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72. ジャガーVSピューマ
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ニコラのビストロは、今でもその佇まいのままだった。
今日は久しぶりに厨房に入って腕をふるうと決めたニコラが店名のロゴ入りのコック服を着た。
モモは髪をバッサリ切って、頭が軽くなったと大満足。
美容室の日本人のオーナーは久々にこの手の髪質が来たと何やら嬉しそうだった。
「いやもうね、アジア人の真っ直ぐの髪。太くてコシがあってね。あれなら、カッコよくカットする自信あるんですよ。ところがたまにいる、この猫より猫っ毛のビニール紐割いたみたいなぺたぺたした髪!めんどくせぇ!いいですねぇ!いい教材になります。皆、よく見ておいて!」
とおかしなテンションのまま、店員全員に囲まれて断髪式となってしまった。
日本人変わってる、とイリスは呆れていた。
日本のサロン仕様のシャンプーまで買えてしまったと桃は上機嫌だ。
突然髪が短くなった桃にレオンは多少ショックを受けたようだが、無言で桃を抱きしめたので、気に入ったらしい。
「懐かしいわね。・・・ここでお菓子食べたりね」
桃は店内を眺めた。
こじんまりとした暖かみのある店。
カウンターには焼き上がったばかりのケーキがいつも飾ってあって。
自分は忘れてしまったけれど、ここで小松川の祖母にも会ったのだ。
あの時、自分はりんごのパイを彼女に勧めたらしい。
「モモはよく手伝ってくれたからな。イリスはゲームばっかして」
「私は、モモがお手伝いするのを見ているというお手伝いよ」
イリスが父親にそう言うと、ニコラは肩を竦めて厨房に戻って行った。
「すごく可愛いお店だね。とても美味しい。ベニが作るご飯に似てる気がする」
レオンが言うと、イリスが大きく頷いた。
「そうでしょう?私もモモもここの食事食べて育ったの。モモは厨房も手伝っていたしね」
「そうなんだ!ベニ、友達のカフェでカレーとかオムライスとかパフェ出してるよ。すごく美味しくて大人気」
「へえ、変なことしてんのね」
「お小遣い稼ぎにもなるね。私、引越し多い生活って向いて無いから、あそこで頑張らないと」
会社員もだが研究者はより良い条件を求めて、大学や企業や政府系の研究室に職場を求めて行く者が多いが、桃には無理そうだった。
今の条件に不満は無いが、高給は望めない。
となると、正直、カフェでの手当てはありがたい。
「・・・なら日本に戻ればいいのに」
今まで黙ってワインを飲んでいたサーラが口を開いた。
気付いたらワインを一人で2本開けているし、目が座っている。
なぜか空き瓶をテーブルにゴロゴロ転がしている。
・・・この人も月子先生のように酒乱・・・?
「・・・サーラ」
レオンは瓶を取り上げてサーラをとがめた。
「レオン、今更アジア人と付き合う意味が分からない。世話してもらっていい気になってるだけじゃない。アジア人の女に家事労働させて喜んでる男って一定数いるものね。それしか能がないんだから」
たまに言われるなあと桃は聞いていた。
「・・・サーラ、止めな。ベニは仕事してるし、大学の地位は僕より上だもの。貢献度も上だし」
「・・・いいから、レオン」
酒乱は刺激してはダメなのは月子で学んだ。
今や公太郎が手を焼いているらしい。
酒造の嫁が酒乱て面白い、と桃はちょっと笑ってしまったが。
「そう言うとこも癇に障る。ねえ、何なのアンタ!?どう言うつもりでレオンのそばに居るわけ?」
ミカエルは結構すぐ寝てくれたけど、ここで寝られてはお店に迷惑だものなあ、と桃は考えていた。
「あんたレオンにぶら下がるつもり?結婚して、子供産むつもりでしょ。日本人てハーグ条約も知らないじゃない?子供誘拐して帰国しちゃうのよ」
