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第2章 仮面と商業の街
2-4 壁の向こうへ(2)
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リルはソワソワしながら近くの宿を見つけ、部屋を手早く手配すると足早に外へ出た。ミカゲもすぐに出ていき目的の場所に向かうようだった。
「サツキは私と一緒に行くわよね?」
「そうだな、特に目的もないからリルに付いて歩くよ。」
そう言うとリルは嬉しそうに皐月の横に並び、はぐれないようにね。と皐月の腕を掴むとーー
「いてててて、ま、もうちょいゆっくり!」
凄い力で皐月の腕を引っ張った。皐月の嘆きは興奮したリルの耳には届かず、更に強い力で引っ張られる。皐月は振りほどくことも出来ず、涙目になりながらされるがままに引きずられた。
「こわ。」
そんな様子を宿の入口で見ていたメリは自分も被害を被るのはごめんだとリル達とは反対方向のこじんまりとした露店が並ぶ路地へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あれは何かしら・・・あれは、あ!あれ可愛い!・・・うぅー、目がいくつあっても足りないわ。」
大通りのバザールの列に入るとリルは先程よりもはしゃいだ様子でキョロキョロと首を動かしていた。皐月の腕を強く掴んでいた手も他のものに興味を惹かれる毎に力が抜けていき、皐月の腕は少しの痛みと華奢な手跡を残して自由になった。腕が痛くないのは良いが、混雑しているバザールの中で手を離してしまえば小柄なリルを探し出す事は困難だろう。そう考えている内に人の波に押されリルとはぐれそうになった。今度は皐月が咄嗟にリルの手を掴む。
「はぐれたら困るだろ!」
リルは様々なものに向けていた視線を皐月の手ひとつに集中させるとキョトンとした顔で繋がれた手を見つめた。
「私ったらつい・・・はしゃいじゃって。サツキ、ありがと!迷子になったら困るものね・・・サツキが!ふふ。」
リルはサツキの手を握り直すと手から視線を徐々に上げていき最後に皐月の顔を見てイタズラっぽく笑った。
「!!・・・やっぱ手、繋がなくても見失わないから大丈夫。」
皐月はリルの可愛らしい行動と笑った顔に照れを隠せず咄嗟に手を離そうと力を入れた。しかしリルの力はやはり強く、1度握りこまれた手は簡単には引けなかった。
「ダメよ。はぐれちゃうんでしょ?」
そう言うとリルは皐月の横にぴったりとくっ付き、腕を絡ませ腕組みスタイルへと素早く変更させた。
「さ、お腹空いちゃったわ。先ずは腹ごなしに何か食べなきゃ!」
がっちりホールドされた姿勢でまたリルに引きずられている皐月は女子と腕を組むという初めての経験に硬直し返事をする所ではない。先程から返事が帰ってこないことを気にも留めずリルは皐月に喋りかけながら屋台を見渡し歩を進める。
「ん・・・この匂いは。」
「いい匂いよね!サツキもあれが食べたい?凄い行列だけど私も気になるの。」
皐月の鼻を嗅ぎなれた匂いが刺激する。その匂いに安心を覚え皐月の腹の虫はため息のように音を漏らした。
「ふふ、やっぱりサツキも腹ペコよね。よし、並びましょ。」
リルに腕を引かれ行列の最後尾に並ぶと屋台の鉄板の上で焼かれているものを覗き込む。
「やっぱりそうだ、焼きそば!」
「ヤキ・・・ソバ?初めて見る食べ物だけれどそう言う名前なのね!なんかパンに挟んで食べるものみたい、あちこちで皆持ってるわ。」
「焼きそばパンか、こっちもこういう料理があるんだな。」
予めストックが沢山あるのか列は凄いが進むスピードは速かった。あっという間に注文口まで辿り着いた。リルは横で皐月の腕を一旦離し、焼きそばを焼いている鉄板を見ながらウキウキと揺れ動き鼻歌を歌っていた。
「2つお願いします。」
そんなリルを横目に皐月は店員に分かりやすいように指で2を作り注文をする。
「はい!かしこまりまし・・・って・・・ツッキー?」
「わっ・・・!!」
注文を受けた店員はそう言うと屋台の横から突然飛び出して来て皐月の腕を取り、屋台の後ろの路地へと皐月を連れ込んだ。あまりの素早さと状況の飲み込めなさに皐月は反応を返すことも出来ず簡単に手を引かれ連れていかれてしまった。
