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73.それは魔法
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ホテルに帰ると、レオンが桃をソファに座らせた。
何か物足りないような顔をしている。
「お腹すいちゃった?」
夜食癖のあるレオンは何か食べたくなってしまったのだろうか。
桃もアイスクリームとか、冷たいものが食べたいような気がしていた。
あれだけ飲んで食べたのに、やっぱり何かしらのシメは必要。
ラーメンは無理だけど。
「違う。・・・いや、あと1、2時間もしたら何か食べたくなるかもだけど・・・。そうじゃなくて、聞いたら嫌かも知れないけど・・・。イリスって、何?」
考えながらと言うより、困惑しながら話していると言う感じ。
彼がこういうのは珍しい。
困惑するくらいなら言葉にしないだろう。
「友達。紹介したでしょ?国家資格も持ってる女性菓子職人さんで実業家さんよ」
「そうじゃなくて・・・。・・・人のこと言えないけど・・・」
勘がいい。
桃は感心した。
「そうね。・・・まず、アナタの話。あんな言い方無い。サーラちゃん泣いていたのに」
「・・・サーラは昔からああだもの。幼い。あの幼さは周りを傷つける」
咎められたのが心外、と、レオンは大して気にもしてないようだ。
「・・・イリスとはね、友達。昔、ちょっとそんな事言われた事あったけれど。私は女性との恋愛に踏み切れなかったし。私、当時、周りに比べて子供過ぎたのよね。だからいい友人でいさせて貰ってます。そもそもイリスはモテるから。・・・こないだまで付き合ってたのも、年上のすてきな女優さんよ?私なんかじゃ相手にもされない」
「・・・え?誰?」
桃が名前を囁くと、レオンは驚いて目を丸くした。
レオンも知る、結構有名な女優だ。
「・・・イリスは昔から私よりもずっと大人。・・・昨日もね、イリスがパートナーを作って子供を持つ話を聞いていたの。結構大変だと思うけど、ずっと若い頃から考えていたみたい」
「・・・ベニは?」
桃は、うーん、と考え込んだ。
「・・・私はどうかなあ・・・。私ね、一度流産した事があって。・・・その時に、妊娠継続するのが難しいのかもしれないって言われたの。・・・でも詳しく検査も治療もしてないから、よくわかんないんだけど・・・」
「そっか・・・。ベニが嫌ならそれでいいんだけど。・・・出来たら、考えてみない?もしベニが妊娠するのが難しいとか、拒否感があるなら、里子でもいいと思うんだ」
意外だった。
彼の提案にも、そこまで具体的に考えていると言う事にも。
家族になるとか家族を持つとか。
やはり自分にはその辺が希薄なのかもしれない。
「・・・レオンは、女性と結婚しないまでも、生活を続けて、子供を持つ事に矛盾はないのね?」
「うん。ベニとの今と未来を考えたい」
家族になるとか、家族を持つとか。
それは、自分で決めていい事なのかもしれない。
一度、無くした小さな命の事。
悲しくて、もういっそ煩わしくていたけれど。
時間を経て、踏み出すタイミングが来たと言う事だとしたら。
「ベニとの今の生活に不満とかは全然無いよ。むしろ変化して変なふうになってしまう方が嫌だけど。でも、ベニが、さっきみたいに、誰かを宥めたり、手を焼いたり、説得したり、そう言うのを見てみたい」
レオンが感じるに、彼女に関わると、人は変わる。
ミカエルも、多分、サーラも。
アメリカに行ったきりのミカエルが慌ててやって来た理由なんて見当がついていた。
ベニとの関係を確認して、出来たら解消させたかったのだ。
今まで特定の特別な関係というのは居なかったし、何より、彼は自分という作家性と、引いては金脈が失われてはたまらないだろうから。
ミカエルは自他共に認める、強引で、策略家。
それでN.Yで活躍して、成功しているのだから。
それが彼のプライドで、同時に罪悪感でもあるのだけど。
しかし、桃は、それを大雑把でセコい、面白いと笑うのだ。
この俺を、セコい?!なんて評価だ!とミカエルは絶句していたけど。
でも、なんだか許されたような気分だとも笑っていた。
そして何より自分も、変わって行く気がしている。
その影響力は何なのだろうと不思議で仕方ないのだ。
今まで周囲にあまり意識を払って来なかった自分にしたら、神秘的なくらいに、それは魔法のようだと思うのだけど、
誰かが変わって行くのを、それを毎日、間近で見てみたい。
出来たら、自分も可愛がれるような存在であればと思う。
レオンにしたら驚く程の変化なのだけど。
魔力、魔法のように。
変な欲求、と桃は笑った。
「誰かを可愛がるって事?なら、ペットでもいいんじゃない?猫はちょっとだけ飼ってたの。猫がいるって最高。でも、スウェーデン寒いし、間違って寒波の時に家から出て迷子になったら心配よね。なら、大きい犬とか、私、いいなあ。可愛いよね。もしかして犬嫌い?」
「好き。・・・でも、ダメ」
「なんで?アレルギー?」
レオンは首を振った。
「ベニに、そのとにかく可愛がられるポジションは、僕が目指してるから。いきなりそんなポテンシャルの高い存在が現れたら太刀打ちできない」
