上 下
10 / 39
第1章 結成!臨時パーティ!

1-9 一行の行き先(1)

しおりを挟む
「こ、ここここれやばいんじゃないか?」

皐月は咄嗟に倒れている人に駆け寄った。こんな時は動かしちゃいけないんだったか。そうだ救急車呼ばないと。そんな思考が頭の中を駆け巡る。

「リル、救急車呼んでくれ!」

「きゅうきゅうしゃ?」

リルは皐月の言葉に首をかしげた。この世界には救急車はないのか。ならば・・・

「・・・医者!医者は?」

「お医者さん呼ばなくても大丈夫よ。この人サツキと同じ。お腹すいて倒れてるだけよ。」

「うん。サツキもこんな感じだったよな?さっきから定期的にグーグー聞こえるしさ」

よくよく見ると静かに肩が上下していて息をしていることは確認できた。しゃがんで耳を近づけると確かにお腹の音らしきものも聞こえる。皐月はひとまず安心した。

「サツキにしてもそうだけど・・・今日会う倒れている人は見たことない格好してるわね。」

リルの言葉に皐月は倒れている人の格好を確認する。少なくとも自分のいた世界の服ではない。とりあえず自分と同じように飛ばされた大学の人ではないようだ。上は薄紅色の甚平のような服を着ていて腰には紅色の帯を締めている。下は膝上までの長さの黒のスパッツをはいていた。おかっぱに近い髪型をしている黒髪の少女だ。こちらの人達の服装は皐月の世界で言うコスプレに近い。例に漏れずこの少女も現代版忍者・・・みたいな格好をしている。

「大丈夫かー?」

メリが突然倒れている少女を激しく揺さぶる。

「・・・うぅぅぅ・・・ぁああ」

揺さぶられながら少女は呻き声をあげる。

「ちょ、メリ具合悪そうな人に何を!」

「起こして話聞きたいから起きてもらう。」

度々思うがこの姉弟は本当に常識的な行動をしない。

「・・・ぅぐう・・・」

少女は先程よりもぐったりした様子で横たわり続ける。

「悪化したじゃねーか!」

メリは一切悪びれた様子なく肩を竦めた。
ふと見るといつの間にかリルが少女の傍らにしゃがみこんでいる。その手には・・・

「パンっっっ!!!」

そう、リルの手には皐月がもらったのと同じ丸いふわふわのパンが持たれていた。・・・のだがそれは一瞬で消え去った。

「ご馳走様です~」

倒れていた少女はいつの間にか起き上がって口の横についたパンくずをパッパと払っていた。

「はぁ~生き返りました~本当に本当にお腹がすいてたんですよ、ありがとうございます~」

少女はさっきの素早さとは裏腹におっとりとした口調でお礼を述べる。

「それは良かったわ!」

リルはニコニコとして2個目のパンを取り出す。すると少女はキラキラした目でそれを見つめていた。

「もうひとつどうぞ?」

リルがそう言うと少女はまた目にも止まらぬ速さでパンを胃におさめた。

「すごい速さね!お腹すいてるならもっとあげるわ。あ、そうだその前に聞きたいことがあるんだけど」

「なんでも聞いてください~!知ってることなら答えます~」

「魔王城へ行きたいのだけど道を知ってるかしら?」

リルがそう聞くと少女はおおっと手を叩いて目を輝かせた。

「私もそこに行きたくて~。手がかりを掴むためにレブリックへ向かっていたんですよ~。」

「あら、じゃあ同じね!それなら一緒にいかないかしら?」

リルはニコッと笑って少女に手を差し出す。

「いいんですか~!?ぜひ、お願いします。1人では心細かったんです~」

少女はリルの手をとると地面から立ち上がり丁寧にお辞儀をした。流石綺麗な日本式だ。

「よし決まりね!お互い助け合いながら頑張って辿り着きましょ!」

こうしてリル達のパーティーは一気に4人に膨れ上がった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に射出された俺、『大地の力』で快適森暮らし始めます!

らもえ
ファンタジー
旧題:異世界に射出された俺、見知らぬ森の真中へ放り出される。周りには木しか生えていないけどお地蔵さんに貰ったレアスキルを使って何とか生き延びます。  俺こと杉浦耕平は、学校帰りのコンビニから家に帰る途中で自称神なるものに拉致される。いきなり攫って異世界へ行けとおっしゃる。しかも語り口が軽くどうにも怪しい。  向こうに行っても特に使命は無く、自由にしていいと言う。しかし、もらえたスキルは【異言語理解】と【簡易鑑定】のみ。いや、これだけでどうせいっちゅーに。そんな俺を見かねた地元の地蔵尊がレアスキルをくれると言うらしい。やっぱり持つべきものは地元の繋がりだよね!  それで早速異世界転移!と思いきや、異世界の高高度の上空に自称神の手違いで射出されちまう。紐なしバンジーもしくはパラシュート無しのスカイダイビングか?これ。  自称神様が何かしてくれたお陰で何とか着地に成功するも、辺りは一面木ばっかりの森のど真ん中。いやこれ遭難ですやん。  そこでお地蔵さんから貰ったスキルを思い出した。これが意外とチートスキルで何とか生活していくことに成功するのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界エステ〜チートスキル『エステ』で美少女たちをマッサージしていたら、いつの間にか裏社会をも支配する異世界の帝王になっていた件〜

福寿草真
ファンタジー
【Sランク冒険者を、お姫様を、オイルマッサージでトロトロにして成り上がり!?】 何の取り柄もないごく普通のアラサー、安間想介はある日唐突に異世界転移をしてしまう。 魔物や魔法が存在するありふれたファンタジー世界で想介が神様からもらったチートスキルは最強の戦闘系スキル……ではなく、『エステ』スキルという前代未聞の力で!? これはごく普通の男がエステ店を開き、オイルマッサージで沢山の異世界女性をトロトロにしながら、瞬く間に成り上がっていく物語。 スキル『エステ』は成長すると、マッサージを行うだけで体力回復、病気の治療、バフが発生するなど様々な効果が出てくるチートスキルです。

何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる

月風レイ
ファンタジー
 あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。  周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。  そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。  それは突如現れた一枚の手紙だった。  その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。  どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。  突如、異世界の大草原に召喚される。  元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

現代兵器で異世界無双

wyvern
ファンタジー
サバゲ好き以外どこにでもいるようなサラリーマンの主人公は、 ある日気づけば見知らぬ森の中にいた。 その手にはLiSMと呼ばれるip〇d似の端末を持たされていた。 これはアサルトライフルや戦闘機に戦車や空母、果ては缶コーヒーまで召喚できてしまうチート端末だった。 森を出た主人公は見る風景、人、町をみて中近世のような異世界に転移させられと悟った。 そしてこちらの世界に来てから幾日か経った時、 主人公を転移させた張本人のコンダート王国女王に会い、 この国がデスニア帝国という強大な隣国に陸・海・空から同時に攻められ敗戦色濃厚ということを知る。 主人公は、自分が召喚されたのはLiSMで召喚した現代兵器を使ってこの国を救って欲しいからだと知り、 圧倒的不利なこの状況を現代兵器を駆使して立ち向かっていく! そして軍事のみならず、社会インフラなどを現代と引けを取らない状態まで成長させ、 超大国となったコンダート王国はデスニア帝国に逆襲を始める そしてせっかく異世界来たのでついでにハーレム(軍団)も作っちゃいます笑! Twitterやってます→https://twitter.com/wyvern34765592

処理中です...