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第1章 結成!臨時パーティ!
1-22 臨時パーティと臨時バディの戦場(2)
しおりを挟むーー時を少し遡りリルとメリが旅に出た当日、メイダリア王国の城では誰もがてんやわんやの大騒ぎ。失踪した姫と王子を探していた。
国王が気づいたのは夕食時、リルとメリがいつまで経っても現れなかった時だ。
召使いを遣わせてメリとリルを捜索させたが勿論城内で見つかる訳がない。
城中に緊張が走る。
勇者が捕まった報せはリルが自分の所で止めたことによりまだ国王は知らないのだ。
「落ち着いて下さい。あの子達が悪戯に外に出るのはよくあることではないですか。それが長引いただけでしょう。」
「しかしだな、夕食に遅れてくることはあっても来ないことは1度もなかったのだぞ!?」
城の中心部玉座の間では国王と王妃が落ち着かない様子で向き合っていた。
「・・・そんなに心配ならば何故二人を別棟に隔離するのです!?私はあれだけ反対したのに。貴方はリルの体質が怖いのでしょう!!それに、成人の歳になっても王国の民にお披露目会をしなかった!貴方はリルをいない者とするのですか!?」
「そんなことは・・・それはだな・・・っ!」
王妃が涙目で王を責め立てる。それに一瞬たじろいだ王は言葉をつまらせながら反論しようと声を上げた。
「お父様!夕食の時間に遅れて申し訳ありません!」
玉座の間の入り口に走ってきたのか息の上がった薄紫色の髪を揺らす姫が現れた。
そう、捜索されていたリルエスタ姫だ。
「リル!一体どこに行っていたの!皆心配して貴方を探していたのよ!」
「お父様、お母様、ごめんなさい。えーと、今日は城下町でお祭りがあったからつい夢中になってしまって。」
「また城下町に出たのか!!お前は自分の立場を考えろと何度も言ったであろう!」
国王と王妃、父と母はひょっこりと現れた娘に安心を覚えつつもその後先考えない行動を叱りつける。
「まぁ、いいわ。リル、これからは気をつけなさい。所でメリは?」
「は、はい!あ・・・メリさ、メリはえーと。お腹が痛いから来ないわ!!」
「あら、そうなの。あとで専属の医師をよんでおかないとね。」
リル姫は母の質問にしどろもどろになりながらもなんとか答える。
玉座の間の入り口ではその様子をラーチェが胸に手を当てドキドキしながら見守っていた。
「お母様!私ちょっとあの御手洗に!」
「行ってらっしゃい。座って待っているから。」
リル姫は冷や汗を流し少し慌てた様子で会話を離脱する。
リルのトイレ事情を察したように母は1歩下がり上品に手を振る。
リルは玉座の間を出て廊下を少し走り気味に移動すると近くの部屋に入り一息ついた。
「お疲れ様です。国王様にも王妃様にもバレてはいなさそうですね。やはりこのくらいの時間が限界ですか?」
「そうね。はぁ、ふぅ。これが私の限界ですわ。」
床に汗を落としてへたり込むのはリル姫・・・ではなく別棟副メイド長のレイベル。
「魔法は得意ですけれど、声も姿も変え続けるのは中々骨が折れますわね。」
「ここまで変化魔法が使えるのはうちではレイベルくらいですから。助かりましたよ。これで暫くは持つでしょう。」
汗を拭い立ち上がるとレイベルは腕を組んでラーチェが差し出すタオルを手に取る。
「そうですわね・・・でも国王様達の前に現れられるのは1人。いつかバレますわ。」
「それまでに色々なんとかしないといけません。レイベル、なんとか夕食の方はリル様を演じてください。私は本城の執事長とうまく話をつけてきます。」
ラーチェもレイベルに合わせてしゃがみこんでいた体制から立ち上がるとスカートの裾をパッと払い立ち直る。
「今更ですけどリル様もメリ様もとんでもないことをしますわ。本当に。私達だけではすぐに限界がくる。・・・執事長、フェルミスタスさんならきっと力になってくれますわよね。」
「そうですね。孫の、フレアスト様・・・勇者様が捕まったと聞けば。」
「ええ。健闘を祈りますわ。」
「互いに。」
別棟メイド長と副メイド長は目を合わせふっと笑うと顔より高い高さに上げた掌を互いにタイミング良く叩き合わせ、それぞれの戦場へと向かったーーー
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