「ああ、それはよく聞くわね。今は結構、帰れないからさ。困って耐えてる日本人妻多いわよ?私の知り合いもそうだもの。日本人の女、子供が可哀想で心配で、置いて帰れない人多いものね。じゃあさあ、子供置いて帰っちゃう女の方がマシってわけ?」
「・・・はあ?」
イリスが言ったのにサーラが不愉快そうな顔をした。
「・・・モモはね、この国で教育を受けた期間も長いの。アンタはなんなのよ?この国の文化や法律や歴史や社会的背景を何か知ってる?文学は?桃は叙事詩だっていくつも知ってるわ。・・・アンタこそこの国に何しに来てんのよ?アンタこそ帰ったら?」
キャットファイトと言うより、ジャガーVSピューマという感じの女同士の諍いに面白い事が始まったと店員やニコまでワクワクして見ている。
三毛猫程度の自分では太刀打ちなんか出来そうにない、と立ち上がった二人を桃はまいったなあと見上げていたが、2人をやんわりと制した。
「・・・ここのお食事美味しいから食べたいの。なんでも説明するから。まずは、座って」
桃は二人のグラスに新しいワインを注いだ。
「いい?今日の会は私が幹事なの。飲み会の雑用なんでもやるけど、幹事の顔を立てて。無礼講なんて嘘だからね。後、店に迷惑だから喧嘩と吐くのはやめて。出禁になるから。・・・食べて。まだ二品目よ?」
桃はそう言うと、目の前の料理を勧めた。
イリスもサーラも黙って座った。
レオンはその様子を嬉しそうに見ていた。
桃がニコラからレシピを聞きながらメモしていた。
「・・・これ美味しい。・・・なんか、スパイスの匂いする」
「鴨のコンフィに、ほら、花みたいな形の八角入れてみたんだ」
「ああ、中華っぽい匂いすると思った・・・」
桃は感心して頷いた。
「八角なら、ヤンの店にもあったね」
レオンがあの形が面白いと言った。
スウェーデンもお菓子にスパイスを使うから、八角ならスーパーに結構豊富に置いてあるし、中華食材コーナーにもある。
「モモ、お菓子にね、桜の花使いたいんだけど・・・あれってどこで売ってる?いい匂いするから、シロップとかじゃなくて本物使いたいの」
「ああ、クマリンね。塩漬けにすると糖分と塩分が反応して、クマリンて成分が上がってくるのよね。あの匂い、いいよね。・・・リラックス効果あるらしいよ。血液をサラサラにするとかって・・・。なら自分で漬ければ?この店の庭に八重桜植えたじゃない?」
「・・ああ、ある!」
イリスは喜んだが、次の春まで咲かないじゃない?と我に返っていた。
途中から人が変わったかのように静かになり、デザートの梨のタルトを食べていたサーラが泣き始めたのに桃は驚いて、ティッシュを差し出した。
飲みすぎて泣き上戸になったのだろうか。
「大丈夫?・・・具合悪い?」
サーラがティシュで顔中を拭いて、首を振った。
「・・・レオン、なんで、私じゃないの・・・?」
ポロポロと涙を流しながら言われて、桃はこっちが悲しくなってしまった。
レオンが何か気の利いた事を言って慰めてくれる事を期待した。
レオンは桃のまだ手をつけていないデザートの皿や、花の生けられた小さなガラスの花瓶をテーブルの端に寄せた。
何してんだろうと桃は不思議に思った。
「サーラ、僕はベニがいい。お前じゃダメだ」
なんて言い草だろうと桃は驚いてレオンを見て、次の瞬間、レオンに引っ張られた。
サーラがワインをぶちまけて、床でグラスが割れていた。
危うく桃もデザートも被害を免れたけれど、座っていた場所はワインだらけ。
「・・・サーラ、帰れ。迷惑だ」
レオンがそう言うと、サーラはわんわん泣き出してしまった。
桃は怪我は無いかとサーラとイリスに聞き、誰も怪我をしてないと分かるとほっとして、騒ぎを見ていた店員に謝って、店の奥からモップを出して来た
勝手知ったる元職場である。
他の客がもう居なくて良かった。
手早く壊れ物を片付けてしまう。
「・・・お騒がしてごめんなさいね。・・・温かい飲み物いただける?」
「大丈夫だよ。緑茶があるってさ。日本人のお客さんだからって用意していたようだよ」
ニコラが緑茶セットを出して来た。
「・・・ありがとう。じゃあ私淹れるわ」
