上 下
15 / 23
どうも乙女ゲームの悪役令嬢です

どうやら第二王子殿下と一緒に学ぶことになる様です…。

しおりを挟む
 「お久しぶりです、リズリ・ヘレン・セインド嬢。」

あの後玉座の間に入って来た第一王子殿下に着いて行くようにと言われ、連れて来られたのは客間だった。

「ええ。あ、あの…。」

はい?と殿下は首を傾げる。

「わたくしが一緒にレッスンを受けるのは第二王子殿下…ですよね?」

「ああ、はい。そうなのですが第二王子が今不在なのでここでしばらく待っていただいていただこうと思いまして。」

な、なるほど、と頷き、しばらくの沈黙が走る。
ど、どうしよう…間が持たない…なんとか話をつなげねば…!

「きょ、今日は、いい天気ですね!」

殿下は、ん?と困ったような表情を浮かべる。

「今日は曇り空の筈ですが…?」

その言葉を聞いて私は窓の外を見る。
や、やってしまった――――!
そのまま私は固まってしまう。

プッ!

殿下の吹き出す音が聞こえる。

アハハハハ!

声をあげて笑う殿下を見て私は唖然とする。
王子様でもこんなに笑うことあるんだ、と。
はーっと笑い過ぎて出た涙をぬぐいながら殿下は言った。

「曇りなのにいい天気って…wあなたは面白い方ですね。」

ニコッと笑顔を私に向けて。
なるほど、こんな美形でこんな嘘偽りのない性格だから乙女ゲームの中のリズリ嬢はコロッといっちゃったわけね。
でも記憶を取り戻した私はそう簡単におちないわよ!

「そうかしら。あまり意識したことは無いのだけど。」

「あ、失礼しました。面白い人、なんて言われていい気はしませんよね。」

少しツンとして返すとすぐに謝罪の言葉が返って来る。
ヤバい、記憶取り戻したからってあんまりもたないかも…。

「謝らないでください。少しきつい物言いをしてしまいました。気にしてませんよ。」

そうですか?とまた美形スマイルが返って来る。

「もう殿下は講師を付けておられるのですか?」

これ以上ニコニコ笑われると乙女ゲーム版リズリ嬢の二の舞のなりそうなので話題を切り替えてみる。

「はい。1年ほど前からですね。」

去年から始めてるということは、年齢上は同い年でももう先輩という訳ね。

「もし分からないことなどあれば、遠慮せずに聞いて下さいね。」

もうそれ中学や高校の入学式に上級生あいさつで絶対言われるセリフですよね?などと心の中で突っ込みを入れながらもええ、と返事をする。

コンコン

ドアが叩かれた。
どうぞ、と殿下が言うと、側近であろう男性が入って来た。

「第二王子殿下の準備が整った様です。」

分かった、と殿下は立ち上がり、それにつられて私も立ち上がる。

「では、行きましょうか。」

殿下は私に笑顔を向けて、先を歩く。私も続いて歩く。
実をいうと、第二王子殿下は二人目の攻略対象。
だから私はこれから敵となるかもしれない人と初めましてするわけだ。
まずは第一印象を全力で良くせねば。
リズリは小さくガッツポーズをして気合を入れるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

王妃教育受けてても、浮気、だめ、絶対

かぜかおる
ファンタジー
私は今、平民が使うような粗末な馬車に揺られて国境へと向かっている。 昨日までこの国の筆頭公爵家の令嬢として、皇太子の婚約者として、栄華を誇っていた私がなぜ今こんなことになっているのか、ちょっと話に付き合ってもらえないだろうか。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...