【完結】ブッ飛び公爵令嬢の楽しい契約結婚講座。(今ならたったの金貨1枚ですわ。)

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フェルミト王国編

28 馬車の旅ですわ 後編

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 セリアが所属するイリジウム王国と今回パーティーが開かれる隣国フェルミト王国は、昔から盛んに貿易が行われている。

 両国間の街道もしっかり整備されている為か、距離の割には行き来する日数は少なく済む。

 道中は平和だった。

 魔物が出現する事もあるが、公爵家お抱えの兵士達だけで対処出来る。

「結構ヒマなもんだね。」

「馬車での旅はこんなものですわ。」

「余計なトラブルはいらないもんね。」

「キャロル。それはフラグと言うやつですわ。」

 一行が通る街道は商隊が行き来するルートであり、弱い魔物が寄り付かないよう魔物除け処理が施されていた。

 しかし……

「ねぇ。どこからか雄たけびが聞こえてくるんだけど。」

 風に乗って獣の咆哮が2人の耳に届いている。

「まだ距離はありそうですが、皆さんにも警戒してもらった方が良さそうですわ。」

 そう言って兵士達に周囲の警戒を促すセリア。

「この街道には魔物除け処理がされてるんでしょ?」

「そうですが、弱い魔物にしか効果はありませんわ。」

「という事は……。」


 グオオオォォッ!!

 と先程よりも近い距離で聞こえて来る。

「つまり、強い魔物は寄って来る事もあるんですわ。」

「落ち着いてる場合じゃないでしょ!」

 キャロルの激しいツッコミにも動じないセリア。

 そんな彼女は魔物が出現しても普段通りであった。

「もし強い魔物なら……私達が対処しないと兵士さんが大変だよぉおぉおぉおぉおぉおぉ!!」

 焦ってしまっている彼女は、セリアの両の肩を掴んでガクガクと大きく揺らす。

「落・ち・着・い・て・欲・し・い・で・す・わ。」

 セリアは何度も肩を揺らされ、途切れ途切れに落ち着きを促す言葉を絞り出す。

「ご、ごめん。でも……。」

 キャロルから解放されたセリアは改めて発言する。

「キャロル。一旦落ち着いて欲しいですわ。ちゃんと対策してありますから。」

「対策? 強い兵士さんが来てるとか?」

 セリアはまるで、悪戯が成功した時のように微笑み、どんな対策をしてきたのか楽しそうに語った。

「そうですわ。悪魔の討伐実績がある凄い方を連れてきたんですのよ?」

「凄いじゃん! でもそんなに強い人って公爵家にいたかな?」

「キャロルもお会いした事がある方ですわ。」

「そうなの? 全然わからないんだけど……もしかして隠れた達人とか?」

 キャロルはそんな人いたっけ? と首を傾げ、全く見当がついていない様子だった。

「それは本当に強い魔物が来てしまった時のお楽しみですわ。これから魔物と遭遇するかもしれないのにお呼び立てするのは申し訳ないですし。」
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