待ってて勇者さま!〜異世界でお姫様と勇者を救う旅をする〜

お茶漬けモンスター

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第1章 結成!臨時パーティ!

1-16 陰りの森にて (2)

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頭では何が何だか理解出来ていないが身体が逃げろと警告している。
皐月の身体は気がつくと逃亡を始めていた。

「うわああああああ!」

人生で初めてあげるレベルの大声をだして全力で走る。後ろからはドスンドスンと追いかけてくる音が嫌でも空気を震わせ伝わってくる。それも皐月の走るスピードを上回る速度で。着実に距離を詰められているのが分かった。

「サツキ!!そのままこっちに向かって走って合図で左に思いっきし飛べ!!」

「え?!わ、分かった!」

メリが走る皐月の斜め前の方で構えているのがかろうじて横目で見えた。
皐月は合図が来るまでなんとか全力で走る。しかし得体の知れぬ追撃者は皐月のすぐ後ろまで迫り、皐月を潰さんと手を振りあげる動作に入っていた。

「サツキ!!飛べ!」

メリが皐月にそう叫んだ瞬間、皐月は残された体力をフルに使い思いっきり左に向かって飛んだ。

「サツキぃっ!バカああ!そっちは右だよっ!・・・くそ、いけるか?!」

皐月は追いかけられる恐怖心と焦りにより踏み込む足を間違えた。結果指示とは逆方向に皐月の体は飛び出した。飛んだ瞬間皐月は間違いに気づいたがもう遅い。
皐月の姿を一瞬見失っていた追撃者は右に逸れた皐月を見つけ振り上げた腕らしきものを右斜めに勢いよく振り下ろす。
それが皐月の体にヒットする直前。どこからともなく飛んできたロープが皐月の体にうまく巻きついた。そのまま勢いよく引っ張られ横方向に体が飛んでいく。顔の上スレスレを敵の腕が掠めたが文句は言えない。ロープを手繰り寄せた主はメリだ。

「はぁぁ、良かったあ。右に飛ばれたから、俺の位置からじゃどう引っ張っても攻撃が当たると思って。一か八か腕と地面の隙間をすり抜けられて良かったあ。」

「・・・はぁはぁ・・・死ぬかと思った・・・。メリ、ほんとありがとうな。」

「どういたしまして。サツキと出会ったばっかで最悪のお別れするとこだったぜ!それにしても丁度見つかるような所に隠れるなんて皐月ってほんと・・・ぷふ」

「わ、わらうな!特に気配も無かったしあそこは安全だと思ったんだ。」

「それなんだよ。確かに変だ。あいつ、魔物特有の気配とか匂いがしないんだよ。しかも道筋の糸を切ったのがあいつだとすると。何か変な技を使えるのかもしれない。と、こんな悠長にしてたら姉ちゃんに怒られるな。嫌だけど行ってくる。サツキ!とりあえず適当に逃げ回れ!」

メリは最後に適当なアドバイスを残すと皐月にむかってガッツポーズをしてリル達の元へと走っていった。

皐月はとりあえずまた安全そうな場所を探し身を潜める。

ーーーーー

「リルちゃん、気づきました~?なんだか妙ですね~。」

「ええ、あの木の塊みたいなでかいの。魔物じゃなさそうね。じゃあ何かと言われるとほんとにわからないけど。あれが村人達が言ってた魔物の正体かしら?」

追いかけていた皐月が突然視界から消えたため。追撃者は追撃対象を無くし先程からキョロキョロしている。
リルとミカゲは追撃者の視界に入らない所で様子を伺っていた。

「・・・話し合いできないかしら。」

「いや、どう見たって話通じなさそうじゃん。」

2人の元に丁度戻ってきたメリがリルに意見する。

「一応話しかけてみちゃいます~?」

「ミカゲさん、それギャグ?」

「万が一もあるかもしれないじゃない。隠れてても始まらないわ。まずは話しかけてみるわね。」

「ちょ、姉ちゃん待って!」

メリの抑止も聞かずリルは追撃者の前に飛び出した。追撃者は木や植物が寄り集まって塊になったような、なんともごちゃごちゃしたルックスだ。

「え~と、木の・・・魔物?さん。少しお話できないかしら!」

リルが腰に手を当て明るく話しかける。相手が人なら好印象だ。人ならば。
木の魔物はリルの姿を見つけるや否や、耳を塞ぎたくなるような甲高い咆哮をあげてリル目掛けて突進してきた。

「お話はできないみたいね。じゃあ、討伐に変更だわ!ミカゲ、メリ!」

「は~い!」

「・・・はぁ。」

リルの合図を皮切りに木の魔物(仮)との戦闘が開始した。
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