7 / 15
ーー音楽準備室ーー
しおりを挟む
月曜日、4限の授業が終了すると、すぐに席を立って傑は音楽準備室へ向かった。先週末はじめて尚と話してみて、それから尚のことで頭がいっぱいだった傑は、今日会えるのをとても楽しみにしていた。
胸の高鳴りを抑えながら、音楽準備室へ向かった。
尚はまだきていなかった。乱雑に置かれた机の上に少し古びた楽器や道具が陳列されている。
そばにあるサックスを持ってみた。
尚のと少し違うかたちだなと思い、よく観察していると、尚が現れた。
尚「本当に来たんだ、早いね」
傑「これって尚のサックスと少し違う?」
尚「サックスにも種類があるんだ。音も違う。俺のはテナーサックス」
尚は持ってきたケースからサックスを取り出した。
尚「実は今メンテナンスに出してるからこれは練習用のサックスなんだ。もうすぐ演奏会があるから。少し練習するから好きに過ごしててね」
尚は窓の方を向いて音を出し始めた。正面ではないので顔は見えないが斜め後ろがサックスを吹く尚の姿を傑はじっと見ていた。
サックスの音は心地よい。いつまでも聴いていたいと傑は思った。
20分ほど練習して、2人で昼食を食べた。
傑は朝コンビニで買ったサンドイッチとジャムパン。尚は弁当だ。
尚「ジャム、口元についてる」
尚は傑の口元に近づいてジャムのついた所を指差してた。
傑「どこ??」
傑は口元を触ったがどこかわからない。すると尚がそっと口元に触れてジャムをとってくれた。
尚「傑って意外と子どもみたいだね」
尚はクスッと笑いながら言った。
傑は赤くなった顔を見られたくなくて、ぱっと後ろを向いた。
尚「ごめん、嫌な意味じゃなくて。傑って有名人だし何でもできるイメージだったから。可愛らしい一面もあるんだなって。俺的にはそっちの方が嬉しいけど」
傑は恥ずかしいとか、怒ったとかそんな感情はなかった。ただ、尚に顔を覗き込まれて口元に触れられた時、興奮してしまったのだ。今まで感じたことのない感情に傑は戸惑ったが尚に気づかれたくなくて平静を装った。
傑「俺だって普通の高校生だし。尚と一緒。今日はもう、戻ろうかな」
そう言って傑が立ちあがろうとすると、
尚が傑の腕を掴んだ。
尚「ごめん、俺失礼なこと言った?」
傑「いや、違うから。」
尚「なんかごめん、またここで会ってくれる?」
傑「また水曜に来るよ。」
教室に向かいながら高鳴る鼓動を抑えた。触れられた口元と、掴まれた腕がまだ熱く感じた。もう、この気持ちが友達には生まれない感情だと傑は気づいていたし、認めざるを得なかった。
ーー俺は尚に惹かれているーー
胸の高鳴りを抑えながら、音楽準備室へ向かった。
尚はまだきていなかった。乱雑に置かれた机の上に少し古びた楽器や道具が陳列されている。
そばにあるサックスを持ってみた。
尚のと少し違うかたちだなと思い、よく観察していると、尚が現れた。
尚「本当に来たんだ、早いね」
傑「これって尚のサックスと少し違う?」
尚「サックスにも種類があるんだ。音も違う。俺のはテナーサックス」
尚は持ってきたケースからサックスを取り出した。
尚「実は今メンテナンスに出してるからこれは練習用のサックスなんだ。もうすぐ演奏会があるから。少し練習するから好きに過ごしててね」
尚は窓の方を向いて音を出し始めた。正面ではないので顔は見えないが斜め後ろがサックスを吹く尚の姿を傑はじっと見ていた。
サックスの音は心地よい。いつまでも聴いていたいと傑は思った。
20分ほど練習して、2人で昼食を食べた。
傑は朝コンビニで買ったサンドイッチとジャムパン。尚は弁当だ。
尚「ジャム、口元についてる」
尚は傑の口元に近づいてジャムのついた所を指差してた。
傑「どこ??」
傑は口元を触ったがどこかわからない。すると尚がそっと口元に触れてジャムをとってくれた。
尚「傑って意外と子どもみたいだね」
尚はクスッと笑いながら言った。
傑は赤くなった顔を見られたくなくて、ぱっと後ろを向いた。
尚「ごめん、嫌な意味じゃなくて。傑って有名人だし何でもできるイメージだったから。可愛らしい一面もあるんだなって。俺的にはそっちの方が嬉しいけど」
傑は恥ずかしいとか、怒ったとかそんな感情はなかった。ただ、尚に顔を覗き込まれて口元に触れられた時、興奮してしまったのだ。今まで感じたことのない感情に傑は戸惑ったが尚に気づかれたくなくて平静を装った。
傑「俺だって普通の高校生だし。尚と一緒。今日はもう、戻ろうかな」
そう言って傑が立ちあがろうとすると、
尚が傑の腕を掴んだ。
尚「ごめん、俺失礼なこと言った?」
傑「いや、違うから。」
尚「なんかごめん、またここで会ってくれる?」
傑「また水曜に来るよ。」
教室に向かいながら高鳴る鼓動を抑えた。触れられた口元と、掴まれた腕がまだ熱く感じた。もう、この気持ちが友達には生まれない感情だと傑は気づいていたし、認めざるを得なかった。
ーー俺は尚に惹かれているーー
1
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

ポンコツアルファを拾いました。
おもちDX
BL
オメガのほうが優秀な世界。会社を立ち上げたばかりの渚は、しくしく泣いているアルファを拾った。すぐにラットを起こす梨杜は、社員に馬鹿にされながらも渚のそばで一生懸命働く。渚はそんな梨杜が可愛くなってきて……
ポンコツアルファをエリートオメガがヨシヨシする話です。
オメガバースのアルファが『優秀』という部分を、オメガにあげたい!と思いついた世界観。
※特殊設定の現代オメガバースです

αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である


モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる