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古都宮春遥、この度生まれ変わります!
どうやら転生する様です…。
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「お前には転生してもらう。」
一瞬思考が停止した。しかし数秒後に再び脳が起動する。
「…へ?」
間抜けな声が出た。いや、今は何を言われても間抜けな返事しか出来ないだろう。
「転生すると言っても、今までお前が過ごしてきた世界とこれからお前が行く世界は全く異なる場所だ。」
「えっと…いわゆる異世界転生というやつですね…?」
神様は首を傾げた。何か考え込んでいるらしい。
「私は下界の事をよく知らないが…下界ではそう呼ばれているのか?」
私は異世界転生という今までファンタジーに過ぎなかったものが実際に存在しているということが少しうれしくて、笑顔になっていたのだが、その表情のまま今度は硬直してしまった。しばらくの沈黙が流れた後、私の驚きの声が神界に鳴り響く。
「よく知らずに今まで神様なんてやってたんですか!?」
神様は一瞬驚きの顔を浮かべたが、すぐにすまない、と俯き、しょんぼりとしてしまう。
なんだろう。かわいい…。
…ん?いやいやいや…え?
「ともかく、異世界転生ですね!分かりました!」
よこしまな感情が脳裏をよぎった気がしたが、それは気のせいとして、話を切り替える。
神様も顔を上げてくれたし、良しとしよう!うん!
「転生の準備はもうできているから今すぐにでも可能だが、転生すると今までのお前の記憶の一切は消えてしまう。もしまだ心残りとなっていることがある様なら、まだ時間はあるが…。」
私は14年間という短い一生の記憶を思い出せる限り振り返り、首を横に振った。
「そうか。ならよかった。」
神様はふっと微笑むと、片方の手のひらを上に向け、何やら呪文のようなものを唱えた。異世界漫画で言うところの『詠唱』だろう。
「これがお前の思い出の花だ。」
そう言って渡されたのはピンク色のカーネーションだった。この花を見て思い出すのは今から9年も前の話だ。母の日にお母さんに喜んでもらいたくて小さなポスト型の貯金箱の中のお金を初めて使ってこのピンク色のカーネーションを買った。結局忙しいお母さんには渡せずじまいで枯れてしまったけど。
「そっか…これが私の思い出の花かぁ。」
花を受け取り、つぶやくと切なさが心の中に広がった。
「それを胸の前で持って、目を閉じて欲しい。」
「わ、分かりました。ていうか、なんかめちゃくちゃ花が関わってきますね。」
私がここに来た時も、花にのってた気がする。そして転生する時も花を持つだなんて…。
「転生の仕組みを作った女神が相当な花好きだったらしい。」
「あ、そんな単純な理由…。」
思ってた100倍単純すぎて呆気にとられてしまう。
「では、さっき言った通りにやってくれ。」
私は頷き、花を胸の前に持って目を閉じる。その瞬間、強い風が吹いた。びっくりして目を開く。
私の目の前に広がっていたのは、視界いっぱいに広がる、宇宙のような場所だった。
しかし、体感はプールの中を泳いでいるような感じだ。
さらに不思議な事に、宇宙でもプールでも本来なら息が出来ない筈なのに普通に息してるし、苦しくない。
ためしに、バタ足で泳いでみた。すんなりと向かった方向に進める。
すると、私の前に突然、大きな写真が現れた。
「お父さんとお母さん…?」
それは赤ちゃんを抱えて微笑む、父と母の写真だった。次の瞬間、大きな写真は光の粒となって、散ってしまう。
また進んでみた。今度は小さい幼児がハイハイをしていて、それを見て喜ぶ両親の写真、その次は保育園の入園式。その次は保育園のお遊戯。それを繰り返していくうち、最初赤ちゃんだった女の子は、小学生になった。
「私だ。」
確信した。今までの写真は、全部私の成長過程を表していたのだ。しかし、写真は中学生の入学式を最後に現れなくなってしまう。代わりに、向こう側に光が見えた。出口だ。私は光に向かって再び泳ぎだした。
一瞬思考が停止した。しかし数秒後に再び脳が起動する。
「…へ?」
間抜けな声が出た。いや、今は何を言われても間抜けな返事しか出来ないだろう。
「転生すると言っても、今までお前が過ごしてきた世界とこれからお前が行く世界は全く異なる場所だ。」
「えっと…いわゆる異世界転生というやつですね…?」
神様は首を傾げた。何か考え込んでいるらしい。
「私は下界の事をよく知らないが…下界ではそう呼ばれているのか?」
私は異世界転生という今までファンタジーに過ぎなかったものが実際に存在しているということが少しうれしくて、笑顔になっていたのだが、その表情のまま今度は硬直してしまった。しばらくの沈黙が流れた後、私の驚きの声が神界に鳴り響く。
「よく知らずに今まで神様なんてやってたんですか!?」
神様は一瞬驚きの顔を浮かべたが、すぐにすまない、と俯き、しょんぼりとしてしまう。
なんだろう。かわいい…。
…ん?いやいやいや…え?
