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フェルミト王国編

35 聖女の恐怖体験 前編

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「ねぇ。もうやめない?」

「ちょっと気味が悪いですね。」

「でも気にならねぇか?」

「読めそうな所までページを飛ばしますわね。」


『〇月〇日 死ね
 ダニエルがお花をプレゼントしていた。またあの女だ。

 〇月〇日 死ね
 ダニエルがお花をプレゼントしていた。死ね。

 〇月〇日 死ね
 あの女が急に居なくなった。

 〇月〇日 晴れ
 今日のダニエルは私にお花をプレゼントしてくれた。最初からこうすれば良かった。

 〇月〇日 曇り
 ダニエルがお花をプレゼントしてくれた。嬉しい。あの女の事は言うな。死ね。

 〇月〇日 雨
 貰ってばかりは悪いので、白いゼラニウムの花をプレゼントした。ダニエルは喜んでくれた。

 〇月〇日 曇り
 ダニエルが死んだ。嬉しくて悲しい。

 〇月〇日 快晴
 私も死んだ。

 〇月〇日 嵐
 皆死ね。

 〇月〇日 死ね
 お前も死ね。           』


「つまり、純愛からの失恋日記だった……という事ですのね。」

「どう考えても違うだろ。」

「その結論はおかしいよ。」

「……同意しかねます。」

(何故か責められてしまいましたわ。)

「何で白いゼラニウムの花をプレゼントしたの?」

「白いゼラニウムの花言葉は、『あなたの愛を信じない』ですわ。この時代でも同じ意味だったのだとすれば、ダニエルさんの愛が信じられなくなってしまったのでしょうね。」

「それには同意。」

「そうだな。」

「全く信じるに値しませんね。」

 皆、ダニエルに嫌悪感を示す。

『うぼあ゛ぁぁぁ』

「「「ひぃぃ!」」」

 突如として本の中から半透明の美しい女性が現れた。

『私は聖なる幽霊。』

「幽霊ですの?」

 セリアはそれ程動じていないようだ。

「聖なる?」

『幽霊。』

「あなたと私は?」

『お友達。』

 聖なる幽霊は意外とノリが良いようだ。

「聖なる幽霊ってなんだ?」

「幽霊って普通、無念があって現世に残るんですよね? 聖ではない気がしますけど。」

『私が聖女だからです。』

「聖女? だから聖なる幽霊って事?」

『そうです。』

「聖女が殺人はダメだろ。」

『殺人? そんな事していませんが。』

「日記に書いてあったよ。」

『あぁ。それは聖なる暗黒魔法を使っただけですよ。』


「聖なる暗黒魔法とはどういう事ですの? 暗黒魔法って悪魔が使う魔法ですわよね?」

『聖なる暗黒魔法とは、聖なる気持ちで暗黒魔法を使う事です。』

「それって普通の暗黒魔法とどう違うんですか?」

『暗黒魔法を使うと悪者っぽいですが、聖なる暗黒魔法を使うと聖女っぽいです。あと魔法の見た目がホーリーな感じになります。』

「中身は結局暗黒魔法じゃん。」

「というか、ダニエルさんはその魔法で死んだのですよね? 普通に殺人じゃないですか。」

『うるさいですね。聖なる暗黒魔法で聖なる呪いを掛けますよ?』
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