「ねえサツキ!凄いわこの・・・あら、サツキ?」
リルは後ろを振り向くと皐月がいないことに気づき直前まで輝かせていた顔を曇らせた。
「サツキは私と一緒に行くわよね?」
「そうだな、特に目的もないからリルに付いて歩くよ。」
そう言うとリルは嬉しそうに皐月の横に並び、はぐれないようにね。と皐月の腕を掴むとーー
「いてててて、ま、もうちょいゆっくり!」
凄い力で皐月の腕を引っ張った。皐月の嘆きは興奮したリルの耳には届かず、更に強い力で引っ張られる。皐月は振りほどくことも出来ず、涙目になりながらされるがままに引きずられた。
「こわ。」
そんな様子を宿の入口で見ていたメリは自分も被害を被るのはごめんだとリル達とは反対方向のこじんまりとした露店が並ぶ路地へと向かった。
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「あれは何かしら・・・あれは、あ!あれ可愛い!・・・うぅー、目がいくつあっても足りないわ。」
大通りのバザールの列に入るとリルは先程よりもはしゃいだ様子でキョロキョロと首を動かしていた。皐月の腕を強く掴んでいた手も他のものに興味を惹かれる毎に力が抜けていき、皐月の腕は少しの痛みと華奢な手跡を残して自由になった。腕が痛くないのは良いが、混雑しているバザールの中で手を離してしまえば小柄なリルを探し出す事は困難だろう。そう考えている内に人の波に押されリルとはぐれそうになった。今度は皐月が咄嗟にリルの手を掴む。
「はぐれたら困るだろ!」
リルは様々なものに向けていた視線を皐月の手ひとつに集中させるとキョトンとした顔で繋がれた手を見つめた。
「私ったらつい・・・はしゃいじゃって。サツキ、ありがと!迷子になったら困るものね・・・サツキが!ふふ。」
リルはサツキの手を握り直すと手から視線を徐々に上げていき最後に皐月の顔を見てイタズラっぽく笑った。
「!!・・・やっぱ手、繋がなくても見失わないから大丈夫。」
皐月はリルの可愛らしい行動と笑った顔に照れを隠せず咄嗟に手を離そうと力を入れた。しかしリルの力はやはり強く、1度握りこまれた手は簡単には引けなかった。
「ダメよ。はぐれちゃうんでしょ?」
そう言うとリルは皐月の横にぴったりとくっ付き、腕を絡ませ腕組みスタイルへと素早く変更させた。
「さ、お腹空いちゃったわ。先ずは腹ごなしに何か食べなきゃ!」
がっちりホールドされた姿勢でまたリルに引きずられている皐月は女子と腕を組むという初めての経験に硬直し返事をする所ではない。先程から返事が帰ってこないことを気にも留めずリルは皐月に喋りかけながら屋台を見渡し歩を進める。
「ん・・・この匂いは。」
「いい匂いよね!サツキもあれが食べたい?凄い行列だけど私も気になるの。」
皐月の鼻を嗅ぎなれた匂いが刺激する。その匂いに安心を覚え皐月の腹の虫はため息のように音を漏らした。
「ふふ、やっぱりサツキも腹ペコよね。よし、並びましょ。」
リルに腕を引かれ行列の最後尾に並ぶと屋台の鉄板の上で焼かれているものを覗き込む。
「やっぱりそうだ、焼きそば!」
「ヤキ・・・ソバ?初めて見る食べ物だけれどそう言う名前なのね!なんかパンに挟んで食べるものみたい、あちこちで皆持ってるわ。」
「焼きそばパンか、こっちもこういう料理があるんだな。」
予めストックが沢山あるのか列は凄いが進むスピードは速かった。あっという間に注文口まで辿り着いた。リルは横で皐月の腕を一旦離し、焼きそばを焼いている鉄板を見ながらウキウキと揺れ動き鼻歌を歌っていた。
「2つお願いします。」
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「はい!かしこまりまし・・・って・・・ツッキー?」
「わっ・・・!!」
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「ねえサツキ!凄いわこの・・・あら、サツキ?」
リルは後ろを振り向くと皐月がいないことに気づき直前まで輝かせていた顔を曇らせた。
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