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第2章 仮面と商業の街

2-3 壁の向こうへ(1)

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「リルちゃん、思い返してみて下さい~。王都は普通の門から出たんですよね~?王都の門から出るためには1つのグループに1つ、身分を示すものが必要なはずです~。」

「そう言われても・・・通る時何も言われなかったのよね。」


リルは眉間に皺を寄せ、腕を組み、唸りをあげて考える。一頻り悩んだ後、渋い顔をして、助けを求めるようにメリを見つめた。
リルの視線を受け、頼みの綱の弟は姉の代わりに思い返すように目線を上にあげ顎に手を当て考える。

「えーーーっと、あん時はうーん確か衛兵が、姉ちゃんの無い胸をじっと見てた気がする・・・」

「そうなのね!って聞き捨てならないけど。まぁいいわ、ちょっとまってて・・・」

リルはメリの発言に手を叩いて納得すると皐月達が声を掛ける間も無く門番の元へ駆けて行った。

暫く見守っているとリルが門番に向かって胸を突き出し何かを言っている様子が見えたが門番が明らかに冷めた目をした後トボトボとリルがこちらへ戻ってきた。

「ダメだったわ。」

「そうでしょうね~。」

ミカゲも困った様子でリルを見つめた。

「姉ちゃんそういえばこの胸のあたりにさ、ラーチェから貰ったペンダント的なの付けてなかった?どこいったんだよ。」

リルが謎の悪戦苦闘を繰り広げている間も悩み続けていたメリは先程のリルと似た動作で手を叩いて閃いたとばかりにその瞳を煌めかせるとリルを指さしそう問いかける。

「あの可愛いやつね、戦う時落としたら困るからこっちにいれていたわ。よいしょ。」

リルは腰に括りつけていた袋に手を入れると絢爛豪華とは行かないまでもそれなりに価値があるであろうペンダントを取り出し皆に見せた。

「これですよリルちゃん~!これで通れると思うので行きましょう~。」

ミカゲはペンダントをじっくり観察し安心したように嘆息すると待ってろとばかりに門番を指さしフンと鼻を鳴らした。
意外と好戦的なのかもしれない。

門に近づくと先程から色々と付き合っていただいている門番さんが呆れた顔でこちらを見ていた。

「何度来ても同じですけどね・・・」

ため息と共にそう漏らすと腰に手を当て懲りない来訪者に向き直る。

「これが目に入らないのかしら?」

リルは門番に偉そうにペンダントを見せ付けると得意げに笑ってみせた。

「・・・これは!そうでしたか。見た目で人は判断出来ませんね。王国騎士団の方々。大変失礼致しました。先程までの無礼の数々お許し下さい。ここをお通り頂いて問題ありません。」

門番は最初こそ少し失礼な事を言ったものの綺麗な直角の礼と共に丁寧に謝罪の言葉を並べ立てた。
その後門番が横にずれて槍を上に少し挙げ、その先端をクルリと回すと重厚な門がゴゴゴゴゴと地響きのような音を立てながらゆっくりとその口を開いた。
門番は完全に扉が開くと先頭にいたリルに滞在許可証を渡し、扉の先へどうぞと手を向けた。

「通らせてもらうわね。」

そう言うとリルは薄紫色の髪を靡かせて門を堂々とくぐった。他の3人もリルに続いて門をくぐる。通る手前、ミカゲと皐月は門番に軽く会釈をして通った。
門番も会釈を返すとまた槍を挙げ反対向きに回し扉をゆっくりと閉ざした。

門を抜けると眼前には賑やかな街並みが広がっていた。

「うわ~!すごい賑やかね。王都とはまた違って屋台とかがいっぱい!ねぇ、情報集めする前に少し見て歩きたいわ!」

「あ、あぁ。俺は構わないけど・・・」

リルが紫色の瞳を宝石のように輝かせながらキョロキョロと視線を巡らせる。ねぇいいでしょ?と仔犬のような目で縋られれば皐月に断るという選択肢は一切浮かばない。断る理由も特にはない。

「しょうがないな姉ちゃんは・・・」

メリもそう言いながらその視線はもう大通りのバザールに釘付けだ。

「でしたら少し別行動しませんか~。私も見たいものというか寄りたい場所があるので~。」

「分かったわ!じゃあ、合流地点を決めておかないとね。別行動する前にこの近くの宿を探して、部屋を取っておくからそこにしましょう。お互い用事が終わったら情報集め開始でいいわね!」
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