桃はカウンターに入り、昔のように用意を始めた。
レオンとサーラが何か話しているようだった。
イリスが大丈夫よ、とこちらに視線を寄越した。
自分達の分と、ニコと店に残っていたスタッフの分のお茶を用意した。
「緑茶飲める?苦いの嫌なら蜂蜜入れる?コーヒーにしてもらう?」
サーラは俯いたままだった。
「・・・サーラ、去年ね、私、おじいちゃんを亡くしたの。その時、遺されたものがたくさんあって困ってしまって。大切なものばかりでね。レオンが運び出すの手伝ってくれたの。その時、ホテルにお話ししてくれたり、配送業者さんの手配とか、いろいろ手助けしてくれたのあなたでしょ?ありがとう。お会いして、とにかくお礼が言いたかったの」
桃が頭を下げた。
日本人ならではの習慣に、サーラは戸惑っていたが。
「・・・変な味・・・。これでいい・・・」
サーラは静かにお茶を飲んだ。
日本の飲み会で鍛えた経験が役に立ったようで、会計まできちんと済ませた桃はほっとした。
「会えて良かったわ。・・・パパも喜んでいたし。スタッフの皆にも良い話のネタになったみたいだし。・・・ほら」
イリスがサーラを促した。
「・・・モモ、ごめんなさい・・・」
俯いたままだったが、サーラがそう小さく謝った。
「良いのよ。私が急に現れたら驚くわよね」
二十代後半の彼女は、こうして見るとだいぶ幼く見える。
「また会えると嬉しいわ。あなたのお兄さんのミカともまた皆でお食事出来たらいいなと思うの」
桃がそう言うとサーラは頷いた。
今日は久しぶりに厨房に入って腕をふるうと決めたニコラが店名のロゴ入りのコック服を着た。
モモは髪をバッサリ切って、頭が軽くなったと大満足。
美容室の日本人のオーナーは久々にこの手の髪質が来たと何やら嬉しそうだった。
「いやもうね、アジア人の真っ直ぐの髪。太くてコシがあってね。あれなら、カッコよくカットする自信あるんですよ。ところがたまにいる、この猫より猫っ毛のビニール紐割いたみたいなぺたぺたした髪!めんどくせぇ!いいですねぇ!いい教材になります。皆、よく見ておいて!」
とおかしなテンションのまま、店員全員に囲まれて断髪式となってしまった。
日本人変わってる、とイリスは呆れていた。
日本のサロン仕様のシャンプーまで買えてしまったと桃は上機嫌だ。
突然髪が短くなった桃にレオンは多少ショックを受けたようだが、無言で桃を抱きしめたので、気に入ったらしい。
「懐かしいわね。・・・ここでお菓子食べたりね」
桃は店内を眺めた。
こじんまりとした暖かみのある店。
カウンターには焼き上がったばかりのケーキがいつも飾ってあって。
自分は忘れてしまったけれど、ここで小松川の祖母にも会ったのだ。
あの時、自分はりんごのパイを彼女に勧めたらしい。
「モモはよく手伝ってくれたからな。イリスはゲームばっかして」
「私は、モモがお手伝いするのを見ているというお手伝いよ」
イリスが父親にそう言うと、ニコラは肩を竦めて厨房に戻って行った。
「すごく可愛いお店だね。とても美味しい。ベニが作るご飯に似てる気がする」
レオンが言うと、イリスが大きく頷いた。
「そうでしょう?私もモモもここの食事食べて育ったの。モモは厨房も手伝っていたしね」
「そうなんだ!ベニ、友達のカフェでカレーとかオムライスとかパフェ出してるよ。すごく美味しくて大人気」
「へえ、変なことしてんのね」
「お小遣い稼ぎにもなるね。私、引越し多い生活って向いて無いから、あそこで頑張らないと」
会社員もだが研究者はより良い条件を求めて、大学や企業や政府系の研究室に職場を求めて行く者が多いが、桃には無理そうだった。
今の条件に不満は無いが、高給は望めない。
となると、正直、カフェでの手当てはありがたい。
「・・・なら日本に戻ればいいのに」
今まで黙ってワインを飲んでいたサーラが口を開いた。
気付いたらワインを一人で2本開けているし、目が座っている。
なぜか空き瓶をテーブルにゴロゴロ転がしている。
・・・この人も月子先生のように酒乱・・・?
