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夫婦円満の秘訣編
5 違法金利はダメですわ 前編
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「お店が騒がしいと通報があったわ。貴方達……。何をしているの?」
「は、はい。このライフ商会には違法金利で金貸しをしている疑いがあります!」
「奥様! 証拠もあるんです!」
「これは公爵家に対する挑戦です!」
ここで受付の女性が兵士達の言い分を否定する。
「いえ! この人たちは突然お店に来て、違法金利だなんだと騒ぎ立てたんです。」
「うーん……。」
セリアが悩んでいるフリをすると……
「ここからは私がお話しましょう。」
「商会長!?」
そう言って現れたのは、恰幅の良い中年男性。この人物が商会長のようだ。
「ここで話すのもなんですから、奥でお話を伺います。」
(1件目から簡単に大物が釣れましたわね。)
セリアと兵士達は奥の部屋に通される。
「違法金利の証拠があるそうですが、兵士さん方は証拠を見せて頂けますかな?」
「「「……」」」
3人の兵士は沈黙している。
溜め息をつき、言葉を続ける商会長。
「証拠も無しに適当な事を言われては困りますな。」
「では、違法金利で金貸しはやっていないと?」
「勿論ですとも。」
恐らくは家令が財務管理を一手に引き受けていた弊害。ベリオーテ家の人間は誰も知らない。そう思っているからこその強気の態度。
「商会長さん。証拠というのはこれですの?」
セリアは取引の帳簿と証明書を出して見せた。
「っ!!」
「元々この件についてお話がしたかったんですわ。」
「あっ、そ、そうでしたか。これは金利の桁を間違えていますね。すぐに修正致します。」
商会長は焦りながらも違法金利とは言わず、あくまで間違いだった、で通すつもりのようだ。
「修正しなくて良いんですのよ?」
商会長は目を丸くする。
「証拠。消そうとしましたわね?」
「め、めっそうもない!」
「さて、私がしかるべき所にこれを持って行けば、ライフ商会はどうなってしまうのかしら……。」
ライフ商会は現在、様々な分野へ事業展開しており、その殆どを軌道に乗せる事に成功している大商会だ。
それが違法金利で一定期間の営業停止となれば、信じられない程の大損害を被るだろう。
そんな商会のトップが苦悶の表情を浮かべている。
「……何をお望みですか?」
「簡単な事ですわ。そもそもお金を貸していなかった事にすれば良いのです。」
「金貨1500枚の借金を踏み倒すおつもりですか!?」
一般市民の平均年収は金貨1枚。ベリオーテ家は、その1500倍に相当する金をライフ商会から借りているのだ。
「借金? 勘違いは良くありませんわ。そもそも借りていないじゃありませんか。」
フフフッと優雅に笑うセリアに対し、商会長は諦めたように肩を落とし……
「そう……でしたね……。」
と返事をするのが精一杯であった。
「念のため、ここで証文を焼いて下さいね? 後になって、借りていない物を貸したなんて言われても困りますから。」
(そうするしかない筈ですわ。営業停止に追い込まれてしまえば、金貨1500枚どころではない損失を叩き出すのですから。)
そうしてベリオーテ家が持つ負債の一部は、あっけなく消滅した。
「は、はい。このライフ商会には違法金利で金貸しをしている疑いがあります!」
「奥様! 証拠もあるんです!」
「これは公爵家に対する挑戦です!」
ここで受付の女性が兵士達の言い分を否定する。
「いえ! この人たちは突然お店に来て、違法金利だなんだと騒ぎ立てたんです。」
「うーん……。」
セリアが悩んでいるフリをすると……
「ここからは私がお話しましょう。」
「商会長!?」
そう言って現れたのは、恰幅の良い中年男性。この人物が商会長のようだ。
「ここで話すのもなんですから、奥でお話を伺います。」
(1件目から簡単に大物が釣れましたわね。)
セリアと兵士達は奥の部屋に通される。
「違法金利の証拠があるそうですが、兵士さん方は証拠を見せて頂けますかな?」
「「「……」」」
3人の兵士は沈黙している。
溜め息をつき、言葉を続ける商会長。
「証拠も無しに適当な事を言われては困りますな。」
「では、違法金利で金貸しはやっていないと?」
「勿論ですとも。」
恐らくは家令が財務管理を一手に引き受けていた弊害。ベリオーテ家の人間は誰も知らない。そう思っているからこその強気の態度。
「商会長さん。証拠というのはこれですの?」
セリアは取引の帳簿と証明書を出して見せた。
「っ!!」
「元々この件についてお話がしたかったんですわ。」
「あっ、そ、そうでしたか。これは金利の桁を間違えていますね。すぐに修正致します。」
商会長は焦りながらも違法金利とは言わず、あくまで間違いだった、で通すつもりのようだ。
「修正しなくて良いんですのよ?」
商会長は目を丸くする。
「証拠。消そうとしましたわね?」
「め、めっそうもない!」
「さて、私がしかるべき所にこれを持って行けば、ライフ商会はどうなってしまうのかしら……。」
ライフ商会は現在、様々な分野へ事業展開しており、その殆どを軌道に乗せる事に成功している大商会だ。
それが違法金利で一定期間の営業停止となれば、信じられない程の大損害を被るだろう。
そんな商会のトップが苦悶の表情を浮かべている。
「……何をお望みですか?」
「簡単な事ですわ。そもそもお金を貸していなかった事にすれば良いのです。」
「金貨1500枚の借金を踏み倒すおつもりですか!?」
一般市民の平均年収は金貨1枚。ベリオーテ家は、その1500倍に相当する金をライフ商会から借りているのだ。
「借金? 勘違いは良くありませんわ。そもそも借りていないじゃありませんか。」
フフフッと優雅に笑うセリアに対し、商会長は諦めたように肩を落とし……
「そう……でしたね……。」
と返事をするのが精一杯であった。
「念のため、ここで証文を焼いて下さいね? 後になって、借りていない物を貸したなんて言われても困りますから。」
(そうするしかない筈ですわ。営業停止に追い込まれてしまえば、金貨1500枚どころではない損失を叩き出すのですから。)
そうしてベリオーテ家が持つ負債の一部は、あっけなく消滅した。
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