サックスを吹く君のそばで

いとまる

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ーー音楽準備室ーー

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 月曜日、4限の授業が終了すると、すぐに席を立って傑は音楽準備室へ向かった。先週末はじめて尚と話してみて、それから尚のことで頭がいっぱいだった傑は、今日会えるのをとても楽しみにしていた。




 胸の高鳴りを抑えながら、音楽準備室へ向かった。



 尚はまだきていなかった。乱雑に置かれた机の上に少し古びた楽器や道具が陳列されている。

 そばにあるサックスを持ってみた。

 尚のと少し違うかたちだなと思い、よく観察していると、尚が現れた。


 尚「本当に来たんだ、早いね」



 傑「これって尚のサックスと少し違う?」




 尚「サックスにも種類があるんだ。音も違う。俺のはテナーサックス」




 尚は持ってきたケースからサックスを取り出した。




 尚「実は今メンテナンスに出してるからこれは練習用のサックスなんだ。もうすぐ演奏会があるから。少し練習するから好きに過ごしててね」




 尚は窓の方を向いて音を出し始めた。正面ではないので顔は見えないが斜め後ろがサックスを吹く尚の姿を傑はじっと見ていた。



 サックスの音は心地よい。いつまでも聴いていたいと傑は思った。




 20分ほど練習して、2人で昼食を食べた。
 傑は朝コンビニで買ったサンドイッチとジャムパン。尚は弁当だ。


 尚「ジャム、口元についてる」



 尚は傑の口元に近づいてジャムのついた所を指差してた。



 傑「どこ??」



 傑は口元を触ったがどこかわからない。すると尚がそっと口元に触れてジャムをとってくれた。


 尚「傑って意外と子どもみたいだね」



 尚はクスッと笑いながら言った。




 傑は赤くなった顔を見られたくなくて、ぱっと後ろを向いた。



 尚「ごめん、嫌な意味じゃなくて。傑って有名人だし何でもできるイメージだったから。可愛らしい一面もあるんだなって。俺的にはそっちの方が嬉しいけど」


 傑は恥ずかしいとか、怒ったとかそんな感情はなかった。ただ、尚に顔を覗き込まれて口元に触れられた時、興奮してしまったのだ。今まで感じたことのない感情に傑は戸惑ったが尚に気づかれたくなくて平静を装った。


 傑「俺だって普通の高校生だし。尚と一緒。今日はもう、戻ろうかな」


 そう言って傑が立ちあがろうとすると、
 尚が傑の腕を掴んだ。



 尚「ごめん、俺失礼なこと言った?」




 傑「いや、違うから。」




 尚「なんかごめん、またここで会ってくれる?」




 傑「また水曜に来るよ。」




 教室に向かいながら高鳴る鼓動を抑えた。触れられた口元と、掴まれた腕がまだ熱く感じた。もう、この気持ちが友達には生まれない感情だと傑は気づいていたし、認めざるを得なかった。


 ーー俺は尚に惹かれているーー













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