「・・・サーラ」
レオンは瓶を取り上げてサーラをとがめた。
「レオン、今更アジア人と付き合う意味が分からない。世話してもらっていい気になってるだけじゃない。アジア人の女に家事労働させて喜んでる男って一定数いるものね。それしか能がないんだから」
たまに言われるなあと桃は聞いていた。
「・・・サーラ、止めな。ベニは仕事してるし、大学の地位は僕より上だもの。貢献度も上だし」
「・・・いいから、レオン」
酒乱は刺激してはダメなのは月子で学んだ。
今や公太郎が手を焼いているらしい。
酒造の嫁が酒乱て面白い、と桃はちょっと笑ってしまったが。
「そう言うとこも癇に障る。ねえ、何なのアンタ!?どう言うつもりでレオンのそばに居るわけ?」
ミカエルは結構すぐ寝てくれたけど、ここで寝られてはお店に迷惑だものなあ、と桃は考えていた。
「あんたレオンにぶら下がるつもり?結婚して、子供産むつもりでしょ。日本人てハーグ条約も知らないじゃない?子供誘拐して帰国しちゃうのよ」
「ああ、それはよく聞くわね。今は結構、帰れないからさ。困って耐えてる日本人妻多いわよ?私の知り合いもそうだもの。日本人の女、子供が可哀想で心配で、置いて帰れない人多いものね。じゃあさあ、子供置いて帰っちゃう女の方がマシってわけ?」
「・・・はあ?」
イリスが言ったのにサーラが不愉快そうな顔をした。
「・・・モモはね、この国で教育を受けた期間も長いの。アンタはなんなのよ?この国の文化や法律や歴史や社会的背景を何か知ってる?文学は?桃は叙事詩だっていくつも知ってるわ。・・・アンタこそこの国に何しに来てんのよ?アンタこそ帰ったら?」
キャットファイトと言うより、ジャガーVSピューマという感じの女同士の諍いに面白い事が始まったと店員やニコまでワクワクして見ている。
三毛猫程度の自分では太刀打ちなんか出来そうにない、と立ち上がった二人を桃はまいったなあと見上げていたが、2人をやんわりと制した。
「・・・ここのお食事美味しいから食べたいの。なんでも説明するから。まずは、座って」
桃は二人のグラスに新しいワインを注いだ。
「いい?今日の会は私が幹事なの。飲み会の雑用なんでもやるけど、幹事の顔を立てて。無礼講なんて嘘だからね。後、店に迷惑だから喧嘩と吐くのはやめて。出禁になるから。・・・食べて。まだ二品目よ?」
桃はそう言うと、目の前の料理を勧めた。
イリスもサーラも黙って座った。
レオンはその様子を嬉しそうに見ていた。
桃がニコラからレシピを聞きながらメモしていた。
「・・・これ美味しい。・・・なんか、スパイスの匂いする」
「鴨のコンフィに、ほら、花みたいな形の八角入れてみたんだ」
「ああ、中華っぽい匂いすると思った・・・」
桃は感心して頷いた。
「八角なら、ヤンの店にもあったね」
レオンがあの形が面白いと言った。
スウェーデンもお菓子にスパイスを使うから、八角ならスーパーに結構豊富に置いてあるし、中華食材コーナーにもある。
「モモ、お菓子にね、桜の花使いたいんだけど・・・あれってどこで売ってる?いい匂いするから、シロップとかじゃなくて本物使いたいの」
「ああ、クマリンね。塩漬けにすると糖分と塩分が反応して、クマリンて成分が上がってくるのよね。あの匂い、いいよね。・・・リラックス効果あるらしいよ。血液をサラサラにするとかって・・・。なら自分で漬ければ?この店の庭に八重桜植えたじゃない?」