自分は間違いなく犬に負けると本気で言うのに、桃は笑い出して、レオンに寄り添った。
何か物足りないような顔をしている。
「お腹すいちゃった?」
夜食癖のあるレオンは何か食べたくなってしまったのだろうか。
桃もアイスクリームとか、冷たいものが食べたいような気がしていた。
あれだけ飲んで食べたのに、やっぱり何かしらのシメは必要。
ラーメンは無理だけど。
「違う。・・・いや、あと1、2時間もしたら何か食べたくなるかもだけど・・・。そうじゃなくて、聞いたら嫌かも知れないけど・・・。イリスって、何?」
考えながらと言うより、困惑しながら話していると言う感じ。
彼がこういうのは珍しい。
困惑するくらいなら言葉にしないだろう。
「友達。紹介したでしょ?国家資格も持ってる女性菓子職人さんで実業家さんよ」
「そうじゃなくて・・・。・・・人のこと言えないけど・・・」
勘がいい。
桃は感心した。
「そうね。・・・まず、アナタの話。あんな言い方無い。サーラちゃん泣いていたのに」
「・・・サーラは昔からああだもの。幼い。あの幼さは周りを傷つける」
咎められたのが心外、と、レオンは大して気にもしてないようだ。
「・・・イリスとはね、友達。昔、ちょっとそんな事言われた事あったけれど。私は女性との恋愛に踏み切れなかったし。私、当時、周りに比べて子供過ぎたのよね。だからいい友人でいさせて貰ってます。そもそもイリスはモテるから。・・・こないだまで付き合ってたのも、年上のすてきな女優さんよ?私なんかじゃ相手にもされない」
「・・・え?誰?」
桃が名前を囁くと、レオンは驚いて目を丸くした。
レオンも知る、結構有名な女優だ。
「・・・イリスは昔から私よりもずっと大人。・・・昨日もね、イリスがパートナーを作って子供を持つ話を聞いていたの。結構大変だと思うけど、ずっと若い頃から考えていたみたい」
「・・・ベニは?」
桃は、うーん、と考え込んだ。
「・・・私はどうかなあ・・・。私ね、一度流産した事があって。・・・その時に、妊娠継続するのが難しいのかもしれないって言われたの。・・・でも詳しく検査も治療もしてないから、よくわかんないんだけど・・・」
「そっか・・・。ベニが嫌ならそれでいいんだけど。・・・出来たら、考えてみない?もしベニが妊娠するのが難しいとか、拒否感があるなら、里子でもいいと思うんだ」
意外だった。
彼の提案にも、そこまで具体的に考えていると言う事にも。
家族になるとか家族を持つとか。
やはり自分にはその辺が希薄なのかもしれない。
「・・・レオンは、女性と結婚しないまでも、生活を続けて、子供を持つ事に矛盾はないのね?」
「うん。ベニとの今と未来を考えたい」
家族になるとか、家族を持つとか。
それは、自分で決めていい事なのかもしれない。
一度、無くした小さな命の事。
悲しくて、もういっそ煩わしくていたけれど。
時間を経て、踏み出すタイミングが来たと言う事だとしたら。
「ベニとの今の生活に不満とかは全然無いよ。むしろ変化して変なふうになってしまう方が嫌だけど。でも、ベニが、さっきみたいに、誰かを宥めたり、手を焼いたり、説得したり、そう言うのを見てみたい」
レオンが感じるに、彼女に関わると、人は変わる。
ミカエルも、多分、サーラも。
アメリカに行ったきりのミカエルが慌ててやって来た理由なんて見当がついていた。
ベニとの関係を確認して、出来たら解消させたかったのだ。
今まで特定の特別な関係というのは居なかったし、何より、彼は自分という作家性と、引いては金脈が失われてはたまらないだろうから。
ミカエルは自他共に認める、強引で、策略家。
それでN.Yで活躍して、成功しているのだから。
それが彼のプライドで、同時に罪悪感でもあるのだけど。
しかし、桃は、それを大雑把でセコい、面白いと笑うのだ。
この俺を、セコい?!なんて評価だ!とミカエルは絶句していたけど。
でも、なんだか許されたような気分だとも笑っていた。
そして何より自分も、変わって行く気がしている。
その影響力は何なのだろうと不思議で仕方ないのだ。
今まで周囲にあまり意識を払って来なかった自分にしたら、神秘的なくらいに、それは魔法のようだと思うのだけど、
誰かが変わって行くのを、それを毎日、間近で見てみたい。
出来たら、自分も可愛がれるような存在であればと思う。
レオンにしたら驚く程の変化なのだけど。
魔力、魔法のように。
変な欲求、と桃は笑った。
「誰かを可愛がるって事?なら、ペットでもいいんじゃない?猫はちょっとだけ飼ってたの。猫がいるって最高。でも、スウェーデン寒いし、間違って寒波の時に家から出て迷子になったら心配よね。なら、大きい犬とか、私、いいなあ。可愛いよね。もしかして犬嫌い?」
「好き。・・・でも、ダメ」
「なんで?アレルギー?」
レオンは首を振った。
「ベニに、そのとにかく可愛がられるポジションは、僕が目指してるから。いきなりそんなポテンシャルの高い存在が現れたら太刀打ちできない」
自分は間違いなく犬に負けると本気で言うのに、桃は笑い出して、レオンに寄り添った。
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