サックスを吹く君のそばで

いとまる

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ーー千鶴ーー

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 千鶴「なんか、今日機嫌いい?最近たまにあるよね、テンション高めな日。」




 千鶴に言われて、尚は無意識だったことに気がついた。確かに今日は朝から気分がいい。理由はだいたいわかっていた。




 今日は水曜日。昼休みに傑が来る日なのだ。
 尚はもともと友達が少ない、特に運動部で他クラスとなると、ゼロに等しい。なので傑のような存在はとても新鮮だった。




 尚「実はさ、最近友達ができたんだ。」




 千鶴「そうなの?」




 尚「1組の田中っていうんだけど」




 千鶴「!?」





 千鶴は驚いた。




 尚「知ってる?陸上部の田中傑」



 千鶴「知ってるよ、有名だもんね。足も速くて頭もいい」




 尚「おまけに顔も」




 尚は笑いながら言った。





 千鶴「尚、私田中くんと話してみたいな。今度紹介してくれない?」




 尚「今日会うから聞いてみとくね」





 千鶴「尚のことよろしくっていうだけだけど」




 尚「傑はいいやつだし、優しいから多分千鶴も気にいると思うよ。」





 千鶴は内心ドキドキしていた。
 実は千鶴は傑に片想いしていたのだ。 






 昼休み、音楽準備室で尚は千鶴のことを紹介したいと傑に伝えた。




 傑「紹介ってなに」




 傑は興味なさそに答えた。




 尚「いや?迷惑かな」





 傑「いや。迷惑とかじゃないけど、まぁ、うん、いいよ。尚の幼馴染だもんね。紹介してよ」




 尚「千鶴いいやつだから、傑にも紹介したい」



 傑「それって尚の幼馴染っていう紹介だよね?おれに女を紹介するわけじゃないよね?」




 尚「なにそれ」




 傑「多いんだよそういうの。こっちは求めてないのに勝手に紹介して仲良くしてって言われて。今彼女とかいらないから。違うよな?」





 尚「もちろん違うよ。月曜連れてきていい?」





 傑「いや、早い方がいいだろ?明日朝そっちのクラスに顔出すわ」





 傑は内心紹介なんてどうでもよかった。2人だけの時間を邪魔されるようで嫌だった。ましてや、この音楽準備室にくるなんて。サックスを吹く尚を独り占めしてたのに。そこに誰かが来る。。それだけは絶対に避けたかった。





 次の日の朝、傑は学校の玄関で綾に会った。




 綾「おはよう」



 傑「おっす、お前さ、今暇?」



 綾「暇だけど。なんで?」



 傑「ちょっとさぁ、3組まで付き合ってくんない?」



 綾「いいけど、なに?」




 傑「今日だけお前は俺の大親友だ」




 綾「は?なにそれ」




 傑「まぁ話合わせてよ。1人で行くのなんか嫌だから」




 何かを察した綾。



 ーーもしかして何か進展が。。。。!ーー




 綾「親友なんだからなんでも任せて」




 傑「急に乗り気」



 3組を覗くと、尚が気づいて手を振りながら千鶴を連れて廊下に出てきた。



 尚「来てもらってありがとう。こちら幼馴染の千鶴だよ。千鶴、こちら傑。最近仲良くしてるんだ」


 千鶴「千鶴です、尚とは昔から仲良くて。。。。よろしくお願いします」



 2人は丁寧に挨拶した。



 傑「どーも。あ。俺もついでに大親友連れてきた」


 傑は綾の肩に手を回した。


 綾「綾でーす!、傑のお世話がかりやってまーす!えーと、千鶴さんと、尚さん!?えー、私も仲良くなりたいな。。。。」



 綾は一気にテンションが上がった。

 ーーおそらく、尚さんが、傑の意中の相手。。。。。。ーー




 傑「おい余計なこと言うなよ、バカってばれるだろ」



 綾「バカで結構!すみません、この人ほんと失礼で、いつも尚さんに迷惑かけてませんか?」




 尚「そんなことないよ、いつも優しいし面白いし」




 尚は笑いながら答えた。




 それを見た傑と綾は全く同じことを思っていた。




 ーーーかわいすぎるーーー





 綾「傑が優しい!?優しいの!?ちょっと!傑!」





 傑「あー、うるさいうるさい。じゃ、帰るね、またね尚、千鶴さん」




 傑は綾を引っ張るように足早にクラスの方に向かった。




 綾「あんたさ、優しいんだ?尚くんの前では」


 傑「お前うざ」


 綾「朝から大親友になってやったんだよ?私になにかいうことないわけ?例えば、こんなことで悩んでるみたいな。。。」



 傑「ねーよほっとけ」


 綾「はいはい、こんどお昼くらい奢ってよ」



 ーーだめだめ、落ち着くのよ綾。尚くんがいくら可愛いかったからって。傑が意外とデレで、並んだら結構お似合いだったからって。今はきっと大事な時期。抑えるのよ、綾ーー



 綾は平静を保った。






尚「なんか傑いつもと雰囲気違ったな」





千鶴「そうなの?仲良い友達とはあんな感じなのかな?尚の前では優しいんだ?」





尚「優しいし、正直だし、可愛らしいところもある」




千鶴「かわいいの?男らしいかっこいいイメージはあるけど、かわいいはイメージできないな」




尚「そうなんだ。。。確かに俺も初めはそうだったかも」




千鶴「どっちが本当の傑くんなんだろうね。今度さ、さっきの4人で遊びに行けないかな?」



尚「どうだろ、傑あんまりわいわいするの好きじゃないみたいだから嫌がるかも。」




千鶴「そうなんだ、じゃあ誘うのも悪いね。実はさ、尚に聞いてほしいことがあって。私ね、一年以上前から傑くんのこと好きなんだ。今まで誰にも言ったことなかったんだけど、尚が仲良いって聞いて、もしかしたら何かのきっかけにならないかなって内心思ってたの。」



尚「そうなの!?知らなかった」




尚は傑の言葉を思い出した。




尚「千鶴、力になりたいのは山々なんだけど、俺はどうすることもできないんだ。実は傑から紹介されたりするの嫌いって言われてて。。。今回も千鶴は幼馴染だから紹介できたんだ」



千鶴「そっか、うん!尚に迷惑かけない!」




尚「ごめんな」





尚は千鶴の片思いの相手が傑だったことにも驚いたが、それよりも傑と綾の関係性が気になっていた。千鶴が言った、本当の傑。。。綾とのやりとりはとても自然で楽しそうにしていた。自分の時は突然塞ぎ込んだり、遠慮したりすることがある。傑を、もっと知りたい、仲良くなりたいと思った。









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