「・・ああ、ある!」
イリスは喜んだが、次の春まで咲かないじゃない?と我に返っていた。
途中から人が変わったかのように静かになり、デザートの梨のタルトを食べていたサーラが泣き始めたのに桃は驚いて、ティッシュを差し出した。
飲みすぎて泣き上戸になったのだろうか。
「大丈夫?・・・具合悪い?」
サーラがティシュで顔中を拭いて、首を振った。
「・・・レオン、なんで、私じゃないの・・・?」
ポロポロと涙を流しながら言われて、桃はこっちが悲しくなってしまった。
レオンが何か気の利いた事を言って慰めてくれる事を期待した。
レオンは桃のまだ手をつけていないデザートの皿や、花の生けられた小さなガラスの花瓶をテーブルの端に寄せた。
何してんだろうと桃は不思議に思った。
「サーラ、僕はベニがいい。お前じゃダメだ」
なんて言い草だろうと桃は驚いてレオンを見て、次の瞬間、レオンに引っ張られた。
サーラがワインをぶちまけて、床でグラスが割れていた。
危うく桃もデザートも被害を免れたけれど、座っていた場所はワインだらけ。
「・・・サーラ、帰れ。迷惑だ」
レオンがそう言うと、サーラはわんわん泣き出してしまった。
桃は怪我は無いかとサーラとイリスに聞き、誰も怪我をしてないと分かるとほっとして、騒ぎを見ていた店員に謝って、店の奥からモップを出して来た
勝手知ったる元職場である。
他の客がもう居なくて良かった。
手早く壊れ物を片付けてしまう。
「・・・お騒がしてごめんなさいね。・・・温かい飲み物いただける?」
「大丈夫だよ。緑茶があるってさ。日本人のお客さんだからって用意していたようだよ」
ニコラが緑茶セットを出して来た。
「・・・ありがとう。じゃあ私淹れるわ」
桃はカウンターに入り、昔のように用意を始めた。
レオンとサーラが何か話しているようだった。
イリスが大丈夫よ、とこちらに視線を寄越した。
自分達の分と、ニコと店に残っていたスタッフの分のお茶を用意した。
「緑茶飲める?苦いの嫌なら蜂蜜入れる?コーヒーにしてもらう?」
サーラは俯いたままだった。
「・・・サーラ、去年ね、私、おじいちゃんを亡くしたの。その時、遺されたものがたくさんあって困ってしまって。大切なものばかりでね。レオンが運び出すの手伝ってくれたの。その時、ホテルにお話ししてくれたり、配送業者さんの手配とか、いろいろ手助けしてくれたのあなたでしょ?ありがとう。お会いして、とにかくお礼が言いたかったの」
桃が頭を下げた。
日本人ならではの習慣に、サーラは戸惑っていたが。
「・・・変な味・・・。これでいい・・・」
サーラは静かにお茶を飲んだ。
日本の飲み会で鍛えた経験が役に立ったようで、会計まできちんと済ませた桃はほっとした。
「会えて良かったわ。・・・パパも喜んでいたし。スタッフの皆にも良い話のネタになったみたいだし。・・・ほら」
イリスがサーラを促した。
「・・・モモ、ごめんなさい・・・」
俯いたままだったが、サーラがそう小さく謝った。
「良いのよ。私が急に現れたら驚くわよね」
二十代後半の彼女は、こうして見るとだいぶ幼く見える。
「また会えると嬉しいわ。あなたのお兄さんのミカともまた皆でお食事出来たらいいなと思うの」
桃がそう言うとサーラは頷いた。
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