「ともかく、異世界転生ですね!分かりました!」
よこしまな感情が脳裏をよぎった気がしたが、それは気のせいとして、話を切り替える。
神様も顔を上げてくれたし、良しとしよう!うん!
「転生の準備はもうできているから今すぐにでも可能だが、転生すると今までのお前の記憶の一切は消えてしまう。もしまだ心残りとなっていることがある様なら、まだ時間はあるが…。」
私は14年間という短い一生の記憶を思い出せる限り振り返り、首を横に振った。
「そうか。ならよかった。」
神様はふっと微笑むと、片方の手のひらを上に向け、何やら呪文のようなものを唱えた。異世界漫画で言うところの『詠唱』だろう。
「これがお前の思い出の花だ。」
そう言って渡されたのはピンク色のカーネーションだった。この花を見て思い出すのは今から9年も前の話だ。母の日にお母さんに喜んでもらいたくて小さなポスト型の貯金箱の中のお金を初めて使ってこのピンク色のカーネーションを買った。結局忙しいお母さんには渡せずじまいで枯れてしまったけど。
「そっか…これが私の思い出の花かぁ。」
花を受け取り、つぶやくと切なさが心の中に広がった。
「それを胸の前で持って、目を閉じて欲しい。」
「わ、分かりました。ていうか、なんかめちゃくちゃ花が関わってきますね。」
私がここに来た時も、花にのってた気がする。そして転生する時も花を持つだなんて…。
「転生の仕組みを作った女神が相当な花好きだったらしい。」
「あ、そんな単純な理由…。」
思ってた100倍単純すぎて呆気にとられてしまう。
「では、さっき言った通りにやってくれ。」
私は頷き、花を胸の前に持って目を閉じる。その瞬間、強い風が吹いた。びっくりして目を開く。
私の目の前に広がっていたのは、視界いっぱいに広がる、宇宙のような場所だった。
しかし、体感はプールの中を泳いでいるような感じだ。
さらに不思議な事に、宇宙でもプールでも本来なら息が出来ない筈なのに普通に息してるし、苦しくない。
ためしに、バタ足で泳いでみた。すんなりと向かった方向に進める。
すると、私の前に突然、大きな写真が現れた。
「お父さんとお母さん…?」
それは赤ちゃんを抱えて微笑む、父と母の写真だった。次の瞬間、大きな写真は光の粒となって、散ってしまう。
また進んでみた。今度は小さい幼児がハイハイをしていて、それを見て喜ぶ両親の写真、その次は保育園の入園式。その次は保育園のお遊戯。それを繰り返していくうち、最初赤ちゃんだった女の子は、小学生になった。
「私だ。」
確信した。今までの写真は、全部私の成長過程を表していたのだ。しかし、写真は中学生の入学式を最後に現れなくなってしまう。代わりに、向こう側に光が見えた。出口だ。私は光に向かって再び泳ぎだした。
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