言の気まずさと不気味さを覆い隠すようにカリアは尋ねた。
「……それはお客様のような美しい方を歓迎する為でございます。しっかり磨き上げていますので、どうぞお近くでご覧になってみて下さい。」
褒められて悪い気はしない。彼女は少しだけいつもの調子を取り戻したように、鏡へと近づく。
「確かに、綺麗な鏡ね。」
せっかくだからと、色々なポーズを試してみるカリア。しかし……
「え?」
一瞬だけ……そう、一瞬だけ鏡の向こう側にいる人物が違う動きをしたように見えたのだ。
(気の……せい? そうよ、気のせいよね。)
彼女は少しだけ動揺したが、目の前にある鏡に変わった様子はない。鏡の中の人物が自分と同じ動作をしている事を確認し、やはり気のせいであったと安堵する。
(少し……頭が痛いわね。今日は雨じゃないのに。)
カリアは時々起こる頭痛に悩まされている。痛みを覚えるのは決まって雨の日だ。
(こういう日もあるわよね。)
一人で勝手に納得した彼女は無意識のうちに頭に手をやり、見てしまった。
鏡の向こうの自分は頭に手を触れてなどいない。
今の自分は笑顔など浮かべてはいない。
「ひっっ!」
まるで、気付いてはいけない事に気付いたような気がした彼女は、咄嗟に悲鳴をあげてしゃがみ込む。
「お嬢様!?」
マサーレオがすぐに声を掛ける。
「今、鏡が……」
そう言って鏡を指さすカリアにつられ、マサーレオの視線が鏡へと向かう。
「鏡が、どうされましたか?」
「鏡に何かいる……。」
「鏡には我々しか映っていませんよ。」
「でも……。」
カリアは恐る恐る鏡を確認するも、確かに普通の鏡と同様こちらと同じ動きをする2人が映るだけであった。
(気のせいだった……? でも確かに見たはずよ。)
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